下
★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★
538:★ぐっこ@管理人 2005/01/30(日) 00:54 正直スマンカッタ( ゚Д゚)! あらためましてはじめまして、北畠蒼陽さま! 旭祭に夢中なあまり、素で>>520に気付きませんでした_| ̄|○ このバカを存分に罵り辱めてくださいませ(;´Д`)ハァハァ… >覇者と英雄 (゚∀゚)! 蒼天テイスト! そんでもって、やはり背伸びしても袁紹の王者っぷりには届かない曹操! これイイ!袁紹ってなんだかんだいって、曹操のお姉さまですから! >鍾会と昜 これもキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!! 鍾会の性悪さより、昜たんのうろたえっぷりにときめきました。 存外、二人ともプライド高いので、水面かでの張り合いが激しかったのでは と推測。萌える… >-隻眼の小娘とりんごの悪夢 (((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル そうだったんだ( ゚Д゚)! いや私も全く考えてなくて、なんとなく曹操のせい だろうな…とか思ったたのでマジ採用! 交州校区にて夏侯惇隻眼! そして許褚の登場!?うわははは!これいいッ! 北畠蒼陽さま!ありがとうございますっ! >海月 亮さま うお、丁奉たんの寒中水泳( ゚Д゚)! で、韓当たんの不詳の妹の始末と! 相変わらず学三はレアなキャラが出てくるなあ…留姉妹あたりが出てくるとは。 (゚∀゚)GJ! そういや留賛も、最後は結構壮絶な散りざまでしたやね(´Д⊂
539:北畠蒼陽 2005/01/30(日) 01:25 [nworo@hotmail.com] >ぐっこ様 拙作に過大な評価痛み入ります。1億の感謝を。 ただすべての作品でいろいろミスってるのが難点といえば難点orz 曹操&袁紹はサバゲ決戦だってことを知らずに書いてるし 鍾会&昜はあだ名を名前の後ろに書いてるし 曹操&夏侯惇は3/3で「あ〜、夏侯惇もそう思う?」って…… 元譲って呼んであげて(ノ_・。 あと曹騰は従姉妹のお姉ちゃん、ってことで正式に後漢話を 書き出しました。 新参者のクセにすげぇ長編になりそうでそれはそれでへこみorz 「読みたくねぇ」とか言われると地の底までへこむので 心の中で思うだけにしといてください(笑 それはともかくこれからよろしくお願いします! なのですよ〜。
540:★教授 2005/01/30(日) 14:52 ■■ 合肥の戦 〜凌統vs楽進〜 ■■ 「このままくたばれっかよ!」 「きゃあっ!!!」 凌統は襲い来る敵に自慢のヌンチャクを振るいながら自身の置かれている状況を再確認する。周囲には傷付き倒れた自分の部下、そして敵が無造作に横たわっていた。そして凌統自身もまた全身に痣や切り傷を作り大きく肩で息をしている。勇猛果敢の遜色に少しずつ翳りが見えていた。 その姿を小高い丘の上で見ている少女がいた。最近、長湖部では『泣く子が更に泣く』やら『鬼道娘』で恐怖の的とされている蒼天会屈指の実力者――張遼、その人であった。マウンテンバイクに跨り双眼鏡で戦況を確認しつつ、手に握る模造刀に力が篭る。 「意外と頑張るわね…あの娘」 「そうみたいだな…見た目はフツーなのにな」 感嘆の声を漏らしてにやりと口端を歪める張遼に相槌を打つのは楽進だった。こちらは少し難しい顔をして望遠鏡を覗き込んでいた。ちらちらと張遼を見ながら不満の声を挙げる。 「ねぇ…何で、私は望遠鏡で見てるのかな…。近すぎて見えたり見えなかったりなんだけど…」 「仕方ないじゃない。双眼鏡はこれしかなかったんだし…あ、その望遠鏡は壊したら弁償って徐州天文部が言ってたからね」 「分かってるよ…流石にこんな高い代物は経費で落ちないだろうしな…。つーか、何で望遠鏡なんて借りてきたのさ…これなら肉眼の方が…」 「なら、李典を叱らなきゃね…それ借りてきたのはアレなんだし」 「ごめんなさい…我侭言いませんからケンカはしないで…」 溜息を吐きながら楽進は再び望遠鏡を覗き込んだ。恐らく胃も痛くなってることだろう。 「……まあ、あの調子だと長くは持ちそうにないわね。私はその辺りに潜伏してるかうろついてる長湖部の残党を制圧してくるか…。ここは任せたわよ」 双眼鏡を楽進に投げて寄越す張遼。楽進はそれを振り返る事なく片手でキャッチして頷いていた―― 「はぁ…はぁ…………もう終わりかっ! 怖気付いたのなら…そこを退けぇっ!!!」 息が上がり疲労困憊が誰の目から見ても明らかな凌統。しかし、檄する声には気迫――いや、ここは鬼迫とも言うべき殺気が濃縮されている。その鬼の咆哮に張遼軍の生徒達が息を呑み、間合いを取りはじめた。鬼腕張遼の直属の配下、死をも恐れぬ狂戦士の隊。通称『羅刹隊』がたじろいだのだ。これには遠くで見ていた張遼と楽進も驚きの色を隠しきれなかった。 しかし、凌統の敗色を秒刻みで濃くなっている。彼女の周囲に味方は誰一人として残ってはいなかったのだ。凌統の配下は唯の一人として生き残ってはおらず、全員見事に飛ばされていたからだ。唯一の救いは降伏した者がいなかった事くらいだろう。 「怯むな! あの姿を見ろ! あれで満足に戦えるはずもないだろう!」 羅刹隊の一人が凌統を指差し、周囲を見る。しかし、自分で発した言葉に誰も頷く事はなかった。全身青痣だらけ、そして自身の血と返り血で赤く染まった制服。大きく肩で息をしているその姿に戦える余地は何処にも見えない。だが、それでも羅刹の軍は動けずにいた。目が――全く死んでいないのだ。それどころか襲い掛かれば襲い掛かるほどに満ちていく殺気に彼女達も慎重にならざるを得なかった。 「来ないのかよ……来ないなら…こっちが行ってやるよ!」 「ひぃっ!」 じりじりと間合いを詰め始める凌統に明らかな怯えを見せる羅刹隊。死への心構えが出来ているとはいえ、こんな魔界の生物を相手にしてしまった事を後悔しつつあったのだ。 ――と、羅刹隊の後方に砂煙を立てながら迫ってくるマウンテンバイクが凌統の目に映った。 「どけどけぇっ!」 羅刹隊が何事かと振り返った瞬間、その姿は宙を舞っていた。その軌道はスローモーションの様に目に映り、ゆっくりとトレースするような不思議な感覚に陥っていた。そして、その人は激しい音を立てて着地する。無造作に切った髪、傷だらけの顔、体操服に身を包んで身の丈はある棍を手にした堂々たる姿に羅刹隊も喚声を上げた。凌統もその威風堂々たる姿に一瞬呑まれそうになる程であった。 「私は楽進。アンタに引導を渡しに来た! いざ勝負されよ!」 マウンテンバイクから降りると羅刹隊に下がるよう指示を出す楽進。 「ふん…勇ましい事だね。気に入った…私は凌統、いざ尋常に!」 凌統は口元を吊り上げ、構えと間合いを取る。楽進もまた棍を中段に構え出方を窺う。 互いに隙を見せる事なく一歩、また一歩とその間合いを詰めていく。冷たく重い空気が漂う二人の周囲に固唾を飲んで見据える羅刹隊。どの少女を見ても瞬き一つしていない。そして二人の間合いは2メートル弱にまで詰まる―― ――――――刹那の瞬き、空気を裂く乾いた鉄音と縫う様な深く重い鈍音が戦場に轟いた―――――― 「ふぅ……」 孫権は船上で深い溜息を吐いていた。彼女の周りには甘寧や周泰達が控えており、散々たる戦況を思い返し怒りとも悔恨とも付かない表情を浮かべていた。 「本当に拙い戦にしてしまったわ……赤壁で一度勝ったくらいで何を浮かれていたの…私」 ぎゅっと船縁を握り自分への怒りを露にする。飛ばされた部員や幹部の数は数えても数え切れない、全ては自分の慢心がさせた事。悔いても仕方ない事だが、悔わずにはいられなかった。 そして、一番気掛かりなのは自分を助ける為に戦場に残った凌統だった。まだこれから伸びる可能性を秘めた長湖部のホープの一人…こんな所で飛ばす訳にはいかなかった。しかし、それでも自分には生き延びなければならない責任があった。姉二人に託された長湖部、それをこんな形で終わらせるわけにはいかない。まだ何も成し得ていない。飛ばされる訳には行かない、慕って徒いてきてくれる部員達の為にも――― 悲しみと怒りを抑え付け、前を見据える孫権。その視線の先には先ほどまで居た戦場があった。そして、船に近づいてくるマウンテンバイクが一台。近づけば近づくほどに見覚えのある姿、そして孫権が目を凝らしその姿を確認した時、驚嘆と驚喜が入り混じった。 「あれは…公績! 助けに行って! 早く!」 「御意!」 孫権が言うや否や、周泰が直属の部員を引き連れ船を飛び降りた―― 「公績…」 長湖に帰る船上。凌統に掛ける言葉が見つからず涙ぐむ孫権と満身創痍の凌統が船縁にもたれかかって寝息を立てて、そこにいた。その胸には血塗れの階級章が鈍く赤黒い光をぬらぬらと放ち、その傍らに砕けた愛用のヌンチャクと誰の物か分からないマウンテンバイクがあった。彼女は飛ばされていなかったのだ。生きてこの場にいるのであった。 「公績……ごめんね…そして、ありがとう…。私は…もう今までの私じゃない、安心して」 孫権は目元をごしごしと拭うと船頭に振り返る。そこにいた甘寧、そして周泰や徐盛は主の姿に迷いが無い事を悟った。先ほどまでの幼さが残っていたその風貌には、最早それは無かった。精悍な表情、そして統率力という名の気勢を全身から放つその姿は正しく姉である偉大なる初代、孫堅。そして長湖の覇者、二代目孫策にも勝るとも劣らないほどであった。 「部長……」 凌統は孫権の大きく成長した後姿を薄目でしっかりと見ていた。そして、ゆっくり双眸を閉じて戦場を振り返る―― 「ぐふ…」 「く……」 ヌンチャクの鎖が引き千切れ、四散していく。そして凌統の右肩の横で棍が小刻みに震えていた。 楽進の渾身の棍撃は凌統に命中する事はなかった。そして自身の胸に凌統のヌンチャクの柄が減り込んでいた。 紙一重の世界だった。楽進の棍の僅かな狂いに凌統が一撃を合わせたのだ。それは達人の域ではなく、神の領域が為せる潜在的なものに近かった。 楽進の口元から赤い雫が零れ落ちる。確かな手応えを凌統は感じていた、恐らく肋骨の数本は持っていったはず――だが、楽進は倒れなかった。震える膝を懸命に踏ん張り、棍を落とす事無く凌統に満足げな笑みを浮かべていたのだ。 「…み、見事……まさか…あの一撃にカウンターを入れるなんて…」 「偶然…だよ。正直…やられるかと思ってたから…。……これ、借りるな」 壊れたヌンチャクを懐に入れると、ふらりと振り返り…重い足を引き摺って楽進のマウンテンバイクに跨る凌統。そして楽進も黙って頷きバイクを凌統に委ねた。 今まで唖然としていた羅刹隊は、楽進が敗れた事に大きなショックを隠しきれないでいた。しかし、ふと我に返った。このままあの娘を長湖に帰してはいけない…いずれ必ず大きな災厄となる…。そう思った時には既にモデルガンを握り締めて凌統にその銃口を向けていた。 ――が 「行かせて…やんな」 「楽進…さん? しかし…」 「指揮を任された私が負けたんだ。これ以上は恥の上塗りだよ…」 息も絶え絶えの楽進がそれを制したのだ。その言葉に二の声も上げられなくなる。 遠ざかる凌統の危なっかしい運転を見ながら楽進は満ち足りていた。真剣勝負の中で倒れられる事は彼女に取って喜ばしい事だったから――ゆっくりと目を閉じるとうつ伏せに倒れた―― 「楽進さん!」 羅刹隊が駆け寄った時には、既に楽進の意識は無かった。 後日、楽進はこの時の怪我が元で課外活動から退く事になる。曹操、夏候淳、夏候淵、李典、張遼、除晃らの必死の呼びかけに気丈な返事を返していたが、傷は思ったよりも深く致命的でドクターストップが掛かったのだ。 その後、病室で楽進は紫の髪の少女を思い返していた。満足な戦い、そして苦くない敗北の味。いつか、またリベンジしたいものだ、と――
541:★教授 2005/01/30(日) 14:56 はい、お粗末様でした。いや、ホントに粗末なんですけど(T_T) 時間に猶予も無く死兆星を見ながら書いてましたが…いやぁ、読み返すと短い短い…。 もう少し内容詰めて書きたかったというのが本音です。 その内、リメイクするかもしれません。つーか、する(断言)
542:北畠蒼陽 2005/01/30(日) 18:18 [nworo@hotmail.com] >教授様 (゜V+゜)b 素晴らしいSS、眼福でございます。 一騎打ち、というか戦闘シーンがあまり書けない人間なのでうらやましいなぁ。すごいなぁ。 自分もがんばらなきゅあ……
543:海月 亮 2005/01/30(日) 20:25 >教授様 凌統vs楽進ですか! しかも凌統のエモノがヌンチャクですと! 何気に三国無双新作で凌統登場という情報に、嬉しさのあまり魂抜けかけてたタイミングにこれを読むことになろうとは… お見事でございます(´ー`)b …ぬう…書きかけだった甘寧と凌統の仲直りの話、書き直さねば…(え? それでは私めもひとつ。 毎度毎度長湖部員ネタで恐縮ながら、投下の機会を得ずにお蔵入り寸前だった子瑜さん話を。
544:海月 亮 2005/01/30(日) 20:27 -子瑜姉さんと"ロバの耳"- そのいち 電子音のベルが鳴り、少女は枕元の時計に手を伸ばす。 デジタル時計の表示は八時。少女はゆっくりと体を起こし、伸びをする。 のそりと布団から出て、眠たい目をこすりながら洗面台に向かい、大して乱れてもいない髪を梳かし始める…すると、 「…………………え?」 少女は何故か唖然として、洗面台の姿見に映る自身の顔を、始めて見る物のように覗き込んだ。 ややツリ目がちな、見慣れた自分の顔。 その頭には、艶のある栗色のロングヘアー。 しかし、そこにはあるべきものが存在していなかった。 「アレが…ない?!」 そう呟く少女…諸葛瑾は、何度も自分の頭の両サイドを触り、呆気に取られていた。 「いやゴメン、マジで気ぃつかなかった」 「…別にいいんだけどね」 放課後の揚州学区のカフェテラスで、見慣れたクセ毛のない諸葛瑾と、魯粛は向かい合って座っている。 諸葛瑾にとって親友である魯粛でさえ、初めはその少女が諸葛瑾だと気付けなかった。 「でもさ、いったいどうしたってのかねぇ…突然"ロバの耳"がなくなるなんて」 "ロバの耳"…それは、諸葛瑾のトレードマークといっても過言ではない、彼女の頭の左右両サイドに、普段存在するクセっ毛のことである。その形がロバの耳のように見えることから、友人達からはその名で親しまれていた。 幼い頃、ある日突然出現したそれは、長い間彼女のコンプレックスでもあった。どんな整髪料を使おうとも、その部分を逐一切り落としても、やがては元通りになってしまうのだ。 諸葛瑾もやがて諦め、かれこれ十年以上この"ロバの耳"と付き合ってきた。何時しか、彼女もそれに愛着を持つようになり、毎日念入りに手入れしていたりもしていた。 「そんなの、むしろ私が訊きたいわよ」 「心当たりは? 例えば、何か違うシャンプーか何か使ったとか」 「朝起きて、一番に鏡を見て、その時にはもう無かったのよ。ついでに言えば、昨日使ったシャンプーもトリートメントも、何時もと同じモノだし…濡れてる間にタオルで締め付けたってなくなるようなモノじゃない事だって、子敬も知ってるでしょ?」 「そりゃあ、まぁ…」 「どうしたらいいかなぁ…これじゃ、誰も私だって解んないだろうし…第一落ち着かない」 諸葛瑾は本気で困っている様子だった。誰だか解らない、というのも、そもそも魯粛にも解らなかったんだから、多分他の長湖部員も目の前の少女が諸葛瑾だと解る者は居ないだろう。 現にこの日、多くの幹部仲間とすれ違ったが、誰も気付かなかった。たまりかねた諸葛瑾が、魯粛に話し掛けたからからこそ、やっと気づいてもらえたようなものだった。 何だか気の毒に思えてきた魯粛も、真剣な顔になって考えていた。ふと、周りを見回すと、様々なヘアースタイルの少女の姿が目に飛び込んできて…。 「!…そうだ、子瑜。ちょっとここで待ってて」 「え?」 魯粛は何を思い立ったのか、席を立つと、そのまま何処へとも知れず駆け出していった。
545:海月 亮 2005/01/30(日) 20:28 -子瑜姉さんと"ロバの耳"- そのに よ〜し…こんなもんですかね。目、開けて」 「ん…」 言われるがまま、ゆっくり目を開けると…そこには、両サイドの丁度"ロバの耳"があったあたりに、根元を紅いヘアゴムで結ばれた、小さなツイン・テールが出来ていた。 「ちょっと感じが違うけど…まぁ、見えなくはないんじゃないかと思う」 魯粛はあの時、カフェテラスの隣りにある購買へ駆け込み、ヘアゴムを買ってくると諸葛瑾をトイレに連れ込み、その髪を"ロバの耳"っぽく結い上げることにしたのだ。 「う〜ん…なんか、子供っぽくない?」 「いいじゃないの。結構似合ってるよ、子瑜」 「でもなぁ…」 「何時までも気にしないの! さ、そろそろ幹部会の時間だよ、行こっ」 様相をいつもと違えた"ロバの耳"モドキを弾いたり摘んだりしながら、尚渋った様子の諸葛瑾を引きずり、魯粛はその場を後にした。 「あはははは! そ、それ傑作! 傑作ですよ子瑜先輩っ!」 こくこくこくこくっ。 「…………………煩い」 爆笑する歩隲と、表情を動かさないものの普段より明らかに勢いよく頷く顧雍の姿に、諸葛瑾はむすっとした表情でそっぽを向いた。 その様子を見、傍らの魯粛が「あっちゃ〜…」といわんばかりに首を振った。 案の定、幹部会で誰もそれが諸葛瑾と気付くものは居なかった。傍にいた魯粛が逐一説明し、その都度皆同じような反応を示していた。 ほとんど表情の解らない顧雍以外は、皆笑いをこらえているのが見え見えだ。中でも歩隲に至っては、この有様である。 「え?…えっと、可愛らしい感じでいいですね…あはは…」 「あ〜、なんて言いますか、そういうのも悪くは…ないっスね、うん」 メンバーの中でも比較的気を遣ってくれる部類に入る駱統や吾粲ですら、言葉とは裏腹に必死で笑いをこらえている有様だった。 メンバーが姿をあらわすたびに諸葛瑾は不機嫌になっていくのも自然な反応と言えた。 そして… 「みんな揃った?…って、あれ? あなたは…えっと…どなたでしたっけ?」 孫権のその一言に、笑いをこらえていた顧雍以外の幹部会メンバーは遂に我慢の限界を迎え、どっと笑い声が上がり、たちまちの内に大爆笑になる。 慌てて魯粛が耳打ちをすると、孫権は慌てて、 「あ…え、えっと、髪型、変えたんだね?」 と取り繕おうとしたが、むしろ、それは逆効果であった。 再び、満座がどっと沸き、それが止めになった。 「……っ!」 「あ…!」 「お…おい、子瑜っ!」 諸葛瑾は立ち上がると、倒した椅子を直すこともせず会議室を飛び出していってしまった。 慌ててそれを追って孫権が飛び出していったのと、満座から一名を除いて笑いが消えたのは同時だったと言っていい。 魯粛はその唯一の音源…歩隲の頭に拳骨を一発見舞って黙らせると、会議室を飛び出していった二人の後を追いかけていった。 屋上に続く踊り場に座り込み、彼女は泣いていた。 愛着のあった"ロバの耳"がなくなったということもショックだったが、何より、孫権すら自分が誰かを理解してくれなかったことが、一番ショックだった。 荊州学区返還交渉の際、相手の参謀に自分の妹が居る、ということで随分陰口を叩かれたが、孫権はその都度「子瑜がボクを裏切らないのは、ボクが子瑜を裏切らないのと一緒だよ!」と、彼女をかばってくれていた。 それ程の信頼を寄せてくれた人が、ハプニングのためとはいえ髪形が変わってしまった自分に気づいてくれなかった…それが、悲しかった。 「…あ、こんなトコにいた」 「子瑜っ!」 後ろから抱き付かれた感覚にはっとして振り向くと、そこには孫権の姿があった。階下には、魯粛の姿もある。 「ごめんね、ボクが無神経すぎたよ…何時もとちょっと感じが違ったから、からかってみようと思ったんだ…」 「……え…じゃあ…私の事」 「ちゃんと解ってたから…その髪型も、似合ってるよ、子瑜」 そう言って、笑って見せた孫権の目の端にも、うっすらと涙の跡があった。 「…ありがとう…部長」 涙を拭うことも忘れ、諸葛瑾は孫権を強く抱きしめていた。
546:海月 亮 2005/01/30(日) 20:29 -子瑜姉さんと"ロバの耳"- そのさん 「……ふむ…まさか、こんな長い間効き目があるとは思わなかったが…」 「やっぱり、テメェの仕業だったのか、孔明」 荊州学区・公安棟。かつては江夏棟の名で呼ばれたそこは、帰宅部連合と長湖部の勢力範囲の境目にあたり、その二勢力の中立地帯となっていた。 魯粛は今回の事件の原因が諸葛瑾の妹・諸葛亮にあると考え、渋る彼女を無理やりに引きずってきたのである。 「勘違いしないで頂きたいな。私がやったのは、"ロバの耳"を作り出したことだ」 「はぁ?」 「何ですって!?」 諸葛亮のしれっとした一言に、二人は唖然とした。 「お姉様も知っての通り、お母様の寝癖は相当に酷かっただろう。毎朝、何十分もかけて髪を梳かすその姿を見て、幼いながらも私は心を痛めていた…」 そう言って、視線を遠くへ投げる。 「そこで私は毛根に作用し、決まった髪形を維持する髪質に変える整髪料を開発したのだ。実際の効能がどれほどのものか試すため、私はある日、お姉様と元遜が寝入ったところを見計らい…」 「…………………………ようするに、貴様の仕業か」 妙にドスの利いた声。普段聞きなれないその少女の声に、魯粛は愚か、諸葛亮でさえ思わず息を飲んだ。 言うまでもなく、その声の主は諸葛瑾である。 諸葛瑾がゆらりと立ち上がると、その背後は怒りのオーラで景色が歪んでいる。 「お、お姉様落ち着いて…まさか私も、効果が10年も持続するなんて考えても…ひぃッ!」 その言葉か聞こえていないかのように、壁際に追い詰めた妹の襟首を、諸葛瑾は千切りとらんばかりにねじ上げた。 「し、子瑜…アンタが怒るのも解るけど、そいつ殺したらヤバい事になるから…いろんな意味で」 「………直せ」 魯粛の言葉も無視し、諸葛瑾は普段より数段トーンの低い声で、妹に命令した。 「え? でもこれでお姉様の髪型は元通り…」 「いいから、私の髪型を普段通りに戻せと言っている…ッ!」 何故か目深になった前髪から、殺気立った目が覗く。 その形相に恐れをなしたらしい諸葛亮は、まるで壊れた人形のようにがくがくと首を縦に振った。 かくして一週間後、その特徴的な"ロバの耳"は再び元通りになった。 「いや〜、ホンッと良かったですねぇ、先輩。あの髪型もキマってたのに残念ですね〜」 こくこくっ。 「……黙れ、子山。元歎も同意すんな」 先日の一件で一番大笑いしてた張本人の一言に、直前まで上機嫌だった諸葛瑾はむっとした顔で二人を睨んだ。 「でもやっぱり、その髪型のほうが子瑜らしくていいと思うよ。可愛いし」 「それもそうですねぇ…いっそ、その根元にリボンでも結ってみます? もっと可愛くなるかも知れないですよ」 こくこくっ。 孫権の言葉に冗談とも本気ともつかない提案を投げてくる二人(?)。 「お前等なぁ…それより、今回は孔明のヤツも災難だったかもな」 「いいのよあのくらい。たまにはいい薬だわ」 そうである。 何せその薬そのものが残っていなかったため、諸葛亮はかつて自分が作った試作品のレシピをほじくり返し、急遽作ることになったのだ。 しかも、材料も入手困難なものばかりらしい。 その内訳が明かされることはなかったが、材料をかき集めて帰ってきた諸葛亮の白衣は見るも無残な状態で、しかも供をしたらしい趙雲たちに至ってはそれ以上の有様だったことを鑑みれば…。 「…………なんてーか、いろんな犠牲を払ったんだなぁ…その"ロバの耳"は」 孫権の言葉に再び上機嫌となった諸葛瑾の姿を眺めながら、魯粛はしみじみとそう言った。 そして、成都棟の(元)科学部部室では… 「!………う〜む、まさか、また何年後かに同じ事が起こるんではなかろうな………」 姉の見慣れない形相を思い出し、思わず身震いした諸葛亮であった。 ちなみに、諸葛姉妹の母親にこの薬が使われたか否か、定かではない……。 (終劇)
547:海月 亮 2005/01/30(日) 20:38 以上でござる(゚∀゚)> 「風を継ぐ者」の閑話休題的に書いたお話なのですが…出来上がってみるとまったく無関係に(オイ 時期的には長湖部&蒼天会が合肥と濡須でドンパチやる直前くらいになるでしょうか。 >ぐっこ様 留賛。そうなんですよ、彼女の散り様はいずれ書かねばならぬと思っておるのですよo(>ω<o) でも先に審配さんの散り際やっちゃいそうです。何気に、キャラデザがないのをいい事にイメージだけで描いていたら、その光景が脳裏に(ry とりあえず、それもうぷろだに置いて帰ります。
上
前
次
1-
新
書
写
板
AA
設
索
★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★ http://gukko.net/i0ch/test/read.cgi/gaksan2/1013010064/l50