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945:韓芳2006/08/18(金) 01:40
咲かぬ花
  第2章 終焉への道

「ここを曲がれば呂布様の部屋だけど・・・あ、いた!」
高順はすでに呂布の部屋の前に居た。
魏続が駆け寄ってみると、彼女はうっすら汗をかいていた。
「すごい汗・・・急に走ってバテたんでしょ〜?もう歳かな〜?」
いつもの様にからかってみせる。
いつもならここで厳しいつっこみがあるはずだった。
「・・・」
だが無言だった。元々口数は少ないが、それでも普通なら返答くらいはする人である。
それほどまで高順は緊張していたのだ。
「ちょっと〜、無視しないでよ〜。緊張してるのは分かるけど、そんなにガチガチじゃ話したいことも話せなくなるよ?」
「・・・すまない」
高順はそれだけ言うと、ふっと一瞬だけ笑ってみせた。
そして静かにノックをした。ノックの音が廊下に響いた様に感じた。
「どうぞ〜。」
と、呂布の声。高順の頬を汗がつたう。
(大丈夫かな〜?・・・まあ仕方ないか)
「ま、私もついていくからリラックスリラックス♪」
高順はその言葉を聞いて面食らったようだったが、小さな声で
「ありがとう。」
と言うと、呂布の部屋へと入っていった。

部屋にはすでに先客が居た。
「候成に宋憲に陳宮・・・どうしたの?」
「多分、魏続と・・・高順様と同じ。」
宋憲は言った。
宋憲の瞳の奥には何かが見えた。
陳宮が静かに切り出した。
「では、始めましょうか。」
「始めるって・・・」
魏続はそれ以上言葉が続かなかった。仮に出たとしても声にはならなかっただろう。
それほどに、この部屋の空気が重苦しくなったのだ。
その中には殺気も混じっている。

数秒間沈黙が続いたが、実際には数時間ほどに感じられた。
この重苦しい中、呂布が口をあけた。
「みんなが集まった理由は分かってるわ。何故作戦を中止したか・・・でしょう?」
表情を一切変えず呂布は続けた。
「ここで1番偉いのは私・・・そしてすべての決定権もある・・・。けど、あんたたちは私の決定に疑問を持ち、そして抗議しに来た。下手をすればどうなるか、分かっているんだよね?」
ゆっくりした話し方だったが、その溢れんばかりの殺気に、皆息を呑んだ。
「分かっています。ですが、私も軍師としての決定権はあるはずですが?」
陳宮が言い放った。呂布は睨むように見ている。
「わ、私達には、呂布様が誤った道に進まない様、意見する権利があります。」
高順が緊張で声を震わせながら言った。
それに合わせたかのように陳宮が切り出した。

「呂布様、何故作戦を中止にしたのですか?このままではどうなるかお分かりにならないのですか?」
「悔しいけど、奴らの方が知略は上・・・きっと作戦も見破られる。それなら、守りを固めて袁術を待ったほうがましよ。」
「お言葉ですが、袁術が我らの為に動くとは考えられません。それに、いくら知略が上とはいえ策は誰でもかかってしまいます。それが策の恐ろしさです。呂布様はそれさえもお分かりにならないのですか?」
「な・・・に?」
もはや一触即発の状態である。
呂布と陳宮は、お互い睨み合ったまま動かない。
「と、とにかく落ち着いてください、ね?」
候成が慌てて言った。
「呂布様も少し落ち着いてください。そんなに頭に血が上ると、それこそ奴らに・・・」
「奴らに・・・何?奴らに負けるとでも言うの?」
候成が失言に気が付いたときにはもう遅かった。
「候成、あなた私が負けると、そう思ってたのね。信じられない・・・」
「そ、そんなことはありません!私はただ・・・」
「言い訳無用!」
「!!」
「・・・大丈夫?」
呂布の鉄拳を寸前のところで高順が止めていた。
候成は半泣き状態である。
「呂布様!何も殴らずとも・・・」
「うるさい!私は最強!誰にも負けはしない!弱音を吐くやつなんか、階級章置いて出て行きなさい!」
「なっ・・・」
呂布は、もはや手がつけられない状態である。
候成は無言で部屋を後にした。階級章は置いては行かなかった。
「候成!・・・失礼しました!」
魏続と宋憲が後を追った。
少し間を置いて、
「・・・一人にして。」
呂布がぽつりと言った。
陳宮と高順は無言で自分の部屋へと戻っていった。

ふと呂布は窓の外を見た。
曇っているのか、真っ暗で星は見えなかった。
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