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★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★
220:教授2003/03/06(木) 01:46AAS
■■ 卒業 〜孫策と周瑜〜 ■■
「…周瑜〜」
卒業式の朝。
面会時間にもなってない病院の一室。
カーテンの閉まったその窓を外から叩き親友の名前を呼ぶ孫策。
下では梯子を懸命に支える甘寧と魯粛がいた。
「周瑜…寝てるの…?」
再度、窓を叩く。
あまり強く叩くと看護婦や医師に気付かれる可能性があるので、なるべく弱く。
しかし、この状況。かなり目だって仕方がないのだが。
「…周瑜」
寂しそうに呟く孫策。
周瑜――かつて長湖部を支え、かの赤壁島の決戦で圧倒的不利な状況を引っ繰り返して勝利に導いた名参謀である。
そして、孫策の親友でもあった。
赤壁島の決戦の後、周瑜は矢傷を負い…それが元で引退を余儀なくされてしまう。
引退してからの周瑜は傷の影響か、病気を併発し入退院を繰り返していた。
卒業式の当日、その日も周瑜は病院のベッドの上だった。
孫策はどうしても彼女と一緒に卒業したかった。
それが故に無理と危険を冒して、このような行動を取ったのだった。
「周瑜…一緒に卒業したかったな…」
諦めて梯子を降りようとした時だった。
「孫策…?」
病室のカーテンが開き、周瑜が顔を出したのだ。
「周瑜!」
「ち、ちょっと孫策! 何してるのよ!」
「見れば分かるだろ!」
「分からないわよ!」
窓から顔を覗かせる周瑜。
その顔は少しやつれているように見える。
腕や脚だけではなく全身が痩せていた。
学園一の美女と呼ばれていた頃に比べれば大分衰えてはいる。
それでも、美女と呼ぶには差し障りはなかった。
「こんな押し問答はどーでもいい。周瑜、今日は卒業式だ」
「知ってるわよ。…私は出られないけど」
「出るんだよ! 私と一緒に…卒業するんだ!」
毅然とした強い眼差しを向ける孫策。
「駄目だよ…私…お医者様に外出禁止って言われてるもの…」
その目を受ける周瑜は、ゆっくりと首を横に振り、そう呟いた。
「駄目なもんあるか! 駄目だったら抜け出せばいい! だから…迎えに来たんだ!」
「孫策…」
「早く!」
孫策はさっと自分の利き手を周瑜に差し出す。
信頼している相手だからこそ、利き手を預けるのだ。
その事は周瑜自身が一番よく理解していた。
「孫策…行こう!」
周瑜は笑顔を見せると孫策の手を取り、身を乗り出す。
「しっかり掴まってろよ…」
「分かってる…って! わわっ!」
注意深く梯子を降りようとした孫策と周瑜。
しかし、予期せぬアクシデントが起こったのだ。
強烈な横風が二人を襲う。
俗に言う春一番という強風だ。
間一髪、孫策は梯子に掴んで難を逃れたが、周瑜はそうはいかなかった。
長い入院生活で衰えた体には自分を支えられるだけの体力はなかったのだ。
周瑜の手が梯子から離れる――
「周瑜!」
咄嗟に宙に舞う彼女を捕まえる孫策。
しかし…この行動が裏目に出た。
周瑜の体を捕らえるのに孫策自身が両手を梯子から離してしまったのだ。
「ヤバ…」
無我夢中になっていた。
二人の体が引力に従い地面に落下していく。
そして地面に打ち付けられる…はずだった。
不思議と衝撃が走らなかった。
ぎゅっと閉じた目を開くと澄みきった青い空が孫策の目に映る。
「先代…周瑜さん…無事ですか…?」
その声は下から聞こえてきた。
「甘寧…? …甘寧!?」
孫策は周瑜を抱えたまま起き上がり、下にいるその姿を確認する。
「へへ…無事で良かったですよ」
彼女の心配を余所に甘寧が埃を払いながら立ち上がる。
「怪我は! 怪我はない!?」
「大丈夫です。丈夫な事が俺の取り柄なんスから」
笑顔で答える甘寧。
その元気そうな様子に安堵の息を漏らす孫策。
「孫策…ごめんなさい…」
丁度、お姫様抱っこのような状態になっている周瑜。
彼女は今にも泣き出しそうな表情をしていた。
「気にすんなって! それよりも…早くここからずらからねーと…」
屈託のない笑みを浮かべて周瑜を嗜めると、ちらちらと周りの様子を窺い始める。
「孫策…?」
「結構、大きな音だったからな…。気付かれでもしたら厄介だよ」
そう呟くと、孫策は甘寧と魯粛の方に向き直る。
「それじゃ撤収!」
「了解!」
元気良く返事をすると、三人は疾風の如き速さで駆け出す。
「そ、孫策! 自分で走れる!」
「無理言ってんな! こんな軽くなっちまった体で…走れるもんか!」
抗議する周瑜に言い放つ孫策。
その言葉と同時に彼女の目から涙が溢れた。
「ごめん…私が不甲斐なかった所為で…いらない迷惑をたくさん掛けて…挙句の果てにはこんな目にも遭わせちまって」
「…貴方の所為じゃない。だから…泣かないで…」
嗜める周瑜の瞳にも涙が浮かぶ。
互いに信頼し合い、そして誰よりも気遣い合った。
以心伝心――二人の心は誰よりも…どんな人にも負ける事はない。
程なくして三人は止めてあったバイクに飛び乗る。
「それじゃ、先代! 俺等がケツ持ちしますので!」
「頼んだよ!」
ケツ持ちを買って出た甘寧(その後ろに魯粛)にこの場を託す。
「今度は飛ばされないように…しっかり掴まってろよ!」
「…今度は…離さない…絶対に!」
孫策は力強い周瑜の言葉に思わず笑みを浮かべる。
「行くよ!」
孫策は勢い良くアクセルを全開にする。
そして…朝霧の中、二人を乗せたバイクは走り出した…。
二人の未来を差す光に向けて――
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