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114:郭攸長若@凡ミス 2003/01/13(月) 23:24 [azumaio@hotmail.com] ■信念と迷い 黄巾事件は終わった。 だが、蒼天学園を取り巻く動乱は既に収拾不可能な所まで来ていた。 黄巾事件の収拾に貢献し、その名声を学園中に轟かせた少女・皇甫嵩。 終わりを知らぬかのように思えるその動乱に、彼女は一人思いを馳せていた。 コンコン。 部屋の戸が叩かれる音、気が付けば時間は夜の九時を回っていた。 「先輩・・・私、閻忠です。ちょっとお話宜しいですか?」 「閻忠か・・・あぁ、入れ」 不機嫌なようにも思えるぶっきらぼうな態度、彼女にとっては普通であった。 後輩である閻忠もそれを知っているからこそ、何も言わずに扉を開けた。 「失礼します・・・」 閻忠は靴を脱いで部屋に上がった。 どこか真剣な面持ちだがそれは彼女とて同じこと・・・いや、もしかして閻忠も同じようにこの動乱に思いを馳せていたのかもしれない、彼女はふとそんなことを思った。 「何か飲むか?」 「いえ、すぐお暇しますのでお構いなく・・・」 僅かな沈黙の末、閻忠が口を開いた。 「先輩、チャンスってとても貴重な物なんですよ」 唐突な話だった。 閻忠という少女は唐突に話を切り出す節がある。 だから彼女もそれを心得ていた。 だがそれにしても、今までにない唐突な切り出し方である。 困惑する彼女をよそに閻忠は言葉を続けた。 「この学園をリードしてきた人達は皆、チャンスを上手く掴んだからこそそれが出来たんです。どうして先輩は、こんなチャンスを前にしながらそれを掴もうとしないんですか?」 「どういうことだ・・・?」 閻忠のかつてない勢いに押されながらも、彼女は口を開いた。 閻忠は言葉を続けた。 「この学園をリードするのに地位なんて関係ありません。先輩のような功績を挙げられる人が、あんな生徒会長のような能無しの下にいるなんてあってはならないことです! 先輩の威光は生徒会中に広がり、学園の外にまで聞こえ渡っています。多くの生徒達が先輩に注目し、先輩の為に尽くそうといきり立っているんです。それなのにあんな会長の下にいて、どうやって無事に学園生活を終えることが出来るんですか!」 閻忠の声は、興奮で高ぶっていた。 「私は生徒会に付いて行くと決めた人間、その心を忘れることはない。なのに何故そんな事を言う・・・!」 彼女は高ぶる感情を抑えて言い返した。 それに対し、閻忠もまた言い返す。 「それは違います! 昔、韓信先生は劉邦先生から受けたもてなしを裏切ることができず、蒯通先輩の言葉を拒否して、旧蒼天学園の勢力を三分するチャンスをむざむざと見逃しました。今、生徒会の勢いは当時の劉邦先生や項羽先生より弱く、先輩の力は韓信先生よりもずっと強大です。ですから先輩が立ち上がれば風雲のような勢いを巻き起こすことができるんです。学園中をまとめ上げ、生徒会を掌握し、蒼天会を押しのけて先輩が学園トップの座に就くこと、これこそチャンスを生かす最高の決断です! 先輩のような聡明な人が事態を見極めず、チャンスに先手を打たなければ、必ず後悔することになるはずです。それではもう手遅れなんですよ!」 感情を抑えず、精一杯力説した閻忠は息を切らしていた。 「先輩・・・」 彼女の目は真剣であった。 しかし彼女は何も言わない、ただその真剣な眼差しを閻忠に向けているだけだった。 「し、失礼しました!」 居たたまれなくなった様子で、閻忠は部屋を出て行った。 そして閻忠が部屋を出て行った後・・・。 「私がそんなことをしたって、学園は変わらない・・・いや、変われないさ・・・」 彼女は一人呟いていた、自分に言い聞かせるようにして。
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