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762:北畠蒼陽 2005/07/23(土) 21:14 [nworo@hotmail.com] ここ何日か夾石棟を包囲し、それを陥落させようと躍起になってはみたものの、あたしの打つ手はほとんど先回りして潰されているような状態であった。 あたしはあいつには勝てないんだろうか。 いや、弱気になっちゃダメだ、朱績! そして今日も…… 「しゅ〜せきちゃ〜ん!」 ……屋上からの拡声器の声。 1日に1度はこれを聞かされる。 挑発だとはわかっているけどどうしてもむかつく。 「期待してたんだよぉ? 半年前とは違う成長した姿見せてくれなきゃぁ」 『ふぁいとぉ』などと煽る。 ……ガマン。ガマンだ。 「それともあれですか〜? チキン・オブ・ハートの朱績ちゃんとしてはとりあえず逃げ帰りたい気持ちでいっぱいかしらぁ?」 くねくねと体を揺らす。 ガマンだ。ガマンしろ、あたし。 「まったくさぁ? そんなカタどおりの攻め方ばっかでおもしろい? おかしい? 狂おしい? こっちはま〜ったくおもしろくないよ〜」 ぱたぱたと手を振る。 ガマン…… 「まったく朱然センパイ? あのひとも後継者に恵まれなかったご様子……あ、それともこれで恵まれてるのかしら、ぷぷぷ」 口元に手を当てて笑う。 ガ……無理。 「お姉ちゃんの悪口を言うなーッ!」 「あ、やべ。聞こえちゃった」 拡声器を通してなんか言ってる。 「お姉ちゃんだったらお前なんか左足の薬指だけで一発だっつの!」 「……器用だな、おい」 若干引きながら王昶が呟いた。 「このバカー! おたんこなすー! ピザ屋のバイクー!」 「うわ、すごい悪口言われてる……ピザ屋はともかく」 あくまで余裕を見せ付ける。 あいつはなんだ? 神か? どんどん感情が高まってくる。 「王昶! 一対一で勝負だ!」 私の激情に落ちる沈黙。 「……なんで?」 たっぷり25秒の沈黙の後、王昶は心底不思議そうな声で聞き返した。 「なんで、って……いや、だって……へ、へへん! あんた、よわっちぃからやりたくないんでしょ! あー、わかるわかる。怖いんだもんねー?」 やっと攻め口が見つかった! あたしはどんどん言葉を回していく。 これで冷静な判断を失わせればいい。 かつてのあいつにやられたこと……それを思い出し、私は内心ほくそえむ。 「弱虫王昶ちゃん? ここはあなたみたいな子がいていい場所じゃないのよ? 公園のブランコに1人で座って夕日をバックに寂しそうにしてなさい……うわ、ほんと寂しそう! 同情するわ! 友達いないんだから仕方ないよねー!?」 「こ、この! 言わせておけばー!」 かかった! 「……なんて言うと思った? 残念。私の部下ちゃんズはみんなできた子でね。私は一騎打ちを断ったくらいじゃ信頼は失墜しないみたいよ?」 ぐ……ぬ、ぬけぬけとっ! あたしは言葉が空回りしたことに歯軋りをする。 「だいたいさ、なんつ〜か……私、直接的な暴力で泣かすのは好みじゃないんだよね」 ……もう勝ったつもりか。 ……勝てるつもりなのか。 「朱績、落ち着いて。こんなの、あいつの常套手段でしょ」 副将の全煕があたしに声をかけてくる。 えぇ、えぇ。あたしは落ち着いてますよ? 地獄の業火のように落ち着いてますとも。
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