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★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★
947:弐師2006/08/26(土) 15:28AAS
会議が終わったあと、もう既に薄暗くなってきている自分の部屋で、伯珪は一人鏡の前に立ちつくしていた。
そして、その手には、ナイフ。
仄かな夕日を反射する鏡に映し出される彼女の顔は、喪失感と憎悪に支配されていた。
彼女はその長く美しい髪を肩のあたりで無造作につかみ、一気にナイフで切り取った。
ぶつ、という音を残してそれまで彼女の一部であったそれは、もうただの物でしか無くなった。
髪の短くなったその姿は、彼女の妹――――――越の様だった。
左手につかんだままの髪の束から、はらりはらりと髪の毛が落ちていく。
伯珪には、それが今まで自分が守れずに、手のひらからこぼれ落ちていった物達のように見えた。
それを彼女は無造作にゴミ箱へと投げ込む。
その目には、感情が宿っているようには見えなかった。
髪と一緒に、感情まで切り取ってしまったかのような、復讐しか考えていない、何を犠牲にすることも厭わない鬼の瞳――――――――――――
これで、もう忘れない。
鏡を見るたびに思い出すだろう。
この髪に、刻み込んだから。
――――――――――――憎悪と、自らへの怒りを。
そう思った。
――――――――――――そう願った。
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