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787:北畠蒼陽 2005/08/06(土) 18:27 [nworo@hotmail.com] 「もう私らも卒業近いしね。ま、聞いた話だけどあの仲恭ですらどっかの大学受かったみたいなんで焦ってるわけよ、こう見えても」 あのバ毋丘倹がねぇ〜、などと呟く顔からは焦りはまったく伝わってこない。 でも、確かに……忙しすぎる、というのは事実なのだろう…… 「ま、伯輿とおんなじトコいこうと思ったらちょっと一般入試に向けて勉強に励もうかな、と思いましてね」 ……文舒だったら…… ……文舒だったら合格通知を簡単に奪い取ることだろう。 ……だが、それは……時間があれば、ということだ。 「だから引退、さ」 ……なぜ。 ……私と同じ場所に来るために引退する、と言ってくれるんだ。 ……なぜ止められる。 「やぁ、よかったよ。伯輿に一番最初に報告できてさ」 ……一番、だったのか。 そんなことはどうでもいい。 ただ心情を聞けた、それだけでいいような気がした。 「で、伯輿は? 用事なしでここにきたわけじゃないっしょ? これから中央執行部に引退の届出しなきゃいけないからそれほど時間は取れないけど、ね」 『ん? 言ってみ?』という顔で王昶が言葉を促す。 ……言えるわけがないだろう。 これから引退しようという人間に……しかもその理由が自分と同じ場所に来てくれるため、という人間になぜこれ以上の心労を煩わせなければならないのか。 きっと相談すれば王昶であれば適切な答えを出すことだろう。 そして…… そしてきっと……すべてに決着がつくまで引退を先延ばしにすることだろう。 ……それは。 ……本意ではない。 「……いや、なんかごそごそうるさかったからね。なるほど……引越し、っていうか引退準備だったのね」 肩をすくめる。 ……内心の想いがばれていませんように。 「ってわけで、あとを全部任せちゃって悪いけどさ。頼むわ」 ……そんな満面の笑顔で頼まれたら断れないだろう。 王基は廊下を歩く。 ……結局……この件は私が始末をつけなきゃいけない、ということか。 廊下に冷たい風が吹き込み、王基は身を縮こまらせた。 どこかの窓が開いているのだろう。 ……これからは1人でこんな冷たい風を浴びていかなきゃ。 王基は窓の外の風に揺れる木に指を差し伸べ…… そしてもう振り返らず歩き去った。
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