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★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★
18:玉川雄一2002/02/11(月) 04:00
「そ、それが…なんでこんな事になるのよ!」
急報を受けて、棟長室から窓下を見下ろした孟達は我が目を疑った。
新城棟を取り巻くように、生徒会の実働部隊が布陣していたのである。
一面に広がる女生徒の群の中に何故か古風に翻る旗。
それには「司馬」と記されていた。生徒会驃騎将軍(仮称)・司馬懿、仲達。
孟達が進撃するはずだったルートの途上、宛棟にあって、
荊、予二校区の威力行動を司る少女である。
孟達の楽観は、いかに成功を期された今回の状況下とはいえ、
ある意味では仕方のないことだったのかもしれない。
原則として、大規模な威力行動は生徒会の承認を必要としていた。
…もちろん、学園内でも生徒会の勢力下においてのみ通用するルールだったが。
宛棟から司州校区の洛陽棟まで出動許可を得るのに1時間…
ネットワーク環境の整った学内(ただし携帯電話等は使用不能)とはいえ、
この類の手続きはアナログ方式というのが不文律である。
生徒会は自分を疑っていないことは先の報せからも明らかであり、
この1時間の空隙があれば有利に状況を展開できる。
そう考えるのも無理はないだろう。
だが、彼女の敵はそのような枠には囚われなかったのである…
孟達の叛意を伝え聞き、司馬懿の部下達は口を揃えて様子見を進言した。
だが、彼女は躊躇わず、独断で動員をかけたのだった。
そして密かに宛棟を進発、急行して新城棟を囲んだのである。
「アタシが事を起こして20分、あいつらはもうここまで来てる…
まるで、神速じゃない…」
−異聞によれば、この時生徒会側には剣道部の俊英、徐晃が参加していた。
孟達はなお力戦し、徐晃を昏倒させたというが…
当時の記録によればこの時すでに徐晃は現役を退いており、
この説は帰宅部連合贔屓の何者かが孟達にせめて華を持たせようとした、
虚構であるとされている。
学園史を編纂した陳寿も、それに異聞を註釈したハイショーシ君も、
この説は黙殺している…
司馬懿麾下の生徒達は、勇躍新城棟に殺到した。
孟達も果敢に抵抗するも、麾下の搆ォ、李輔は昇降口から投降。
孟達自身も捕らえられ、司馬懿の前に引き出された。
「……………」
孟達とて、敗れたりとはいえひとかどの少女である。
乱れた髪はそのままに、やや細くつり上がった目で司馬懿の顔を睨み付けた。
司馬懿はそれが常のように冷然と孟達を見下ろしていたが、
やがてポツリとつぶやいた。
「戦いは…決断と瞬発が肝心…それが判らないあなたは、蒼天会には必要ない…」
それきり、プイと身を背けて歩き出したのだった。
無念そうにうなだれた孟達の制服に生徒会執行部員の手が掛けられ、
階級章が剥奪される。こうして、新城の叛乱は潰えた。
諸葛亮が送り込んだ増援も生徒会に投降し、
彼女の雄図はその根本において挫折することになったのである。
−それでもなお、諸葛亮の北進は続行された。
だが、生徒会にとってはある意味予想外な、
弱小部の思わぬ攻勢がさらに想像を超えた状況を作り出す。
新星の輝きが更なるドラマを生み、学園史を飾ることになるのだが…
それはまたいずれ語られることとなるだろう。
今はまだ、諸葛亮の前に司馬懿という存在が立ちはだかる、
その予兆が見え始めただけだった。
■続く…のか?■
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