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★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★
60:玉川雄一 2002/03/18(月) 23:04 そんな生徒会も、やがて未曾有の大混乱にみまわれる。蒼天会の内紛は拡大し、学園の威光は地に墜ちた。 ついには、今となってはあの伝説の名マジシャン司馬懿に最も近い血族でもある司馬倫が蒼天会長の座を強奪。 しかし程なくして、他の司馬一族が結束して司馬倫を追い落とすというめまぐるしい展開が繰り広げられるのだった。 顧栄はといえば、司馬倫が束の間の至尊の地位を占めた際、強制的に彼女の一派に組み込まれていた。 そのため、司馬倫失脚後に連座してしまったのである。 生徒会の一室には同じ運命の十数人ほどが集められ、もはや階級章の剥奪は時間の問題となっていた… 「すみません、執行部員の顧栄さんはどちらでしょうか?」 「あ、ああ… 私だけど?」 沈みきった雰囲気の部屋の中に一人の女生徒が入って来ると顧栄の名を呼んだ。 憔悴しきった表情で顧栄が答えると、起立を促して手を取る。 「一人ずつ順番に査問を行うとのことです。最初は貴女ということですので、同行をお願いします」 「そうなの。まあ、今更言うこともないけどねえ… じゃあ、行くとしますか」 手を引かれたまま、部屋を後にする。しばらく歩いたところで、女生徒が顔を寄せると耳元でささやいた。 「顧栄さん、こちらです。見つからない内に、早く」 「えっ!?」 驚く顧栄をよそに、手を握って走り出した。様子がおかしいと思いつつ、自分に敵対するでもない風を感じ取ると、 女生徒の導くに任せて後を追う。しばらく走り、人目から離れたところでようやく立ち止まった。 「ふう、ふう、はあ… ここまで来れば大丈夫ですね。ギリギリでした」 「はあ、はあ… 何で、私を? 助けてくれたんだよね?」 息を整え、顧栄は状況を整理した。今にも階級章を剥奪される寸前だったところを、この女生徒のお陰で脱出できたのだ。 行方をくらましたことが発覚すれば追っ手が放たれるかもしれないが、ひとまずの危機は乗り越えたといっても良さそうだった。 「ええ。貴女には以前、お世話になりましたから」 ここでようやく、相手が誰かをじっくり確認することができた。この声、そしてこの顔は… 「まさか、貴女は… あの時の!?」 「はい。私のこと、雑用だってバカにしないで、お裾分けまでして頂いて… いつか、ご恩をお返ししようと思っていたんです」 救いの主は、いつぞやの会議でビーフジャーキーを分けてあげた女生徒だったのだ。 顧栄は感謝の気持ちであふれる涙を抑えながら、女生徒の手を取って押し抱いた。 「ああ、ありがとう… 些細なことがきっかけでも、こうして忘れずにいてくれるなんて… 一宿一飯の恩とは、昔の人もよく言ったものだわ」 「そんな、私は貴女の心遣いが嬉しかったんです。いつか絶対にお役に立ちたい、って思い続けてました」 「そうだったんだ。今度は、私がいつかお返ししないとね」 「どういたしまして。 …でも今は、ここから逃げ切ることが先決です。急ぎましょう」 感謝の念は尽きないが、それはいずれまたゆっくりと味わえばよい。今はただ、身の安全を確保することが第一だった。 「そうね… それじゃあ、久々に帰るか、懐かしい湖南へ… よかったら、一緒に行きましょう」 「はい!」 顧栄と女生徒は、何とか揚州校区へとたどり着いた。道中様々な苦労はあったが、二人は力を合わせて困難をくぐり抜けたのである。 この後も顧栄は数々の動乱をくぐりぬけ、『東晋ハイスクール』設立当初の重鎮に名を連ねることになった。 その傍らには、常にかの女生徒の姿があったという。 この件に関しては、顧栄も従姉にならってか多くを語ろうとはしなかった。 彼女を影で支えた少女の名は、今となっては確かめる術もない…
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