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590:北畠蒼陽 2005/03/04(金) 01:53 [nworo@hotmail.com] お姉さま…… 安サマ…… 前蒼天会長、劉祐…… 劉保の実の姉であり劉保を失脚させた張本人。 だから曹騰にとっても梁商にとってもあまりいい印象のある人物ではない。しかし…… 「お姉さま、子供のころは本当に優しかったんです」 遠い過去を懐かしむ口調で劉保が呟く。 今はないもの…… だからこそ人は過去をいとおしく思うのだろう。 「お姉さまはいつかわかってくれると思います。だから私はお姉さまが許してくれるまでずっと雨宿りしようと思います……やまない雨はないのですから」 劉保の言葉が窓の外の雨にかき消される。 「やまない雨、ってずっと待ち続けるの?」 曹騰の言葉に劉保は頷く。 曹騰は黙って窓を開けた。 雨が降っている。 雨が降っている。 雨が降っている…… 「やまない雨はないかもしれないけどやむまで時間のかかる雨ばっかりだよ、この世は」 梁商が劉保にリストを差し出す。 「貴女が一声かけるだけでこれだけの……いえ、これ以上の人が幸せになれるんです」 「……」 劉保は肩を震わせて、それでもリストを受け取る。 「雨がやむのを待つのもいいかもしれない。でも雨に濡れる覚悟ってのもたまには必要だと思う」 「……雨に濡れる、覚悟?」 劉保が初めて聴く言葉に顔を上げた。 「雨って冷たいよ。だから濡れたくなんてない。でもいつまでもやまない雨を呪って空を見上げるより一歩を踏み出すのも大事なことなんじゃないかな、ってそう思う」 「……覚悟」 劉保は曹騰の言葉を繰り返す。 「覚悟のためにお姉さまを裏切れ、というの?」 「裏切る裏切らない、じゃないよ。劉保が劉保でいるために必要なことなんだと思う」 劉保はゆっくり考える。 そして…… 「私が雨に濡れて……幸せになれる人がこれだけいるんですね?」 曹騰、梁商は力強く頷く。 「わかりました。傘を持たずに出かけましょう」 歌うような劉保の言葉。それは曹騰がはじめて出会ったころの響きだった。 「行きましょう、司隷特別校区へ!」
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