下
★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★
470:岡本 2004/04/25(日) 16:12 〜 移ろい行くもの、受け継がれるもの 〜 学園三国志の舞台となった時期は、まさに激動の時期であった。学園運営活動に対する価値観や行動理念が学年ごとにくっきりと色濃く分かれ、主たる統治形態に固定概念など存在せず、時流に流されるがごとく、様変わりしていった。 末期の連合生徒会で声望があったのは、双璧といわれた皇甫嵩に朱儁、気骨の文官・盧植、北方の監視者・丁原。政務では千里の駒といわれた王佐の才・王允、カムロと実務の調整役として重きをなした袁隗。やり方に違いはあったとはいえ、彼女らは当時の連合生徒会を支える屋台骨であったはずである。が、如何に個人として優れていようと、その人物の価値観を取り巻く情勢や時の流れが許さない場合、表舞台から駆逐され退場せざるを得ないのが歴史というものであろう。彼女らが学園、蒼天会や生徒会にかけた思いにも関わらず、黄巾事件や菫卓の専横に示されるように、既に連合生徒会には自力で学園を統率するだけの能力を失っていた。それが各校区の総代・生徒会会長や地区長の独立を呼び起こし、群雄割拠の事態を招いたともいえる。結果、彼女らは連合生徒会と象徴たる蒼天会の権威失墜を回復することかなわず、学園の表舞台から不遇のままに消え去ることとなった。 彼女らにとって変わって、群雄割拠の時節に学園の表舞台に上がったのは、袁紹・袁術姉妹や公孫瓉に代表される世代である。彼女らは蒼天会や連合生徒会の無力さを肌で感じて中央から脱却した経緯を持つ。それぞれ、基盤としたものは各地に連綿と受け継がれた名声であったり辺境守備戦の実績であったりしたが、蒼天会に依存しない実力を背景に独自の秩序だてを模索していた。一面、実力が物を言う時節に突入したわけであるが、力のみで泳ぎきれるほど甘くも無かった。公孫瓉は白馬義従と呼ばれ恐れられた当時随一の機動戦力を有していたものの、劉虞を問答無用で飛ばしたことなどで政治的な失敗が重なって諸勢力からそっぽを向かれ、結局は袁紹との政治力や統治能力、声望も含めた総力戦で敗れ去った。袁術は、袁家の権威のみでは求心力には決定的にかけるということに気づかず、地道に自勢力の運営を行って地力を付けることを怠り、諸勢力間の叩きあいで勢力を減退させ、退場することになった。 残った北方の巨人・袁紹は最大勢力となり無敵と思われた。だが、彼女ですら、時流を読み、波に乗った姦雄・曹操の前に激闘の末、敗れた。曹操は、最初は袁紹の下働きから始まったものの、学園の混迷がいまだ深い中、勢力間の権力闘争に参加することで徐々に力を蓄えた。どの勢力も、万人の総意として蒼天学園全体に対し自己の権威を確固たる物と認めさせる根拠は薄弱であった。その点を見据えて、蓄えた実力だけをあてにするのでなく、流浪していた蒼天会会長・劉協を擁立して権威面での補強を行い、のし上がっていったのが曹操というわけである。 強大な群雄がサバイバルレースから脱落した中、リタイア必至と見られながらも、今なお駆け続けている弱小勢力の主がいる。劉備、あだ名は玄徳。 盧植門下生であり、公孫瓉の後輩でもある。が、彼女の行動理念や価値観は、この2人とは全く違っていた。それが全てとは言わないが、生き残った原因のひとつであることは間違いあるまい。 「うちはうちや。蒼天学園や連合生徒会についての考え方や価値観もまるで違うしな。第一、盧植先生や伯珪先輩自身が、そんなことは望んでへんかったやろし。」 だが、変化の渦中においても連綿と受け継がれるものはあった。学園生活にかける思い、熱意である。 “おまえの思うようにやれ。だけど最後くらい、先輩面はさせろ。” 徐州校区生徒会会長・陶謙の厄介になると決めて、公孫瓉の元から離れることを決意し別れの挨拶に赴いたとき、公孫瓉はそういって、身に付けていたクロスタイを外して劉備に渡したものだった。丁度、公孫瓉と劉備の活動方針や考え方にすれ違いが見え始めていたころだった。袂を分かつことを劉備が必要以上に気に病まないように、せめてさっぱりと送り出してやりたいという、妹分に対する気遣いだったのだろう。己の信念を胸に駆けようとしている者同士だからこそ理解できる相似と相違。 「正しいか正しくないか、時節に合ってたか合ってなかったかは別にして、一所懸命、自分の信じるものを貫こうと頑張った人らがこの蒼天学園にはいた。それだけは忘れとうないし、そういう気持ちは後輩のうちらが引き継いでいかないかんことやと思うんや。」 盧植、公孫瓉、陶謙、袁紹、劉表。 劉備がこれまで厄介になった先輩達である。 劉備は、引退したり中道で果てたりした彼女らの思いを受け継ぐかのように、彼女らに由来するものをその都度身に付けていた。盧植からは張り扇。公孫瓉からはクロスタイを。そして、陶謙、袁紹、劉表からは新しくあつらえて貰った伊達眼鏡、総帥旗の旗竿に赤パーカーを。 それらを身に付けていると、苦難をものともせず学園生活を精一杯に駆け抜けた彼女らの思いが感じられる。それが劉備の力になる。 過去となってしまった人物だけではない。劉備と共に歩み続けてきた者達。自身の未来を劉備に預けようと集ってくる者達。 彼女らと思いと共に、玄徳は学園を駆ける。 帰宅部連合の門出のこの日。 指示を仰がんとする面々を前に、届いたばかりの帰宅部連合総帥旗を担いで号令をかける。 「皆の衆、ほな行こか!」 数多の先人たちの思いをはらんだかのように、帰宅部連合総帥旗が“宅”の緑字も鮮やかに蒼天に翻った。
471:はるら 2004/04/25(日) 16:52 >>470 アサハルさまのイラストを見事活用しきって・・・ 岡本さまお見事です^^ 個人的には、伯珪姐さんの、 >“おまえの思うようにやれ。だけど最後くらい、先輩面はさせろ。” が、かなりかっこよかったです^^
472:★ぐっこ@管理人 2004/04/26(月) 00:35 [sage] (゚∀゚)! 確かにカコイイ! 公孫瓉先輩、ホントにキャラとしてはつかみづらいところがありますが、 それでも盧植先生の「後輩」で、劉備の「先輩」でいたかったのですよね… 一代で駆け抜けた曹操と違い、劉備は多くの人の夢やら何やらのリレーを 引き継いでいたのですな(´Д⊂
473:はるら 2004/04/26(月) 18:26 ■■盧毓が行く■■ はじめましてー、盧毓です。 わたしはかなり前の連合生徒会の盧植の妹で、 今は蒼天会の文サマこと曹丕さんのもとでスカウトとして働いてます。 ところで、わたしはこの学園じゃあんま、たいした事じゃないかもしれませんけど、 結構数奇な学園生活を送ってるんですよー。 そこで!! そのお話を皆さんに話そうと思います。 〜 姉は総司令官!? 〜 と、いうわけで姉盧植との思い出について話していきたいと思いますー。 あれはあたしが中2の時でした………。 「あら、子家……。ここは連合生徒会の管轄の部屋よ。ダメじゃない…」 あっ、子家っていうのはわたしの事ですよ。で、話に戻ります。 「えっ、……でも、to不定詞がわかんなくって…」 姉は少し困惑してちょっと考えて、 「……わかったわ。不定詞は大切だからね。お姉ちゃんが教えてあげるわ!!」 姉はいっつもわたしに、いえ、皆に優しかったです。 姉の瞳を見てると、何かこう、”癒される”っていうか、なんか神秘的なモノがありましたね。 ……でも神秘的って言ったら張角さんの方が数枚上手でしたけど。 「あ、ありがとー!おね―ちゃん!!」 姉は教えるのが上手かったです。あ、劉備さんと公孫サンさんも姉に勉強習ってたんですよね!! しかも姉はそれでいて蒼天会の参事官。それに比べてわたしは……。うぅー。 っとと、話がずれちゃいましたね。 姉の教師魂に火がついて三十分くらい経ったとき、 コンコン! 「盧植さーん?連合生徒会の何進ですけど、いらっしゃいますか??」 「あ、はい!どうぞ!!」 「失礼しま〜す。………あ、よく整理してますね〜」 「い、いえ、それ程でもありませんよ」 姉はきちっとした性格だったので整理整頓がよくできていてこの部屋もとても綺麗でした。 それにしても何進さん、何進さんの方が姉よりも位高いのに何か立場逆みたいに見えますよね。 「それで、今日は何でまた??」 「あっ、いや、最近張角さんが大変なことになってるじゃないですかー。 あっ、でも私は張角さんの声はいい声だと思うんですけど、蒼天会サイドはそうは思ってないみたいなんですよ。 それで実は盧植さんを総司令官として張角さんと戦ってもらいたいんですけど……、どうでしょうか?? …あ、嫌なら良いんですよ!!」 「…………身に余る光栄です…私なんかでよければ……」 「盧植さん、ありがとう!!。任命式はまた日を追って知らせますんで、今日はこれで!」 で、何かわたし、何進さんの眼中に完全に入ってなかったっぽいです。 うぅー、少しは気ずいて下さいよぉ〜。 で、それから二日後に任命式があったそうです。 ………え、わたしですか?もちろん入れませんでしたよ。 忍び込んだんですけどね、捕まって怒られてしまいました。でも偶然通りかかったおねーちゃんに助けてもらいました。 おねーちゃんありがとー♪ というわけで、今回は姉盧植と何進さんの邂逅をわたしが 偶然見てしまった事を話させていただきましたー。 この後姉は、皇甫嵩さん、朱儁さん、丁原さんらと協力して張角さんを追い詰めていったんですね。 そして姉はちょっとした事で総司令官を辞任させられちゃうんですよね。 しかしそれはまた別の物語。またの機会に話させてもらうとしましょう。 それじゃ、またね〜〜〜!!!! ― 盧毓が行く〜姉は総司令官!?〜 完 ―
474:はるら 2004/04/26(月) 18:30 今回の作品は盧毓が語り部として今までの事を振り返っていく、 というもので一応短編集チックなモノにしようかなと思っています(w 第一弾は盧植と何進の会話でそれを盧毓が聞いてしまう、というものです。 ・・・かなり無理がありますよね、スイマセンm(__)m
475:岡本 2004/04/26(月) 23:12 >国重高暁様 虎と鷹。こういった何かに喩えるものを現代学園に置き換える作業は難しいですがその分、書き手の 方の解釈が伺えて興味深いです。国重様の場合は鷹=>接着剤ですか。二股膏薬にもつながりますね。 >はるら様 著名な人物の日常・非日常を裏から見たら、という切り口は面白いですね。 現実のほうでも、中郎将任官の打診・根回しが非公式にあったかも知れません。 このような作品を拝見すると、現実の三国志を女子高生の学園ライフにかなりの 精度で置き換えることは不可能ではないと実感します。...私も精進しますか。 >ぐっこ様、那御様 やたら長くてくどいマニアな話で恐縮でした。 関羽ファンの私の妄想が暴走したようで、注意したはずなのに比重がもろ偏ってますし。 しかし、なぜに廖惇の人気が高い?!
476:★ヤッサバ隊長 2004/04/28(水) 00:19 よー、皆。あたしさね。 え?文章だけじゃわかんないって? しゃーない、面倒いけど自己紹介するか。 あたしは姓は龐(ホウ)、名は統。あだ名は士元。襄陽棟出身。 世間じゃ「鳳雛」って言われて、ちーとばかり名前が知られてる女さね。 だけど、何故かセットで覚えられている「臥龍」諸葛亮孔明の方が知名度が高いだな、これが。 …ふん。どうせ、あたしゃ不細工で目立たない女だよ。 さて。今日は、そんなあたしが劉備さんの幕下に加わった時のエピソードでも話してやるかね。 ん? そんな話聞きたくない? やなこった、嫌でも聞かせちゃるわ。 ● 鳳凰飛翔 ● あれは、劉備さんが荊州南部を統一した頃の話。 その頃のあたしゃ、長湖部の連中と一緒に行動する事が多かったっけ。 けど、あそこの上層部の連中ったら、あたしの事を口を揃えて「不細工」だとか抜かしよった。 そんな所にいたって気分が悪くなるだけだし、あんまりうだつが上がりそうになかったし、周瑜が引退した後、 魯粛の薦めで友人である孔明のいる帰宅部連合に参加する事になったんだけど……。 「なあ孔明。こないな娘が、ホンマにあんたの言っとった『鳳雛』なんか?」 部長の劉備さんってば、あたしのラフな格好を見てこう言い放ちよった。 やれやれ、人望厚い天下の劉備玄徳ともあろうお方までも、あたしの外見で判断して見下すなんてねぇ。 やっぱり所詮器の小さい奴なんだろうか…。 「いいえ、部長。外見で人を判断してはいけません。 この女性こそ、紛れも無く私の友人である『鳳雛』龐統です」 「ん〜、さよか。せやけど、ウチの方針としてまずは『班長』からやってもらおか」 劉備さんは、まだ私の力量っつーもんを理解していないようだった。 しょうがないので、とある班の班長になってみたものの、あまりにも仕事の中身がショボかったので、とてもやる気が起きなかった。 周りの生徒達は、私のボサボサの髪に分厚いメガネ、さらにはそばかすだらけの顔を見て、皆避けていたので、余計気分が悪かったし。 酒でも飲んでなきゃやってられなかったよ、ホント。 そんな訳で、とうとう班長の仕事をクビにされようかという頃、事態は一変した。 あたしを帰宅部連合に推薦してくれた魯粛から、劉備さんに書状が届いたのだ。 その後、慌ててあたしの元を訪れた劉備さんは、これまでの態度を一変させ、土下座しながら私に訴えかけてきた。 「龐統はん、ウチが悪かった! あんたの才能を、もう少しで潰してしまう所やった!! これからも、ウチらの為に働いて下さい!!」 どうやら魯粛が、あたしの為に世話を焼いてくれたようだった。 あたしは決して自分の実力に自惚れているつもりは無かったけれど、それでもあたしの事を正しく評価してくれたのだから。 「劉備さん、顔を上げて下さいな。 あたしゃ、そーゆーことをされるのが苦手でねぇ…ホント」 照れ隠しに、そう言ってみた。 帰宅部から除名される危機は去ったのでホッとしたのは確かだけど。 ともあれ、その後孔明の強い進言もあったのか、あたしゃいきなり孔明の次席について仕事をする事になった。 ついでに言っておくと、それまで溜まっていた班長としての仕事は半日で終わらせた。 「しっかしさぁ…アレだよねぇ。 あんたも運が悪いというか、何と言うか…。 あんたが部にずっと残っていたら、もう少し帰宅部のピンチを回避出来たかもねー。 少なくとも、関羽が暴走する事は無かったんじゃない?」 それから数年後。 あたしは卒業の際、既に学園を卒業した簡雍先輩と出会った。 酒好きという共通点もあり、互いに先輩後輩の垣根無しで、良く夜通し語り合ったもんだった。 今でも、その交友は続いている。 ちなみに、あたしが部にいられなくなった直接の原因である通称「落鳳事件」の際には自主退学も考えたが、勉学第一と考えて踏みとどまった。 「歴史に『IF』なんて禁句さね。 それに、もし『あの場』にあたし一人いたところで何かが変わったとは思えんし」 「ふーん、相変わらずの達観ねぇ。 どう?卒業記念に一杯やらない?」 「おっ、いいねぇ」 おっ、孔明の奴もこっちに来たみたいだ。 あいつってば、帰宅部の存続に奔走する余り、学業をおろそかにして単位を落として落第たあ、本末転倒だねぇ。 まぁ、あいつらしいって言えばあいつらしいけど。 「お二人とも、お揃いのようで」 「やー、落第生」 わざと強調して言ってみる。 これくらいからかっても良いわな。 「不注意で階級章を取られて、リタイアした人に言われたくありませんね」 「そう言うのを五十歩百歩って言うんだぞ、あんたら」 簡雍先輩の鋭いツッコミ。 この人、ボケだけじゃなくてツッコミまで出来たのか。 「悔しかったら、あたしみたく平穏無事に学園を卒業すりゃ良かったのにさ」 「…ふぅ、あんたにゃ勝てんよ。色んな意味で」 梅の花が咲き始めた校門を、3人で後にする。 ま、これからも何とかなるさね。 好きな酒と、かけがえのない友がいれば……。
477:★ヤッサバ隊長 2004/04/28(水) 00:29 てな訳で、三国志ファン(特に蜀ッカー)ならば良く知っている龐統初登場のエピソード+αを書いてみました。 本人視点からの内容という事で、あまり目新しいネタを入れられなかったのはアレですが…。 ちなみに後半部分の龐統卒業時の話に、矛盾点などのツッコミがあれば遠慮なく指摘をお願いします(^^;
478:玉川雄一 2004/05/01(土) 21:45 ◆ 学園世説新語・第六話 〜豪華三本立て! 荀勗の名門でいってみよう!〜 ◆ はぁい、アタシは荀勗。潁川の荀氏っていったらみんなも聞いたことあるんじゃないかな? 自分で言うのもなんだけど、まあちょっとしたお嬢様ってわけなんだなこれが。 …あー違う違うの、別にそんなこと自慢したいんじゃなくて! 今日はね、アタシの実力の程をちょこっとだけご披露しちゃおうってわけ。 清流会の七光りじゃないってところ、よーく見ておいてね。それじゃいってみよー! ★ その1・絶対音感頂上対決! ★ えーと、やっぱり自慢になっちゃうかなあ? アタシってば音感には自信があるのよ。 これは決して思いこみじゃないんだよ? オーケストラ部の人たちだって認めてくれてるんだから。 それで、みんなが使ってる楽器の調律をやったわけよ。 そうそう、どうしても合わせられない音階がひとつあったんだけど、 アタシは以前に趙で聴いたカウベルの音がそれだ!って閃いたの。 さっそく趙の学区からありったけのカウベルを集めてもらって調べたら、 そのものズバリの音が見つかった、なんてこともあったわね。 ちょっとした大仕事だったけど、効果のほどは覿面ね。 試しに演奏してもらったら、これまでよりは確実に音が良くなっていたわ。 微妙な、本当に微妙な差なんだけど、分かる人には分かっちゃうんだな。 『闇解』(これでも褒め言葉よ)なんて呼んでもらっちゃって、悪い気はしない… のだけど。 一人だけ、そうたった一人だけ文句ありそーな顔をしてる娘がいたの! その娘は阮咸。ほら、阮籍っているじゃない? 気分のままに好き放題しててさ、 何様のつもり? ってカンジでアタシは嫌いなんだけど… って、ごめんあそばせ。 その阮籍の従妹なんだけど、悔しいけど音楽のセンスはなかなかのものを持っているのよね。 クラシックギター同好会をやってたりするんだけど、 ズバリ彼女の名前がついた“阮咸”なんてモデルが人気らしくてね。 ううん、別に羨ましいわけじゃないのよ? アタシは他人の実力だって認める…つもりだし。 なにせ彼女も『神解』なんて呼ばれちゃってね、まあ学園でも指折りの音感を持ってるって評判なの。 で、アタシが気に入らないのはよ? 言いたいことがあるんならはっきり言えばいいのに、 アタシの調律した演奏を聴いててもなーんだか文句ありげな顔して黙ってるのよ! あーもうムカつくったらありゃしない! さすがのアタシも腹に据えかねて、 始平棟長に左遷してやったわ。あら、ちょっと意地悪だったかしら? ……でね、ここからはオフレコなんだけど。 倉庫の掃除をしていたら、学園設立のころに使われていたモノサシが見つかったの。 これがまた年代物のくせに、もうこれこそがスタンダードっていう精巧さだったわけよ。 それでこっそり調べてみたら、どうもアタシの調律はびみょーにズレてたんだなこれが。 でもでも、ちょっぴりよちょっぴり! ほんの黍(あわ)一粒分だけだったんだから! …そりゃ、アタシだって完璧ではないってことよ。謙虚にならなきゃね。 でも癪だから阮咸には言わないでおくわ。 ★ その2・違いの分かる女 ★ えーっと… そうそう、たしか、安世(司馬炎のこと)が蒼天会長になってからのことだったんだけど。 ちょっとしたパーティーをしよう、って話になってね、 そしたら安世が趣向を凝らした内容にしよう、とか言い出して、 まああの娘もちょっとかわってるところがあったんだけどさ、タケノコご飯を炊く、ってことになったのよ。 何とも渋い趣向もあったもんだけど、 安世はそりゃもう乗り気で材料の調達やらかまど(本格的!)の手配から指示して回ってたっけ。 さて、当日になってみれば気合いを入れただけあって、出来映えはさすがのものだったわね。 みんなたいがい舌の肥えた(それなりに、ね)連中ばかりだったけど、絶賛の嵐で安世も喜んでたわ。 そこで水を差すつもりはなかったんだけど、アタシは気付いてしまったの。 「これ、使い古しの木を薪にしてかまどの火を焚いてるよね」って。 みんなは信じようとしなかったけど、かまど担当の生徒に訊いてみたらどうしても薪が足りなくて、 古いリヤカー(というか大八車ね)を解体してその車輪の木を使ってたんだって。 どう、アタシの目利きもなかなかのものじゃない? え? 薪が違うと何か影響があるのか、ですって? そりゃアレよ、ご飯の炊きあがりとか、味の染み込み具合とか… だからァ、その辺の微妙な機微がね、違いの分かる女ってやつなのよ! 続く
479:玉川雄一 2004/05/01(土) 21:51 ★ その3・仁義なき戦い“潁川死闘編” ★ アタシは親戚がいっぱいいるんだけど、おなじ潁川の鍾氏なんかは家族ぐるみで色々お付き合いがあるの。 ウチの文若(荀彧)従姉さんや公達(荀攸)従姉さんもお世話になった元常(鍾繇)従姉さんなんか、 同じ女の子のアタシからみても憧れちゃうぐらい素敵な人で! 一緒に活動できなかったのが残念なんだけど、その元常従姉さんの妹がね… とくに士季(鍾会)! アイツはもう天敵ね。 あのマセガキってばちょっと口が達者だからって憎ったらしいてばありゃしない… ごほんごほん! えーと、まあともかく士季とはちょっとばかし相性が悪いっていうかウマが合わないっていうか。 で、ウチの実家にはちょっと自慢の(これは自慢していいわよね)ルージュがあるんだけど。 母さんが愛用してて、自然な感じなんだけど自己主張も忘れないっていうか、 よくぞこの色を選んだ! みたいな逸品なわけ。それをあの士季が目を付けてね。 まったくどこで覚えたのやら(※『学園世説新語』第四話参照)使ってみたい、とか言い出したのよ。 当然、そんなこと許すつもりはなかったんだけど… 士季ってばあろうことかアタシの筆跡を真似て手紙を偽造すると、母さんの所から取り寄せちゃったの! 信じられる!? それで本人知らんぷりして返そうとしないんだから腹が立つったらありゃしない! だいたい騙される母さんも母さんよ! いくら身内(実は母さんは鍾氏の出身なの)だからって、 実の娘の筆跡を偽造されても気付かないなんて… それだけアイツの腕前が立つってことなんだけどね。 それどころか、母さんってば『士季ちゃんにもちょっと貸してあげればいいじゃない』なんて、 あーもう姪には甘いんだから! マセガキの得意げな顔がちらついて堪らないわ。 で、他人の助けは借りられないと、アタシはひとりでも戦うことを決意したの。 突然だけど、アタシは絵の方もちょっと心得があってね。美術部と漫研からスカウトされたこともあったっけ。 その線で行こうと決めたところにちょうどいい突破口が開いたってわけよ。 士季とそのすぐ上の姉の稚叔従姉さん(鍾毓。まあこの人には個人的な恨みはないんだけど)が、 寮の部屋を改装したの。二人は今の部屋からそこに引っ越す予定らしくて、 アタシもチラリと覗きに行ったんだけどあなたそりゃ実家じゃないんだからって程の豪華さだったわ。 そこでアタシはちょいと筆を振るったわけなんだけど、元常従姉さんの絵を描いたのよ。 ほら、学長室に歴代の学長先生なんかの肖像画とか飾ってあるじゃない? あんなやつね。 自分で言うのもなんだけど、そりゃもう従姉さんが現役だった頃の姿が浮かぶ様なほどの出来映えだったわ。 それを例の部屋の壁にひっかけといたら、もうクリーンヒット級の大当たり! 引っ越してきた二人がそれを見て、元常従姉さんのかつての姿を思い出しちゃったみたいなのよ。 ほら、あの娘たちってば元常従姉さんにベッタリだったでしょう? まあ元常従姉さんの方も姉バカっていうくらいに二人を可愛がってはいたんだけど。 で、あの二人こんな部屋にいると元常従姉さんを思い出しちゃって耐えられない、ってんで 引っ越しは取りやめにしちゃったんだって! 士季のヤツに一泡吹かせたと思うとせいせいしたわ。 それであの娘も懲りれば良かったんだけど、相変わらずだったわね… アタシたち身内同士の話で済んでいればまだしも、他人様にまで迷惑かけちゃあおしまいよ。 益州校区に遠征して帰宅部連合を解体した後、また手紙を偽造して鄧艾先輩を陥れたあげくに 自分は姜維に焚き付けられて自立しようなんてバカな事を言いだした時には心底呆れたわね。 さすがのアタシもかばうにも限度があるし、 ヘタするとアタシ自身があの娘の身内だからって疑われかねなかったから 心を鬼にして司馬昭会長に彼女の討伐を進言したわ。 まあ何とか大事に至らず済んだけど、とばされた士季は自業自得よね。 ちなみに例のルージュなんだけど、士季がリタイヤして退寮になったとき、私物整理の際に取り返してきたわ。 まったく、こんなご時世に大それた事なんて考えるものじゃないわよね。 アタシはお陰様で今の蒼天会でいいポジションをもらってるし、うまいことやってみせるわよ。 潁川荀氏の看板も使いよう、ってね。 さて、と。最近茂先(張華)が何かとうるさいからしっかり相手してやらなくちゃね… おしまい
上
前
次
1-
新
書
写
板
AA
設
索
★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★ http://gukko.net/i0ch/test/read.cgi/gaksan2/1013010064/l50