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★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★
569:北畠蒼陽@ネットカフェ 2005/02/17(木) 19:48 ネットカフェからこんばんは。 明日がお休みであることをいいことに今日は徹夜でネッカです。 それはともかくまだネット環境復活しません。 しばらく復活しないかもしれません。 なので投下もできません。 5話まで完成してるのにぃ(ノ_・。 まぁ、岡本様のおっしゃる活気からは程遠い人間ですがもうしばらくお待ちを^^;
570:北畠蒼陽 2005/02/18(金) 13:17 [nworo@hotmail.com] えっと…… 昨日の19時にネッカから復帰できないと書き込んでおいて家に帰ってみたらネットがつながっていたすごいかっこ悪いメルヘンです。 復帰記念に第3話投下させていただきますよぐすん(ノ_・。
571:北畠蒼陽 2005/02/18(金) 13:17 [nworo@hotmail.com] -Sakura- 第3話:平野突羽根 劉保、曹騰、梁商の3人は劉保の部屋でくつろいでいた。 ……広い。 広すぎる…… これが特権階級というものなのか…… 曹騰は唖然としたが、よく考えたら自分もこの部屋に住むことになるのだ。 さらに唖然。 「……わたくし? 2年生ですわ」 ファーストインパクトは恐怖しか感じなかった梁商も話してみるとやけにいいひとだった。 劉保はお茶を入れると言って(本当は梁商が『わたくしがやります』と言ったのだけど劉保が自分がお茶を入れたい、と言って譲らなかったのである) 「梁商さんは〜……じゃあ劉保のおつきかなにかなの?」 「えぇ、そうお考えください」 よかった。もう呼び捨てても怒られない。 曹騰はない胸をなでおろす。 「曹騰さんはどうしてカムロに?」 「え〜と……私のお姉ちゃん、曹節っていうんだけど『一流の人間になるためには一流のものに触れ続けるのが一番だ』ってのが持論で。この学園都市の『一流』ってやっぱり司州だからどうしてもここにきたくて。でも私、カムロになるくらいしかここにくる方法がなかったの」 私、頭が悪いから、と言ってえへへ、と笑う。 「なるほど……」 正直な曹騰の答えに梁商も苦笑をもらした。 「……だったらこうしてはどうかしら」 台所でお茶を入れていた劉保がティーカップを手に持ちながら話に加わる。 「私と一緒の先生に勉強を教えてもらう、というのは……はい、梁商さん、どうぞ」 「ありがとうございます、次期生徒会長……なるほど、『一流』に触れる、という観点から見るとそれもいいかもしれませんね。班昭先生をはじめとして学園の頭脳と呼べる方々に教わることができますから」 細い目をさらに細めてティーカップに顔を近づけお茶の香りを楽し……もうとして梁商は固まりつく。 なんで緑茶なんだろう…… まぁ、飲めるからいいか。梁商はにこにこと笑みを顔に貼り付けたままなにも言わない。 「はい、季興さんもどうぞ」 「ありがとう……でも私なんかが一緒に教えてもらってもいいの?」 「えぇ、かまいません」 にっこりと微笑む劉保につられて笑いかけながら曹騰はティーカップの中身を指差した。 「ところでなんでこれりょ……」 その瞬間、風圧にも似た強大な『気』が曹騰を襲う。 にこにこと笑顔の梁商。 その目は『次期生徒会長が入れてくださったお茶だ。黙って飲め』と語っていた。 「どうかしましたか?」 「なんでもないよ」 冷や汗を隠しながら曹騰は笑みを浮かべ、ティーカップを傾けた。 緑茶はおいしかった。
572:北畠蒼陽 2005/02/18(金) 13:18 [nworo@hotmail.com] 蒼天会長、安サマの治世はおおむね平穏に過ぎていた。次期蒼天会長である実の妹、劉保もおり、後継も万全と言えるだろう。 しかし安サマは小、中等部の頃から英才教育を受けてはいたもののまだ学園の裁量を取り仕切るには力量不足であり、先々代蒼天会長、和サマの頃からの副会長、搴Mが実際の政務を取り仕切っているのが現状であった。 搴Mは成績向上を推進し、また蒼天会内部の経費節約につとめた。 だが匈奴高校をはじめとする他校とのトラブルが絶えず、完全に安定している、とは言いがたい。 しかしそれらは対外的な問題であり、搴Mの欠点ではない。 搴Mにはただ一点、本当に困った面があったのである。 一般学生の前には決してその姿を現さなかったのだ。 先々代蒼天会長のパートナーであり、優秀な学園都市の牽引役ともいえる彼女はそれだけで学園のアイドルとも呼べる存在であったが、姿を表さなかっただけでミステリアスというよりも不気味さをまとい学生を引かせてしまった観は否めない。 一般学生の前に姿を現さなかった、ということは一般学生と彼女との橋渡しをする役目が当然のように必要になってくる。 それをおこなったのが蒼天会秘書室のカムロたちであった。 これによってもともとただ蒼天会の事務を司り、ハンコを捺すだけの庶務部署であったはずの秘書室は権力を増大させていったのである。 「……へぇ〜、そうなんだぁ」 「そうなんだ……って」 梁商が困ったような顔で曹騰を見る。 現在の蒼天学園についてあまりにも無知すぎる曹騰に現状を教えようとした梁商は眉を八の字にした。 「曹騰さん……一流に近づきたくてカムロになったのではなかったの?」 「うん、そうだよ」 屈託なく答える曹騰。 「……だったらなぜカムロが一流に近い位置にいるのか、ということを知らなかったのはなぜ?」 「知らないものは知らないよ〜」 知ろうとしろ、と思ったが口には出さない。 「仕方ないですよ、梁商さん。季興さんはまだ司州に到着したばかりなんですから」 劉保までも曹騰にフォローを入れてくる。 到着したばかり、なのが問題ではなく到着するまでに下調べをしておかなかった、ことが問題のように思えるのは梁商の考えすぎだろうか。
573:北畠蒼陽 2005/02/18(金) 13:19 [nworo@hotmail.com] 翌朝、曹騰は眠い目をこすりながら劉保の後ろについて歩いていた。 梁商はいない。 彼女は彼女で忙しいのである。 「劉保〜? どこいくの〜?」 あくびをしながら声を出すので『ううほ』と聞こえた。 「えぇ、これから季興さんには私と一緒にあるひとにあってもらいます。忙しいひとですからあまり時間は取れませんでしたが」 忙しい、と言っても劉保ほどではないはずである。 しかしだからといってあんまり偉いひとにあって、その目の前で劉保のことを呼び捨てにしてもいいもんだろうか…… 昨日、竹刀を目の前に突きつけられたばかりだし…… 曹騰が控えめにそれを劉保に伝えると劉保はしばらく考え、そして笑いながら言った。 「大丈夫だと思います。あのひとは大雑把なひとですから」 大雑把なひと、って…… 「それに……どんな場所であれ、私にサマなんてつけて呼んだら絶交ですからね」 悪戯っぽい表情。 曹騰は苦笑しながら素直に両手を挙げて降参の意思表示をした。 劉保より忙しいひとはそうはいない。 それは正確な言葉である。 次期蒼天会長である劉保が忙しいことについてはなんの異論もないからだ。 しかし『そうはいない』ということは『まれにいる』ということの裏返しである。 曹騰は緊張にこわばった顔でそのひとを見た。 背は曹騰より少し高いくらいだろうか。曹騰自身の背がかなり低いので彼女も世間一般的に見てもそれほど身長があるわけではない。 一見すると美人、と言っても差し支えないような顔つきだが目つきは鋭く、一概に美人と呼ばれることを拒否しているようにも見える。 髪は後ろでゆるく三つ編みを結んでいる。 そしてその胸に光るのは一万円札階級章。 蒼天会副会長、搴Mの実の姉であり連合生徒会会長、晁ォ。 超オオモノであった。 「晁ォ会長、ご無沙汰しておりました」 劉保が優雅に一礼する。 その瞬間、ずっと睨むような表情だった晁ォの顔に笑みが広がった。 「よ〜。どうだった、次期会長。体とか壊してねぇ?」 けらけらと笑う。 気難しいひとかと思ったら、ただのとらえどころのないひとだったようだ。
574:北畠蒼陽 2005/02/18(金) 13:19 [nworo@hotmail.com] 「妹が副会長なんかになるから私がこんなとこに座んなきゃいけなくなるんだっつの。まったく……どっかに優秀な人間がいれば喜んで階級章返上するのになぁ」 ぴん、と指で自分の胸の一万円をはじいてみせる。 「困ります。晁ォ会長は私の下でも生徒会長として指導していただかなくては」 「あっはっは。次期会長には梁商ちゃんがいるじゃねぇの。大丈夫大丈夫。あの子にだったら今すぐにでも階級章を譲ってかまわないね」 他愛ない世間話、というにはいささか庶民的ではない時空の話が続く。 「……で、その子は?」 笑顔のまま晁ォが曹騰のほうへ顔を向ける。 「きこ……曹騰さんといいます。昨日から私のルームメイトになりました」 「あ、あの! 曹騰です! 劉保のルームメイトになりました! よろしくお願いします!」 かちこちになりながら慌てて頭を下げる。 頭を下げる瞬間に見えたのは晁ォの獲物を見定める鷹のような目。 ……このひと……ただの豪快なひとじゃない…… 下を向いているが冷や汗が止まらない。 「……劉保、ね」 やがて晁ォは呟く。 その口調は先ほどの笑顔の表情と同じものだ。 「よかったじゃん、次期会長。友達が見つかったな」 「……そんな」 劉保の照れくさそうな声。 多分、真っ赤になっているのだろうな、と曹騰は下を向いたままで思う。 「っと、曹騰ちゃん。いつまでも下向いてるこたぁねぇ」 晁ォの明るい声。 曹騰は頭を再びあげる。 「曹騰ちゃん、ね」 晁ォのどこか底の知れない、だが不快ではない笑顔。 「あんたがどっからきた誰なのか、私には興味がない。だけど次期会長があんたのことを信頼している以上、私もあんたのことを信頼してやる」 晁ォは言葉を切り、窓の外を眺めた。 鳥が飛んでいる。 一層笑みを深くし、晁ォは言葉を続ける。 「秘書室に入るためには誰かの推薦が必要になる。私があんたを秘書室に推薦してやろう」 劉保は笑みを曹騰に向けた。 「ただし……この信頼を裏切ったら私があんたをぶっ殺す」 笑顔のままさらっと言ってのける。 しかし曹騰の答えは決まっていた。 「失礼ですが晁ォ会長は劉保のことをよくわかってません」 疑問を顔に浮かべる晁ォ。 「私がそんなことをしたら……」 曹騰は劉保の顔を一瞬見てから笑って言った。 「絶交されちゃうじゃないですか」 晁ォは曹騰の言葉に爆笑した。 晁ォに見えないように曹騰と劉保は手をつないでいた。 この手が離れることがありませんように……
575:北畠蒼陽 2005/02/19(土) 22:49 [nworo@hotmail.com] -Sakura- 第4話:千里香 それからしばらくは勉強の日々だった。 劉保の教師は確かに一流であった。 明らかに学力の劣っていた曹騰にもわかりやすい、しかも高度な授業、というのはそうあるものではないだろう。 自分が補完されていく感覚は曹騰にとって嬉しいものだったし、それになにより劉保も一緒にいてくれたことが曹騰にとってのなによりの支えだった。 講義後の部屋。 たった2人を教えるために教室を使う、というのも妙な話ではあるので寮の私室を使っている。 つまり教師を寮まで来させているわけだ。 VIPってすごい…… 「季興さんって覚えが早いんですね。先生も褒めてましたよ」 劉保がにこにこと笑いながら湯飲みを差し出してくる。 中身はチャイだった。 もう慣れた。 「覚え……早いのかな」 曹騰は苦笑する。 苦笑の主な原因はチャイなのだが。 「早いですよー。私がずっと教わってきたことにもう追いつかれちゃいましたから」 そう言いながら劉保は嬉しそうだ。 追いつかれて喜ぶ性格かと一瞬思ったがそうではないだろう、多分。 「私が蒼天会長になったら政務は全部、季興さんに任せて大丈夫そうですね」 悪戯っぽく笑いながらとんでもない発言をする劉保の顔めがけて曹騰は思い切り飲んでいたチャイを吹き出した。 「汚ーッ!」 「わぁ! ごめん!」 劉保が半泣きで制服の濡れた部分を指でつまんだ。 「うぅ、クリーニング代がもったいないなぁ」 意外とけちくさい。 「劉保がいきなり変なこというからビックリしたじゃないのさ」 心臓がばくばくいっている。 「変なこと……先生も褒めてました?」 「そのあとそのあと」 劉保は形のいいあごに指を当てて考える。 「クリーニング代?」 それは吹いたあとの発言である。 「ん〜と……政務全部?」 こくこく頷く。 「変かな?」 自覚がない。 「私、そんな権力なんていらないよ〜」 曹騰はたった1人、劉保と一緒にいられる、というだけで幸せを感じていた。 だから権力など必要ない。 「権力なぁ。まぁ、私もいらねぇなぁ」 いきなり後ろから声がした。
576:北畠蒼陽 2005/02/19(土) 22:50 [nworo@hotmail.com] 「よぉ」 曹騰は声の主を目で確認すると同時に背筋を伸ばす。 連合生徒会会長…… 「晁ォ会長……」 ……であった。 劉保が困ったような顔で晁ォの名を呼ぶ。 「どした?」 「ノックくらいしてください。いきなりはビックリするじゃないですか」 晁ォは劉保の言葉に初めて気付いたように手を打った。 「おぉ、すまんすまん。じゃあ……」 部屋から出て行く。 コンコン。 ノックしてからまた入ってきた。 「これでいいか?」 いいわけがない。 「えぇ、結構ですわ」 劉保はにっこり笑った。 ……曹騰には理解できない感情だった。 「で、だ……」 晁ォは気をつけの姿勢をとったままの曹騰に普通の姿勢でいるよう促すように手をひらひらさせる。 「楽にしていいぞ。取って食やしねぇよ」 別に食べられることを心配しているわけではない。 しかしまぁ、言われて休まないのも失礼な話ではあるので曹騰はまたチャイを飲む姿勢に戻った。 「うん……前に言ったあれだけど覚えてるか?」 あれ、と言われても困る。 「秘書室に推薦してやる、ってやつだ」 忘れていた。 「秘書室を極めれば蒼天会長の側近に行き着く……ま、お前の望みどおりじゃねぇか?」 忘れていたとはいえ確かに望みどおりであることは確かである。 曹騰はチャイで口を湿らせてる。 カムロになったときにいずれは蒼天会長の側近になりたい、という思いがあったことは確かだ。 蒼天会長の側近になり権力の座につきたい、という思いが昔はあったことは確かだ。 昔は、である。 今、権力がほしいか…… そう聞かれれば即答できる。 権力などいらない。 その意味では秘書室に入り込むのは望みどおりなどではない。 でも…… 曹騰は横を見る。 劉保は曹騰の秘書室への推薦を心から喜んでいるように見える。 だったら…… 劉保のために権力を使うのも悪くない。 答えなど最初から決まっていた。
577:北畠蒼陽 2005/02/19(土) 22:50 [nworo@hotmail.com] ……と、簡単に秘書室入りを決めたわけではなかった。 内心、十分に考えてから決めたことのはずなのだが…… 秘書室初日の感想は『早まったかな〜?』だった。 秘書室長、江京や実力者の李閏を中心にいつも集団行動。 ちらちらとこっちを見てはくすくす笑い。 非常に殴ってやりたくなる。 もっとも曹騰にとっても居心地が悪いことこの上ないが、江京たちにとっても連合生徒会会長の推薦というのは目の仇にされるものらしく曹騰は初日から孤立状態であった。 しかしそんな状況であれ仕事はあるらしく(もっとも秘書室長らは仕事などしていないが)曹騰もデスクにつき資料のまとめをしていく。 劉保と一緒に勉強したことが役に立っているようで、それだけが今のところほぼ唯一の秘書室での収穫だった。 ぺしっ。 なにかが頬に当たる。 ……というか痛い。 ころころと書類の上を転がるそれはシャーペンの折れた芯だった。 指でつまんで折れた芯を眺める。 シャーペンの芯というのは曹騰の知っている限り、折れることはあっても顔に跳んでくることはめったになかったはずだ。 つまり…… ……いやがらせ? 不機嫌な顔で芯が飛んできた方向を睨みつけてやる。 いやがらせではなかったらしくメガネをかけた同僚が声は出さずに、それでも口の動きと雰囲気で謝っている。 まぁ、どんな場所でも追従するやつらばかりじゃないってことか…… 曹騰はそんなことをぼんやりと考えつつ、まだ必死で謝っている少女に『いいよ』と手の動きをしてみせる。 少女は頭を下げることこそやめたがそれでも手のひらを合わせたままウィンクしてくる。 そのポーズがやけにかわいくて…… 曹騰は内心の思いに修正を加えた。 唯二の秘書室での収穫だな。
578:北畠蒼陽 2005/02/19(土) 22:51 [nworo@hotmail.com] 「いや〜、ごめんね、さっきは〜」 孫程と名乗った少女と照れ笑いを浮かべていた。 「ホント、気にしなくていいから」 ここまで謝られると曹騰のほうが恐縮してしまう。 2人は屋上で弁当を広げていた。 孫程も『集団行動』というやつは苦手らしい。 その意味でも収穫、という言い方は正しそうだ。 「いや、私、今でこそカムロやってるけどもともと体育会系だからね〜」 タコさんウィンナーをぱくつきながら、いかにも図書委員的な外見の少女はさらっと体制批判して見せた。 ここまで素直に言われると逆に心配になってくる。 しかし……曹騰は孫程の頭からつま先までをゆっくり見つめた。 カムロの象徴であるオカッパ。 フレームなしのメガネの下のちょっとタレ気味の目。 ほんのちょっとでも力を入れたら折れそうなくらいに細い首。 曹騰よりも小さいのじゃないか、と思わせる胸。 華奢、という言葉以外で言い表せそうにない腕。 すらりと伸びた、といえば聞こえはいいがやせっぽち、とも言いかえられる足。 曹騰はゆっくりと孫程の全身を眺めてから目線をもう一度合わせた。 「体育会系ってうそでしょ?」 「たは〜。まいったなぁ」 孫程は自分の後頭部をぺしん、と叩いて見せた。 体育会系かどうかはともかくとして図書委員ではありえないことだけは納得できた。 「本当ですか!?」 『ただいま〜』の声よりも先に部屋の中から劉保の叫び声にも似たような声が響く。 クエスチョンマークを頭に浮かべながら曹騰は室内に入った。 劉保は少し顔を青ざめさせて電話に向かっていた。 受話器をぎゅっと握り締めている。 「えぇ……えぇ、わかっています」 顔を青ざめさせながら、それでも普通に対応している。 明らかにまずい案件だ…… 曹騰はそう判断し劉保の邪魔にならないよう部屋の隅で着替える。 着替えがようやく終わる頃、劉保の電話がようやく終わった。 電話が終わった瞬間、劉保はソファに倒れこむように座り込んだ。 相当まずい案件であることが伺える。 「ただいま。どうしたの?」 劉保はちらっと曹騰の顔を見て、再びうなだれた。 「おかえりなさい……」 そして意を決したように、それでも目を伏せたままぼそぼそと言った。 「摯實長がご病気で副会長を辞任なさるそうよ。階級章もすでに返上なさったんだって……」 予想以上にとびっきりまずい案件だった。
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