★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★
508:海月 亮2004/12/17(金) 03:26
と、此処までで第一話終了です。
後の文章量もさほど、変わらんのですが…外見描写とか余計なんだろうか…。

史実どころか演義と比べてもなにやら無理のあるキャストになってます。
甘寧最期のシーン、実は横光三国志のオマージュなんですが…

省7
509:海月 亮2004/12/20(月) 21:49
第一部 >>503〜>>507

風を継ぐ者」
-第二章 その涙は誰が為に-

「…そう…興覇のヤツ、最後の最後までカッコつけて…もうっ…」
省41
510:海月 亮2004/12/20(月) 21:50
(や〜れやれ…まさか、興覇までやられちゃうなんてねぇ…)
この日…甘寧脱落の報を受け、さらに沈み込んだ長湖部本営の会議室を一番最初に出てきたのは、ボリュームのある色素の薄い髪を、無造作に二つ括りにした少女だった。
どこか人を食ったような細いタレ眼が特徴的なその少女の名は(カン)沢、綽名を徳潤という。
苦学生であったが、記憶力に優れた明晰な頭脳と、かつて赤壁島戦役において曹操に黄蓋の偽降を信じ込ませたといわれるほどの能弁を認められ、長湖部の重鎮に登りつめた一人である。
実家が寺であったことから仏教関係の事跡に特に詳しく、のちに揚州学区の外れにある古寺を改修した際、一言一句過たずに書き上げられた経典を奉納したことで知られることとなる…それは、さておき。
(カン)沢の明晰な頭脳は、先ほどの会議のあらましを正確にリピードしていた。
省42
511:海月 亮2004/12/20(月) 21:50
「どうして、あんなに伯言に冷たくあたるんです、公瑾さん?」
群がっていた後輩達と陸遜を帰したあと、(カン)沢は周瑜と1対1になった個室の病室でこう切り出した。普段は飄々とした(カン)沢が、柄にもなく真顔で問い掛けてくるのを見て、周瑜は苦笑した。
「なにを言い出すかと思えば…まさか徳潤、そんなことを聴く為に残ったの?」
「…真面目な話ですよ。まさか去年の合宿の一件、まだ根に持ってるんですか?(「長湖部強化合宿〜ひと夏の思い出」参照のこと)」
この、ささやかな歓送パーティの際もやはり周瑜は、陸遜とまともに取り合おうとさえしなかった。
他の若手部員の手前、あからさまに無視するようなことはしなかったが、一瞥した程度ですぐに別の後輩達の相手をする。
省36
512:海月 亮2004/12/20(月) 21:51
「部長…どうして、ここに?」
「…ボクも公瑾さんに、ちゃんと挨拶しときたかったから。子布さんを撒くのは大変だったけど」
必死に感情を抑えようとしているみたいだったが、眼と声は嘘をつけない。その声は、今にも泣きだしそうなくらい、震えていた。
「みんなには内緒だったんだよ…」
そう言って席につくと、孫権は懐から一枚の写真を取り出した。それを手にとった(カン)沢は怪訝な表情をして孫権に問い掛けた。
「これは…」
省30
513:海月 亮2004/12/20(月) 21:52
日はすっかり落ち、何時しか、病室の電灯に明かりが灯っていた。時計は、5時半を少しまわっていたので、本来ならとっくに面会時間は過ぎていたはずだ。恐らくは、孫権が入ってくる時に職員に頼み込んだか何かしたのかもしれない。
そこには少女三人を中心に、沈黙があるだけだった。いったい最後の言葉から、どのくらいの時間が経っていたのだろう。その沈黙を突き破るように、(カン)沢は心なしか重くなったような、自分の口をようやく開いた。
「そうだったんですか…」
まるで独り言のように、そう言うのが精一杯だった。彼女の聡明さは、総てを聞かずとも、その真相を完全に解き明かしていた。
陸遜のことを大切に思っていたからこそ…その才能を知りながら…自分の後継者として申し分ないと思っていたからこそ、自分と同じ道を歩ませたくなかったのだ。
おそらくは自分と魯粛の跡目についた呂蒙の末路を聞き及び、その想いを一層強くしていたのだろう。
省38
514:海月 亮2004/12/20(月) 21:59
その翌日のこと。
会議はいまだ紛糾の様相を呈していた。先に停戦和議の為に赴いた程秉も、傅士仁・糜芳が関興によってぶちのめされる様を記録したビデオを上映しながら、劉備のドスが利いた「宣言」を聞かされたショックで寝込んでしまう始末だった。
いわゆる「文官系幹部」の中でも、肝っ玉の据わった程秉がそんな有様なのは、いかにそれが凄惨な有様だったかをよく物語っていた。和議が叶わないと言う事は、劉備の態度を鑑みれば帰順を申し入れても無駄だということと同義といっていい。
「まぁ、これで張昭大先輩お得意の"降伏ー!"は使えないわよね〜」
「聞こえてるわよ歩隲ッ! それどういう意味よ!」
「あ!い、いえ、これはただのジョークでして…」
省36
515:海月 亮2004/12/20(月) 22:03
「風を継ぐ者」
-第三部 風を待った日-

一体どれほどの者か…と期待していた幹部達にとって、それはあまりに意外すぎる人物の名前だったに違いない。満座、呆気にとられて開いた口が塞がらない様子であったが、皆一様に「何を言ってるんだ、コイツは」と言う表情をしている。
ただ一人、孫権を除いては。
「なんですって!!」
省44
516:海月 亮2004/12/20(月) 22:04
ところ変わって、陸口棟。
「何ですって? それ本当なの?」
「ええ…今通達が来ました。もうすぐ、到着するそうです」
陸遜、前線総司令の任に就く……その命令を受け、諸将は困惑の色を隠せない。
ただ一人、丁奉を除いては。
「部長も人が悪い…こんな時に新手の冗談を試さなくてもいいものを」
省41
517:海月 亮2004/12/20(月) 22:05
「馬鹿なことを!」
解散の指示を出そうとした刹那、諸将から一斉に不満の声があがる。誰も皆、満面に怒気を浮かべ、もし後ろに立てかけてある大将旗が無ければ今にも飛び掛ってきそうな勢いである。突然のこの勢いにおろおろする駱統を他所に、卓に着いたままの陸遜は、何の表情も無くそれを眺めている。
怒気を露に不満をぶちまける諸将を制し、今まで事態を静観していた韓当が進み出た。
「伯言…あえて、こう呼ばせてもらうわ」
本来なら総司令ともなれば、「都督」の尊称で呼ばなくてはならない。いくら相手が下級生といえども、例外ではないはずで、まして韓当であればそのあたりの礼儀をきちんと弁えている。
それがあえて綽名を呼び捨てるという行為に及んでいるあたり、彼女もかなり腹に据えかねているものがあるとわかる。
省43
1-AA