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★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★
17:玉川雄一 2002/02/11(月) 03:53 ■まじかる☆イリュージョン■ 辺境の微動か、京師を揺るがす激震か。 帰宅部連合実働部隊総帥・諸葛亮が企図する北伐の成否は、 ある辺鄙な校舎の去就に懸かっていた。 荊州校区新城棟。現在この棟を預かるのは孟達、子敬。 かつては帰宅部連合に所属しながら、故あって生徒会に身を投じていた。 彼女は当初こそ新蒼天会長となった曹丕の覚えめでたく、 破格とすら言える待遇を受けてきた。 しかし、得てしてこの類の栄達は凋落も早い。 曹丕の早すぎる引退と共に、孟達の立場も微妙になっていた。 そこへかつての僚友、李厳の私信に続いて、 諸葛亮から誘いの手が差し伸べられたのである。 曰く、 近々帰宅部連合は生徒会への行動を開始する。 ついては貴方も旧に復し、我々と共に生徒会打倒を図って欲しい。 我々は漢中アスレチックより雍州校区を目指す予定であり、 貴方には荊州校区より司州棟を突いてもらいたい。 これが成就すればかならずや生徒会に痛撃を与えることができる。 その時は、貴方も安心して帰参が叶うはずだ、と。 …ちなみに、引き続いて“同人誌界の支配者”だの、 “世界征服”だのといった意味不明な文言も見られたが、 その部分は孟達には今ひとつ意味が図りかねたのである。 それはさておき、孟達の心は確かに揺れ動いた。 しかし、事態は彼女の予想をはるかに超えて滑り出す。 諸葛亮は、意図的にこの情報をリークしたのである。 新城棟に隣接する魏興棟主・申儀は孟達と折り合い悪く、 彼女を通して、「孟達に不審の儀あり」との報が密かに走った。 孟達はそれを伝え聞き、とうとう腹をくくったのである。 とはいえ改めて考えるに、この計画は余りに魅力的だった。 彼女の預かる新城棟は荊州校区の西北端にあり、 現在は漢中アスレチック方面への備えの役目を果たしていた。 しかし、この刃が翻されれば… 荊州校区北部を一気に突破し、 現在生徒会が置かれている洛陽棟を直撃することが可能だった。 だが、一にも二にも、この作戦には迅速な行動が不可欠である。 いかな予想外の造反とはいえ、生徒会の対応より早く事を運ぶ必要がある。 孟達の要請受諾の連絡に折り返し、諸葛亮はくどいほど念を押していた。 だが、孟達はこの件について何故か楽観的だった。 悠々と決起の時を図っていたのである。 そこへ、生徒会側から孟達を慰撫する手が打たれた。 曰く、 貴方は劉備を棄て、生徒会に身を投じた。 生徒会は貴方に要地を委ねており、 また益州校区の生徒達は貴方のことを恨んでいるだろう。 諸葛亮の企みなど成功するはずがない… 孟達はこれを聞いてすっかり安心し、諸葛亮の度重なる督促にも耳を貸さなかった。 生徒会は油断しきっている。我々が本当に背くとは思ってはいまい。 この計画は必ず成功する、そのはずだった…
18:玉川雄一 2002/02/11(月) 04:00 「そ、それが…なんでこんな事になるのよ!」 急報を受けて、棟長室から窓下を見下ろした孟達は我が目を疑った。 新城棟を取り巻くように、生徒会の実働部隊が布陣していたのである。 一面に広がる女生徒の群の中に何故か古風に翻る旗。 それには「司馬」と記されていた。生徒会驃騎将軍(仮称)・司馬懿、仲達。 孟達が進撃するはずだったルートの途上、宛棟にあって、 荊、予二校区の威力行動を司る少女である。 孟達の楽観は、いかに成功を期された今回の状況下とはいえ、 ある意味では仕方のないことだったのかもしれない。 原則として、大規模な威力行動は生徒会の承認を必要としていた。 …もちろん、学園内でも生徒会の勢力下においてのみ通用するルールだったが。 宛棟から司州校区の洛陽棟まで出動許可を得るのに1時間… ネットワーク環境の整った学内(ただし携帯電話等は使用不能)とはいえ、 この類の手続きはアナログ方式というのが不文律である。 生徒会は自分を疑っていないことは先の報せからも明らかであり、 この1時間の空隙があれば有利に状況を展開できる。 そう考えるのも無理はないだろう。 だが、彼女の敵はそのような枠には囚われなかったのである… 孟達の叛意を伝え聞き、司馬懿の部下達は口を揃えて様子見を進言した。 だが、彼女は躊躇わず、独断で動員をかけたのだった。 そして密かに宛棟を進発、急行して新城棟を囲んだのである。 「アタシが事を起こして20分、あいつらはもうここまで来てる… まるで、神速じゃない…」 −異聞によれば、この時生徒会側には剣道部の俊英、徐晃が参加していた。 孟達はなお力戦し、徐晃を昏倒させたというが… 当時の記録によればこの時すでに徐晃は現役を退いており、 この説は帰宅部連合贔屓の何者かが孟達にせめて華を持たせようとした、 虚構であるとされている。 学園史を編纂した陳寿も、それに異聞を註釈したハイショーシ君も、 この説は黙殺している… 司馬懿麾下の生徒達は、勇躍新城棟に殺到した。 孟達も果敢に抵抗するも、麾下の搆ォ、李輔は昇降口から投降。 孟達自身も捕らえられ、司馬懿の前に引き出された。 「……………」 孟達とて、敗れたりとはいえひとかどの少女である。 乱れた髪はそのままに、やや細くつり上がった目で司馬懿の顔を睨み付けた。 司馬懿はそれが常のように冷然と孟達を見下ろしていたが、 やがてポツリとつぶやいた。 「戦いは…決断と瞬発が肝心…それが判らないあなたは、蒼天会には必要ない…」 それきり、プイと身を背けて歩き出したのだった。 無念そうにうなだれた孟達の制服に生徒会執行部員の手が掛けられ、 階級章が剥奪される。こうして、新城の叛乱は潰えた。 諸葛亮が送り込んだ増援も生徒会に投降し、 彼女の雄図はその根本において挫折することになったのである。 −それでもなお、諸葛亮の北進は続行された。 だが、生徒会にとってはある意味予想外な、 弱小部の思わぬ攻勢がさらに想像を超えた状況を作り出す。 新星の輝きが更なるドラマを生み、学園史を飾ることになるのだが… それはまたいずれ語られることとなるだろう。 今はまだ、諸葛亮の前に司馬懿という存在が立ちはだかる、 その予兆が見え始めただけだった。 ■続く…のか?■
19:玉川雄一 2002/02/11(月) 04:03 ああん、ダブルで省略… 3分割すれば良かったか。 何だか内容の割にタイトルが浮きまくってる気もしますが(^_^;) そう、このシリーズ(?)の主人公は司馬懿だったんですね〜。 っていうか続くの? しかし、「将軍」っていう名称の問題、解決しませんかねえ…
20:三国狗 2002/02/11(月) 22:48 ん〜、どれも面白い。 小ネタとして終わらすのは何か勿体ないくらいです。 特に「親睦会」、もう笑いっ放しでしたよ。 こういうの、自分でも書けたらイイなあ・・・。
21:★ぐっこ 2002/02/12(火) 00:37 [sage] おお〜っ! 司馬懿VS孟達がとうとうテキスト化されたですね!? 司馬懿のなんぞそれ神速なる! 司馬懿のセリフがまたカコイイ! しかしタイトルが「まじかる☆イリュージョン」(¨;)…このギャップがたまりません。 密かに戦死してそうな徐晃の注釈が泣かせます…。
22:玉川雄一 2002/02/12(火) 01:06 [sage] それでも見直すと直したいところがあって鬱ですな。 ま、何かの機会にでも… そうそう、参考にしたのは晋書宣帝紀とぐっこさんに頂いた北伐小説(のそれぞれ当該部分)です。 実は北伐小説で確認するまで、晋書宣帝紀を思いっきし誤解釈してました(-_-;) ぐっこさんアリガト〜<(_ _)> …さすがにタイトルは誤ったやもしれぬ(-_-;)
23:ジーク 2002/02/12(火) 20:39 [sage] う〜ん、最後の司馬懿の台詞が渋いっス! 将軍……棟長とか? …なにか違う。 班長(;^^A…地区長(自治会みたいだ…)…隊長…司令…荊州方面軍団長…軍曹(←!?) ありそうで良い名前無いものですね(汗) 最後のほうは何故に軍隊に…
24:★ぐっこ 2002/02/14(木) 23:40 2月14日―― 2月14日である。 すなわち世で言うところのバレンタイン・デイ! …そもそもこのバレンタインデーとは、若者達に恋の美しさを語り続け、それ故に時のローマ皇帝 クラウディウスII世(在位268-270)によって処刑された、聖ヴァレンティヌスの悲劇に由来する。 恋人の守護者・聖ヴァレンティヌスの名を冠したこの日、ある国では男→女の本命貢物合戦、 ある国では女→男のチョコレート商戦が繰り広げられるのだ。 ……そして、この蒼天学園では―― 「なあ張飛、何で何回焼いても焦げ付いてまうんやろ!?」 「もうちょっとミルク足したらどうやろか?」 「あかんあかん。また端の方が変な色になる!」 さして広くない寮のキッチンを、バタバタと二人の少女が右往左往している。 この日――バレンタインデーは、彼女らにとっても特別な一日であった。 「女子校なのに何で?」 などと言う次元ではない。女子しか居ないというこの密閉された世界に於いてこそ、この種の イベントは果てなくヒートアップするのだ。 まして二月中旬というと、ちょうど学年末テストも終了し、長い春休みに入る直前の期間である。 日頃まじめに単位を取っている連中なら、もう四月までほとんど授業がないという状態が普通だ。 何でもお祭りにしてしまう蒼天学園が、こんなイベントを放っておくはずがない。 「あっ!また焦げはじめてる!真ん中の方は溶けてもないのに!」 「下手くそ! 俺に貸せよ!」 フライパンを取り合う。半液状のチョコが飛び散る。もう周りは無茶苦茶であった。 「だから言っただろ!素直に製品モノ買っておけって!」 「せやかて、曹操が関さんに手作りの本命渡すって、わざわざ言いに来たんやで!これは挑戦や!」 「だったらせめて前日までに仕上げろ!」 ギャアギャア言いながら、二人は次々と買い置きしていたチョコ材料(二〇〇〇円相当)を フライパンへザラザラと流し込む。 一瞬、チョコレートの芳香が漂い、数秒後には胸が悪くなるような脂の臭いが取って代わった。 「なんでや! あり得へん!」 「あるやないかい!」 不毛な罵声を浴びせ合いながら、二人のドタバタはまだまだ続きそうだった……
25:★ぐっこ 2002/02/14(木) 23:41 ――その頃。 当の関羽は、常山神社に居た。 正確に言えば、逃げ込んでいた。もう、学園に彼女の居場所は無いのである。 「正直、今日ばかりは困った……」 大鳥居の基石に呆然と腰掛け、関羽は呟いていた。 杜は、相変わらずシンとしている。時刻は午前10時を回った頃で、穏やかな冬の朝だ。 ――傍らでは、巫女服に身を包んだ趙雲がせっせと箒を動かしている。 「ふつう、女→女という発想はないよな…」 と、関羽。彼女は生徒会に身を置いていた頃、あまりに目立ちすぎたのか、全校生徒から露骨な 「本命狙い」のターゲットにされているのだ。 下駄箱を開けた瞬間、明らかに下駄箱の容積をオーバーしていると思われる量のチョコが、彼女の 足もと(※彼女の下駄箱は一番下段です)からあふれ出た。彼女の上履きはもはや見る影もない。 そして、廊下の辻辻、階段の踊り場、あらゆる教室の入り口に、意を決した表情でチョコを抱いて 待ちかまえている少女達…。これが男なら本懐というべきだが、関羽のようなノリの少女にとって、 もはや地獄であった。 …で、とにかく目立たないように学園を逃げ回り、なんとか常山神社へ逃げ込んだ、というところ である。 「私はダメだ…ああいうのは」 心底疲れているらしい関羽、ぐったりと鳥居にもたれかかった。 「はい、どうぞ」 趙雲、いつのまにか厨から、盆に小綺麗な茶碗と茶菓子を乗せて持ってきている。茶碗をとると、 上品な香が立った。 「ああ、ありがとう」 趙雲も関羽の隣に腰掛けると、自分の茶碗を取り、ニッコリ微笑んだ。 「先輩はああいうのお嫌いでしょうけど、私は結構好きですよ」 「意外だな…」 「だって、今年はチョコをあげたい人がいるから…」 「何!?」 関羽は心底びっくりした表情で、この常山流薙刀術の達人を見遣った。 趙雲、べつだん悪びれる様子もなく、悪戯っぽく笑った。 「阿斗ちゃんですよ」 「ああ、なんだ…」 露骨にホッとした顔で、関羽はお茶をすすった。趙雲の阿斗ちゃん好きは有名であった。 「阿斗ちゃん、甘いもの好きだから喜ぶだろうなー。もう昨日から作ってるんです。あ、もちろん 先輩の分も」 「わ、私は要らないよ…」 「そんなに身構えないでください。こっちが照れるじゃないですか」 関羽の様子に苦笑する趙雲。ちょっと他では見られない状況であった。 「友チョコっていって、普通に女の子がチョコを交換してるんですよ。本命義理抜きで。それに…」 「それに?」 「もう、先輩、私のつくったチョコレートたべてます」 「あ…」 出された茶菓子。和菓子風に甘餅に包まれていて気付かなかったが、確かにチョコの味が口に 残っている。 「これで先輩も仲間ですよ。このお祭りの」 「………」 関羽が何か言おうと、口を開けたその瞬間―― 「いた――っ >>関羽タン――っ! ハァハァ」 黒い人だかりが、もの凄い勢いで石階段を駆け上がって来るのが見えた。
26:★ぐっこ 2002/02/14(木) 23:42 そのナゾの集団が趙雲の前を通過する頃には、関羽の姿はもうどこにも無かった。 「>>関羽タン――ッ! ハァハァ…!」 口々に奇声を発しながら、彼女らは関羽の姿を求めて離合集散を繰り返し、それでもまとまった 集団を保ったまま常山神社の杜を去っていった。 「……何、あれ?」 趙雲が知らないのも無理もないが、彼女らは「羽厨(ウチュウ)」と呼ばれる連中で、巨大匿名掲示板 「Gちゃんねる」に突如発生した、ナゾの暴走集団であった。ひたすら関羽を追いかけるらしい。 さしあたって趙雲の身に危害は加えられなかったが、去り際にひとりが集団を抜け出して、 「巫女タン…ハァハァ」と呟くのをハッキリ耳にしてしまった彼女は、限りない不安に駆られたという。 「――チョコの要はココロやっ!そうやな、張飛!」 「いや、味だろ」 重々しく呟く張飛の顔に、劉備は無言でチョコ生地をべしゃっと叩き込んだ。 「ええい、燕雀にはウチの志がわからん! とにかく、ハート形のが一個できたっ!…」 「このペースで行くと、予定個数つくるのにあと2週間かかるぜ」 口のところだけ穴をあけて、チョコ生地を貼り付けたままの張飛が毒づいている。 「ああもう!日が暮れてまうやんか!関さんが帰ってきてまうやんか!」 「俺に言われてもなー」 「どないしよ、もう曹操が手ぇ出してるころやないか!」 …劉備の想像は当たっていた。 生徒会へ荊州校区の書類を提出にいった関羽は、曹操においしいお茶をごちそうになっていた。 「ね、おいしい?」 「はい…」 曹操の無邪気な問いに、関羽は素直にうなずいた。実際、おいしいのだ。 控えめな青を基調にしたチャイナボーンのセットに、高価な紅茶、曹操お手製のチョコ・ババロアが 乗せられている。 それに、学園の制服の上からメイドが着るような白いエプロン(※萌えポイント)を付けて、 くるくるとお茶の用意をして回る曹操は、関羽が思わずぽーとなるほどに可憐であった。 夕刻を過ぎている。冀州校区にある生徒会施設の中の、品のいいラウンジに、客は関羽と曹操の姿が あるのみだった。 「――ところでさ、関羽」 ふいに、曹操が関羽の向かいに腰掛けた。 「想像はついてるだろうけど、生徒会に戻るつもりはない?」 「……ありません。帰宅部連合は、貧乏所帯ですけど、楽しいところですから」 ここに招かれたときから、こういう話になることは予想がついていた。が、曹操は食い下がる。 「あれだけの才能の集団が、学園から一銭も部費が出ないなんて、おかしいと思わない?」 「会長が出してくださらないだけの話です」 関羽が、なるべく失礼にならない程度に冷淡な答えを返すと、曹操はニッコリ微笑んだ。 「本当にそう思う?」 黄昏の残照が逆光になって、曹操の顔はよく見えない。でも、その奥の双眸が、怪しいくらいに 鋭く輝いているのが、関羽には見てとれた。 「豊富な資金が有れば、帰宅部連合のみんなも、もっともっと、好きなこと、やりたいことが出来る。 もっともっと、才能が伸ばせる。そうだよね?」 「…………」 「そうしてあげた方が、帰宅部連合みんなのためだよね…?」 「……」 「簡単だよ。私がひとこと、出す、っていうだけで。……この意味わかるよね?」 要するに関羽が生徒会に戻れば、帰宅部連合に部費を出す、という脅迫だった。 大人しいが剛毅な関羽である。普通ならこの種の脅迫を受けるや、相手構わずはり倒している ところだろう。 が、その相手が悪い。静かに関羽の顔を覗き込んでいる曹操には、関羽の上体をテーブルに貼り付 けるだけの迫力がある。 それに、曹操が言うことも一理ある。 帰宅部連合と通称されるような集団だが、本来は一国一城も堅いほどの俊傑ぞろい。まともに部活 を続けていたら金メダルも軽いのではないか、というくらいの連中が、首領の劉備が反生徒会運動を 続けている、というだけの理由で流浪の集団になっている。 劉備と、自分たちのわがままで…このまま彼女たちの未来の可能性を摘み取っていいのか…? …………。
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