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★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★
780:北畠蒼陽 2005/07/30(土) 20:06 [nworo@hotmail.com] 「……2つ目は計算している自覚のない人」 ……意味はちょっと違うけど『天然』な人よね、と付け加える。 「……ほら、なんとなく雨が降りそうだ、とかあるでしょ? あれって天気予報を見なくても空を見ればなんとなくわかる。つまり空模様を見て無意識で『計算』してるのね。ただ自覚して計算してる人間に比べると判断に『抜け』が多いと思うわ」 「ふむふむ」 メモを取る王渾。 「……まぁ、どっちにしろ計算ミスってのはありえるわ。または計算に入れるべき要因を考えていない、というのも致命的なミスよね。それが積み重なったものが敗北だと私は思う」 ……計算がいくら速くても間違えてたら仕方ない、ってこと。 呟きながら王基はペットボトルの紅茶を飲んだ。 「ん〜と……伯輿ちゃん、3つ目を忘れてるよ?」 尋ねる王渾に王基は肩をすくめた。 「……3つ目は参考にもならないから言わなかっただけ。つまり……『天才』よ」 紅茶を口に含みながら話を続ける。 「……迷惑なことに何百年に1人くらいそういう人間が出てくるらしいわね。幸いにして私は出会ったことないけど。そういう人たちに常識は通用しない。計算してるかどうかすらも不明……ただ、常に、正しい。それだけが真実」 ……歴史上で『軍事を革新した』とか言われるのはそういう人なのかもね。 面白くなさそうな声で呟く。 「……ま、そういう人は人間と思わないほうがいいわね。『天才』は異種族と思ってもらってかまわない」 「敵に『天才』がいたらどうするの?」 ペットボトルに口をつけながら目だけで王基は王渾を見る。 「……諦めるわ」 あまりにも早い王基の回答に王渾は苦笑を浮かべる。 「……でも幸いなことに『天才』なんて何百年に1人、ってシロモノよ。まぁ、私がここにいる間に出会うことはないでしょうね」 ……生きてる間にすら出会えるかどうか、と苦笑交じりに呟く。 「……そしてただ計算が速いだけ、とかの人間ならいくらでも対処できるわ」 「ほえ〜」 王渾が感心したような声を漏らした。 「……とりあえず3つ目は考えなくていいわ。とりあえず言えることは計算ミスをしないこと」 「けいさんみす」 ひらがな発音で王渾が繰り返す。 「……私は速攻にこだわりを持ってるけどそれは計算すら早く行う、ってことじゃない。そういうことを考えるのはいくら時間がかかってもいいと思う。答えが出てから迅速に動けばいいだけ」 ……まぁ、何日も考え続けて手遅れ、ってのは笑える話じゃないけどね、と苦笑。 「んっと……つまり自分が考える。相手がその対処法を考えてきたら、さらに自分はその対処法を考える。考え尽くしたほうが勝つ、って理解でいいのかな?」 「……もちろん答えを出すまでの時間が短ければ短いほどいいでしょうね。そして相手がミスをしたらすぐにそれにつけこまなきゃいけない」 忙しいんだー、とヒトゴトのように驚く王渾。 「じゃあ、じゃあ。伯輿ちゃんにとって絶対にやっちゃいけないこと、っていうのは?」 「……感じること。感情に身を任せて突っ走っても、少なくともこの学園都市の課外活動において利点はないわね。『猛将』っていわれてる人たちは感情の生き物だと思われがちだけどそういう人たちもほとんどなんらかの計算の上で行動してるわ」 なるほどー、という王渾の声。 しばらく王渾がメモをまとめるシャーペンの硬質な音が響く。 「うん、いいレポートがかけそう! 伯輿ちゃん、ありがとね」 「……どういたしまして」 『伯輿ちゃん』は苦笑を浮かべながら飲みかけのペットボトルのキャップを閉めた。
781:北畠蒼陽 2005/07/30(土) 20:07 [nworo@hotmail.com] ってわけで軍事論です。 『感じるな。考えろ』というのは私が昔、TRPGでやったキャラのセリフだったりするわけですが実際に北畠の軍事理論そのままだったりします。 まぁ、ちょっと毛色の違うSSになりましたとさ。 今回は王昶いないんで服の描写はないですがかわりに扇子を書いときました。センスの悪い扇子っていうのはダジャレじゃないよ。ホントダヨ?
782:雑号将軍 2005/07/30(土) 23:04 北畠蒼陽様…じゃなかったMSG様!「統率指揮概論」お疲れ様です!いつも思うんですが、王基や王昶、王渾が登場するSSって、学三だけですよね。 なにはともあれ「統率指揮概論」…なるほど参考になります。感じるんじゃなくて、計算するんですね。僕はどうも計算遅いですけど…。 天才…ああ、王基は曹操の戦い見たことないんですよね? 僕も『納涼中華市祭』のSS早く仕上げないとなあ。先鋒という大役を任されちゃいましたから…。
783:北畠蒼陽 2005/07/30(土) 23:14 [nworo@hotmail.com] >雑号将軍様 計算だけが人生じゃない、と自分に言い聞かせて生きている北畠です。 で、ですね。実は私の中では曹操は天才に至ってないんですよ。 曹操は破格の才能を持ってるけど天才ではない、ってのが私の評価です。 なんていうか天才論を組み立てる中で能條純一氏に出会ってしまったのが運のつきと言うかなんと言うか…… なんというか『すべてわかってないと』天才とは認められなくなってしまったのです、私(苦笑
784:雑号将軍 2005/07/31(日) 22:12 >曹操云々 なるほど〜曹操は天才ではないんですか…。言われてみるとそんな気がしないでもないですが、寂しいと言えば寂しいです。 僕はどう考えても蜀大好き人間なんですけど、曹操が好きだったり、趙雲があんまり好きでなかったり(ファンの方土下座するんでお許しを)するんですよね。 まあ、雑食性なんでしょうね。僕。
785:北畠蒼陽 2005/08/06(土) 18:26 [nworo@hotmail.com] 「……これ、は?」 司馬昭からのメールに目を通した王基は思わず眉をひそめた。 「……多分……いえ、でも……」 ……多分間違いないとは思うが……こういうときは親友の意見も必要か…… 王基は頭の中の考えをまとめるようにそっとノートパソコンを閉じた。 冬空の鼓動 襄陽棟長であり車騎主将、胡遵の妹である胡烈からひとつの連絡が生徒会の中央執行部にもたらされた。 長湖部、摎Rが蒼天会に帰順するという…… それと同時に胡烈は期日を約束し、摎Rと合流し長湖部を混乱に陥れる案を提出した。 これを受け、連合生徒会会長、司馬昭は征南主将、王基に胡烈のフォローを命じる。 ……だが…… 王基はメールの文面を思い出す。 摎Rとの合流場所として指定された地点は…… ……あまりにも長湖部領域の中に入り込みすぎる。 王基は摎Rという人間を知らなかったが、考えれば考えるほどこの帰順は策略としか思えなかった。 ……確かに本当に摎Rの帰順があるのであればこれはチャンスであるといえる。 ……だけど。 リスクがあまりにも大きすぎる。 ……それに、ねぇ。 初期長湖部から夷陵回廊の決戦にいたるまで常に最前線に立ち続けた最古参主将、韓当の……その妹、韓綜が蒼天会に帰順してなお長湖部を瓦解させるには至らなかったのだ。 もはや長湖部は1人の寝返りで崩れるほどぬるい組織ではない。 ……リスクのわりにリターンが少なすぎ、ね。 ハイリスクローリターンなんて笑えやしない。 ……さて…… ……この件、文舒ならどう結論付けるかな。 少しだけ口の端から漏れる笑いをかみ殺し…… 王基は学園都市運営会議議長の執務室の前に立つ。 王昶は三委員長の一角にまで上り詰めながら荊・予校区兵団長を同時に勤め、最前線である荊州校区から中央執行部としての任を果たしていた。 「……?」 ノックをしようとして違和感。 王基は眉をひそめる。 部屋の中の人間……まぁ、王昶なのだろうが……せわしなく動いている雰囲気を感じ取ったのでる。 ……忙しいのならあとにしようか。 そうは思うものの本当に忙しいのかどうかもわからない。 ……とりあえず様子だけ見てみよう、かな。 王基は一人頷き、ノックをする。 「あいよー。あいてるよー」 あまりにも無防備なその物言いに王基は苦笑を浮かべつつドアを開け…… 面食らった。
786:北畠蒼陽 2005/08/06(土) 18:26 [nworo@hotmail.com] 「おぉ、伯輿か。ちょうどよかった。話したいことがあってね」 「……ん。それはいいんだけど……これ、は?」 あっけらかんとした王昶の態度に王基は今、見ているものが信じられない、というように瞬きを繰り返した。 王昶は珍しく制服を着ている。 いや、ただの制服ではない。 肩章、ネクタイ、スカート…… 式典のときのみに着用される幹部用制服である。 王昶であればこの制服どころか講義時にさえ通常の制服ですらまともに着ることは少ないというのに…… しかもそれだけでなく部屋は……そう…… ……その部屋はまるで引越し準備だった。 「……ん、んー」 ようやく頭が推測を導き出す。 さすがに地方にあって中央執行部の仕事をするのは無理がありすぎたか…… 恐らくは司馬昭に召還されたのだろう。 であればこの引越しのような荷物も納得できる。 ……そうなるとこの荊州校区における後任は誰になるんだ? 考えてみればみるほどありがちな推測に聞こえた。 だからやっと王基は余裕を取り戻す。 王昶はそんな王基に背を向け『あれー? どこにしまったかなぁ?』などと言っている。 ……なるほどそれで『話したいことがあってね』か。 ……ついでになにかを渡したいのだな…… 「あー、これこれ」 王昶が王基に封筒を放り投げる。 ……封筒、ね。 ……後任が誰かは知らないけど私にお守りをしろ、ってことか。 ……恐らく封筒の中身はなにか秘密の弱みメモとかそんな感じだろう。まったく王昶らしい。 そうか、制服を着ているのも引継ぎのためか。 苦笑を浮かべながら封筒を受け取り…… 違和感。 硬質の小さなものが封筒の中に入っている感触。 ……手紙、ではない? 再び王基の頭の中をとらえどころのない靄のようなものが湧き出す。 ……なに? ……なにを話そうとしているの、文舒? 封筒の中から王基の手のひらに蒼天章が転がりこんだ。 「……」 「あー、びっくりした? いや、まぁ、びっくりさせようとおもったんだけどさ」 王昶がけらけらと笑いながら3段に積み上がったダンボール箱の最上段にジャンプし、腰掛ける。 「いや、いろいろ考えたんよ」 しみじみと王昶が呟く。 「ほら、この前、伯輿と同じ大学いくんだー、っていったじゃん?」 ……確かに言っていた。 王基は黙って頷く。 「あれねー。私、推薦入試のとき、受験会場にいけなかったんだわ」 たはは、と苦笑を浮かべる。 「いや、三委員長になんかなるもんじゃないね。受験の日の昼ごろまで公務終わらなくてさ」 結局、受験いくの諦めて寝ちゃったよ、と王昶はいつもの顔で笑う。
787:北畠蒼陽 2005/08/06(土) 18:27 [nworo@hotmail.com] 「もう私らも卒業近いしね。ま、聞いた話だけどあの仲恭ですらどっかの大学受かったみたいなんで焦ってるわけよ、こう見えても」 あのバ毋丘倹がねぇ〜、などと呟く顔からは焦りはまったく伝わってこない。 でも、確かに……忙しすぎる、というのは事実なのだろう…… 「ま、伯輿とおんなじトコいこうと思ったらちょっと一般入試に向けて勉強に励もうかな、と思いましてね」 ……文舒だったら…… ……文舒だったら合格通知を簡単に奪い取ることだろう。 ……だが、それは……時間があれば、ということだ。 「だから引退、さ」 ……なぜ。 ……私と同じ場所に来るために引退する、と言ってくれるんだ。 ……なぜ止められる。 「やぁ、よかったよ。伯輿に一番最初に報告できてさ」 ……一番、だったのか。 そんなことはどうでもいい。 ただ心情を聞けた、それだけでいいような気がした。 「で、伯輿は? 用事なしでここにきたわけじゃないっしょ? これから中央執行部に引退の届出しなきゃいけないからそれほど時間は取れないけど、ね」 『ん? 言ってみ?』という顔で王昶が言葉を促す。 ……言えるわけがないだろう。 これから引退しようという人間に……しかもその理由が自分と同じ場所に来てくれるため、という人間になぜこれ以上の心労を煩わせなければならないのか。 きっと相談すれば王昶であれば適切な答えを出すことだろう。 そして…… そしてきっと……すべてに決着がつくまで引退を先延ばしにすることだろう。 ……それは。 ……本意ではない。 「……いや、なんかごそごそうるさかったからね。なるほど……引越し、っていうか引退準備だったのね」 肩をすくめる。 ……内心の想いがばれていませんように。 「ってわけで、あとを全部任せちゃって悪いけどさ。頼むわ」 ……そんな満面の笑顔で頼まれたら断れないだろう。 王基は廊下を歩く。 ……結局……この件は私が始末をつけなきゃいけない、ということか。 廊下に冷たい風が吹き込み、王基は身を縮こまらせた。 どこかの窓が開いているのだろう。 ……これからは1人でこんな冷たい風を浴びていかなきゃ。 王基は窓の外の風に揺れる木に指を差し伸べ…… そしてもう振り返らず歩き去った。
788:北畠蒼陽 2005/08/06(土) 18:27 [nworo@hotmail.com] 三公にまで上り詰め位人臣を極め、シアワセに引退した王昶に全部押し付けられた不幸風味な王基話です。 ちなみに王基もこのあとすぐに引退してますけどね! あ、ちなみに史実での王昶死亡のタイミングは摎R帰順事件の2年前なんでこういう話が史実であったか、っつったらありえないことですがね。 まぁ、王基が仕事押し付けられたのは間違いないと思われます。
789:雑号将軍 2005/08/07(日) 14:30 やばいやばい。前夜祭用のSS書いていたら気づきませんでした・・・・・・。え、本祭用?あはははははあ…。 おお!ついに王昶が引退!?ってことはもう北畠蒼陽様のSSには王昶は出てこられないんですか? 残念だなあ。まあでもまだ王基とか王渾とかがいますもんね。う〜ん、早く王渾が王濬に先こされるところみたいです。所詮、僕の希望なんで、あっさりスルーされて構いませんので。これこそ、ハイリスクローリターンですから。 王基もすぐ引退しちゃったってことはさらに仕事押しつけられちゃった可哀想な方がいらっしゃるんですね。
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