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★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★
547:海月 亮 2005/01/30(日) 20:38 以上でござる(゚∀゚)> 「風を継ぐ者」の閑話休題的に書いたお話なのですが…出来上がってみるとまったく無関係に(オイ 時期的には長湖部&蒼天会が合肥と濡須でドンパチやる直前くらいになるでしょうか。 >ぐっこ様 留賛。そうなんですよ、彼女の散り様はいずれ書かねばならぬと思っておるのですよo(>ω<o) でも先に審配さんの散り際やっちゃいそうです。何気に、キャラデザがないのをいい事にイメージだけで描いていたら、その光景が脳裏に(ry とりあえず、それもうぷろだに置いて帰ります。
548:北畠蒼陽 2005/02/10(木) 16:26 [nworo@hotmail.com] ご無沙汰です。 えっと、まだ未完成の作品なんですが前に言ってた曹騰の話です。 実は今週引越し予定でして、しかもまだ引越し先にネット環境が整ってない、いつ復帰できるかもわからない状況なのでとりあえず出来ているところまで投下です。 ちなみに全8話の予定。ちょい長いですな……
549:北畠蒼陽 2005/02/10(木) 16:27 [nworo@hotmail.com] -Sakura- 第1話:紅華 時計の秒針が時を刻む音だけが聞こえる。 曹騰はうららかな昼下がり、1人で縁側に正座し緑茶をすすっていた。 すごくおばさんくさい。 しかし普段着ではなくぱりっとスーツを着ているのは違和感がある。 茹でた青菜のようにはんなりとした時間が過ぎていく。 自分の学生時代の激動からは考えられないようなゼイタクな時間に曹騰は人知れず笑みを浮かべた。 「あつつ……」 お茶の熱さに舌を火傷しそうになり苦笑する。 あの頃の熱さにもう一度戻ってきてもらいたいとは思わないが懐かしく感じることは事実だ。 「ただいま〜!」 静寂のときを破る声。 曹騰はぼんやりと時計を見た。 (あぁ、ほんと、学校の終わる時間だわ) かなり長い間、ぼ〜っとしていたことに気付き、少し赤面しながら曹騰は立ち上が……ろうとしてこけた。 足が痺れていた。 上半身を床に突っ伏したまま、ひくひくとうごめく。 虫みたいだった。 「お姉ちゃ〜……って、う……えっと……どうしたの?」 曹騰の頭上で本気で心配する声がした。 心配しなくていいから見ない振りをしてほしい。 「な、なんでもないわ、孟徳ちゃん。おかえり」 脂汗をかきながら必死で笑顔を浮かべる。 痛々しい。 「……!」 孟徳……自分を実の姉のように慕ってくれている従姉妹の曹操。今はエン州校区の小学校に通っている……に微笑みかけた曹騰の目に飛び込んだのは泥にまみれた服と無数の擦り傷だった。 「孟徳ちゃん、どうしたの!?」 「え、あ……なんでもない! なんでもないよっ!」 曹操は焦りながらぶんぶんと手を振った。 あからさまになにかある、という態度である。 曹騰は片ヒザ立ちで座り……足の指を両手でほぐして痺れを取ろうとちょっと必死になりながら……真剣な顔を曹操に向ける。 「孟徳ちゃん、ちょっとそこに座りなさい」 ちょっとホンキ。 こうなると曹操は弱い。 まず年齢が一回りも違うのだからその潜り抜けてきた修羅場の回数も当然のようにまったく違う。 その従姉妹の『ホンキ』に曹操の小学校レベルのキャリアが太刀打ちできるわけがない。 まるで『曹騰に怒られる曹操』のようにしゅん、となって曹騰の前に正座する。 比喩じゃなくてそのままである。 「孟徳ちゃん、いじめられたのね」 「……」 「返事は『はい』。それ以外認めません」 『はい』しか認めないんだったら聞く意味ないだろう! と、ちょっとだけ曹操は思ったが反論できない。 「……はい」 「私が『カムロ』だから『カムロの従姉妹』って言っていじめられたの?」 「……言いたくない」 とたんに曹操のほっぺたが曹騰に掴まれた。
550:北畠蒼陽 2005/02/10(木) 16:28 [nworo@hotmail.com] 「そんなことを言うのはこの口? この口?」 むにむにと引っ張る。 「ひ、ひたい! ひたいよぉ〜!」 むにむにむに。 ほっぺたをむにむにと引っ張っているとまた足の痺れが襲ってきて曹騰は再び突っ伏した。 「うぐ……と、とにかく孟徳ちゃんはそんなことを気にすることはないの! みんなに嫌われたら私がその分、愛してあげる。そして本当に友達、って言える人たちができるまでずっとずっと守っていてあげる」 曹騰はいいことを言った。 いいことを言ったのだがいかんせん上半身を床に預けたまま、お尻を上に向ける、といういかんせんはしたないポーズのためまったく威厳はない。 「……トモダチ」 そんなポーズながら曹騰の言葉は曹操の心に響いたようだ。 人間わからないもんである。 「トモダチ……よくわかんないよ」 従姉妹の夏侯惇や夏侯淵、曹仁や曹洪らは友達、と言えるかもしれないが、それ以外に自分が『カムロの従姉妹』と知っても付き合ってくれるようなトモダチなど曹操に心当たりはなかった。 「……」 曹騰は溜め息をつき再び足指をほぐしだした。 もうしばらく立ち上がれそうにない。 「『カムロの従姉妹』どころか『カムロ』にだって友達は出来るものよ。私にも高校の頃、とっても素敵な友達がいた」 「……え!?」 従姉妹の言葉に素っ頓狂な声をあげる曹操。 「失礼ねぇ……私が友達できないくらい性格悪いって?」 やや憮然とした声で曹騰が曹操を睨む。 もちろんそういう意味ではなく『カムロ』というものがそれくらい忌み嫌われている、という意味の驚きである。 曹騰は仕方がない、という顔をし短い髪をかきあげた。 「じゃあ……私の高校の頃の話……とても素晴らしい友達の話でもしてあげる」 どちらにしろ足の血行が戻るまでまだまだ時間がかかるだろう。 それに今日は…… まぁ、それまでの暇潰しに話をするのも悪くない。 そして曹騰は語りだした。 ……彼女たちは本当に輝いていた。 そして私の人生は彼女たちによって鮮やかに彩られた……
551:北畠蒼陽 2005/02/10(木) 16:28 [nworo@hotmail.com] …… とても目立つ少女だった。 遠目にもつややかな髪をばっさりとオカッパにまとめ、さらなる特徴として誰が見ても明らかな胸のふくらみのなさ。 そして制服も膝がちょうど隠れるくらいのショートパンツ。 典型的なカムロである。 解説しよう。 カムロとは髪をショートボブまで切り詰め、少年と見まがうばかりに胸がないブラジャーいらずの もののことである。 なぜそのような存在が学園に存在するか、についてはいろいろある、としか答えようがない。 答えたくとも説明が長くて答えるのが面倒だ、というのが本音である。 とりあえず今は話を少女に戻そう。 「なんでこの私の……曹騰の名前がないわけぇ〜ッ!?」 「さぁ、そんなことを私に言われてもねぇ……困るんですよ、とにかく。あなたの名前はこの名簿にありません。つまり入寮は許されません」 学生課…… そう書かれた看板の下で曹騰と係員が言い争っていた。 正確には言い争っている、と感じているのは曹騰だけであり、係員にとってはうるさいハエをつぶすことすら面倒だから放っておいている程度のことだろう。 「だいたいカムロごときが、この司隷特別校区にというのも、ねぇ」 係員の言い草に曹騰の怒りゲージは急速に溜まっていく。 今の曹騰であれば水温94度くらいでお湯が沸騰する。 『カムロ』というのはつまり学園の象徴である『学園都市女子高等学校連合生徒会代表会議』……通称、蒼天会の会長にはべり、連合生徒会との連絡、調整役を勤めるのが役目なのである。 もう少し世代交代すればそうでもなくなるが、現時点では勉強の成績もあまりよくない人間が多く、無教養で軟弱、と見られることが多かった。 曹騰とてあまり勉強ができるわけではないが、それでもこの言い方はあんまりだと思う。 だいたい曹騰なりにがんばって、ようやく掴み取った司隷特別校区……そう、蒼天会、生徒会などの全管理機能が集中している学園都市最大の『首都』への切符をこんな係員ごときにバカにされなければならないのか。 しかも入寮名簿に名前を書き漏らしたのはそっちだろうに……! 「とにかく本日の入寮は認められません。後日、書面で入寮申請をお願いします」 『お願いします』などとは言っているが明確な拒否である。
552:北畠蒼陽 2005/02/10(木) 16:30 [nworo@hotmail.com] 「……ッ!」 「それは酷くないですか?」 曹騰が口を開こうとした、まさにその瞬間、後ろからの涼やかな声がやんわりと割って入る。 「それに彼女だって遊んでここまでこれたわけではないはず。先ほどの『カムロごとき』という言葉は取り消すべきだと思います」 係員はぱくぱくと金魚のように口を開け閉めさせて顔を青ざめさせている。 いい気味、と思いながら曹騰は天使の声の持ち主を見た。 天使だった。 腰まで届くような長い髪。 優しげな顔。 曹騰は今まで『美人』に会ったことならあったが『天使』に出会ったのは初めてだった。 惜しむらくは胸の大きさが曹騰と比べても遜色ないところだが……まぁ、これは好みが別れるところであろう。 天地がひっくり返ってもこんな娘にはなれない……曹騰は人知れず敗北感に浸った。 「なんとか彼女を寮に入れることはできないのですか?」 「し、しかし……規則は規則ですので……」 抗弁を試みる係員。 「わかりました。もう頼みません。彼女は私と同じ部屋に来ていただきます。私もちょうど1人部屋でしたからちょうどいいですわ」 「あぁーッ!? そ、それはいけません!」 「もう決めました」 真っ青になる係員。 彼女ってば……こんな傍若無人な係員が一発で恐れ入っちゃうくらい良家のお嬢様なのかな? 曹騰はそっと彼女の顔を盗み見る。 目があった。 恥ずかしくなって顔を伏せる曹騰に彼女はにっこりと笑いかけ、手を差し伸べる。 「これからよろしくお願いしますね……私は劉保、と言います」 劉…… 蒼天会長の家柄……この娘が誰だかよくわからないけどいいとこのお嬢さん、という推測は間違っていなかったようだ。 「りゅうほ……劉保ね。私は曹騰! 季興って呼んでね。これからよろしく!」 曹騰が彼女の差し出した手を握り締める。 そのときの彼女のなぜか、曹騰に対して驚いたような表情が印象的だった。
553:北畠蒼陽 2005/02/10(木) 16:32 [nworo@hotmail.com] -Sakura- 第2話:琴平 「劉保ってお嬢様なんだよねぇ〜?」 「りゅ、りゅうほ……!?」 曹騰の言葉に劉保は目を白黒させた。 曹騰はくるくると逢魔が時の薄暗闇の中を回転しながら…… そして劉保はそれを楽しそうに眺めながらしずしずと、2人は並んで歩いていた。 「あっれ? 劉保って名前じゃなかったっけ? 違った?」 心底、不思議そうに曹騰が劉保に問う。 「いえ、劉保であってます。ただ……」 「ただ……?」 不思議そうな顔を浮かべる曹騰に劉保は苦笑を浮かべる。 「あまりそう呼ばれ慣れなかったものですから」 「呼ばれ慣れなかったって……」 自分の名前だろうに、と思いはしたがそれも家庭の事情なのだろうと思って言葉を飲み込む。 どういう事情だかはよくわからないが。 「……で、お嬢様なんだよね?」 露骨な曹騰の言葉に劉保は再び苦笑。 「そう、かもしれませんね」 思えば子供の頃から大事にされすぎて同年代の友達を得ることも出来なかった。 周りがみな自分の名前を知っているのだ。 近づいてくるのは自分の名前を利用して出世しようとするやつらばかり…… だから劉保にとって自分のことを知らないでいてくれる曹騰ははじめての興味深い存在だった。 「ねぇねぇ、劉保ってあだ名ってないの? あだ名」 「あ、あだ名!?」 劉保は一瞬、呆然としたがすぐににっこりと笑った。 「あだ名、というのはありません。私のことは劉保とだけ呼んでくれればそれで十分です」 「ふ〜ん……あ、そうそう……」 何気ない会話。 曹騰が振ってくる……彼女にとっては本当に何気ない話題なのだろうが……それは劉保にとってはとてつもなく新鮮な時間だった。 「……ってば! 劉保ってば!」 少しぼんやりしていたのだろう。 ふ、と気付くと曹騰の顔がほんの目の前にあった。 「は、はい?」 「あ〜、びっくりした。劉保ってば急に立ち止まるんだもん」 屈託なく笑う。 「ちょっと考え事をしちゃいました」 「わかるわかる」 なにがわかるというのか、曹騰は劉保の言葉にしきりに頷いてみせる。 それもまた……なにか嬉しかった。
554:北畠蒼陽 2005/02/10(木) 16:33 [nworo@hotmail.com] 「で、どうかしましたか?」 劉保の言葉に曹騰は『あぁ、そうそう』と言った。手をポン、と打つアクション込みで。 芸の細かい娘である。 「劉保って何年生なの?」 曹騰は学生課の係員を明らかに圧倒する存在感から自分よりも1歳か2歳は年上だと思っていた。 胸は……まぁ、成長期には個人差がある。きっとこれからだ。大丈夫。 「今年から高等部です。曹騰さんと同い年ですね」 劉保の言葉に曹騰はぴしっ、と石化した。 「あ、あの……えっと……季興さん?」 まるまる30秒固まってから曹騰は目をぐるぐるさせながら喚いた。 「お嬢様で、キレイで、私よりも年上かと思ったら実は同い年でーッ!? 完璧超人か、あんたはーッ!?」 「え、えぇッ!?」 劉保にとっては……まぁ、当たり前であろうが……はじめてこんなことで怒られているわけである。 「天は二物どころか森羅万象をあんたに与えたかーッ!?」 「そ、そんなッ!?」 理不尽である。 目をぐるぐるさせていた曹騰は……しかし、ある一点を見やってからふむ、と考えこんだ。 「き、季興さ……わひゃあ?」 劉保が変な声をあげた。 曹騰が劉保の胸を前から揉みはじめたからだ。 「ごめんごめん。完璧超人じゃなかったね」 「あ、いや。やめてください……季興さん」 ふにふにふに。 顔を真っ赤にして悶える劉保。 「これが劉保の完璧超人っぷりを阻害してる、と思うと愛しく思えるねぇ」 「あ、だめ。そこ……や、やめて、ください」 ふにふにふに。 ちっちゃいが感度はいいようだ。いいからどうだ、というわけでもないが。 不意に曹騰の手が止まる。 「あ、ん……え?」 「へへ〜、劉保ちゃん、感じちゃった? 可愛かったよ〜」 胸を揉まれたときとは違う気恥ずかしさで再び劉保の顔が朱に染まる。 「もう、季興さんなんて知りません!」 ぷいっ、とそっぽを向く。 「ごめんごめん」 へらへらと笑いながら劉保に謝る曹騰。 「許しません」 しかし劉保の口元はその言葉とは裏腹に笑みを形作っていた。 ……こんな友達なんてはじめてだったからだ。
555:北畠蒼陽 2005/02/10(木) 16:34 [nworo@hotmail.com] 「うっわぁ」 曹騰はその巨大な建物に驚きの声をあげた。 司州蒼天女子寮。 さすが学園都市の首都の寮である。 その威容はまだこの司隷特別校区に到着して間もない曹騰を驚かせるに十分なものだった。 「ふふ、どうしました?」 曹騰の驚いた顔を見て劉保はくすり、と笑った。 「びっくりしたよ〜。こんな大きいんだねぇ」 心の底からの驚きに劉保はまた笑みを漏らす。 「さ、お姫様。こちらが女子寮になりますわ」 「うん、苦しゅうない」 劉保の言葉に曹騰は尊大に頷き……吹き出した。 「く、くくく……劉保っておもしろいんだね」 「そんなことはありませんわ……さ、司州蒼天女子寮へようこそ」 劉保が曹騰を招き入れる。 そこも……曹騰が見たことがない別世界だった。 「ほぇ〜」 感嘆にもならないような声をあげる曹騰。 それを微笑ましげに見ていた劉保の顔が不意にこわばる。 「ここにおられたんですか」 「あ、えぇ……ただいま帰りました」 曹騰は劉保に声をかけてきた女性を横目で観察する。 背の高い、しかし目の細い女性である。 竹刀を片手に持っていることから恐らくは軍人なのであろう。 ぽわぽわとした喋り口調ながら劉保には礼儀を尽くしているようだ。 しかし……そう、親しそう、という言い方は少し違うような気がする。 どこかに遠慮が感じられる口調。 まぁ、無遠慮よりはいいだろう…… 自分のことを棚に上げて(曹騰の心には棚が108個ある)曹騰は女性の胸を見た。 でかい! いや、そうじゃない! 女性の胸には燦然と輝く二千円札階級章。 カムロの自分にとっては雲の上のひとである。 思わずびしっと気をつけをしてしまう。 というか…… 「劉保……ねぇ、このひと……」 誰? と聞こうとする曹騰の目の前になにかが突き出された。 目で追うと……女性の手元に……って、竹刀!? 「うわぁッ!」 跳び退る曹騰。 女性はにこにこと笑みを浮かべたまま竹刀を曹騰に向けたまま…… (こ、こあい……) 目の前の女性はとりあえず名前がまだわからないので曹騰の中で『ぽわぽわ暴力的二千円』と命名された。 そのまんまである。そうでもないか。 「そこのカムロ……この方を誰だと考えているのかは知りませんが呼び捨てにする所見をぜひとも伺いたい」 「え? ……えぇ?」 呼び捨てにする所見、ってあんた…… 「梁商さん、季興さんは……このひとはなにも知らないの!」 慌てて女性……梁商と呼ばれたか……の腕にすがる劉保。それでも竹刀の切っ先はピクリとも動かず曹騰に突きつけられたまま。 「なにも? ……なにも、とはどういうことです?」 劉保は梁商に答えず曹騰に向き直り、少し痛々しい笑みを浮かべた。 「隠していたわけじゃないんですけど……私、次期蒼天会長に指名されているんです」 劉保の言葉に曹騰は意識が遠くなりそうになった。 雲の上どころか大気圏の上のひとだ。すでに人間ではない……
556:北畠蒼陽 2005/02/10(木) 16:34 [nworo@hotmail.com] 蒼天会…… 正式には『夏学園都市女子高等学校連合生徒会代表会議』。校祖である劉邦からはじまって以後、数十年もの伝統をもつ組織。 学園の学園であるための象徴的組織、そしてその頂点に……5万余にも及ぶ学生たちの頂点に君臨する存在こそ蒼天会長であった。 次期蒼天会長、ということは…… 曹騰は前を歩く劉保のあとをとぼとぼ歩く。 その後ろを牽制するように歩く梁商が怖いわけではない。 梁商のことは多少しか怖くない。 それよりも…… ぴたっ、と劉保が足を止めた。 びくっ、と曹騰も足を止める。 「なんで……隣を歩いてくれないんですか……?」 劉保の声は悲しみに満ちていた。 しかし曹騰にとってはもう取り繕うだけで精一杯である。 「え、いや、だって、ほら、次期会長サマの横を歩くなんて恐れ多い……」 「サマなんて呼ばないでッ!」 曹騰の言葉を切り裂くような劉保の悲鳴。 曹騰は梁商と一瞬、顔を見合わせる。 「季興さん……私のことを呼び捨てにしてくれたじゃない……それははじめてのことで……とても嬉しかったのに……」 劉保は泣いていた。 「いつだってみんな私のことを知っていた……だからなにも知らないでいてくれたあなたのことがすごく嬉しかった……でも、もうそれもおしまい」 歌うように呟く劉保。曹騰もカムロであるから差別を受けてずっと生きてきた。 無視される辛さはこの身に染みているはずだ、なのに……今、自分が劉保を傷つけてしまった…… 「ごめん、劉保」 悲しみに彩られたその口調に償いの言葉はすんなりと口の端に乗せられた。 この子を悲しませるくらいなら地獄の業火に焼かれてしまえ、とそう思った。 「申し訳ありませんでした。次期会長がそんなことを思い煩わされていたとは露知らず……しかしわたくしはもうずっとこの態度で慣れてしまいました。いずれお名前を呼び捨てにさせていただきますので今はこれでご勘弁を」 梁商も首をたれる。 「曹騰さん、さっきはごめんなさいね」 首をたれながら梁商は曹騰にもそっと呟く。 いいひとなんだな、と曹騰は漠然と思った。 「ホントにごめん。もうサマなんて言わない。ごめんね」 曹騰の言葉に劉保はようやく涙を流しながら笑顔を見せた。 「今度、サマなんて言ったら絶交、ですよ……」
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