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★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★
872:弐師 2006/02/19(日) 20:00 この娘達は、飛ばさせない。 元はといえば、私の油断のせいだ。 単経さんを追いかけて前進したところに、物影から彼らが襲ってきた。 なんとか一撃目は避けたものの、向こうの方が人数が多く、取り囲まれてしまった。 「皆さん!私のあとに続いてください!」 一点に集中攻撃、包囲をうち破る。 「皆さん、先に退いてください。」 「え・・・でも田揩さんは・・・」 「いいから!早く退いてください!」 私は一人残る、所謂「殿」と言う奴だ。 相手の木刀を摺り上げ、手元を打つ。 突っ込んで来るところに、突きを放つ。 面を打つふりをして、思いっきり逆胴を決める。 襲いかかってくる人たちをあしらっていく、だが、バイクの乗り方は向こうが上、段々押されてくる、まだ倒したのは二、三人程。 もう、無理か。 そう思ったとき、奴らの後ろから、白い学ランを着た男が現れた。 この人は、蹋頓! 烏丸工のナンバー2まで出てきちゃったか、これは私も年貢の納め時ってやつかな。 「ふん、なかなかの根性だな、気に入った。一騎打ちをしないか?子分には手出しさせない。あんたが俺と戦っている間は、あんたの部下の連中を追っかけたりしない。それでいいかい?」 「へえ、話がわかりますね。」 もちろん、ただの強がりだ。 怖い。 とても、怖い。 だけど、私が戦わなきゃ。 「はっはっは、可愛い顔して、言ってくれるねえ!」 何も言わず、私は隙を探す。 バイク同士での一騎打ち、向こうの方が運転技術が上なら、私は一撃に賭けるしかない。 「一撃に賭ける、か?いいぜ、来いよ。」 二人の間の緊張が高まる。 まだ まだ まだ―――――――― 「よし!」 一瞬できた隙、そこに、私は迷わず突っ込んでいった。 胴を薙払う、しかし、それは紙一重でかわされ、学ランを裂いただけ。 そして、肩に響く一撃。 さっきのは、誘いか。 体が宙に舞い、次の瞬間激しく地面に打ち付けられる。 まずい・・・体が言うことを聞かない・・・ 「惜しかったな。」 そんな声も遠く聞こえる。 蹋頓が、階級章に手を伸ばしてくる。 そこに、いきなりバイクが走り込んでくる。 単経さん!? 「貴様・・・よくも田揩を・・・許さん、絶対に許さんぞ!」 単経さん、駄目だよ。 そんな怒ってたら、せっかくの綺麗な顔が台無しだよ・・・ 「ほう、あんた、そいつの友達かい?」 「そうだ。彼女は、田揩は私の親友だ。」 え・・?今、私のこと親友って・・・ 「そうか・・・」 新しく出てきた女の放った言葉。 親友。 俺には、使う資格のない言葉。 その言葉を聞いて、今も思い出すのは、俺が守ってやれなかったあいつ。 張純のこと。 俺がもう少し強ければ、あいつも烏桓高でやっていけたはずなのにな。 結局、あいつは此処にもいられなくなって鮮卑高まで逃げて、そこで・・・ くそっ!! 「よし、今日は、退いてやる。」 「な・・・!貴様!逃げるか!」 「勘違いするな、おまえなんかには負けないよ、それに、そんなことよりそいつを早く病院にでも連れていった方が良いんじゃないかい?」 「ちっ・・・」 「じゃあな。」 そう言って、彼は走り出した。 だが、暫くして振り返り、一言だけ、私たちに話しかけた 「親友は・・・大事にしろよ・・・」 その後、私は立ち上がりバイクにまたがろうとした。 だけど、もう意識も遠のいてきて・・・だ・・・め・・・だ・・・・・
873:弐師 2006/02/19(日) 20:01 目覚めたのは、夕方。 清潔な部屋、真っ白なシーツ、此処は北平棟の保健室か。 そっか、あの後、此処に・・・ それまでの経緯を思い出そうと寝返りを打つと、そこにいたのは・・・ 「単経さ・・・」 一瞬大声を出しかけたが、すぐに彼女が眠っていることに気がついて、口をつぐんだ。 期せずして凝視することになってしまった、単経さんの寝顔。 思わず、息をのんでしまう。 そこには、いつものクールさより、どこか年相応の可愛らしさを感じた。 「む・・・田揩、目が覚めたのか。」 「え、わ!その!」 今度こそ本当に大声を出してしまった。 恥ずかしい・・・ 「よかった・・・本当に、良かった・・・」 しかし、次の瞬間には、彼女は涙を流し始めた。 またもや初めて見ることになった、単経さんの涙。 どうしよう、と思っていると、いきなり彼女から抱きしめられる。 「本当に・・・心配した・・・」 「・・・単経さん・・・」 初めて見る、彼女の無防備で、弱い部分。 そんな彼女の頭に、そっと手を置く。 「大丈夫ですよ、私はここに、ちゃんと居ますよ・・・」 「うん・・・」 「ほら、笑ってください!笑ってる単経さんの方が、綺麗ですよ?」 そう私が言うと、単経さんは、照れたように微笑んだ。 純白のカーテンの隙間から差し込む夕日が、彼女の微笑みを照らす。 それは、今まで見たどんな物より、綺麗だった。
874:弐師 2006/02/19(日) 20:03 ども、宣言と全く関係ない物を書いてしまいました・・・ >冷霊様 二人の先輩達の覚悟が格好いいです。 に、しても! 楊 懐 さ ん の 初 陣 気になりますねーw ぜひそちらも読んでみたいですね。 >北畠蒼陽様 いいですね、夏ですね、堪りませんね!(何が? な ん で わ ざ わ ざ 建 業 棟 ま で 泳 ぎ に 来 る の か し ら ? がつぼにはまりましたw 諸葛誕さんもかわいくていやなんとも・・・ 本当に夏が待ち遠しくなってきました。 >海月 亮様 凄まじい逃走劇の中、丁奉さんの部屋に集まってしまった皆様方と、仲謀さんと仲翔さんのほのぼのさが最高です! 特に仲謀さん、萌え殺されるところでしたよあなたw こんな感じの季節ネタが書けるのは流石ですね。 堪能させて頂きました。 あと、関靖!良かったです! ちょうど私の中のイメージとぴったりですよ! ありがとうございました。
875:海月 亮 2006/02/19(日) 22:34 >弐師様 いやいや、貴殿こそGJでござるよ(<何時の時代の人間だw というか女の子同士の友情は萌えるのでつよ。 不器用なふれあいが何時しか絆に変わる、その過程がよいのです。 で、私なんぞはそれが無残にも砕け散る一瞬もまた好きだとか(オイ そしてそれがまた新たな絆を生むとかだったらもうさらに以下略w 余談ですが…。 馬忠(阿撞)と蘇飛がどうなったのか知りたい方は>>431を、 甘寧&呂蒙&魯粛がやらかした悪事wについては>>385を参照のこと。 引用失礼。
876:海月 亮 2006/02/19(日) 22:37 いやまて、>>431は「参照」じゃないな。「参考」ですなw あと関靖が御気に召していただけたようで一安心でつ^^A
877:北畠蒼陽 2006/02/19(日) 23:43 [nworo@hotmail.com] >海月 亮様 のー、バレンタイン! バレンタインですから! 蒼天長湖部方面軍の連中のバレンタインは……諸葛誕くらいしか思い浮かばないなぁ。あの子に彼氏がいるのは私の中では確定だし(ぁ あぁ、毋丘倹は多分チョコは作るけど渡せないの。乙女だから。 あ、そうそう。最近思いついたネタで丁奉使いたいと思ってるんですが、丁奉はいつごろから悪丁奉ちゃん予定です? 悪丁奉ちゃんvs某人をかいてみよーかなー、と(笑 >弐師様 ごきげんよう、三国志大戦で公孫サンだけはどう使っていいのか見当もつかない北畠です。というか使ってる人見たことないしっ! 劉虞に至っては登場すらしてませんっ! あと昔は単経のほうな娘が好きだったものですが最近は田揩のようなストレートな子の可愛さが身にしみるお年頃で、あぁもう! とりあえずgjですよー。
878:海月 亮 2006/02/20(月) 08:17 >豹変の話 うーむはっきりとは考えてませんが…諸葛誕が飛ぶ頃かも。 帰宅部消滅の頃には間違いなく変わってるかと。 これまでバレンタインという大ネタの主役って言えば関羽だったからなぁ…。
879:北畠蒼陽 2006/02/27(月) 05:25 [nworo@hotmail.com] 「……聞いてるの、承淵」 黎斐が声をかけてくる。 うるさい。うるさい。うるさい。 他人の戦場に駆り出されてなにをしろというんだ。 ふざけやがって。どいつもこいつもどうせ私の前から去っていってしまうんだ。 強くならなきゃ…… もっと……強くならなきゃ…… 新陰流の系譜 眼前の戦場の様子に丁奉は鼻で笑い飛ばした。 まるでお遊戯…… 蒼天会はトップクラスのメンバーを総動員してこの戦いに挑んでいる。 こちらはそれに引き換えはるかに小勢。 蜂の一刺しでどの程度のダメージが与えられるものか。 季文もこんなどうでもいい戦いの責任を押し付けられてかわいそうに。 校舎を見る。 あの校舎に立て篭もっているのは今まで敵だった人。 諸葛誕先輩。 蒼天会の中で……蒼天会の今の三年生世代の中でずば抜けて軍事的才能がなく、しかしその圧倒的な政治力を駆使して長く長湖部のマウントを取り続けた女性。 そして毋丘倹の乱で長湖部に身を寄せた文欽先輩もまたあの分厚い包囲網の中にいた。 どうということはない、もともとは蒼天会の内部分裂。 こんなどうでもいい場所でなぜトばされなくてはならないのか。 丁奉はあきれたようにため息をつく。 「季文からの伝令よ、承淵。できるだけ包囲網を崩して欲しい、って」 黎斐が返事もしない丁奉に気分を害したように、それでも事務的な口調で伝えた。 「はぁん? これを抜けろっていうの?」 季文もよほどテンパってるらしい。 まぁ、いい。やれるところまでやるだけ、だ。 そう思い木刀を握った丁奉に1人の人影が飛び込んできた。 それは戦場から離れたところにたった1人でたたずんでいる人だった。 戦場の様子を遠めに見ている一般生徒…… 一見そう見える……だが…… 丁奉の唇が獰猛な笑みを形作る。 「……承淵?」 丁奉の様子を不審に思ったのだろう、黎斐が声をかけてくる。 「あぁ、黎斐。ちょっとだけ出かけてくる……包囲網の切り崩しはそのあとね」 「ちょ……ちょっと!」 黎斐の呼び止める声にもかまわずに丁奉は駆け出していた。
880:北畠蒼陽 2006/02/27(月) 05:26 [nworo@hotmail.com] 彼女はどんな思いでこの戦場を見ているのだろう。 丁奉が彼女のそばに近寄ったとき……彼女は遠めに見たときと同じ佇まいでそこにいた。 彼女の目にはなにが映っているのだろう……? 「なにかしら……? 私はただの一般生徒よ」 すでに丁奉が傍によっていることに気づいていたのだろう、背を向けたまま彼女は丁奉に問いを発する。 「今はただの一般生徒だろうとなんだろうと……あなたの名前には意味があるんですよ」 丁奉の言葉に彼女はゆったりろ振り返る。 その顔は不思議なものでも見るような表情が浮かんでいる。 「私の名前に意味?」 ……蒼天章なんてすでにないのに、わずらわしいことね。 苦笑を浮かべる彼女。 「有名税ってやつですよ、毋丘倹先輩」 丁奉の言葉に彼女……毋丘倹は苦笑を濃くする。 長湖部に身を寄せた文欽先輩はことあるごとに言っていた。 お前の剣は毋丘倹にははるかに及ばない、と。 同じく新陰流を使うものとして毋丘倹という名前は知っていた。 ……私よりも強いのならなぜそうそうにリタイアなどするのか。 私はまだ、ここにいる! 文欽先輩の言葉はただの身内贔屓だろう。 毋丘倹先輩は弱いから、弱いからリタイアすることになったのだ。 弱いから……リタイア…… 私の脳裏に誰よりも強くて、でも病気を押して戦場に立ち……私を生かして自分はリタイアした人の姿が浮かんだ。 爪を噛む。強く。強く。 私はその人よりも強いことを証明しなければならなかった。 「それで私にどうしろっていうのかしら。私もそろそろ帰って受験勉強でもしたいんだけど」 困ったように毋丘倹は首をかしげる。 受験勉強……あまりにも眼前の戦場にそぐわない単語に丁奉はあきれたような顔をする。 「勉強もせずに、こんなところにいていいんですか、先輩」 「そう。そうね……」 丁奉の嫌味に、しかし毋丘倹は再び戦場に目を向ける。 「これが……蒼天会3年生の最後の光だからね。私もあの中にいた人間として看取ってあげなきゃいけない」
881:北畠蒼陽 2006/02/27(月) 05:26 [nworo@hotmail.com] 戦場を眩しそうに見つめる毋丘倹に丁奉は黙り込み……そしてやがて口を開く。 「……るだけですか?」 「ん?」 聞き取れなかった毋丘倹が顔を丁奉に向ける。 「看取るだけですか!? それじゃああんたはただの弱虫だ!」 戦ってる仲間がすぐ傍にいるのに……力があるのに助けようともしない。 ただ見ているだけ! 「私はすでにリタイアした身よ」 苦笑を浮かべる毋丘倹。 「……まぁ、それでもあなたが言うように出ていきたくなるわ。手を差し伸べたい。助けたい」 毋丘倹は言葉を切り……そして再び戦場を眺める。 「でも絶対に助けない。私がいないことを前提で全力で戦ってる親友を侮辱することになる」 「……理解できません」 丁奉の呟きに毋丘倹は肩をすくめる。 「別に理解する必要なんてないわ。考えずに感じろ、なんていうつもりもない。ただそんなもんなんだ、って思っておけばいいわ。さて……」 毋丘倹はゆっくりと丁奉に体を向ける。 「あなたは誰? そして私になんの用かしら?」 なんの用……そんなことなどわかりきっているのだろう。 冬の朝の空のように澄み切った純粋な闘気が風のように丁奉に向かって吹きつける。 これが……これが在校生最強の新陰流の使い手か…… 額を汗がつたうのを感じる。 「長湖部虎威主将、丁奉、です」 「あぁ……あなたが、あの……」 眉をぴくんと上げる毋丘倹。 「蒼天章を返上した人間にもケンカを売られれば買う権利くらいはあるのを知ってるわよね?」 「えぇ、そのために売ってますから」 丁奉の答えに納得した表情の毋丘倹。そして…… 「!?」 毋丘倹がすばやく太刀を振りぬき、丁奉の右手首を打ち抜く。 丁奉は2歩下がり木刀を構え臨戦態勢に…… 毋丘倹先輩は太刀など最初から持っていただろうか? 毋丘倹は最初となにも変わらずポケットに手を入れたまま、そこに立っていた。 「ただのフェイントだから気にしなくていいわよ」 かといってなにも反応されなかったら悲しいものがあるけどね……そういいながら苦笑する毋丘倹。 反応しないでいられるものか。あんなに純粋な殺気をフェイントに使うなんて。 しかし丁奉は顔に笑みを浮かべる。 これだ。 こいつに勝ってこそ私は今よりも強くなれる。 「先輩のエモノがないですね。どうしましょう?」 構えを崩さず、また呼吸を精一杯に落ち着かせながら丁奉は毋丘倹に尋ねる。 「あぁ、いらないわ」 毋丘倹は気軽に答えた。
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