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★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★
495:takahisa 2004/08/12(木) 18:11 [mail@takahisa.net] 皆様、始めまして&お久しぶりです。 覚えている方は少し(ていうか、いない)と思いますが、私、昔「takayuki」と言う名前で何度か書き込みさせてもらいました。 結論から言うと、「takayuki=takahisa」ってことです。あと、別の名前で書き込んでいたこともあるような気が…。 えっと、まあその、一応、「しょーとれんじすと〜り〜2『曹操の涙』」の著者です。 手ぶらで復活ってのもアレですんで、『曹操の涙-りめいくばーじょん-』でも…。 今見ると2年前の文章は幼稚臭いなーとも思ったりしてかなり恥ずなぁと思ったんですが、 今書き直してもどうせ意味のわからん文章になっちまうんだろうなぁ…。 まあ、リハビリみたいなモノ(なんせ2年間来てないものでして…)なんで、「設定とは違うぞ( ゚Д゚)ゴルァ!takahisaしっかりしる」という点があればハリセンで突っ込んであげてください。 …というわけで、皆様以後宜しくお願いします。 しかしまぁ、『曹操の涙』ってかなりヤバい作品ですな。 何ですかあの郭嘉!もうtakahisa逝ってヨス!みたいな。 あんなの郭嘉じゃねぇ…(涙 なんか独り言だけでだいぶ使ってしまったな…。 とにかく、「曹操の涙-りめいくばーじょん-」スタートです! ― 曹操の涙 前編 ― 官渡公園にて袁紹を倒し、今やこの学園都市の北方をほぼ制圧した、連合生徒会会長、曹操孟徳。 彼女は今、冀州学院校区にある連合生徒会会議室にいた…。 生徒会室にカツ、カツと靴の音が鳴り響く。その音の主は、「連合生徒会 会議室」と書かれているドアの前で止まった。 「…ここだな…」 レーシングスーツをまとい、フルフェイスメットを2つ抱えた夏侯淵が呟いた。 ノックもせず、「孟徳…いるか?」と部屋に入って行く。予想通り、会議室の一番奥のソファーに、曹操が座っていた。どうやら寝ているようである。 起き上がった曹操は、「んぁ…もしかして、寝てた?」と夏侯淵に問う。 「ああ、爆睡してた…。それより、大丈夫なのか?」と夏侯淵は問い返した。 「大丈夫って…何が?……………っ!!!!!」どうやら気がついたらしい。 「あああああーーーーーっっっっっ!!!!!」…急に叫びだす曹操。 それを見て、夏侯淵はフルフェイスメットを1つ、曹操に投げた。「まだ間に合うだろ?出発は…9時だったな」こくりと頷き、曹操は走り出した。夏侯淵もそれを追う。 すべるように非常階段を降り、止めてあった夏侯淵の愛機・CB400Fに跨る。 「…さて、行くか。司隷までの道はピンクパンサーズに確保してもらってる」キーをひねりながら、夏侯淵が言った。 「さすが妙才!頼りになるわね…」曹操は右手を振り上げる。「目標は司隷!出発進行〜!」その右手を振り下ろしながら、曹操が叫んだ。 フルフェイスヘルメットを着けながら、夏侯淵が答えた。「了解!飛ばすからな!…振り落とされるなよ!」 力強くアクセルを踏む。もの凄い轟音を残し、バイクは走り出した。 司隷へと続く道。両端にはピンクパンサーズが警護している。その中を夏侯淵と曹操は駆けていく。 「絶対に…郭嘉に、絶対会わないと…」 郭嘉奉孝。 思えば曹操はかなりこの人に世話になっていた。 部費が足りない時、競馬で75万を儲けたてくれたこともあった。 ―もっともその時、こっぴどく陳羣に怒られたりもしたのだが―。 そして、北伐。 軍師として獅子奮迅の活躍、そして烏丸の残党の降伏の時間をピタリと当てた。が…。 …それ以後、連合生徒会室で彼の姿を見ることは、一度しかなかった。 その病名は、ALS―筋萎縮性側索硬化症。 脳からの信号が筋肉から伝わりにくくなる病気である。 病状が進むと呼吸が浅く、困難になったり、何もないところでよく転ぶようになる。病状が進むと、寝たきりにもなる病気である。 校医の華陀曰く、「入学当初は卒業まで持つはずだったのに…」らしいが…。 ―今となっては、それはどうでもよいこと。 …ふと、曹操の頭に郭嘉の台詞が浮かんだ。 「このあとは荊州、長湖だな。まあ、まかせとけって。最近自信が出てきてさ、あっと驚く戦略戦術が次から次に沸いてきてんだからな。これからは会長にもラクさせてやれるよ」 …ずっと郭嘉との思い出を思い浮かべていた曹操を現実世界に引き戻したのは、夏侯淵の声だった。 「…孟徳!近道だ、揺れるからしっかり捕まっとけよ!」 「へ!?」曹操が答える前に、夏侯淵はハンドルを右に切った。森の中へ入っていく。 「ちょっ…ここ、大丈夫なの!?」夏侯淵に捕まりながら、曹操が言う。 夏侯淵はちょっと間を置き、「司隷への近道って、曹仁が言ってたが…」と後ろを振り向く。 深くて暗い森を突き進むバイク。 数分後、「おし、森を出るぞ!」と夏侯淵が叫んだ。それと同時にバイクは森を抜け…宙を舞った…。絶叫する曹操。 「妙才!な、なんで飛んでるのーーーーーッ!?」
496:takahisa 2004/08/12(木) 18:12 [mail@takahisa.net] ― 曹操の涙 中編 ― 「待ったーーーーーッ!」曹操が叫ぶ。郭嘉と郭嘉の両親が辺りを見回す。やがて、空を見上げると…。 ズッドーン! …ギリギリセーフ! 郭嘉の両親は驚きで顔面蒼白になっているが、郭嘉はいたって普通の様子であった。 この学園では何が起きてもおかしくないと、身をもって学んでいるからだろうか。 …バイクを降りると曹操は一直線で郭嘉の元へ走った。「会長…見送りか?」と、いつものように郭嘉は言う。 「そう…見送りよ…うっ…」いつの間にか、曹操の目には涙が浮かんでいた。反応に困る郭嘉。 少し離れたところで見守る夏侯淵。いつのまにか曹仁を先頭にピンクパンサーズも到着していた。 「それよりも…」郭嘉の一言に曹操が顔を上げた。「『これからは会長にもラクさせてやれるよ』…って言ったけど、嘘になっちまったな…。許してくれ」と頭を下げた。 「いや…もういいよ…今はゆっくり休んで…また、私と一緒に…」曹操の一言に、郭嘉は首を縦に振った。 「当たり前だ。またもう一度、会長のために働くよ。ちゃんと待っててくれよ?」二度三度と曹操は首を振る。 郭嘉の両親が、郭嘉の耳元で何かを呟く。「わかった」と郭嘉は答える。 「すまん、会長。もう行かないと…」すまなさそうに郭嘉が言う。曹操は右手をポケットに突っ込み、何か探しているようだ。 「あ、あった…。郭嘉、これ!」曹操が差し出した右手には、古いお守りがあった。曹操がいつもポケットに忍ばせていたお守りである。 曹操がどんな危機に陥っても、このお守りを握っていればどうにかなったという、結構有名なお守りである。 「大切な物だろ?預かってていいのか?」郭嘉が問う。「大切だから預けるの…。ちゃんと…返しに来てね…」 まだ半泣きの曹操の発言を聞いて、郭嘉は笑い出した。「ハハハ、嬉しいな!それだけ私は信頼されてるんだな!…何があっても返しに来るからさ、ちゃんと待ってろよ?」 そう言いながら郭嘉はお守りを曹操から受け取り、握り締めた。 「そんじゃ…会長の武運を祈ってるぜ」といいながら、車に乗り込む。 車の窓を開け、曹操に向かって手を振る。 「んじゃ、会長…元気でな!また帰ってくるからさ!…夏侯淵も曹仁も、見送りありがとな!」夏侯淵と曹仁にも手を振る。 「ああ…。お大事にな。」と夏侯淵。「また来いよ!」と曹仁。 車の窓が閉まり、車が走り出す。 「よーし、みんな!郭嘉を見送るわよ!…ミュージックスタート!」頬の涙を拭い、曹操が言った。 とたんに、司隷特別校区中に生徒会の突撃行軍歌が流れ出す。曹仁の指揮でピンクパンサーズのバイク部隊が郭嘉の乗る車を囲む。 そしてだんだんと野次馬が集まり、辺りは「英雄の出陣」という感じになってきていた。 「♪誇り高き学園の為に 命を賭けて敵を討て ♪胸に黄金の勲章をつけた勇者を 皆で称えよ我等が連合生徒会…」 「ヒュー、突撃行軍歌で見送りか…まるで英雄気分だな…」 外を見ながら郭嘉は呟いた。その右手には曹操から贈られたお守りが握られている。 空は素晴らしい蒼に染まっていた…。
497:takahisa 2004/08/12(木) 18:14 [mail@takahisa.net] ― 曹操の涙 後編 ― 夏休みが終わって、曹操が郭嘉を見送って、2ヵ月後。 曹操は赤壁の決戦に敗北、失意のうちに連合生徒会室にいた。 「郭嘉がいれば…ね…」 郭嘉がいれば、どうなっていただろうか。 赤壁での敗戦はなかったかもしれない。もしかすると、孫権・劉備を倒し、学園のほとんどを手中に収めていたかもしれない。 椅子から立ち上がり、夕焼けの見える窓際へと行く。 誰もいない部屋。コツ、コツと足音だけが聞こえる。しばらく曹操は夕日を眺めていた…。 バタバタバタッ!誰かが走っている。「も、孟徳ッ!大変だッ!」と、雪崩のように夏侯淵が部屋に入ってきた。 「何?何処かから攻められたの?」窓の外を見ながら、曹操が言う。 「違う!それ以上に大変だ…。郭嘉が…ッ、死んだ…」 曹操は後ろを振り向き、一言「えっ…」と叫ぶと、その場に崩れ落ちた。「孟徳!?」と夏侯淵が駆け寄る。 「大丈夫…。嗚呼、哀れや郭嘉、痛ましや郭嘉、口惜しや郭嘉…。ありがとう、郭嘉…。私、あなたのことは、絶対に忘れないから…」 「…それから孟徳、これを…」と夏侯淵が取り出したのは、真っ白な封筒。「曹操会長」と宛名が書かれている。 「会長、すまないがもうヤバいらしい。主治医は大丈夫って言ってるが、自分の体は自分が一番わかってる。 まあ、悔やんでも仕方ないんだが…それより、二度も裏切ってしまって、申し訳ない。 これからは天から会長を見てるから。会長は学園の統一目指して頑張ってくれ」 そして、その封筒には、曹操が渡したお守りも入っていた。 「追記…。そのお守りのおかげかわからんが、予想以上に生きれた気がする。…ありがとう」 …曹操はただ泣くしかなかった。夏侯淵は何も言わず、無言で部屋を後にした…。 ― 終わり ― …っていうか、郭嘉って殺してもいいですよね…? それから後半は眠くて疲れてかなり手抜き。誰か書き直して下さい_| ̄|○ ちなみに今回、『曹操の涙』をリメイクしようと思った(ていうか、再び「学園三国志」に参加しようと思った)のは、雪月華様の「烏丸反省会、懊悩」の最後に、 >このあとほどなくしてtakayuki様の「曹操の涙」にシフトします というのを発見、「こんな素晴らしいお話の後に俺のクソッタレな、そして設定無視なお話を見せてしまっては読んでいる方もそうだが雪月華様にも失礼だッ!」という気持ちからです。どうでもいい話ですが…。 ちなみに現在は帰宅部連合オールスターズvs曹操軍団オールスターズの野球のお話を執筆してます。 「西方の守護神」郭淮、ついに復活…!?の予定。昜が!陳泰が!姜維が!夏侯覇が!グランドを所狭しとかけまわる!…予定。 ていうかあんまり三国志に詳しくない(ちょっと読んだ程度)の知識では架空の話しか書けないんですねぇ…。 それから、もひとつ予告を。 「学園三国志ゲーム化計画」がtakahisaの脳内で進行中です。確か昔、誰か(=takahisa)が宣言してからあんまり進行してなかった気が…。 ひとまず導入部分だけ作って公開しますんで、お楽しみに…。
498:★ぐっこ@管理人 2004/08/13(金) 02:41 。・゚・(ノД`)・゚・ お久しぶりです、takayukiさま改めtakahisaさま。 曹操の涙リメイクバージョン、確かにお預かりしました… あー、なんか今やってるゲームが結構こういうシーンとかある ものだから、余計に胸にくるなあ…。勝手にBGMが…。 ええ、郭嘉は残念ながら、本当に死んでしまう役回りです。 急激に進行が早まったALSで、一日ごとに身体のどこかが動かなくなってゆく 状態でありながら、誰にもそれと悟られることなく、立っていられる最後の 日まで、曹操の側にいるわけで。 演義の構想だと、セクションごとのオムニバスになるので、官渡以降のあたり は、実は郭嘉視点になる予定なんですねえ…(^_^;) 彼女の死に際しての態度とかは、これとはちょっと違ってくるのですが、もちろん 「曹操の涙」の郭嘉もまた、学園三國志版郭嘉の一つ…。 それにしても新企画をイロイロひっさげてらっしゃる(゚∀゚)! 期待しておりますよ〜!
499:takahisa 2004/08/13(金) 02:57 [mail@takahisa.net] お久しぶりですぐっこ様。 ひとまず2年分の遅れを取り戻すため怒涛の勢いでSS投下&ゲーム製作をするつもりなんで、まあよろしくお願いします。 ゲーム化なんですが、まずは素材集めからやってます。 何故かRPGツクールというソフトには中世っぽい素材しかないので現代風の素材を集めないといけないんですな…。 オマケにゲームの方向性なども決めないといけないわけでして、できればこの掲示板にゲーム化の本部スレでも立ててもよろしいでしょうか? ひとまずオープニングだけでも、今月のうちに…。 それでは、ひとまずSS書いてきます…w
500:国重高暁 2004/08/31(火) 17:15 [takaaki@wb3.so-net.ne.jp] ■■ レリーフ ■■ (やはりあの時、素直に階級章を返上すればよかったか……) 于禁は、深く後悔していた。 思えば、今を去ること二ヶ月前。 彼女は、樊棟を守る曹仁の援護に赴いた。しかし、その正門前に罠があった。 どこからか流れてきた油に足をとられ、同行したホウ徳とともにスリップ。巨大な大阪城の置物に頭から激突し、目を回したところを、帰宅部連合の将軍・関羽に捕らえられたのである。 敵陣内へ引き出され、ホウ徳はその場で階級章を返上。しかし、于禁はこれを選択しなかった。 「今回は思わぬ計略のために敗れたのだ。ここで終わるわけにはいかぬ!」 熱意が通じ、彼女は階級章剥奪をまぬかれた。そして、帰宅部連合から長湖部を経、このたび生徒会へ戻ってきたのである。 ところが、生徒会は既に「生徒会」ではなかった。姉の後を継いで会長となった曹丕が、「献サマ」こと劉協に蒼天会長を禅譲させ、生徒会を発展的解消させたのである。 于禁は、それから冷遇されていた。安遠将軍に任命されたものの、どうにも遠征の機会がないのである。 捕囚されている間、心労ですっかり青みの抜けた髪も、今やますます色彩を失っており、彼女がかつて学園の剣道部協会の総長であった頃の面影には程遠い。 (やはりあの時、素直に階級章を返上すればよかったか……) 于禁は、深く後悔していた。 「……文則ちゃんね」 「いかにも」 新・蒼天会長じきじきの呼び出しである。重要任務の依頼に違いない。 「本日は、どのような用件でございましょう?」 「あんた、長湖部へ行ってくれないかしら」 (なるほど、遠征の要請か……) 于禁は、噂に聞いていた。妹分の関羽・張飛を相次いで失った劉備が、このたびリベンジの兵を挙げたということを。 彼女は一礼して、言った。 「わかりました。早速、長湖部へ援軍を送り、私を解放してくれた恩に報いるとしましょう」 「……いや、その前に」 曹丕の口から意外な言葉が漏れる。 「その前に?」 「ギョウ棟を視察してきてほしいわ」 (遠征の前に自勢力の視察……一体どんな思惑があるのだろう?) 于禁は、曹丕に彼女の本心を聞いてみた。 「会長、そんなことをする必要はないのでは?」 「必要があるから言ってるんでしょ!」 拳で机を強く叩くと、曹丕は更に言葉を続ける。 「実はね、ギョウ棟の構内に新しくできたものがあるの」 「剣道場か?」 「違う、孟徳記念館よ」 前生徒会長(であると同時に曹丕の姉)の曹操は、于禁が捕囚されている間に引退したが、現役のうちから、巨大な記念館を造らせていたのである。 「ほーお、ついにそんなものができたのか……これは視察する価値があるな」 「でしょ、でしょ? だから、長湖部より先にそっちへ行ってほしいってわけ」 于禁はぽんと手を打って、言った。 「わかりました。私、これより、ギョウ棟を視察してまいります」 出発しようとする彼女に、曹丕は最後の楔を打ち込む。 「たれが今すぐ行けと言った? 行ってほしいのは明日よ、明日」 「そうですか……では、明日は日曜日ですから、朝食をとったらすぐに現地へ向かいましょう」 于禁は一礼して、会長室を去った。 翌朝。 于禁がギョウ棟の正門をくぐると、陰から不意に飛び出してきた者がある。 「文則ちゃん、おはよう!」曹丕であった。 「会長、なぜここに?」 「あんた、孟徳記念館は初めてでしょ。だから、あたしが案内してあげるわ」 (な、何とありがた迷惑なことを……) 于禁の心に一抹の不安が募る。 「何か言った?」 「べ……べ、べ、別に……」 「じゃ、さっさとついてきなさい!」 于禁は小さくうなずいて、走る曹丕を追った。 学生玄関を左へ折れ、本校舎と塀との間を抜けると、グランドをはさみ、向こうに巨大な建物。自分が見も知らぬ施設である。 「すいません。今日は部下を案内しに来ましたので……」 曹丕の二人分無料入館願いは、あっさり認可されるところとなった。 彼女は于禁を連れ、ずんずん奥へ通っていく。 順路やフロアに所狭しと並べられた、姉・曹操の遺品。しかし、そんなものはどうでもよかった。 「会長。私は、ゆっくり時間をかけて見物したいのですが……」 「いいから、いいから!」 広い館内のガイドを、曹丕は一気に進めてしまう。 そして、最上階に設けられた「魏の君の間」へ到達した時のことであった。 「これは……前会長の等身大人形ですね。間近に見れば見るほど、小柄さがよくわかります」 「失礼なこと言わないの! その上を見なさい、上を」 指示されるまま、于禁は視線を移す。 「う、浮き彫りのようですが……」 「レリーフと言え、レリーフと! とにかく、それをもっとよく見なさい」 「そ、そうおっしゃいましても……あーっ!」 レリーフを凝視した次の瞬間、于禁はたちまち血の気を失った。 何と、彼女が関羽の虜となり、階級章剥奪を恐れてぺこぺこしているさまが彫られていたのである。 曹丕は、力強くこう言い捨てた。 「文則ちゃん……あんたは、永遠に、この情けない姿を見られる運命にあるのよ。姉さんも言ってたわ、『あんたを知って二年以上になるけど、階級章剥奪を恐れて降伏するとは思わなかった』てね」 この声を聞くなり、于禁は憤怒の形相で、のっしのっしと曹丕に歩み寄る。 そして、次の瞬間、鳩尾へ肘鉄砲を撃ち込んだ。後は、「魏の君の間」を出て一気に走り去るばかり。 「……文則ちゃん?」 曹丕がふらふらと立ち上がった時、彼女の周りにはもうたれの姿もなかった。 「あ、あいつ……蒼天会長に何ということを……」 曹丕は、ただ呆然とするだけであった。 翌日、蒼天学園事務局に、一枚の退学届が提出された。 いわゆる「五将」の筆頭として重きをなした于禁は、高等部二年の十二月、転校という形で学園史から姿を消したのである。 糸冬
501:国重高暁 2004/08/31(火) 17:17 [takaaki@wb3.so-net.ne.jp] いかがでしたでしょうか。 僕としては約四ヶ月ぶりとなる学三小説、 今回のテーマは「于禁の最期」です。 年表に、彼女の転校は「夏侯淵のリタイアと 同時期」と記されていますが…… 正史でも曹操より後に死んでいますので、 これは年表を修正してしかるべきでしょう。 以上、国重でした。
502:★ぐっこ@管理人 2004/09/05(日) 22:32 ( ゚Д゚)! 曹丕たんのサディスティックな面が最も現れているエピソード! 降った于禁も于禁ならば、それを容赦なく辱める曹丕も曹丕と… この件、誰にとっても後味悪いことになったでしょうね… でも今回は、于禁が最後の意地を曹丕に返したと言うことで…救いには ならないけど、ちょっと溜飲下がったカンジ。
503:海月 亮 2004/12/17(金) 03:17 こちらでは初書き込みの海月です。 やっとこさSSが仕上がったんで、もってきました。何気に全六話。 しかも詰め込みすぎて一話一話がバカみたいに長いので…全部見せるのにスレッドをいくつ消費するのやら… というわけで今回は第一話のみを置いていきます。 「風を継ぐ者」 -第一部 鈴音の鎮魂歌- 「ええっ、叔武と義封が…!」 「はい…帰宅部連合の勢いは抑えがたく、早急に援軍を要するとの事です!」 揚州学園の中枢にして、長湖部の総本部がある建業棟に、その報がもたらされたのは孫桓出陣の二日目でのことだった。 その報を受け、まだ幼さの残る長湖部代表・孫権の表情が驚愕に染まる。集まった幹部達にも動揺は隠せない。 孫桓軍団の"三羽烏"こと李異、謝旌、譚雄のリタイア。 そして追い詰められた孫桓とお目付け役の朱然が夷陵棟に押し込められた格好で孤立しているという、最悪の戦況。前線からの報告から察するに、孫桓の類稀な指揮能力を百戦錬磨の朱然がサポートすることによって、辛うじて現状を維持しているという有様である。 そのとき、孫権の右側、廊下側の壁に腕組みしてもたれていた、ロングの黒髪をきちんと整えた眼鏡の少女…いや、年齢的には、女性というべきか…が、これ見よがしに溜め息をつく。 皆の注目を集めたその女性…既に学園から卒業したものの、いまだに長湖部の顧問を気取っているかつての功臣・張昭は孫権をたしなめるように、口を開く。 「言ったとおりでしょ、関羽を処断したことがどういうことを意味するかって」 「うぐっ…でも、でもあっちが悪いんだよ! ボクだけじゃなくて、お姉ちゃん達のことやみんなのことまでバカにするなんて…」 「………………」 その一言に、ロバの耳に見える特徴的な癖っ毛の少女−諸葛瑾は、バツが悪そうに視線を逸らした。先に関羽の元に使いにいって、その「暴言」を直に浴びせられ、せがむ孫権にそれを一言一句過たず伝えた張本人こそ、彼女であったからだ。 「確かにあの態度は頭に来るわね…あたしのことまで、散々馬鹿にしてくれたみたいだし。でも、荊州学区さえ手に入れれば十分にヤツの鼻もあかせるし、送還させたって勢力はこっちのほうが上になるから、仕返ししたくたって手出しできなくなるわよ」 「うう…でも、飛ばしておけば厄介事がひとつ減ると思ったから…」 「ええ、そりゃあひとつは減ったわよ、その意味では正解。その代わり、呂蒙は関羽軍団残党の闇討ちにあって飛ばされるし、今劉備の怒りも買っちゃった意味では、大失敗じゃない。収支はマイナスだわ」 「…うう…だってぇ…」 ほら見なさい、と言わんばかりの口調の張昭に、部長たる孫権は完全にやり込められ、半べそどころかもう完全に泣いている。張昭の言い方もどうか、と思う他の幹部達も、その言葉が正鵠を射ている以上フォローの言葉も出てこない。 一人息巻く張昭と、泣きべそをかいている孫権、いまだ視線を逸らしたままの諸葛瑾、そして現状の居辛さと事の深刻さに何の言葉も出てこない他の幹部達…普段は孫権以下和気藹々と進行していくはずの長湖部幹部会議は、ここ数日はそんな重苦しい空気に支配されていた。その理由は、既に学園を去りながらも、いまだにこうして首を突っ込んでくる"御意見番"張昭の存在だけでないことは、誰の目から見ても明らか…今、長湖部全体が置かれているのは、その存亡の危機だったからだ。 -------------------------------------------------------------------------------------------- 事の発端は、荊州・益州の二学区を支配下に治めた劉備が、その統合生徒会長(←正史で言えば漢中王)の座に就いた事にあった。 かつては幽州近辺の非公認報道組織の長として、様々な実力者の庇護を受けながら各地区を流れ歩いていただけの少女が、遂に蒼天学園を三分する大勢力の一角を担うまでになったのだ。 早くから蒼天会の中枢部にいて、学園を動かす立場にあった曹操にすれば、実に面白くない話である。かつては自分の庇護の元に居たクセに、妙な野望をもって自分に歯向かい続けた挙句、自分と対等の勢力と権力を得る…曹操の性格を考えれば、黙って見ている筈がない。 だが、敵は劉備率いる帰宅部連合だけではない。それと手を結び、赤壁島で曹操の学園制覇の野望を頓挫させたもうひとつの勢力の存在が、劉備との全面戦争を躊躇わせていた。その存在こそ、今や孫姉妹の三女である孫権に受け継がれた長湖部である。 曹操はまず、長湖部を唆して帰宅部連合に当たらせることを考えた。 長湖部にしても、勢力拡大の為に荊州学区の領有、ひいては、益州学区までを制圧する遠大な戦略構想を抱いていた。だが、後に言う「赤壁島の戦い」のどさくさに紛れて荊州学区を抑えた帰宅部連合の為に、その戦略も大きな見直しを余儀なくされた。 曹操の蒼天会に対抗するために、劉備と結んだことが今や大きな癌となって、長湖部幹部を悩ませていたのだ。 曹操の申し出に議論百出する長湖部にあって、その重鎮の一人・諸葛瑾が一策を案じる。すなわち、劉備の名代として、荊州学区の生徒会長代行の座に収まっている関羽に個人的な友誼関係を持ちかけ、荊州学区併呑の布石にし、蒼天会に対抗する力をつけてからその申し出を受けるというものだった。 もし関羽がこれを突っぱねたら、それを口実に帰宅部連合との同盟を破棄し、このとき荊州を伺うために出張ってきていた曹仁をぶつけ、その隙に荊州を狙う…という二段構えの策だ。 その案が通り、言い出しっぺの諸葛瑾は関羽の元へと赴くが、関羽はそれ突っぱねるどころか長湖部を挑発するかのような暴言を吐く有様だった。口を渋る諸葛瑾からその口上を聴きだした孫権は、普段の彼女からはとても想像出来ないくらい激怒し、完全に頭に血が上った孫権の剣幕に押される形で、諸葛瑾が示した第二の策は決行された。 果たして曹仁と関羽の激戦が繰り広げられ、戦線は関羽軍有利の状況で進んでいた。蒼天会が送り込んできた大援軍も、関羽の水攻めによって壊滅、総大将の于禁は関羽の虜囚となり、名将(ホウ)徳を筆頭に多くの将が処断された。 それで勢いに乗ったことが仇となり、荊州学区は完全に手薄の状況となる。その一因には、荊州学区との境目に当たる陸口棟の責任者が、名将で名高い呂蒙から、その呂蒙の策謀で、当時学園全体ではまったくの無名だった陸遜にかわったこともあった。呂蒙はこの機を逃さず、荊州学区諸棟の責任者の調略にかかる。 関羽の勘気を被って後方支援を任されていた傅士仁、糜芳を筆頭に、長湖部の威容を恐れた各棟の責任者は先を争って帰順し、関羽の退路を断つことに成功する。 さらに曹仁の援軍として現れた徐晃の活躍もあり、関羽は荊州学区の外れにある、廃棄寸前の麦棟へ敗走した。そして長湖の大軍勢に包囲された関羽は、脱出に失敗してとらわれ、件の暴言に対する怒りの覚めやらぬ孫権の独断で、その部下もろとも処断されてしまったのだ。 その後、この復讐の機を劉備と共に伺っていたその義妹・張飛が、自身の不始末によって引退を余儀なくされたことで焦りを覚えた劉備は、学園生活最後のこの時期に、長湖部への復讐を遂げるための大号令をかけたのである。 関羽・張飛縁故の者達と、連合の荊州学区系構成員の意気は凄まじく、それを迎撃するために孫権の妹分の一人・孫桓が勇んで出陣していったのだが…その顛末は、冒頭のとおりである。 -------------------------------------------------------------------------------------------- 「まぁ、過ぎたことを今更言っても仕方ないわ。向こうが烏合の衆でないことが解った以上、こちらも戦い慣れた古参の手練で対抗すれば良いだけの話でしょ」 「で…でも、ほとんどの人たちはもう、引退しちゃったんだよ?」 大学生にもなってこんなトコに顔出してるあなたを除いては、なんて言葉が喉まで出かかっていたが、孫権はぎりぎりのところでその言葉を飲み込んでいた。多少感情を乱していても、張昭を徒に刺激することの愚は承知していた。 後ろに控えた谷利から手渡されたハンカチで涙を拭うと、孫権はすがるような目で張昭を見つめた。 これまで部を支えてきた周瑜や魯粛、そして先に不慮の事故でリタイアした呂蒙といったメンバーが居ない以上、今この場にいるメンバーで一番頼りになるのは張昭しかいないこともまた、孫権は理解していた。 流石の張昭も、頼りにされるのは悪くないと見え、柄にもなくちょっと照れ臭そうに視線を逸らす。この甘え上手なところも、孫権の長所であり武器である。 「ん…まぁ、そうだけどさ。幸いにも韓当はまだ残っててくれてるし、周泰や凌統、徐盛だっているじゃないの。連中を駆り出して、当たらせるのが最善手ね。山越高や対蒼天会の護りは呂岱や賀斉で十分だし」 そこまで話し、急に普段どおりの真面目な顔に戻る。 「ただ、総指揮を任せるとなると適任は…」 「それだったら、俺様が引き受けるぜ」 そのとき、不意に会議室の扉が開け放たれ、全員の視線がそちらへ集まる。"御意見番"の完全な一人舞台状態に割って入ったのは、先に引退を表明したばかりの甘寧だった。
504:海月 亮 2004/12/17(金) 03:18 「甘寧…? 貴女、どうして此処に…?」 卒業生だから、という理由もあったが、呂蒙が不慮の事故で引退を余儀なくされた頃から、彼女も著しく体調を崩していた。 その理由については明らかではなかったが(その原因を聞いていたとしても、おそらく彼女のことだからそんなものをいちいち覚えてはいないだろう)、そのために風邪をこじらせていたのは事実である。 万全の状態なら誰も文句はつけないだろうが、今の甘寧はお世辞にも本調子とは言いがたい。 現に、甘寧はほんの数時間前まで病院のベッドの上にいたはずなのだ。顔は蒼白で、ほとんど気合だけで立っているふうに見え、今までの彼女を知るものから見れば、その姿にかつてのような覇気は感じ取れないだろう。だが…。 「公式にはまだ、俺の蒼天章も、階級章も返上されてないからな…それなら、問題ねぇハズだよな?」 「確かにそうだし、そりゃあ貴女が往ってくれるなら心強いけど…でもあんた、風邪こじらせて入院してたはずでしょう? そんな身体で…」 「引退直後に古巣がなくなりました、じゃ、寝覚めが悪すぎらぁ。理由(ワケ)なんざ、知ったこっちゃねぇが、これ以上、あんな山猿共にキャンキャン騒がれるのも…ムカつくんでな」 息は荒く、言葉も途切れ途切れだったが、そう言い切った甘寧の眼は未だ死んでいない。合肥で蒼天会の本陣に数名で奇襲をかける、と言い出したときの、そのままの眼光を保っていた。 そんな眼をしている以上、例え「駄目」と言ってベッドに無理やり寝かせつけようとしても、彼女は這ってでも独りで戦線へ突っ込んでいくだろう。その気迫に呑まれ、流石の張昭にも反対すべき言葉が出てこない。一息ついて、孫権の方を見る。 「…と、彼女は言っているようですけど…どうする部長?」 孫権も迷ったが、他に頼れる者も思い当たらない。悲痛な面持ちのまま甘寧を見つめ、断を下す。 「……………解った。興覇さん、お願い」 「へっ、そうこなくっちゃ…な」 「どうして、どうしてアンタがここにいるのよ、興覇ッ!?」 「なんでぇ、公績…俺様が、ここにいるのが、まぁだ気に喰わねぇのか…?」 その姿を認めるなり、手前にいた黒髪をショートにした少女…凌統は、思わず大声をあげた。 凌統以下、救援軍の編成に当たっていた諸将にとっても、彼女がそこにいることが信じられなかった。ましてや凌統は、先刻病室で甘寧を見舞っているのだ。 かつて姉を飛ばされたことで甘寧を激しく憎悪していた凌統だったが、先の合肥戦のさなか、楽進・曹休のタッグからの攻撃から身を呈して救った挙句、孫権を護って逃げるための殿軍(しんがり)まで買って出てくれた甘寧の行為に、その憎悪は彼女に対する尊敬へと変わっていた。 一方の甘寧にしてみても、相手が恨んでいない以上こちらからも恨む理由はない、ということで、ふたりはこれまでとはうって変わって、良き戦友と呼べる仲になっていた。 「そんなんじゃないわよ! アンタ絶対の安静だって、医者に言われてるんでしょ!? そんな身体で…」 「公績先輩の言う通りですよ!」 凌統の隣りに居た丁奉も声を挙げる。ポニーテールにまとめた、生来のものである狐色の髪が特徴的なこの少女は、中等部入学直後の夏休みに孫権直々のスカウトを受けた逸材である。並み居るの先輩部員を差し置いて、将として認められていることからも、その実力は明らかだろう。 彼女は現在潘璋の副将という立場にあったが、かつては甘寧の部下に配され、こき使われながらも一方で非常に可愛がられ、今では一番の妹分と言っても過言ではない。言うまでもなく、彼女の甘寧に対する尊敬の情も、ひとしおだ。 「ここで無理をしたら、大変なことになりますよ! ここはあたし達が…」 「やかましいッ!」 甘寧の大喝に、気圧されて黙り込むふたり。 蒼白の顔に、脂汗まで滲ませているその容貌にかつての精彩はない。だからこそなのか、その貌(かお)には鬼気迫る何かがあった。その勢いに、まだ中学二年生の丁奉は半泣き状態になり、気丈な凌統も言葉を失った。他の一般部員の中には、腰を抜かしてへたり込んでしまったものもいた。 「俺は…俺も、失いたくないんだ…! はみ出し者だった俺を"仲間"として扱ってくれた長湖部を…」 「…興覇」 「興覇先輩…」 甘寧の表情は、悲痛で、真剣だった。その心底を洗い浚い吐き出すような言葉は、少女達の心を打った。 「俺は、こういうカタチでしか、恩義を返せない、人間だから…だから、最期まで戦わせてくれ…頼むッ!」 そのとき、甘寧の身体がよろめく。しかし、その身体はすぐに背後から現れた人物に支えられる。 艶のある黒髪をショートに切り揃えた、整った顔立ちの少女。その少女は甘寧同様に卒業を控えた、初期長湖部からの功臣・韓当だった。 「義公…さん」 「いろんな意味であなたのその性格は、死んでも治りそうにないわね。居残り組最古参の私を差し置いて総大将に名乗りをあげたことの文句のひとつでも言ってやろうかと思ってたけどね…」 私だって有終の美を飾りたかったのに、とか言わんばかりの口調だが、これも悲痛な空気を少しでも紛らわそうとする韓当流の言い回しである。そろそろ付き合いも長い甘寧達にも、それはよく解っていた。 ふぅ、とひと息ついて、韓当は続ける。 「まぁ、部長の命令も出たことだし、今のを聞かされた以上、もう何も言わないわ。その代わり、承淵を副将に連れときなさい。文珪や上層部(うえ)には、私が話しとくから」 「すんません…恩にきります」 苦笑を浮かべる韓当に、何時もより弱々しくも、苦笑で返す甘寧。 「あなた達もいいわね?」 「そう仰られるなら…異存はありません」 「…任せてください! 全力でお守りします、先輩!」 「へっ、こいつ…ナマ言いやがって…」 もはやふたりにも反対の言葉は出てこなかった。苦笑して返す凌統と、涙を拭って極力笑顔で返す丁奉を軽く小突く甘寧を見て、韓当は「よろしい」と軽く呟いた。 それから数刻のうちに、編成を終えた総勢500名弱の夷陵棟救援軍は甘寧を総大将に、先手を潘璋、左右に周泰と韓当、後詰めに凌統、そして中軍の副将に丁奉といった錚々たるメンバーとともに建業棟を進発した。
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