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533:北畠蒼陽 2005/01/28(金) 18:49 [nworo@hotmail.com] -隻眼の小娘とりんごの悪夢(1/3)- 「叔母様、準備はいいですか?」 「その名前で呼ばないでっていってるでしょ!」 「こちらも準備はできたぞ」 「あらあらあら、もう死ぬ準備ができたんですの? 賈ク様のことですからきっと素晴らしい遺言を聞かせてくださるんでしょうね♪」 「はっ、おもしろい冗談ですな、荀攸殿」 明るいざわめき、というには多少とげとげしいものがある。 そんな声を聞きながら隻眼の少女は苦笑しながら手を叩いて注目を自分に集めた。 「はいはいはい、今日はいい日なんだから2人ともいがみ合うの禁止」 少女……夏侯惇が話をはじめただけでざわめきはぴたっとおさまりその言葉にみなが聞き入る。 「みんな、準備はいい? じゃあ烏丸・袁姉妹連合留守番部隊の打ち上げはじめるよー」 打ち上げとはいっても名目は反省会であり、ここで飲み食いしたお金は経費で落とされる。 冀州校区ではそれなりに名前の知られた中華レストラン『鳳陽』を借り切って反省会、とは名ばかりの宴がはじまろうとしていた。 みながハメをはずさぬように、ドリンクバーで持ってきたメロンソーダを飲みながら夏侯惇は少し離れた場所でぼ〜っと喧騒を眺めていた。 「ふぅ……」 最近、前線に立っていない。 現地で祝勝会に参加している許チョや張遼たちに嫉妬すら感じる。 なぜ孟徳は私を後方に残しておくかなぁ…… 夏侯惇はくしゃりと髪をかきあげた。 まぁ、理由は自分以外に世話係がいない、というだけなのだが。 理由も自分でわかっているだけに夏侯惇の口元からは苦笑しか漏れてこない。 「夏侯惇さん、もっと真ん中にきてくださいよ。そんな隅っこに貴女みたいなひとがいるってのも落ち着きません」 苦笑を浮かべながら韓浩が夏侯惇に近寄ってくる。 「貴女みたいなひと、って私はどんなのだよ」 韓浩の言葉に苦笑を浮かべ、またメロンソーダを一口。 韓浩も夏侯惇にそれ以上真ん中にくることを薦めることもなく口の端に笑いを見せた。 「隣、いいですか?」 「あぁ……」 そのまま2人で人の流れを眺める。 「夏侯惇さ〜ん☆」 しばらくぼ〜っとしていると夏侯惇に黄色い声がかかった。 それを見て韓浩は顔色を変えた。 「いっぱい食べて楽しまなきゃいけませんよぉ☆ これ、おいしいですよぉ☆」 娘の手にはアップルパイがあった。 「離れて!」 夏侯惇に声をかけてきた娘に注意するよりも早く夏侯惇の手が娘の手にあったアップルパイを叩き落す。 そして娘を睨みつけた。 「ひ……」 そのあまりの迫力に娘はへたり込み、泣きそうな顔になっている。 「どうしたんですか、夏侯惇さん……元嗣?」 騒ぎを聞きつけて史渙が近寄ってきた。 「どうもこうもないわ、公劉。この子が夏侯惇にりんごを見せただけ」 韓浩の簡潔な説明に史渙は手で顔を覆って天を見上げた。 「あちゃ〜……」 「ホント、あちゃ〜、ね。公劉、この子のことお願いできる? 私は……」 ちょいちょい、と夏侯惇を指差しながら苦笑する。 「ん、おっけ……はいはい、もう大丈夫だからちょっと外いこうね〜」
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