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★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★
828:海月 亮 2005/11/15(火) 22:27 >北畠蒼陽様 多くは語りませんぞ。 ただただ、一日も早く快癒し、再びこの地にて相まみえんことを切に願うのみです。 そして私もそろそろ何か書いてうぷしたい_| ̄|○(<しろよ
829:海月 亮 2005/11/16(水) 20:55 「はぁ?」 あたしの言葉の何処がおかしかったのか…目の前の少女は心底呆れたような顔をして見せた。 そしてたっぷり三分ほど顔を見合わせると「…はぁ〜」と特大の溜息をついて、視線を手元の本に戻す。 「やっぱどう転んでも公緒は公緒か。夾石棟の一件聞いたときはちったあ成長したかと思ったんだけどなぁ」 「ど〜ゆ〜意味だよっ!」 なんかすっごく馬鹿にされてる。 この緑の跳ね髪の少女…陸凱(敬風)はあたしの友達だけど、どういうわけかあたしに対しては辛辣すぎるきらいがある。 まるで蒼天会のあるひとを連想させるくらいに。 −巣立つ若鳥を謳う詩− あたしの名は朱績、字は公緒。 かつてはこの長湖部でその人ありといわれた名将・朱然の妹として、その名を辱めないよう日々努力している…つもり。 だけどあたしが頑張ろうとすればするほど、かえって散々な結果になってばかり。しかも敵にも味方にも一癖も二癖もある人間ばかりで、どんどん気が滅入ってくる。 でも、この間の寿春攻略(あ、それは全体の結果としては失敗だったんだけど…)で、あたしはようやく"敵方の嫌なヤツ"に一目おいてもらえるようになったみたい(?)なんだけど…。 あたしはまだ、その"嫌なヤツ"こと、現蒼天会きっての名将・王昶を今度こそ打ち倒すべく、色々研究しているワケ。 夾石棟では結局、あたしは王昶先輩に勝ったわけじゃない。 あっちが勝手に決めて、勝手に引き下がっただけ。 相手の技…確か、杖術って言うらしいんだけど…の正体なんか掴むどころの騒ぎじゃない。だからあたしは、次に直接対決する機会のため、その技に詳しそうな人に話を聞きに着た、というわけ。 本当だったら承淵(丁奉)とか幼節(陸抗)とか、長湖部でも武道に通じた人に聴きたかったんだけど…承淵は最近色々ありすぎてそっとしておいてあげたかったし、幼節は幼節で余りそういうものに興味がなさそうだからやめた。 だから長湖部でもかなりのトリビア王である彼女…敬風に聞くことにしたんだけど…やっぱやめときゃよかったかも。 「…というかあんたは自分のやってる武道の流派も知らんのか。そんなことだから何時まで経っても"朱績ちゃん"呼ばわりされるんだ。相手のことをどうこういう前にちったぁ自分について勉強しろ」 敬風はあたしのほうに視線を戻してくる気配がない。完璧にあきれ返った様子。 けどあたしとしてはなんか納得行かない。知らないものは知らないんだし、わざわざ恥を忍んで教えてもらおうと、好物の珍味・鮭冬葉まで差し出したのにこの態度。当然ながらあたしもムキになりますとも。 「何でよぅ! あたし杖術なんて全ッ然知らないもんっ! そういう敬風だってホントは知らないんでしょ!?」 「…知ってるも何も、神道夢想流はおまえがやってる香取神道流の流れを汲む杖術の流派だ。いうなれば親戚のようなものだろ。神道流やってるなら知ってて当然の知識だと思うけどな」 知らない。ていうか断じて知らない。 というかあたしの通っているのは剣術道場であって、そんな聞いたこともない獲物を扱う道場じゃない。道場のパンフとかにもそんな説明なんて書いてなかったし。 「まぁ確かに杖術の知名度そのものはそんなにはないだろうが…一応、知り合いに神道夢想流の使い手がひとりいるはずだけど?」 「はい?」 あたしは思っても見ない言葉に絶句した。 鏡がないから解んないけど、きっとあたしはすごくマヌケな顔をしてる事だろう。 「先に言っておくが、あんたが目の仇にして止まない王昶先輩じゃないぞ。ちゃんと長湖部身内の人間だ」 そうして再び彼女は、視線を本からあたしに移し変えた。 そして敬風はあたしの献上した鮭冬葉を一切れ、口に放り込んでしばしその味を確かめていた。 「…それ、初耳だよ。だって承淵が柳生と北辰、幼節も柳生でしょ。あたしが香取神道流で…」 「不慮の事故で姿を消した世議は截拳道、同じく季文は少林寺の棍だな。棍と杖もまた勝手が違うものだが」 敬風はまるで当然のようにさらりといったが、世議(呂拠)と季文(朱異)はこの間、部内のごたごたに巻き込まれて退部してしまった仲間。あたしは二人のことを思うと…寂しくなるから、あまり口にしないことにもしていた。 当然ながら、ふたりがどんな武術に通じていたかとかなんてあたしもよく知ってる。 「ついでにあたしが何をやってるかは知ってるか?」 「諸嘗流でしょ。古武術の」 …ばかにするなコノヤロウ。 しつこいようだがあたしは身内だったら大体誰がどんな武術に通じているか知ってるつもり。防具があってもそれが意味を成さないといわれる諸嘗流の使い手は、少なくとも長湖部では敬風以外にはいないと思う。 だからこそ、杖術なんて知らなくても当然。身内に使ってる人間なんて…。 「…じゃあ、世洪は?」 「え?」 あたしは小首を傾げた。 世洪(虞レ)…なんかいまいちピンと来ない。あたしの記憶が確かなら…。 「確か世洪って運動神経キレてるはずだよ? だって逆上がりも出来ないし、マラソンだって何時もビリ…」 「あぁ、やっぱり知らなかったか。てことは知ってるのはあたしと承淵位じゃないかな…世洪は件の神道夢想流の使い手、いや、達人といってもいいな。アイツは部のごたごたに巻き込まれたくないから、わざとネコ被ってるんだよ」 「うっそ〜? あの世洪が?」 「そうだなぁ…今の部はだいぶ落ち着いてきたから、久しぶりにやってるかもしれないな」 あたしは未だに信じられず、美味しそうに鮭冬葉を味わうその顔を凝視した。 もしかしてあたしはまた馬鹿にされて、一杯食わされかかってるんじゃないかって身構えた。あたし、敬風には常日頃からかわれてわりと痛い目観てるしね。 「ウソだと思うなら、明日5時頃に起きて寮の中庭見てみな。運がよければ面白いものが見れるよ」 そう言って、敬風はまた一切れ、鮭冬葉を口に放り込んだ。
830:海月 亮 2005/11/16(水) 20:56 次の日の朝。 あたしはいつもより一時間半早い目覚ましに起こされ、晩秋の冷たい空気から逃れるように布団の中に…戻ろうとしたところでようやく、目覚ましを早くセットした理由を思い出した。 半信半疑というか、あたしはまったく信じていないし、はっきりいって騙されるのは癪だったけど…まぁウソならウソで、たまには朝から勉強してもいいかなと思ってとりあえず起きることにした。 …確か中庭を見てみろ、とかぬかしてたよね。 いいわよ、見てやろうじゃないの。どうせまだ街灯がついたままの、寒々とした石畳の景色が見えるだけなんだから。 そうして、あたしはカーテンを明け払った。寮の三階にあるあたしの部屋のその位置からなら、ちょうど中庭が見れるはずだったから。 そうして辺りを見回す。窓を閉めた状態では見える位置も多寡が知れているので、あたしは強烈な冷気が部屋に入るのを承知の上で窓まで明け払い、寒さを感じる前にベランダに飛び出し…そして見えたのは。 「…誰もいないじゃない」 まぁ予想していたとおり、あたしはまたしても彼女に一杯喰わされたわけだ。 結局彼女の言葉を少しでも信じようとした自分に腹が立つと同時に、一気に寒気が襲ってきてあわてて部屋の中へ戻ろうとした。 「あれ…?」 もしそのときそれに気がつかなければ、あたしは今日も敬風にいわでもなことをいって、散々馬鹿にされたのかもしれない。 振り向きかけたとき、寮の玄関に人影が見えた。 遠目でもはっきりわかる学校指定の青いジャージ、そしてその特徴的なプラチナブロンドの髪は…。 「…世洪?」 見間違えようがない。彼女みたいな目立つ容姿の娘はそういない。 それに自慢じゃないけど、ゲーマーでも本の虫でもないあたしの視力は両目とも1.5あるからはっきり解る。 みれば彼女、手には棒の様なものを携えている。 中庭に出てきた彼女はストレッチを始め、よく身体を解している様子。ストレッチを終えると、身体も温まってきたらしい彼女はジャージの上を脱ぎ、袖を腰のあたりにまき付け縛り付けている。そして、おもむろに手に持った得物を構える…次の瞬間。 「…やっ!」 凛とした、よく透る声の気合一閃、彼女の技が、放たれた。 踏み込んで突き。横薙ぎ。打ち下ろし。突き上げ。 時折織り交ざる掛け声で技はどんどん変化していく。総ての技がまるで流れる水のように、まったく無駄のない連なったひとつの動きを…ううん、もう言葉じゃ全然説明できない。 「…綺麗…」 素直に、そう想った。 例えるなら、日本刀の美しさに近い。 引き込まれそうな美しさを持ちながら、あの前に自分がいたら…という恐怖感も併せ持つ…そんな美しさ。 あたしはその見事すぎる"練武"から、何時の間にか目が離せなくなっていた。 「…お〜い、公緒、起きてるか〜?」 不意に真下から軽そうな声が聞こえてくる。 その声に、あたしは現実から引き戻された。下を見れば、上着を脱いだままの世洪がいる。 「お〜、珍しいじゃない。寝惚けて這い出てきたってワケでもないみたいね〜」 彼女は何時もの彼女に戻っていた。 これがついさっきまであの見事な技を繰り出したのと同一人物とは信じられなかった。 あたしは自分の目に写ったものの真実を確かめるため、自分もジャージに着替えてその上からパーカーを羽織り、中庭に出てきていた。 「…おはよ」 「うむ、おはよう」 挨拶を交わす。 でも、そのあとの言葉が続いてこない。 訊きたい事が多すぎて、一体何から話したらいいのか…そう思っていたら、彼女のほうから口火を切ってきた。 「…あたしがこんな事してるなんて、やっぱり意外だった?」 「あ、えっと、その」 「あたしも隠すつもりはなかったけど、あんまり騒がれるのって、好きじゃないから」 その淡々とした口調に、なんだか悪いことをしてしまったんじゃないかという気になってくる。 「ごめん…でも、気になったから…敬風が言ってたことが本当かどうか…」 「ええ? まさかアイツこのこと知ってんの? 巧く隠してたと思ってたんだけどな〜」 驚いてる。なんだか意外なことだったらしい。 「…見てるヤツは結構見てるもんねぇ。それであんたはまたしても敬風に一杯食わされて見ようと此処に出てきた、というわけね」 あたしは頭を振る。半分はあたりだけど、もう半分の理由。 「それもあるけど…あたし、これが本当だったら…世洪に、訊きたい事があったから」 「ふむ」 彼女は腕組みしてちょっと思案顔。 「あたしに答えられる範囲でならいいけど…後で良いかな。流石にそろそろ皆起きだしてくるし、朝食の準備もあるからね」 「う、うん」 そしてあたしも彼女にくっついて自分の部屋へと戻っていった。
831:海月 亮 2005/11/16(水) 20:57 その日の昼休み。 あたしは彼女と図書館の談話室に来ていた。子賤(丁固)とか他の娘達も何事かと思ってついて来ようとしたのを、敬風が気を利かせて巧く丸め込んでくれたらしい。振り向きざまににかっと笑って見せたあたり、昨日の鮭冬葉の礼のつもりなのだろう。 世洪にも何か奢ろうとしたけど、今朝のことをおおっぴらに言わなければ別にいいとのたまった。けどまぁ、後でお茶の一本も奢る事にしておくかな。 「…んで、訊きたい事って何なのさ?」 「う、うん。実はね…世洪がやっているあれって…」 「神道夢想流杖術…ああ、なるほど。あんたまだ、あのひとに打ち勝つことに拘ってるのか」 ずばり言い当ててくれるよ、このひとときたら。 あたしが余程解りやすい人間なのか、それとも彼女や敬風の洞察力がバケモノじみてるのか…あるいはその両方なのかもしれないが、もう呆気にとられる他にない。 「うん…だから、せめて詳しい人に、どんなものだか教えてもらおうと思って。今のあたしには、どうしてもあのひとのことを、よく知っておきたいと思うから」 「なるほどねぇ」 彼女は腕組みしたままうんうんと頷く。 「…王文舒先輩の腕前が実際どれほどのものかはあたし知らないけど、少なくとも杖術というならとんでもないひとを、あたしはひとり知ってる」 「え?」 とんでもない、と彼女が言った。 先に対決した王昶先輩ならいざ知らず、世洪の技量だって今のあたしにとっては勝てるかどうか解らない。 …ううん、正直、勝てる気がしない。それがとんでもないひと、なんて…あたしには想像もつかなかった。 「誰なの、そのひとって…?」 あたしは恐る恐るといった具合に、目の前の少女に尋ねてみた。 「姉さんよ、あたしの」 それはなんとも意外すぎる人物であった。 「姉さんは一般的には長湖随一の口の悪さのほうが有名だったアレもあるけどね。良くも悪しくもお祭り人間の多い長湖初期の経理を一手に引き受けていた業績のほうが目立つから、姉さんが杖の達人だったことを知ってる人はかなり少ないと思う」 確かに、彼女のお姉さん…仲翔(虞翻)先輩といえば、皮肉屋として有名な人だ。 でも、先輩は先代部長のために、あえて濡れ衣を被って誰の目からも触れないところから長湖部の危機を救ったひとであり…先代部長と先輩がどれほど強い絆で結ばれていたか…そんなことを知っているのは今の同期の中でもごくごく少数。あたしも、その少数のひとりだ。 けど、仲翔先輩が杖術の使い手だったなんて話は、これが初耳だ。 「姉さんはあくまで護身のためと言い張ってたけど…あたしに言わせれば、あのひとが戦線に立たなかったのが不思議なくらいよ」 「強かった、ってこと?」 「そんなレベルじゃない…はっきり言って、姉さんは天才よ。姉さんが編み出した"秘踏み"は、恐らくは世に出ずに終わる絶技…あたしが主将にならないのは、せめてあたしがあの"秘踏み"をモノにしてから…そう思っているからよ」 そう言った世洪…その顔は、ちょっと寂しそうに見えた。 彼女も、やっぱりお姉さんの後姿を見ながら、色々考えたり、悩んだりしているのだろう。未だに義封(朱然)お姉ちゃんの影を追い続けている、あたしのように。 「やっぱり、その技って難しかったりするの? いろいろと」 「ううん、"秘踏み"の理論そのものは単純よ。公緒、"一の太刀"は知ってるわよね?」 「うん…まだ、習った事はないけど…確か逆足踏み込みから、更に利き足で一気に踏み込みながら撃つのよね」 「そうね。でも"秘踏み"は更にもう一度、そこからさらに逆足で踏み込みながら一気に斬り抜けるの」 「…ええ?」 ええと、つまりはこういうことか。 利き足で踏み込んで撃って、そのまま更にもう一歩踏み込んでいくと…でも。 「そんなことしたら、振りぬきの勢いがかかりすぎて自分の足まで斬っちゃうんじゃ?」 「真剣でやったら、そうかもね。杖や木刀でも、誤爆は骨折の元になるわ。だからしばらくあたし、朝のをしばらく休んでたんだけどね」 一瞬また敬風に騙されたと思ったけど、よくよく考えれば彼女は秋頃しばらく体育は見学してたっけ。 それに頭のいい世洪のこと、のっけの幸いと本当に猫を被ってたのかもしれない。 孫峻先輩ならいざ知らず、見境のない孫リンが彼女の実力を知っていれば本気で潰しにかかるくらいはやってたかもしれないし。 「…ねぇ、世洪」 しばしの沈黙を挟んで、あたしは世洪に問い掛けた。 「もし世洪さえ良ければ…あたしも朝のあれ、いっしょにやっちゃ…ダメかな…?」 恐る恐るその顔を覗き込んでみる。 何か呆気にとられたような顔をしていたが、彼女は、 「そうね。ひとりよりも、ふたりのほうが何か掴むものがあるかもしれないわね」 そう言って微笑んだ。
832:海月 亮 2005/11/16(水) 20:57 以来、あたしは彼女と一緒に、朝に自主トレを始めるようになる。 王昶先輩が突如引退を表明したことを知ったのはそれから間もなくの事で…敬風なんかは「押しかけて闇討ちでもいいからちょっと叩きのめして来い」なんて言ってたけど、実際のところ再戦を申し込むという考えは、あたしにはなかった。 「随分剣も鋭くなってくるわね。あたしがこういうのもなんだけど、やっぱりあんたスジが良いわ。"一の太刀"の極意を掴むにもそう時間は要らなさそうね」 「…それほどでもないよ」 朝、毎日30分ほどのトレーニングを続けることふた月が経とうとしている頃。 あたしはようやくこの生活に慣れてきて、最初は目で追う事すら出来なかった世洪の"乱調子"も、かなり見えるようになってきていた。 今日は休日で、他の子達もほとんどは夢の中。あたしたちは普段より長めにトレーニングの時間を取っていた。 どちらともなく休憩を取ろうと、中庭にベンチに腰掛けた。 「…でも公緒、本当にいいの? 王昶先輩の事」 世洪が不意にそんなことを訊いてきた。 確かに再戦する機会があれば、あたしはもう一度戦っては見たかった。 けど、その勝負での勝ち負けが、すべてじゃない…あたしは、そう思っているから、 「あたしにはあたしのやり方で、"勝つ"ことは出来ると思うから」 頭を振りながら、あたしはそう応えた。 「それも、そうだよねぇ」 彼女もそれを酌んでくれたのか、にっと微笑(わら)い返した。 「…そろそろ、一度手合わせしてみようか?」 「そうだね」 そしてあたしたちは、今日もそれぞれの"目標"に向けて歩み続ける…。 そんな二人の様子を眺める、二つの影がある。 ひとりは紫がかったロングヘアの少女。筆書きで「海老」と白抜きに大書された紺のトレーナーに、デニムジャンパーとヴィンテージ物らしいジーンズに黒のブーツを身につけて、どこか緊張感のない表情で朱績たちを眺めている。 もうひとりはそれとは対照的に、ウェーブのかかった黒のセミロング。ベージュのハーフコートから、厚手のチェックスカートが覗いており、お揃いのブーツを身につけている。 「やれやれ…もうこりゃあ、ちょっと突っついてどうにかできるシロモノじゃなくなっちまったなぁ」 「完全なミスね、文舒。引退は良いけど、とんでもない厄介事残して…玄沖が可哀相だわ」 ウェーブ髪の少女の淡々とした物言いに、文舒と呼ばれたその少女は、朱績たちを指差しながら言う。 「まぁ、いいんでねぇの? そのくらいの"壁"があったほうが、かえって玄沖のためになるし?」 「相変わらずね」 やれやれ、といった風に、少女は頭を振る。 「…それにあなたも、再戦は果たさなくて良いの?」 「愚問だな」 踵を返し、その少女が振り向きつつ言う。 「そんなものは、何時だって出来るし、何時だって受ける事も出来る。そうだろ、伯輿?」 「そうね」 「今はただ、あいつらが何処までやってくれるのか…そして玄沖たちがそれをどうするのか…それを見届けてみるのも一興だな」 立ち去るふたり…蒼天生徒会随一の名将であった王昶と王基の言葉を聴くものは、その場には彼女たちしかいなかった。 (終)
833:海月 亮 2005/11/16(水) 21:02 「夾石のディキシィ」の後日談的な話を勝手に考えてみました(゚∀゚) 結局陳矯の話も全然カタチにならねぇし斜陽期長湖の続きも巧くまとまらないし。 本当の「大法螺吹き」と言うのは海月みたいなのを言うのだろう_| ̄|○ しかし此処へSS持ってきたのはあれか、夏祭り以来か。ずいぶんご無沙汰だったんだなぁ…(  ̄ー ̄)y=~~~
834:烏丸沙宮 2005/11/16(水) 21:09 >海月 亮様 す・すすす素敵妹キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!! 可愛いなぁこのヤロウ。 虞レ可愛いよ可愛いよ虞レ。 それでは、ネタSS投下行きます。
835:烏丸沙宮 『マックスコーヒー。。。』 2005/11/16(水) 21:13 それはいきなりだった。 「おねーちゃん!今日は私が作るよ!!」 その言葉に固まったのは、徐晃と張遼。 この二人は剣道部つながりで友達であり、『つくる』と言った人物 ――徐蓋と張虎――の姉である。徐晃が徐蓋の肩を揺さぶった。 「ねぇ蓋!お菓子が欲しいならお姉ちゃんが買ってきてあげるから 止めよう!?かなり怖いよそれ!!」 「大丈夫だよ。そんなに信頼ない?」 不平な顔をした徐蓋に、張遼がつぶやく。 「虎はともかく、蓋ちゃんじゃなぁ・・・。」 「姉さま、駄目?」 「いや、虎が手伝う(というかほとんど作る)ならいいよ。」 張遼は妹に、少し甘いようだ。いや、張虎はお菓子作りが得意だから、 それでいいのだろうが。それに徐蓋が喜ぶ。 「んじゃ、早速作るよー!!」 「えーと、まずは・・・。」 「ゼラチンを溶かさないとね。湯煎しよう。」 「ゆせんってなあに?そもそも普通に鍋で溶かせばいいんじゃあ・・・。」 「・・・鍋で溶かしたら凄いことになるよ。お湯を沸かして、その中で溶かす のよ。お菓子を作るなら、それくらい覚えておかなくちゃ。」 なんやかんやとやっている二人のすぐ後ろで、姉たちはため息をついた。 「・・・不安だなぁ。ま、虎がいるから大丈夫だろうけど・・・」 「やっぱり文遠もそう思う?・・・ゲテモノ食わされないかしら。」 「えーと、それでこれを入れて・・・。」 [え?何入れてるの?] 考えながら何かを入れている徐蓋に、張虎が問う。徐蓋は当然とでも言う ように答えた。 「んー?マックスコーヒー。これ甘くて美味しいよ?張虎も飲む〜?」 「・・・いや、いい。」 遠慮した張虎に、徐蓋はつまらなそうに眉根を寄せる。 「え〜?美味しいのにぃ・・・。」 そういいながら一口ソレを飲んだ。 やがて、台所から噎せそうなほど甘い匂いが漂ってきた。 張遼が吐き気をこらえて徐晃に聞く。 「ねぇ。徐蓋はいったい何を作ってるの・・・?」 「知らない・・・。寧ろ私が聞きたい・・・。」 徐晃が頭を抱えて答えた。向こうから徐蓋と張虎の声が聞こえた。 「よし、後はこれを冷蔵庫で冷やして固めるだけ!だよね、張虎。」 「うん・・・頑張って・・・もう、駄目・・・・・・。」 早速張虎が逃げたようである。姉二人は顔を見合わせてため息をついた。 その後。残りの五将軍と李典、そしてその妹たちが呼び寄せられた。 「何だ徐蓋・・・って、ま、まさか・・・!!」 不機嫌なのは于圭。于姉妹の妹である。だが、すぐにおびえたような表情 になった。・・・ゲテモノを食わされた経験があるらしい。 「大丈夫だよー。(外見的には)そんなに不味い物じゃないから。」 笑う徐蓋に、全員がほっとした。・・・張虎と于圭を除いて。 全員が席に着くと、徐蓋が手際よくデザートを運んでいく。そして、 並べ終わった後。 「んじゃ、いただきまーす!」 思いっきり食べ始めた。甘くて美味しいという徐蓋に、皆がそのゼリーを 口に運ぶ。そして、徐蓋を除く皆が叫んだ。 「甘過ぎッ!!!」 PS.その後、ばたばたと人が倒れていく、最後には徐蓋が総て食べつくし たという・・・。
836:海月 亮 2005/11/16(水) 23:30 おお、久方ぶりの五覇妹話ですな(゚∀゚) 前回に引き続きマックスコーヒーにこだわる徐蓋タンいいわぁ(*´Д`*) というかどんな材料にマックスコーヒーを混ぜていたのやら…?((((;;゚Д゚)))) そして全員がノックアウトされたシロモノを食べ尽くす徐蓋…「ONE」の茜なみの甘党だな…。 ちょっと思い出したので、余談めいた話をひとつ。 実際にコーヒーゼリーを作る場合、実は冷やすと甘味が感じにくくなる事を考慮してかなりの量の砂糖を加えなければならないそうで。 普通にコーヒーを飲むときに入れる量の割合(カップ1杯に大体角砂糖1〜2個)では甘味なんてなくなるので、実はマックスコーヒーをそのまま固めるくらいが丁度良いとか…?
837:北畠蒼陽 2006/01/08(日) 16:59 [nworo@hotmail.com] 「きゃっ」 「わぁ」 王昶の体の上に柔らかいものが覆いかぶさってきた。 柔らかいが重いものだった。 王家只今合宿中 それは夏休み前までさかのぼる。 「夏休み、みんなでうちの別荘にいかない?」 王凌が読んでいた単行本から、ふ、と顔を上げてみんなに声をかけた。 青州棟の棟長の執務室にいた人間がみな王凌の顔を見る。 王凌と姉妹の契りを交わした王昶。 王凌に見出された王基。 王凌の従妹、令孤愚。 3人の1年生の視線が王凌に集中する。 「えっと……お姉さま、今なんと?」 他の2人の思いを代弁するかのように王昶が口を開いた。 「合宿……そうね、合宿とでも思えばいいわ。今の時期ならお姉様もおられるはずだし……」 王凌が呟くように言う。お姉様……かつて学園の全校評議会評議長にまで上り詰めた王允のことだろう。 夏休みの予定……3人はそれぞれ考える。 もちろん王凌の申し出を断る理由は見つからなかった。 「いらっしゃい、みんな」 白いワンピースに身を包み、深窓の令嬢といった風貌の王允が4人を出迎える。 にっこりと微笑みながら……このような笑みは学園にいたころの、あの苛烈な性格からは考えづらいものだ。昔のように皺が眉間に刻まれていることもない。 『いろいろ苦労したんだろうなぁ』とか思いながら王凌以外の3人は内心でうんうんと頷く。 「お姉様、しばらくよろしくお願いしますね」 「こちらこそ……さ、疲れてるでしょ。入って」 笑顔の王凌に笑顔の王允。 珍しいことではある。 玄関から入っていく2人の後ろを見ながら、王昶、王基、令孤愚は一瞬顔を見合わせて、いそいそとあとに続いた。
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