★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★
27:★ぐっこ2002/02/14(木) 23:55AAS

「ハイ、そこまでや」
 関羽が自分の中で答えを出すより一瞬早く、一つの声がラウンジの静寂を破った。
「……ち、もう来たの!」
 舌打ちしたのは曹操である。この瞬間、関羽の身体が不意に軽くなった。まるで不可視の緊縛が
外されたようであった。
「あのなあ、曹操はん。帰宅部連合は同好会やで。部費は必要ないし、生徒会の承認を得なかん事は
せえへん。みんながお気楽にやってる集まりや〜」
 ラウンジの中に入ってくる劉備は、飄飄としているが、曹操へ向けた視線を外しもしない。
 曹操も距離をとるようにジリジリとテーブル沿いに移動する。
「…外にいた娘たちは?」
「あんなん護衛にもならへんで、曹操はん」
 曹操は内心で舌打ちした。変な嫉視反感を避けるために側近連中を遠くへやっていたことが、今回は
裏目に出た。
 もっとも、仮に劉備と曹操が激突すれば、どう考えても曹操が勝つ。だが。ここには関羽がいる。
「…私はマスターキー(※玉璽)を持ってるんだよ。退学処分も出すことが出来るんだよっ…」
「やれるもんやったら、やってみるか……?」
 曹操の脅しを、劉備はあっさり無視する。
 と、睨み合いを続ける二人のまんなかに、関羽がすっと立ちふさがった。
「はい、そこまでです」
 来たときの劉備と同じセリフで、関羽は二人を分けた。顔に苦笑がうかんでいる。
「もうやめましょう。部長、それに会長。…」
 一瞬だけ睨み合うと、劉備も曹操も、体中から緊張を抜いた。
「そうだねー」
「せやな」
 ふう、と溜息をついてふたりは腰を下ろした。
「あ、せやせや、ふたりにチョコ持ってきてん。手作りやで」
 チョコ、と聞いて一瞬身構える関羽だが、曹操は嬉々として駆け寄った。
「え、どれどれ!?」
「はい、コレ」
 包み紙から、よく言って鹿せんべいクラスの外見をもつチョコを取り出し、曹操に手渡す劉備。
 曹操、薄っぺらく伸びたハート型(?)チョコを見て、
「あははははははははははははははははははははははははははは」
 と大笑いを始めた。
「なんや! チョコの要はココロやで!」
 さすがに嚇っとなって怒鳴る劉備に、曹操はちゃうちゃう、と手を振り、
「劉備ねえ。あんた、湯煎って知らないの?」
「へ……何?それ」
「湯煎っていうとねえ…ああ、今度説明するわよ、もう」
 まだおかしいのか腹を抱えている曹操。その横を通って、関羽は劉備の方へ手を伸ばした。
「……いただきます」
「おっ、貰ってくれるかー!
 劉備は、ちょっと照れたように関羽へチョコを手渡した。よくみると、
「本命・関羽へ 姐より」
 と書かれていた。関羽、苦笑すると、いただきますと言って、パリパリに焦げた薄っぺらいチョコ
を口にした。脂が抜けきったカカオの苦い香りと、焦げた香りが口の中に広がる。
 でも――
「どや、おいしいか?」
「はい、おいしいです」
 関羽は、心の底から、そう答える事ができたのだった。
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