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★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★
765:北畠蒼陽2005/07/23(土) 21:15 [nworo@hotmail.com]
「へぇ……これは本当に開花させちゃったかな。しまったな」
無表情で無感動に呟く王昶。
これがこいつのホンキか!
あたしは素早く様子を見るための距離をとる。
棒の長さは木刀以上……実際にどれくらいだ!?
間合いがとりづらいことこの上ない。
「突けば槍、払えば薙刀、持たば太刀……神道夢想流杖術、王昶、参る」
じょ、杖術!?
聞いてない!
技を見たこともない……つまり王昶がどんな間合いで仕掛けるのかまったく想像もできない……
「こうしようか。あんたは私の体に竹刀をかすらせれば勝ち。私はあんたの蒼天章をはずせば勝ち……現時点ではそれくらいの実力差がある」
バカにしてっ! ……とはちっとも思わなかった。
ただ相手が塩を送ったことによってチャンスが広がったと思った。
30分前の自分ならきっと王昶のその言葉だけで冷静を失い、ラッキーとは思えなかっただろうな……自分に苦笑。
しかし……
王昶を見る。
まったく『殺気』とか『覇気』とか、そういったものが伝わってこない。
伝わってくるのはただ純粋な戦闘力。
こいつは……
こいつは……なにかをしよう、というんじゃなくただ呼吸をするのと同じ感覚で私をトばそうとしているんだな……
私は心を決める。
決めるのは最初の一発。
後の先で一太刀浴びせる。
竹刀を正眼に構え、目をつぶり、一呼吸。
「天眞正傳香取神道流、朱績、参ります」
「よく吼えた。泣いて謝っても許さないからね」
王昶が無感情に吐き捨てる。
あとはただゆっくりと……
無言で時間が流れていく。
空気が張り詰める。
なにも……
王昶が動いた。
あたしはどう動いたのか覚えていない。
「……ちっ」
王昶は自分のブラウスの袖を見下ろし、不機嫌に眉根を寄せた。
足元には朱績が倒れている。
完全に首筋に一撃を叩き込んだ。
まぁ、しばらくは起き上がることもできないだろう。
夢の中の住人でいるがいいさ、と思う。
だが……
王昶のブラウスの袖は鋭い刃物で切り取ったように裂け、腕の肌が姿を見せていた。
避けたつもりだったけど……予想以上に鋭かった、か。
今、こうして倒れた朱績の蒼天章をはずそうと思えばいつでもやれる……
だけど……
「……ま、約束は約束か。向こうの剣は私をかすった。朱績の勝ちには違いない」
本当は……約束なんぞ反故にしてでもこいつをトばしておいたほうが蒼天会のためになることは間違いないが……
「……ちっ」
倒れた朱績を助けようと、非好意的な視線を向ける全煕に目をやる。
「私のせいで長湖部に名将が誕生してしまった。早く回収して手当てしてやりな……そして呪われろ」
手をひらひらと後ろ手に振って王昶は校舎の中に消えた。
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