★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★
31:玉川雄一2002/02/15(金) 04:06AAS

 ◆この妹あり…◆

 今日も今日とて学園の朝は始まる。
 司馬昭は陳騫、陳泰らと寮の廊下を歩いていた。
 そこへちょうど通りかかったのが鍾会の部屋である。
 司馬昭は廊下からドア越しに呼びかけた。

「ねえ、士季、いるんでしょ? 一緒に行きましょうよ」
「は、はーい、今行きます!」

 実は、鍾会はまだ着替え中だった。
 年齢に比して少々(かなり)発育過剰気味の体
 −潁川鍾家の遺伝である−をもてあましつつ、
 何とか身支度を整えると廊下に飛び出す。

「ごめんなさい、遅れました…って、ああっ!」

 そこには誰もいやしない。
 実は司馬昭、鍾会を呼ぶだけ呼んでおいて、
 置いてきぼりにして先に行ってしまったのだ。
 鍾会はすぐさま駆け出すと、ひとっ走りして一行にようやく追いついた。
 両手を膝についてハアハアと息を整えている彼女に、
 司馬昭は意地悪く尋ねる。

「あら、やっと追いついたのね。
 行こうって言っておいて、なんてグズなのかしら?
 私達待ってたのに、“遙遙”として全然来なかったじゃないの」

 言うまでもなく、“遙遙”は鍾会の姉、鍾ヨウの名に引っかけた言葉である。
 だが、鍾会はニヤニヤしている陳騫、陳泰らをキッと見据えると言い放った。

「矯(たか)くすぐれて懿(うるわ)しく実(まこと=寔)ある人は、
 どうして羣(むれ)をなして行く必要があるのかしら?」

 一同、これには返す言葉もなかったという。

 そうこうして校舎へと向かう道すがら、司馬昭がまた尋ねた。

「皐“ヨウ”さんってどういう人だったか、あなた知ってる?」

 鍾会、済ました顔で答えて曰く、

「上は堯、舜には及ばないし、下は周公、孔子には及ばないけど…
 まあ一代の“懿(よ)き”人物、ってとこでしょうかね?」

 この少女、頭が切れるのは結構な事ながら、少々根に持つタイプのようで。
 のちのち足下をすくわれなければ良いのだが…
1-AA