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804:北畠蒼陽 2005/08/27(土) 19:39 [nworo@hotmail.com] 「ッ!? ……そう、わかったわ。ありがとう」 報告を受けた毋丘倹の顔が一瞬こわばり……しかしそれでもそれをできる限り表に出さないよう、平静を装おうとする。 寿春棟、揚州校区兵団長の執務室。 そこに集った毋丘倹をはじめとした、その幕僚たちの顔には隠すことのできぬ疲労の影が落ちていた。 校舎の外からは騒がしい声。 蒼天会において曹操が卒業した翌年に高等部に進学した世代の中で突出した実力と実績を誇った戦乙女、毋丘倹。彼女は曹家蒼天会を裏で操ろうとする司馬師に反発し、やはり同世代の文欽とともに揚州校区を中心として大規模な叛乱を起こした。 その趣旨は『対司馬師』の一点のみであり、まぎれもなく政治の領域の話であった。毋丘倹にとって不幸なことに毋丘倹にも文欽にも、またその幕僚たちにも司馬師に対抗できるほどの切れ者はおらず、この叛乱はまさに暴発という色すら帯びていた。まさに『不幸』である。 そして今…… 校舎外でゲリラ活動をしていた盟友、文欽が司馬師の本隊に遭遇し、その最精鋭MTB部隊によって壊滅させられたとの報告が寿春棟に届けられていた。 とびっきりのバッドニュース…… 「仲恭姉さん……どうするの?」 毋丘倹の妹の毋丘秀が、その顔を歪めながらそれでも気遣うように問いかける。 もう敗北は決定付けられた……どんなに残酷でも、ここは主将に決断してもらわなければならない。 「落ち延びよう。これ以上は……もう無益」 悔しそうに唇をかみ締め、毋丘倹が呟くように言う。 「でもッ! ……外はあんなに敵に囲まれてッ!」 叫ぶように反論する毋丘秀。 毋丘倹はゆっくりと顔を上げた。 「私が……みんなが落ち延びる時間を稼ぐ」 殺戮の戦乙女 普段はクローゼットの奥にしまわれたままの幹部生徒専用の制服に身を包んだ王昶はパイプ椅子に座ったまま遠く寿春棟を眺めた。 そして周りを見回す。 荊州校区総代、王基。 征東主将、胡遵。 豫州校区兵団長、諸葛誕。 エン州校区総代、昜。 そして連合生徒会会長、司馬師。 この世代を代表するメンバーである、が…… 裏を返せばそれだけ仲恭が恐れられてる、ってことか。 確かに仲恭は並外れた実績がある。 私ですら彼女の功績の前には一歩譲らざるを得ない。 それだけに…… 今、仲恭は追い詰められている。 仲若を失い、また助けのない籠城戦を強いられるという屈辱。 翼を失い堕天した戦乙女。 今、彼女は焦っているだろうか…… 自分の考えにバカバカしくなって王昶は苦笑をもらす。 仲恭は追い詰められても冷静を欠くことはない。それは実績が証明していることだ。 だったら…… 「おね……主将、どう動くの?」 傍らの王渾が声をかけてくる。 「玄沖、毋丘倹はどう動くと思う?」 「え、えっと、仲若ちゃ……文欽がもういなくなった以上、撤退を考えてると思うの。バンザイアタックとかって毋丘倹に似合わないもんね」 そう、仲恭は撤退を考えているだろう。
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