★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★
584:北畠蒼陽2005/02/28(月) 16:41 [nworo@hotmail.com]
「ごめんかった!」
結局、安サマには一目も会えず……
そして意気消沈して帰ろうとする2人の足を止めたのはそんな明らかに間違っている日本語だった。
孫程……
「そっか。あんた、秘書室に残ってたんだっけ……」
曹騰は劉保と一緒に野に下った。
孫程は秘書室に残った。
野に下ったほうが精神的には楽だったろうな……
心労だろうか。少しやせ……
やせ……
やせ……
「あんまりやせてないね」
「まぁ、食べるもんは食べてるからね」
これ以上やせたら困る、とでも言いたげに孫程は苦笑する。そりゃそうだ。
「まぁ、それはともかく……」
孫程は済陰の君……劉保に向き直る。
「本当にごめんでした」
深々と頭を下げる。
こんな場面、他のやつらに見つかったらまた大問題であろう。
「あの、頭を上げてください」
「日本語間違ってるから」
曹騰と劉保は苦笑を浮かべながら同時に発言する。発言の方向性はまったく違うが。
「いや、なんつか……秘書室に愛想が尽きそうです」
悔しそうな顔になって言う。
良識人は中にもいたか、よかったよかった……というのは曹騰たちの側から見た感想であり、実際に内部の腐敗していく様子をまざまざと見せ付けられる孫程にしてみればこれ以上に悔しいものはないだろう。
「まぁまぁ……」
なだめてみる。
なだめてはみるがさっきの江京を思い出し……あれと一緒にいて自分だったら『まぁまぁ』程度じゃ落ち着かないなぁ、と思ってやめた。
「とにかく!」
孫程は急に頭を上げた。
なだめていた曹騰のあごに孫程の後頭部がジャストヒットした。
「お、ぉぉぉ……」
「く、くぁぁ……」
2人とも患部を抑えて倒れこむ。
これは痛いですよ、実際。
「きゅ、急に立ち上がらないでよ! 私のあごがバカになったらどうするの!」
「わ、私が悪いのぉ!?」
「そりゃそうよ! あごがだめになったらガラスのあごなんていわれて世界が狙えなくなっちゃうじゃない!」
なんの世界だ。
「そ、そうか。ごめん」
納得したらしい。
それを見て……
「……くす」
劉保の張り詰めていたものが緩んだ。
今日、初めて口からこぼれた笑みだった。
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