下
★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★
320:★アサハル 2003/08/06(水) 00:04 乗り遅れますたー! >雪月華様 某ネコ型ロボットとダメ少年と首長龍の長編版を思い出しました…。 それにしても何してるんですか孫シスターズ(w 二人の凶悪姉妹喧嘩(戦争)をモロに受け止めてきた孫家の実家の 耐久性が妙に気になりました。 続き…どうなっちゃうんでしょう?まさか折角生まれてきたのに 喰われるなんて事は(ry >教授様 あ、ああー(゚∀゚;) 雷同たん、ご愁傷様です…惜しい人を亡くされ………(死んでない) それにしても水着姿にも性格が出てて藁いました。特に諸葛亮。 何気に麋竺が萌え…
321:ヤッサバ隊長 2003/08/11(月) 21:58 ■■魏文長、その密やかなる趣味(1)■■ 魏延は生来より、豪胆かつ粗暴な女傑であった。 しかし、蒼天学園へと入学した直後より、彼女はその性格を改め、真なる淑女…つまり乙女への道を志した。 その経緯は、中学時代(蒼天学園中等部に非ず)剣道部に所属していた際、腰を痛めた為に一線を退く事になり、大そう悲しんだ。 しかし、その時彼女の先輩より「女は武のみに生きるに非ず」と諭されたが故であったという。 ともあれ、彼女は武骨な性格を正し、「乙女」として行きようと決意したのである。 「ふんふんふ〜ん♪」 荊州校区蒼天女子寮。 朝、誰もいない調理室で、魏延は鼻歌とともに何やら洋菓子を作っている。 どうやらクッキーのようだが、何とその形状は「クマさん」。 確かに、クマというところがある意味彼女を象徴するクッキーであるが、武辺者として既にその名を蒼天学園中に知られつつあった魏延が、そのようなモノを作る趣味を持っている者は、皆無と言えよう。 いや、彼女は意図的にそのような趣味がある事をひた隠しにしてきたのである。 かつて、このような事があった。 まだ、魏延が帰宅部連合に参加する前の事だ。 当時一年生だった彼女は、参加する部活を決めかねていた。 最初は中学時代のように剣道部に入部するのが筋だと思っていたものの、「乙女を目指す」という大目標が出来た手前、体育会系の部活に入る訳にもいかない。 そこで、荊州校区の文化系の部活に入ろうと決意したのであるが…。 「こんなんちまちまやってられっかぁぁぁっ!!」 …と仮入部した茶道部で、あまりの退屈さに苛立ち、ついには茶釜をひっくり返すという剛毅なマネをしでかしたのだった。 当然すぐさま追い出される魏延であったが、彼女は諦めない。 続いて美術部へと仮入部するのだが…。 「こんなんちまちま描いてられっかぁぁぁっ!!」 …と、例によってカンバスをビリビリと豪快に引き裂き、周囲を凍りつかせてしまう。 当然美術部も追い出された彼女は、最後に料理研究会に入ろうとする。 だが、既に魏延の勇名は荊州校区全体に広がっており、 「あ、あの…料理研究会に入りたいんですけど…」 「結!構!です!!」 …と、恐る恐る尋ねた魏延を、研究会代表・趙累が一蹴してしまうのだった。 さらに、当時魏延が所属していた長沙棟の棟長・韓玄は、粗暴な性格の魏延が大そう気に喰わなかったらしく、わざわざ魏延を呼び出してこう言い放っている。 「あんたに文化系の部活なんざ務まる訳無いでしょ。相撲部や牛乳部や魚拓部がお似合いよ」 このセリフに逆上しそうになった魏延であったが、 (ガマン、ガマンよ文長…こんなところでキレたりしたら、あたしはこれから一生乙女でいられなくなっちゃう…) と、じっと怒りを抑え、悶々とする日々が続いたのである。 だが、皮肉な事に魏延は「乙女」ならぬ「漢女」と言う異名と、武名を轟かせてゆく事になってしまうのだった。 そのような彼女であったから、「クマさんクッキーを作る」事が趣味であるなどとは、口が裂けても言えなかった。 それは、劉備が荊南棟群を平定し、その際に劉備に降り、名実共に「帰宅部」の仲間入りを果たした後でも変わらなかったのである。 「焼けた焼けた、っと」 オーブンから焼きあがったクッキーを取り出し、その一つを口に運んだ。 ポリポリとしばしクッキーを味わった後、魏延の表情が思わずほころぶ。 「んん〜、おいひぃ♪」 正直言って、「普段の魏延」を知る者がこのシーンを見せ付けられれば、気味悪がって逃げ出してしまうだろう。 それほどまでの変貌ぶりであった。 魏延は焼きあがったクッキーを小さな紙箱に入れ、包装紙で包んで部屋を後にするのだった。 (このクッキー、今日こそ部長に食べてもらうんだ〜♪) 魏延は、ルンルン気分(死語)で学園に登校する。 しかし、そんな彼女に思いもよらぬ災難が待ち受けていようとは、この時まだ知る由も無かった…。 (2)へ続く。
322:ヤッサバ隊長 2003/08/11(月) 22:08 脱字発見しますた(T_T) >既にその名を蒼天学園中に知られつつあった魏延が、そのようなモノを作る趣味を持っている者は、皆無と言えよう。 の、「趣味を持っている者は、」の部分は、 正確には「趣味を持っている事を知る者は、」が正解です(^^;
323:ヤッサバ隊長 2003/08/11(月) 22:12 …と言う訳で、先刻より周知しておりましたSSがようやく完成しました。 と言っても、まだ導入部分ですけど(^^; この続きは、またの機会という事でよろしくです。
324:★ぐっこ@管理人 2003/08/13(水) 17:18 …っΣ(´Д`;) むう!魏延たんが人知れずクッキーを! 漢乙女の面目躍如! 戦闘時のバトル少女との落差がハァハァもの。 ところで韓玄たん、牛乳部って何でつか…(;´Д`) 続きを期待!
325:ヤッサバ隊長 2003/08/13(水) 23:56 ■■魏文長、その密やかなる趣味(2)■■ 放課後。 蒼天学園の生徒達がそれぞれの課外活動に精を出している中、魏延もまた荊州校区風紀委員の一人として、長沙棟内の巡回を行っていた。 だが、一方で帰宅部連合部長という重役である劉備は、その魏延の数倍の作業をこなしている。 無論、諸葛亮や馬良、ホウ統といった総務役も部長のサポートに回っていたのだが…。 益州攻略の時が近づいていた今、劉備の双肩には、多大な責任が圧し掛かっていたのである。 「うー、孔明…ちったぁ休ませてんかぁ〜」 「いけません。今日中に、各予算の配分を完了してしまわねば。 この荊州の地盤をしっかりと固めねば、長湖部に背後を襲われるやもしれません」 「さよか…ま、しゃーないなぁ」 ブツブツと文句をたれながら、劉備は鉛筆を片手に頭を悩ませている。 「せやけど、こーゆー仕事は庶務の三羽ガラスがやるもんやろ。 何でうちが…」 「仕事を部下に任せて、主は椅子に座って命令するだけというのは、三流の組織の体系です。 それに、部長自らが雑務をこなす姿を見れば、おのずと部下もついてくるというものですよ」 「うう〜…」 孔明は、お得意の舌先三寸で劉備を上手く丸め込んだ。 しかし、問答をしている諸葛亮自身も山のような書類と格闘しており、劉備にぐうの音も言わせない。 そんなこんなで、その日の雑務を終えた時には、既に時計は夜6時を回っていた。 「う〜、やっと終わったわ…」 へとへとになり、思わず机にうつ伏せになる劉備。 諸葛亮は、そんな彼女の目の前に栄養ドリンクのビンを置いた。 「部長、お疲れ様でした。 この『スパビタンX』を飲んで、元気を出して下さい」 「おおきに、そんじゃお言葉に甘えて遠慮なく…」 劉備は、諸葛亮に渡された栄養ドリンクを一気に飲み干す。 しかし、直後劉備の顔が真っ青に染まり、苦しみの表情へと変わってゆく。 「ぐぁっ…!! な、なんやコレ!? 一体ナニが入っとんねん…?」 「ああ、それでしたら…私が市販の栄養ドリンクをベースに冬虫夏草と高麗人参、さらにはマムシやスッポンのエキスをブレンドした特製品ですが?」 「!!!?」 それを聞いた劉備は、口を両手で抑えながら真っ直ぐトイレへと駆け込んで行ってしまう。 「…やはり、栄養を重視しすぎたかな…?」 諸葛亮は、さして罪の意識を持っていない様子で、『スパビタンX』のビンを眺めるのだった…。 「あ〜、えらい目に遭うたわ…」 暫くして、劉備は余計疲れたような表情でトイレから現れた。 そんな時、偶然巡回をしていた魏延とばったり出会う。 「あっ、部長。こんな時間までお疲れ様です」 「おう、文長か。あんたもこんな時間まで大変やな」 劉備は苦しそうな表情を必死に隠しながら、魏延と普段どおりに会話しようと努めた。 「いいえ、あたしは見回りですから。いつもデスクワークに追われている部長達に比べたら…」 「せやなぁ。孔明や士元、季常にいっつもせっつかれるんや。 おまけに、今度益州校区まで行かなあかんやろ。大変や〜」 劉備は力で益州を攻める事に、乗り気では無かった。 だが、漢中の張魯が益州への侵攻を開始した為に、劉備は益州校区生徒会長である劉璋の援軍として出陣する事になったのだ。 しかし、その裏では諸葛亮を始めとする謀臣達が益州攻略の策を練っており、一方の劉璋陣営でも親劉備派が帰宅部連合を迎え入れる準備を始めていた。 劉備の思惑に反するかのように、時勢は激しく動きつつあったのである。 「心配しないで下さい。 この魏文長、部長に同行する事が決まった以上、必ずやお役に立ってみせます!」 不安を抱えていた劉備を、魏延が励ます。 魏延は、今度の遠征で劉備と一緒に戦える事が大そう嬉しかった。 勿論、新参者である彼女にとって、理由はどうあれ劉備の下で武功を上げられるチャンスだったからでもあるのだが。 「元気やな、あんたは。 うちも、もっとシャキッとせなあかんな」 「部長…」 魏延に励まされ、劉備はようやく心の迷いを僅かながら消し去る事が出来た。 その様子を見て安心したのか、魏延の表情も綻ぶ。 「そうだ、部長に渡したいモノがあるんです。 受け取って貰えますか?」 「お、おう」 魏延はそう言うと、スカートのポケットの中に忍ばせておいた小さな紙の箱を取り出し、劉備に手渡す。 「開けてみて下さい」 「ん…分かった」 劉備が箱を開けると、そこにはクマさんの形をしたクッキーが入っていた。 だが、流石の劉備もまさかこのようなモノが入っているとは思いもしなかったようで、 「な、何やコレ!? く、クマさん…!!?」 そう言った直後、思わず口から笑い声が噴き出してしまうのだった。 「ギャハハハハッ! あ、あんた、こないなモンどないしたんや?」 「あ、あたしが一生懸命作ったんです! 部長に食べてもらおうと思って、誰にも見つからないように、必死にお菓子の勉強をしながら…!」 魏延の真摯な態度に感銘した劉備は、どうにか笑いを止めて魏延に向き合う。 「す、すまん笑ろたりして。 いや〜、それにしても『漢魏延』がクマさんクッキーたぁ、なんちゅーミスマッチやねん。 せやけど、あんたにこんなモンを作る趣味があったなんてな」 劉備の言葉に対し、魏延は顔を真っ赤にして俯く。 やはり、相当恥ずかしいのだろう。 「うう〜、それについては話せば長くなるんですけど…。 と、とにかく食べてみて下さい」 「ああ、分かった…」 劉備は、箱の中にあったクッキーの一つを手に取り、口に含んだ。 そして、ゆっくりとそれを噛みしめてゆく。 「んん〜…」 「ど、どうですか?」 恐る恐る、劉備に尋ねる魏延。 だが、劉備は満面の笑みでそれに応えた。 「うん、美味いわコレ」 「ほ、ホントですか!?」 その言葉を聞いて、思わず喜び舞い上がる魏延。 やはり、憧れの人物に手作りのクッキーを食べてもらい、さらに「美味しい」と言って貰えたのが余程嬉しかったのだろう。 「ああ、ホンマに美味いわ。 よう考えてみたら、こないな手作りの菓子なんざ、もう10年は食べてへんな。 おおきにな、文長…」 「部長…」 感激の余り、両目が潤む魏延。 しかし直後、薄暗い廊下に眩い閃光が走った! パシャッ!! 「な、何や!?」 「えっ!!?」 二人が同時にその光の方を向くと、何とそこにはカメラを持った簡雍の姿が!! 「遂に捉えたぁ、決定的瞬間!!」 「ああっ!! け、憲和ッ!!?」 「ヒューヒュー! お熱いねぇ、お二人さん!」 「……!」 見事にイチャイチャ(?)現場を押さえられた劉備と魏延は、驚きの表情を隠せない。 特に、魏延は自分の一番見られたくない姿を見られたショックで、声も出ない…。 「それにしても…『漢魏延』と恐れられた魏延に、そんな趣味があるなんてねぇ〜♪」 「ぐぐぐ…!!」 魏延は、必死に怒りを抑えて俯いているが、全身が激しく震えている。 「な、なぁ憲和…その写真のネガ譲ってんか…頼むわ」 「ん〜、どうしよっかねぇ〜」 簡雍は、内心してやったりと大喜び。 そして、わざと劉備達に対してそっぽを向き、二人の反応を見て楽しんでいる。 「うううう〜ッ!! 憲和様、この通りでございますッ!! 何卒、その写真をバラ撒くのだけはお止めくださいッ!!」 「あたしからも、どうかッ!!」 劉備と魏延は、揃って床に手をついて簡雍に懇願する。 「へいへい。んじゃ、一人2千円づつお恵みを頂きましょ〜か」 劉備達の情け無い姿を見て満足したのか、簡雍はようやく二人を許すのだった(と言っても、しっかり金は取っているのだが)…。 「毎度あり〜♪ んじゃ、あたしはこれで」 (く〜っ!!堪忍やでぇっ!!) (きばると文長! こげん試練も真の乙女になる為じゃッ!!) 悠々と廊下を後にする簡雍の背中を見ながら、怒りに打ち震える劉備&魏延。 その夜、劉備は魏延と共謀し、簡雍の部屋に忍び込んで眠っている彼女の額に「肉」の文字を黒の油性マジックで書き入れ、ささやかなる復讐を果たすのだった。 「ああ〜っ!! な、何よこれぇっ!?」 終
326:ヤッサバ隊長 2003/08/14(木) 00:14 てな訳で、ついに完成しましたです。 当初は広…もとい楊儀を出して、魏延を徹底的に叩かせる展開にしようと考えていたのですが…。 それだと全然コメディにならないので、かような展開になりました。 しっかし何だか方言関連が全然ダメですな…特に魏延の薩摩弁(汗 親戚に実家が鹿児島の人がいるのに、すっかりそっち系の方言を忘れてしまいましたわ(^^; 拙作ですが、どうかお楽しみ頂ければ幸いです。 PS・諸葛亮の栄養ドリンクネタは、アサハルさんのイラストに。 そのドリンクのネーミングは、某カンフー映画のタイトルに影響されましたw
327:★ぐっこ@管理人 2003/08/15(金) 15:26 ヤッサバ隊長乙! ふー。楊儀が出てこなくてよかった…(^_^;) 漢魏延たんのヨサゲなところだけで… ナニゲに庶務三羽ガラスの呼称がツボ。ていうか、その一羽は簡雍たんなわけだが。 しかし今回、おそらく初めて簡雍たんの敗北!やはり劉備がその気になって反撃すると 簡雍たんもしれやられるということですねえ… >某ドリンク 私はゲームの方かと。
328:ヤッサバ隊長 2003/08/15(金) 17:17 考えてみたら、簡雍たんってば帰宅部連合(それ以外の陣営もですが)の機密の数々を激写してきた、かなり重要な人物ですよね。 もし彼女が生徒会に捕らえられてしまったらと思うと…(ガクガクブルブル まぁ、劉備も彼女を信頼しているからこそ、かのような重任を命じているのだとは思いますが。 >簡雍敗北のオチ もうちょっとその辺を詳しく書いとくんだったと激しく後悔(^^; そうすればオチの面白さも倍増しただろうに…。 >ドリンク名称 うぃ、自分もゲームで知りましたです!w ってか、俺が小学一年の時に初めて買ったFCソフトだったり(爆
329:★教授 2003/08/18(月) 21:58 ■■ 帰宅部連合夏の陣! 〜第二章〜 ■■ 「うりゃっ」 「わっ! やったな〜」 燦燦と降り注ぐ暑く眩い陽の下。乙女は水と、そして仲間達と戯れている。 薄く涼しげな衣に身を包み、一時の休息を愉しむ。 日が沈み、そしてまた日が昇るその時まで―― 「だーっ! 義姉貴! 反則だぞ!」 「こういうのはアタマ使った方の勝ちや!」 プールサイドを楽しそうに逃げまわる張飛。そしてウォーターガンを両手にガンタタスタイルの劉備。 玩具での攻撃…と言えば聞こえはいいのだが。ウォーターガンから射出される水の勢いは明らかに玩具の粋を脱していた。 「うりゃっ!」 劉備の放った一撃がコンクリートの壁に当たる。――穴が開いた。 張飛はその様を見て急速に蒼褪めていく。 「な、なな…何だよ、その規格外の破壊力は!」 「孔明に改造してもらったんや。アンタは頑丈やさかい、被験体になってもらうで」 「ひでぇ! 義理妹への愛が感じられねーぞ!」 今度は本気で逃げ出す張飛。その後ろを本気で追い掛ける劉備。 殺人ウォーターガンを作成した孔明はリクライニングチェアーに腰掛けながら、のんびりと義理姉妹の修羅場を眺めていた。威力の確認も兼ねているようだ。 その横でビ竺が本(恋愛小説)を広げている。その優雅な姿は正しく『深窓の令嬢』という言葉がピッタリだった。 更にビ竺の隣では雷同が目を回してうなされている。 「鬼が…歳食った鬼が…」 そんなうわ言を繰り返しながら痙攣していた。不憫な娘である…。 プールの中では黄忠と厳顔が浮き輪を手にぷかぷかと漂っていた。 無邪気に泳ぐでもなく、ただ流されるままに漂っているのだ。 そんな二人の横を法正が泳ぎ抜けていく。 長い髪を綺麗にまとめて華麗なフォームで水をかき分ける。 …と、法正の横に並ぶもう一つの影――簡雍だ。 (憲和!? 負けられない!) 簡雍の姿を確認した法正がペースを上げる。 (やるじゃん、法正) にやりと口元を歪めると簡雍もギアを上げた。 そして――二人の手がほぼ同時に縁に触れる。 「ぷはっ。…ちぇっ、法正の勝ちだよ」 「憲和の方が速かったよ…」 お互いに勝ちを譲り合う。二人の顔に自然と笑みが零れた。 そんな二人の近くに先ほどの漂流している黄忠と厳顔が漂ってきた。 「青春ね〜…」 「そうね〜…」 ぼーっとそんな事を呟きながら再び遠ざかっていく。 「年増舟だ! やっぱり力無く漂ってる!」 簡雍がとんでもない発言をする。 「誰が年増だ、こらぁ!」 「いい度胸してんじゃないの!」 この発言は年増コンビに聞こえたらしく、物凄い勢いで戻ってきた。 身の危険を感じた簡雍は法正を盾にすると… 「…って、法正が言ってました♪」 と、身代わりにしてさっさとプールサイドに退却。 「え? え、ええっ!?」 法正は自分が何を言われたのか、そして何をされたのか理解し切れずに、ただうろたえるしかなかった。 「法正! テメー、死なす!」 「無事に帰れると思うなよ!」 年増コンビはうろたえる法正を捕獲すると、浮き輪の中に押しこめてプールの中央まで拉致しはじめた。 ここに来て自分がスケープゴートにされた事に気付く。 「憲和ーっ! 覚えてなさいよーっ!」 「生きて帰って来れたらね」 簡雍は喚き散らす法正にひらひらと手を振って、デジカメのシャッターを切った。 芽生えかけた友情という芽はいともあっさり摘まれてしまった…。 法正がお仕置きという名の粛正を受けてから一時間。全員が遊び疲れてプールサイドで休憩を取っていた。 「それにしても今日は暑いなぁ」 「そうですね、私の予想では明日もこのような天気かと」 劉備の言葉に白羽扇を口元に孔明が太陽を見上げる。ちなみに黄忠から借りたサングラスを着用しているので眩しくはないようだ。 「……………」 孔明の隣ではビ竺が小さく寝息を立てている。そしてそんな彼女をほっとけない二人がいた。黄忠と簡雍だ。 「気持ちいい天気だから眠たくなっても仕方ないな…」 黄忠はビ竺を膝枕しながら髪を優しく撫でている。母性本能をくすぐる寝顔についつい黄忠の顔も綻んでいた。 「夏は最高な場面に出くわす事が多いしね♪」 周りでは簡雍が忙しく動きながらビデオ撮影中。かなり際どい画像も撮っているようだ。 ほっとけないというニュアンスがかなり食い違っている二人である。 「ビ竺は寝てるんだ、あっちの方で撮影してくれ」 大人の余裕を見せながら簡雍を張飛の方へ押しやる厳顔。 分が悪いと算段した簡雍も渋々その場を離れた。年の功が悪魔を遠ざけたのだ。 「雷同…何だソレ?」 「これが無いと落ちつかなくて」 張飛が覗きこむその先には、雷同が手にした護身用武器。 基本的にか弱い女性が犯罪から己の身を護るべく持つ代物――そう、スタンガンである。 「ふ、ふーん…それをどうするんだ?」 「しびれる為に使う」 ごく当たり前のように、かなり危険な返答をする雷同。 流石にこれには引いた張飛。一歩ずつ後ずさりしながらほくそ笑む雷同から離れる。 後日、何の因果か雷同は張飛の下に付いて従軍する事になる。時折スタンガンを手にしてニヤニヤ笑う雷同に頭を振って悩む張飛の姿が戦場で見うけられたとか…その話はまた次の機会にでも。 そして、法正はどうなったのか―― 「憲和〜…もう許さない〜…あ…年増の鬼が…」 雷同同様うわ言の様に恨み言と恐怖に慄く言葉を繰り返しながら、うつ伏せに寝かされていた。 「簡雍殿、法正の写真を撮ってもらえないかな?」 うろうろと動きまわりながら撮影を続ける簡雍に声を掛ける孔明。 「いいよー。あ、そうそう…ここだけの話だけどね」 簡雍がちょいちょいと手招きして孔明を呼ぶ。 孔明も面倒くさそうに立ちあがると簡雍の傍に近づく。 「実はね、ダンナ。法正のちょっとした…俗に言う『ポロリ』な写真もゲットしてんですよ…一枚300円でどうっすか?」 こそこそと悪事を耳打ちする簡雍。黒いシッポと羽が生えてる…。 「ほほう…買った。そちも相当の悪よのぅ…」 「いえいえ、お代官様ほどでは…」 邪な笑みを浮かべる二人の悪魔がプールサイドに降臨。 B級の時代劇の悪人のような二匹の悪魔の下で法正が更に魘されていた…。 「皆さん〜、アイス買ってきました〜」 暫く休憩していると孫乾が両手一杯に紙袋を抱えて現れた。 「お、ご苦労さん。大変やったやろ?」 紙袋を受け取りながら労いの言葉を掛けてやる劉備。 「いえ、皆さんが喜んでくださるのなら全然苦にはなりません〜」 にこにこと太陽に負けないくらいの笑顔を見せる健気な少女、孫乾。 その眩しさに目を背ける張飛と雷同と簡雍。眩しすぎる程疚しい事があるのだろうか。 「…えらい! そや、アンタも泳いでいき!」 感動して滝の様な涙を流す劉備が孫乾の肩を掴む。 「え、えーと…」 あたふたしながら動揺する孫乾。アイスを届けに来ただけなので水着も持ってきてないので返事に困っている様子だ。 「アイス落ちてるって!」 張飛と雷同がコンクリートの地面に落ちた紙袋をかっさらっていく。 そして、その動きを二匹の老鷹…失礼、二匹の鷹が追いかけていった…。 一名増えそうな勢いのプールサイド―― 乙女達の夏はまだ終わらない――
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