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852:弐師 2006/02/05(日) 18:14 その次の日、私と士起ちゃん、単経ちゃん、田揩ちゃんの四人が、生徒会長室に呼び出された。 士起ちゃん以外の娘―もちろん私も含めてだが―は生徒会長室に入るのは久しぶりだ。 私はわくわくしていた、自分でもすこし恥ずかしいほど、だ。 「ああ、よく来てくれた、早速だが、本題に入らせてもらう。」 話というのはこうだ、伯珪姉が白馬義従を率いて突撃、袁紹軍の背後を遮断、そして私たちが棟から打って出て、挟撃する。ということらしい。 確かに、白馬義従と伯珪姉ならば不可能ではないかもしれない。 だが・・・ 「そんな!危険です!それに伯珪さまが今この棟を出たら、みんなの心はばらばらになってしまいます。」 最初に口を開いたのは、士起ちゃんだった。 そう、私が危惧しているのも其処なのだ、今、人心は離れてきている、それでもこの篭城戦が破綻しないのは、伯珪姉がこの棟内にいるからだ。 もし、突破に成功し、袁紹軍の背後を突けても、上手く呼応できないかもしれない。 リスクが、大きすぎる。 「そうですよ!もし、失敗したら貴女の身まで危険に・・・」 田揩ちゃんが続く。いつもはおどおどしている彼女が、これほど大きな声を出すのは珍しい。 「だが、田揩、今の状況を打開するには、これしかないんじゃないか?もし、などとばかり言っていては、何もできないぞ?」 今まで口を閉ざしていた単経ちゃんが口を開く。 「だけど・・・!」 「まあ、そう熱くなるな、二人とも。範、貴女はどう思う?」 「そうですね、確かに、この作戦はリスクが大きすぎます、張燕さまの援護を得た上で実行するのがよろしいかと。」 「ふむ、なるほど・・・皆、それで良いか。」 誰からも異議は出なかったので、これで会議はお開きになった。 とりあえず、張燕殿が到着するまでは、特に仕事はないだろうと思ったのだが、何故か皆解散した後、私と士起ちゃんだけ、また呼び出された。 「ふむ、来てくれたか。」 「どうなさったのですか、伯珪さま?」 「先ほどの話に関わる話なのだが、範、おまえは士起を連れ文安棟に移ってくれないか。」 「え・・・」 文安棟は此処より五キロ程西にある棟で、今はそれほど重要な拠点でもない。 其処に移るということは、今回の決戦には参加できないということ、そして、何より・・・ 「何故!?何故なんですか!?そんなにあたしは足手まといですか!?」 悲痛な叫びだった。士起ちゃんの気持ちはよくわかる、彼女は運動こそ苦手なものの、事務的な仕事はよくやってくれていた、決して足手まといなどではない。 伯珪姉も唇をかみ、俯いていた。 私が士起ちゃんを宥めようとした時、伯珪姉が口を開いた。 「すまない、私だって貴女と離れたくない、だが、此処は危険なのだ。わかってくれ。」 伯珪姉が士起ちゃんに話しかける、私ではなく、彼女にだけ。 不意に、嫉妬がこみ上げる。 伯珪姉が、離れがたいのは、彼女だけ。 私 じ ゃ な い 。 そ う 彼 女 だ け。 結局、その言葉に士起ちゃんも折れた。 と、いうわけで、早速私たちは出発することになった。 いまさらながら、あんな風な感情を抱いてしまった自分が嫌になってくる、それなのに、士起ちゃんは、私のことをいつものように見つめてくれる。 やめて。 私は、そんな目で見てもらえるほど、綺麗な人間じゃないの。 もちろん、そんなこと口には出せない。 そんな私の心を知ってか知らずか、士起ちゃんが「いきましょうか?」と声をかけてくる これ以上考えたら、本当におかしくなりそう。 すべての感情を振り切って、私はバイクのエンジンをかけた。
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