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693:北畠蒼陽 2005/06/26(日) 12:28 [nworo@hotmail.com] 夷陵棟の校門は厳重に閉ざされ、完全に守りに入っていた。 「……もしかして……劉備のときと同じ作戦とろうとしてるのかしら。もしそうだとしたら……私がそれに引っかかると思われてるのかしら」 「せっかくだから夷陵攻めのとき、劉備が拠点として使った馬鞍山に仮設テントでも張っちゃいましょうか」 王基のグチに部下の1人が軽口を飛ばし、王基は苦笑した。 発炎筒で大混乱大作戦大発動。 そんなばかな。 奇策は1回限りであるからこその奇策なのであり、それにこだわりを持つようなものではない。 「……まぁ、いいわ」 王基が肩をすくめる。 「……敵が弱いのは私の責任じゃないし」 そして校舎を睨みつける。 「……そして曹仁先輩や張遼先輩で生徒会の伝説のネタが尽きたわけじゃない、ってことを教えてあげなきゃいけないしね」 「なんとか……なる、かなぁ?」 かつて長湖部三君の1人に数えられた姉を髣髴とさせる風貌の少女がカーテンの脇から外を見、胃の痛みに必死で耐えていた。 歩協。現在の夷陵主将である。 戴烈と陸凱の救援隊がこちらに向かっていることは知っている。 一戦してよくわかった。 正攻法で勝てる相手ではない。 自分はもちろんのこと戴烈や陸凱でもどうなるかわからない。 もちろん王基が直前に言ったグチのように同じ作戦を取ろうとしているわけではない。 さすがにそんな作戦を再び取ったところで無理であろうことは当の歩協が一番よくわかっていた。 歩協の願いはただ1つ。 『夷陵』と『援軍の主将は陸の苗字』という2つのキーワードに怯えて敵に撤退してほしい、というだけであった。 しかし…… 「あい……たたた……」 胃がきりきりと痛む。 カーテンから覗き見た敵の部隊はすごく士気盛んに見えた。 撤退は露ほども期待できそうにない。 「なんであんなにやる気なのよ……!」 歩協は神を呪った。
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