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★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★
656:北畠蒼陽 2005/06/14(火) 17:57 [nworo@hotmail.com] 「し〜せきちゃ〜ん、あっそびっましょ〜」 遊びましょ、って…… おびき寄せるにしてもあまりにも幼稚な方法に苦笑を禁じえない。 これは敵は無能だわ。援軍到着と同時に大勲功かなぁ…… ここで大出世しちゃうのは悪くないなぁ…… 施績は頬の辺りが緩むのを感じた。 「もぉ〜、しせきちゃん、いけずだね〜。遊んでくれないんだったら帰っちゃうぞ〜」 帰るの? だったらそれはそれで悪くはない。 敵壊滅には劣るけど江陵棟を守りきるだけでも十分な功績だ。 「それにしてもここらへん湖が近いからかな? 寒いね〜」 寒いか? 施績は校舎を守りきった人間の余裕で王昶を見る。 あいつはしょせん敗残者だ。 ここを守りきった私の足元にも及ばない。 「あ〜、鼻水出てきた……ハンカチハンカチ」 ……いや、そんなことをいちいち拡声器を通していわなくても。 苦笑する。 「チーン」 鼻をかむ音がやけにリアルに響く。 施績は吹き出しそうになった。 「ん? なにこれ?」 王昶の不思議そうな声が拡声器を通してあたりに響く。 なにがなんだというのだ? 「ん? ……んー?」 ハンカチ、にしてはやけに大きい…… 「あー」 ハンカチ、のようなものを広げた王昶が照れの混じった声を出す。 施績はすでにそんな声など聞いていなかった。 王昶が鼻をかむのに使ったのは長湖部のジャージだった。 施績の頭が真っ白になる。 泣き笑いのような表情のまま…… 「鍾離茂、全軍特攻準備を」 「……はい、わかりました」 鍾離茂も真っ白な頭のままで無表情に言う。 あいつらは長湖部の魂を踏みにじった。 この罪はトんでも償えない。 王渾は手近な建物に身を潜めながら姉の言葉を聴いていた。 「おね……主将いじわるだよぉ」 敵ながら長湖部の連中がかわいそうになる。 敵が校舎から総攻撃をかけようと出てくるのが見えた。 「……ふぅ」 息をひとつ大きくつき心を落ち着かせる。 戦場が頭にリアルに思い浮かんだ。 「じゃ……とっつげき〜!」 王渾の指揮で伏兵が熱い奔流となり、指揮系統のない狂乱の群れの横っ腹に突き刺さった。 凱旋。 圧倒的勝利を収め帰途につきながら…… 王昶は遠く長湖を眺めた。 あれだけ混乱した状態でありながら結局は湖を渡ることが出来なかった。 本格的に湖を渡るには……時間が必要か…… 横で嬉しそうににこにこ笑う妹を見る。 「玄沖、長湖はお姉ちゃんの代じゃ渡れないかもしれない」 王渾は笑いを収めて敬愛する姉を見た。 「もちろん私だって出来る限りの手は打つつもり……でももしお姉ちゃんが長湖を渡れなかったら……玄沖が渡るんだよ」 一瞬、王渾は不思議そうな顔をし…… 「うんっ!」 元気に頷いた。
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