下
★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★
211:彩鳳 2003/02/24(月) 09:24 >教授様 曹操サイドからの卒業式ですね。 郭嘉と共にある曹操・・・ BGMは「炎のたからもの」が似合いそうですね。 (「カリオストロの城」で使われた曲です。ご存知ない方は、下記アドレスを) http://www.biwa.ne.jp/~masayo-i/jmidi.html >雪月華様 そういえば、曹操も持病持ちでしたっけ(‐‐; あちこち忙しい人って、何と言うのか、自分のことを省みない人が多くいますからね・・・ >ぐっこ様 司馬徽は先輩案はありましたっけ?私もこのサイトに来て一年経ちましたが 知らない事がまだまだ多い様ですね・・・。(では済まされないかも(^^;;; >アサハル様 郭嘉はそうですね、自分に残された時間が無いのを知っていたからこそ 敢えてハードな仕事もこなしたんじゃないか、なんて思いますね・・・。
212:教授 2003/02/24(月) 23:15 彩鳳様> 郭嘉と共にある曹操のBGM…イイ!! これを書いてる時は自作のバラードを聴いてましたが…『炎のたからもの』は完全にマッチしてます! 卒業シリーズは全部で10部構成の予定。 その一つ一つにBGMを考えたらキリがなさそうだ…。
213:★ぐっこ 2003/02/25(火) 23:32 >アサハル様 うが━━━━━━━━━━━━っ!!!! 郭嘉が…郭嘉が…っ うわ、これむっちゃツボ! 自分の死をも他人事のように踏破しようとする 鬼謀の少女の生き様が…。何かで絶対に使おう…・゚・(ノД`)・゚・ >彩鳳様 司馬徽生徒説ですが…そういえばここの掲示板ではないかったような…(;^_^A こちらでは先生説が有力ですので、当然先生でオッケーであります! そして、カリオストロの城のBGMですか〜。確かにしっくり合ってる…
214:教授 2003/03/03(月) 23:36 ■■卒業 〜法正の涙〜■■ 卒業式も滞りなく終わった。 周りには泣いてるコもたくさんいたけど…私には込み上げてくるものが何一つ無かった。 自分でも驚くくらい呆気なく感じられた。 卒業…まあ、勉学に関しては修めてるから卒業とは言えるだろうけど。 でも、何か納得できない。 満たされない…何かがまだあるの? 難解な迷路の何ランクも上の迷宮に迷い込んだみたい…。 答えは…何処? 「おーい、法正〜」 「ん…?」 コートを羽織り、教室を出たところで『酔いどれクイーン』こと、簡擁憲和に声を掛けられた。 いつも通りの元気そうな笑顔。 だけど、それも今日で見納めかしら。 「憲和、どうしたの?」 「一人で帰るの?」 一人で帰る? まあ…確かに誰かを誘うつもりもなかったし、お呼びが掛かってるわけでもないからね。 「そうね。一人で帰るつもりだったけど」 私の答えに憲和が首を傾げた。 「今日で最後なんだから、一人で帰るのは勿体無いぞ〜」 「…別に。今までとそう変わりはないわ…」 「さみしー事言わないように。友達甲斐のないセリフだからね、それ」 「友達…」 その単語に心の中で何かが揺れた…。 私を…友達だなんて…。 …何だろう、胸が…苦しい。 痛い程に締めつけられてる…。 それに…自分の鼓動が耳に届いてる…。 分からない…何でこんな事に…。 「ほーせー?」 「…憲和……っ! 何でもないよ」 心配そうに私を覗き込む憲和に我に返った。 でも…まだ症状は治まらない。 「何でもないって顔じゃないけどなー。っと、シチューとパシリが来た」 「卒業してもパシリ扱いってのも…」 私は苦笑いを浮かべ、憲和の見ている方に向き直る。 『お使い乾ちゃん』こと孫乾と『おじょーさま』ことビ竺のコンビが仲良く私達の元にやってきた。 と、早々に子仲がにこにこと微笑みながら口を開く。 「法正さん、一緒に打ち上げ行きませんか〜?」 「打ち上げって…私はやめとく…」 「何でよー」 憲和が抗議の声を上げる。 「…私が行っても…」 私はここで言葉を切った。 後には『楽しくなんかならないよ』って続くはずだったけど…。 三人に気を遣わせてしまいそうでイヤだった。 でも、それ以上に気になる事があった。 「それに、何で私を誘うの?」 私の言葉に三人がきょとんとした目を私に向けた。 な、何よ…その目は…。 「何でって…ねぇ?」 「うん、そうですね」 憲和と孫乾が互いを見合って頷き合う。 それにビ竺も加わった。 何か分からないけど…。 「あのね…法正さん」 孫乾が三人を代表して私に話し掛けてきた。 「何?」 「法正さんを誘うのって…友達だからなんですけど…」 「友達って…」 再び蘇る諸症状。 顔まで熱くなってきた…。 「え、えーと…友達って…、わ、私の事?」 な、何動揺してるのよ…。 「はあ? 法正以外の誰を指してると思うのよ」 憲和がさも当然のように答えを返してきた。 孫乾とビ竺も頷く。 「私が…友達…」 やっと…自分に納得いかなかった理由が分かった気がする。 私の事を…友達として見てる人がいなかった…。 いや、いないと思い込んでいた。 課外活動だけの仲間、友達未満の繋がり。 それだけ…ただ、それだけだと…ずっと思ってた。 でも…今、こうして目の前に私を友達と呼んでくれる人達がいる。 霞に隠れていた…もやもやしていた部分が見えてきた…。 「ほーせー♪」 「え…っ!」 憲和の声に顔を上げた途端、強烈な光が目に飛び込んできた。 「憲和…」 「へへー…法正の泣き顔ゲット♪」 「私の泣き顔って…あ…」 慌てて自分の頬に触れると、濡れた感触が伝わってくる。 「さぁて、法正の泣き顔も手に入れた事だし…行きますか!」 憲和が私の肩をぐいっと引き寄せ、そのまま歩き始めた。 「け、憲和〜…だから、近すぎるってば…」 「恥ずかしがる事ないじゃん」 悪戯っぽく笑う憲和。 「仲がいいですね」 「…喧嘩する程仲が良いと言いますし」 孫乾とビ竺もくすくすと微笑みながら、私達の後ろから付いて来る。 「全く…」 私は…無意識に自分の顔が綻んでいた事に気付いてはいなかった。 私達が校舎から出ると…そこには見た事もないような綺麗な光景が広がっていた。 「うわ…」 「綺麗…」 憲和と孫乾が感嘆の声を漏らす。 朝はまだ蕾だった桜が…今は大きく花を開き、文字通り咲き乱れていたのだ。 「早咲きの…桜ですか…」 ビ竺はそんな事を呟き、風に吹かれてきた桜の花弁を手に取る。 「私達の門出には…最高の祝福…だと思いませんか?」 にこりと微笑むビ竺。 その目尻には涙が滲んでいた。 私も目頭が熱くなるのを感じている。 孫乾は…溢れてるし、憲和は…潤んでる。 「卒業は別れじゃない…また…いつでも会えます」 「そうだね…。会えなくなるわけじゃないもんな」 ビ竺の言葉に感慨深く答える憲和。 答えてはいないが、私も孫乾もきっと憲和と同じ事を思ってるだろう。 と、憲和が何かに気が付いた。 「おっ、あそこにいるのは…玄徳とその妹達じゃん。合流しよっか?」 憲和の指差す先には…元総代達の姿が見えた。 私と…孫乾、ビ竺は顔を見合わせる。 「行こう!」 三人の声が重なった。 憲和はその答えに微笑みを返すと、そのまま駆け出した。 「私達も行こっ」 孫乾とビ竺は並んで走り始める。 私は…ゆらりひらりと舞う桜の流れを見上げていた。 「こんなにも心が軽くなったのは初めてだよ…ずっと、ずっと続いてほしい…」 心の中にあった本当の気持ちが素直に言葉に出来た。 もう少し早く気付いていれば良かったなぁ…。 ちょっと後悔。 「法正〜! 早くおいでよ〜!」 遠くの方から憲和が私を急かす。 「分かってる! そこで待っててよ!」 私は笑顔を向けると、親友のいる場所へと駆け出した。 きっと…心の底から笑っていられてるよね?
215:惟新 2003/03/04(火) 10:36 >岡本様 >広宗のG・P・M むむっ! 相変わらず圧倒させられる作品! こりゃガンパレやっときゃよかったなぁ… それなりに楽しんで読ませていただきましたが、それだけに何か悔しい(^_^;) >雪月華 >烏丸征伐反省会 あ、こんな所にも簡雍が(^_^;) ド迫力戦闘描写は岡本様に続く超新星のヨカーン! 今後とも大期待〜! >懊悩 ALSといえば、ホーキング博士も若くしてこの病にかかられたんでしたね… ああ、郭嘉…(ノД`) >教授様 >簡擁と張飛 〜こんな日常もたまにはね〜 うおっコミカルだっ! スカートめくられて慌てる張飛カワ(・∀・)イイ! >卒業 〜序章 曹操編〜 郭嘉がコンボでキタヨ…(ノД`) そうです。みんなで卒業するんですよ、ね… >卒業 〜法正の涙〜 ああ、ヨカタね法正…(T▽T) それにしても教授様、苦手とか言いながらシリアスでも良いものを書かれているじゃないですか! >アサハル様 郭嘉。・゚・(ノД`)・゚・。 近い終末を知りつつ、最期まで自分らしくあり続けた彼女。 そこには多くの苦悩や、恐怖があったことでしょう。 それを見事に一枚の絵で表現なされましたね… 余談ですが、自分の前途に絶望して地下鉄に火を放ち、多くの人を巻き添えに自殺を図る人だっているわけで。 願わくば、郭嘉のような、絶望に打ち克つ強さを… >彩鳳様 >雪道の交錯 三姉妹の心温まる冬の光景。 いいですな〜ほんわかぷーですよ〜 そしてここにも湧いて出た簡雍! もうすっかり簡雍ブームですな(^_^;) 続きが楽しみ…
216:雪月華 2003/03/05(水) 00:45 長湖部夏季強化合宿。 孫堅が提唱し、孫策が受けついだ、夏休み開始から1週間にわたって行われる長湖部名物行事であり、そのハードさは孫権が三代目部長に就任した今も衰えていない。そのスケジュールは、 6:00 起床・洗顔・身支度 6:30〜7:30 長湖南岸(10km)早朝ジョギング 7:30〜8:10 朝食&宿舎の掃除 8:15〜10:00 全員での基礎体力づくり (10分休憩) 10:10〜12:00 〃 12:00〜13:00 昼食・ミーティング 13:00〜15:00 各種目ごと練習 (10分休憩) 15:10〜17:30 〃 17:30〜18:00 全員での柔軟体操 18:00〜 自由時間(外食可) 21:00 門限(違反者は翌日、練習量2倍のペナルティが課せられる) 23:00 消灯 となる。 生徒会が荊州校区を席巻し、赤壁島の決戦が差し迫った今、イメチェンに成功した周瑜が部長の孫権の全権代理として総指揮にあたっている。脱落者、不適応者は容赦なく退部となるため、黄蓋ら3年生からは不評を買っていたが、その効果については異論のはさみようがなく、いわば実績が不満を押さえ込んでいた形であった。 …23:30 消灯時間は過ぎているが、いまだ眠る気配の無い一室がある。消灯といっても、3年生が一度各部屋を見回るだけで、それさえやり過ごせば後は結構自由な時間が持てる。 灯りを消し、なにやらボソボソと語り合う数人の気配。 魯粛、甘寧、凌統、呂蒙、蒋欽の長湖部問題児軍団に加え、陸遜、朱桓ら数名の1年生の姿も確認できる。話の内容は、怪談のようだ。修学旅行、合宿など、若い者同士の一夜の定番である。 「…つまりさ、いないはずの5人目がいたのよ。」 懐中電灯で顔を下から照らした魯粛が話を締めくくる。話をする者には懐中電灯が渡され、場を演出するために使用される。 「つまんねぇな。どっかで聞いたぜ。その話。」 「黙って聞きなよ。」 洗いざらしの金髪を無造作にタオルで包んだいわゆるタオラー状態の甘寧に凌統がつっこむ。 この二人、仲は悪いくせに不思議と隣り合って座ってしまう。教室でも、食堂でも、練習でもシャワー室でも。 「次は、えーと、一年生の君。」 「はいっ!任せてください、とっておきがあるんですから!」 仕切り役の呂蒙に指名を受けたのは朱桓休穆。部長の孫権の同級生で、スポーツ万能で学業成績もいい。性格も思い切りがよく、長湖部期待の新星の一人である。 「これは、人に聞いた話じゃなくて私が実際に体験したことなんです…」 「私が小学校4年の頃、母が風邪をこじらせて入院したので父はお手伝いさんを雇ったんです。Aさん、としておきますね。外国の方らしいのですが、日本語が堪能で、仕事も速く、正確なので父はとても気に入ってたんです。」 「外国っていうと、東南アジアあたりか?」 「タイ人だとAさんは言っていましたが…なぜか、うちの飼い犬がやたらとAさんに吠え付いたんです。今までは絶対に他人に吠えたりしなかったのに。」 「へぇ…」 「雇って1週間たったあたりで、…見てしまったんです。」 「何を?」 「あの日の夜、2時ごろでした。私はトイレに行こうと思って、2階の自分の部屋から1階に降りていったんです。そこで信じられないものを見てしまったのです。」 座が静まり返る。 「Aさんがいました。ただし首だけで。首から下が無くて、向こう側の洗面台が見えたんです!」 朱桓が懐中電灯をつけて顔を下から照らした。 その顔が3m近く上、天井近くに見えた! 「うわあぁーーー!!!」 どすん、ばたん、ゴキッ! 電灯がつけられた。 朱桓は積み重ねた布団の上に立っていただけだった。 面白そうな顔をしている魯粛。あまり動じていない蒋欽。後ろ手をついて仰け反っている呂蒙。微妙な表情をしている甘寧。そして…なぜか甘寧の首にしっかりと抱きついている凌統。一番驚いたのは間違いなく彼女である。 「ほ、ほんとの話、それ?」 「はい。信じてもらえないかもしれませんが、本当です。あの後、Aさんの部屋へ逃げていったので、追いかけたら、部屋の中でAさんが泣いていました。あのあと、すぐ辞めちゃいましたっけ。」 「追いかけたって…あんたは凄いわ。」 「……凌統。」 「なに?」 「…いつまで抱きついてるつもりだ?」 「あっ…」 慌てて凌統が離れる。 「俺様にはそんな趣味は無いんだが…」 「う、うるさい!物のはずみよ!」 「ところで陸遜は…あ」 呂蒙の隣に座っていた陸遜が目を回して仰向けに倒れている。暗闇の混乱の中、仰け反った呂蒙のエルボーをまともに顎に受けたらしい。 無防備に気絶している陸遜を眺めていた魯粛にふと、悪戯っぽい笑みが浮かんだ。計画を他の者に耳打ちする。 やがて話がまとまり、甘寧が頭側を、魯粛が足を持って部屋からいずこかへ運び出していった。 …視界のエメラルド色のもやが晴れてくる。起きたら顔を洗って、歯を磨いて、寝床を整理したら着替えて食堂に。今日はトーストと紅茶のセット。残っていたらベーコンエッグも… 陸遜が目を開けるとそこには見知った、しかしそこにいるはずの無い人の寝顔があった。意識の混乱が収まり、その人物が周瑜であることに気がつくと、慌てて跳ね起きる。つられて周瑜も目を覚ました。 「な、なに、何?なんで!?」 「ちょ、ちょっと陸遜!?どうして私の布団に!?」 「ち、違います!違います!!違いますっ!!!」 何が違うのかわからないがとにかく否定する。董襲、陳武、徐盛らが起きだしてきた。絶体絶命のピンチである。昨夜、魯粛の提案で集まり、怪談話をしたところまでは覚えているが、そこから先の記憶が無い。なにやら顎のあたりが痛むが…。 廊下のほうで複数の笑い声が聞こえ、逃げるように足音が遠ざかっていった。 「あ!まさか…まてー!」 陸遜が慌てて部屋を飛び出してゆく。部屋の隅では魯粛が狸寝入りで笑いを堪えるのに苦労していた。 …夏休みの間、陸遜は周瑜に口を聞いてもらえなかったらしい。 ーーーーーーーーーーーーー ちょっと季節外れですが、張角SS推敲の合間に息抜きのつもりで書いたものです。 実際の朱桓もこの妖怪に遭遇しているらしいです…。 最後の悪戯は、高校時代、実際に修学旅行で悪友数人と行ったもので、真っ先に寝た者を隣の部屋の誰かの布団に添い寝させるという荒技です。異性の布団だとシャレにならないことになるので、同性の布団に添い寝させ、そのまま私達も部屋に戻りました。…翌朝、隣の部屋から絶叫が(^^;)…徹底したアリバイ工作&黙秘で事件を迷宮入りさせましたが、今、この場で真相を明かします。
217:アサハル 2003/03/05(水) 01:07 >教授様 ・゚・(ノД`)・゚・法正たん…!! 確かに彼女、自分から友達だと思ってたのって張松ぐらいなイメージが… 簡雍の相変わらずっぷりも、またいつもと違う感じでいい味出しっぷり… >雪月華様 !!わ、私もやりましたそれ!つかやられた経験アリ…!! 陸遜、いろんな意味でご愁傷様…。 帰宅部に簡雍がいるなら長湖部には魯粛って感じですねー。笑いました! てゆーか朝イチで10kmって…そりゃ脱落者も出るわ…
218:★ぐっこ 2003/03/05(水) 23:31 >教授様 皮肉にも、卒業をむかえる日になって初めて友情なるものを知って しまった法正たん…。私意と利害と劉備への妙な忠誠心だけで波乱に 満ちた学園生活を送っていた法正たん。卒業した後、はじめて彼女の 学生生活がはじまるのかな…。案外女子大とかでは耳年増な純情な女の子に なるタイプだったり… >雪月花様 激しく笑いましたが、何と言ってもツボは甘凌ペア。これ。 おそらく一方的に突っかかる事が多いと思われる凌統たん… 魯粛も悪戯好きなんですねえ…(;´Д`)ハァハァ…ていうか周瑜 その他の面々が「小うるさい上役」になって、下の面々が のびのび遊んでる長湖部の雰囲気が好きだなあ…
219:★ぐっこ 2003/03/06(木) 00:32 [sage] >惟新様、てかALL ガンパレードマーチは、親を売ってでも入手・プレイするべきです。
220:教授 2003/03/06(木) 01:46 ■■ 卒業 〜孫策と周瑜〜 ■■ 「…周瑜〜」 卒業式の朝。 面会時間にもなってない病院の一室。 カーテンの閉まったその窓を外から叩き親友の名前を呼ぶ孫策。 下では梯子を懸命に支える甘寧と魯粛がいた。 「周瑜…寝てるの…?」 再度、窓を叩く。 あまり強く叩くと看護婦や医師に気付かれる可能性があるので、なるべく弱く。 しかし、この状況。かなり目だって仕方がないのだが。 「…周瑜」 寂しそうに呟く孫策。 周瑜――かつて長湖部を支え、かの赤壁島の決戦で圧倒的不利な状況を引っ繰り返して勝利に導いた名参謀である。 そして、孫策の親友でもあった。 赤壁島の決戦の後、周瑜は矢傷を負い…それが元で引退を余儀なくされてしまう。 引退してからの周瑜は傷の影響か、病気を併発し入退院を繰り返していた。 卒業式の当日、その日も周瑜は病院のベッドの上だった。 孫策はどうしても彼女と一緒に卒業したかった。 それが故に無理と危険を冒して、このような行動を取ったのだった。 「周瑜…一緒に卒業したかったな…」 諦めて梯子を降りようとした時だった。 「孫策…?」 病室のカーテンが開き、周瑜が顔を出したのだ。 「周瑜!」 「ち、ちょっと孫策! 何してるのよ!」 「見れば分かるだろ!」 「分からないわよ!」 窓から顔を覗かせる周瑜。 その顔は少しやつれているように見える。 腕や脚だけではなく全身が痩せていた。 学園一の美女と呼ばれていた頃に比べれば大分衰えてはいる。 それでも、美女と呼ぶには差し障りはなかった。 「こんな押し問答はどーでもいい。周瑜、今日は卒業式だ」 「知ってるわよ。…私は出られないけど」 「出るんだよ! 私と一緒に…卒業するんだ!」 毅然とした強い眼差しを向ける孫策。 「駄目だよ…私…お医者様に外出禁止って言われてるもの…」 その目を受ける周瑜は、ゆっくりと首を横に振り、そう呟いた。 「駄目なもんあるか! 駄目だったら抜け出せばいい! だから…迎えに来たんだ!」 「孫策…」 「早く!」 孫策はさっと自分の利き手を周瑜に差し出す。 信頼している相手だからこそ、利き手を預けるのだ。 その事は周瑜自身が一番よく理解していた。 「孫策…行こう!」 周瑜は笑顔を見せると孫策の手を取り、身を乗り出す。 「しっかり掴まってろよ…」 「分かってる…って! わわっ!」 注意深く梯子を降りようとした孫策と周瑜。 しかし、予期せぬアクシデントが起こったのだ。 強烈な横風が二人を襲う。 俗に言う春一番という強風だ。 間一髪、孫策は梯子に掴んで難を逃れたが、周瑜はそうはいかなかった。 長い入院生活で衰えた体には自分を支えられるだけの体力はなかったのだ。 周瑜の手が梯子から離れる―― 「周瑜!」 咄嗟に宙に舞う彼女を捕まえる孫策。 しかし…この行動が裏目に出た。 周瑜の体を捕らえるのに孫策自身が両手を梯子から離してしまったのだ。 「ヤバ…」 無我夢中になっていた。 二人の体が引力に従い地面に落下していく。 そして地面に打ち付けられる…はずだった。 不思議と衝撃が走らなかった。 ぎゅっと閉じた目を開くと澄みきった青い空が孫策の目に映る。 「先代…周瑜さん…無事ですか…?」 その声は下から聞こえてきた。 「甘寧…? …甘寧!?」 孫策は周瑜を抱えたまま起き上がり、下にいるその姿を確認する。 「へへ…無事で良かったですよ」 彼女の心配を余所に甘寧が埃を払いながら立ち上がる。 「怪我は! 怪我はない!?」 「大丈夫です。丈夫な事が俺の取り柄なんスから」 笑顔で答える甘寧。 その元気そうな様子に安堵の息を漏らす孫策。 「孫策…ごめんなさい…」 丁度、お姫様抱っこのような状態になっている周瑜。 彼女は今にも泣き出しそうな表情をしていた。 「気にすんなって! それよりも…早くここからずらからねーと…」 屈託のない笑みを浮かべて周瑜を嗜めると、ちらちらと周りの様子を窺い始める。 「孫策…?」 「結構、大きな音だったからな…。気付かれでもしたら厄介だよ」 そう呟くと、孫策は甘寧と魯粛の方に向き直る。 「それじゃ撤収!」 「了解!」 元気良く返事をすると、三人は疾風の如き速さで駆け出す。 「そ、孫策! 自分で走れる!」 「無理言ってんな! こんな軽くなっちまった体で…走れるもんか!」 抗議する周瑜に言い放つ孫策。 その言葉と同時に彼女の目から涙が溢れた。 「ごめん…私が不甲斐なかった所為で…いらない迷惑をたくさん掛けて…挙句の果てにはこんな目にも遭わせちまって」 「…貴方の所為じゃない。だから…泣かないで…」 嗜める周瑜の瞳にも涙が浮かぶ。 互いに信頼し合い、そして誰よりも気遣い合った。 以心伝心――二人の心は誰よりも…どんな人にも負ける事はない。 程なくして三人は止めてあったバイクに飛び乗る。 「それじゃ、先代! 俺等がケツ持ちしますので!」 「頼んだよ!」 ケツ持ちを買って出た甘寧(その後ろに魯粛)にこの場を託す。 「今度は飛ばされないように…しっかり掴まってろよ!」 「…今度は…離さない…絶対に!」 孫策は力強い周瑜の言葉に思わず笑みを浮かべる。 「行くよ!」 孫策は勢い良くアクセルを全開にする。 そして…朝霧の中、二人を乗せたバイクは走り出した…。 二人の未来を差す光に向けて――
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