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792:北畠蒼陽 2005/08/13(土) 19:09 [nworo@hotmail.com] 「湿っぽいとこだねぇ! 早く中央に戻りたいよ!」 「……」 電車を降りて大声で第一声を放つ少女とそれに影のように従う少女。 『湿っぽいところ』よばわりされた荊州校区の皆さんは、剣呑な視線を少女たちに向けながらも特になにも言う様子はない。 少女たちにはまさにエリートのみが放つ風格、とでもいうものが備わっていた。 それに気おされた、というのはあまりにも言いすぎだろうが係わり合いになることを避けた、というのはあながち間違った見方ではない。 王昶と王基…… 学園1年生。 このとき2人は自信に満ち溢れていた。 愚者の嵐 このとき荊州校区は2人の大物とも呼べる人物の権力争いの最中であった。 かたや『曹操とともに戦った世代』であり対長湖部戦線の重鎮、満寵。 かたや董卓トばしの名委員長であるあの王允の従妹であり、自身も類まれな政治センスに恵まれた治世家、王凌。 この2人はもともと仲が悪く、『張遼、李典に続いて満寵、王凌というのはきっと中央執行部は対長湖部戦線メンバーは仲が悪くないと勤まらないと考えているか、そういう伝統を作ることが好ましいと考えているに違いない』と陰口を叩かれるほどであった。 王凌はここにきて目の上のたんこぶともいえる満寵を排除するために2人の子飼いの1年生を招いた。 王昶と王基である。 「さて、キミたちは私の指揮下にはいることになるわけだが、なにか質問は?」 満寵は目の前の2人に辟易しながら、それでも事務的な口調を崩さずに言った。 この2人が王凌の腹心ということは知っていたし、王凌になにか……まぁ、自分を排除することだろうが……言い含められていることも簡単に予想できることであった。 1人は静かに視線をこの部屋中にさまよわせて……いや、さまよわせているのではない。この部屋の防衛力を測っている。あまりにも冷静だ。 1人は制服すら身に着けてはいない。黒い着物、その背には白く『楽園』という文字……あまりセンスがいいとは言えないな。それと緋色の袴に身を固め後ろ髪を真っ赤なリボンでまとめている。挑発するような笑みを口の端に浮かべ、満寵を睨みつけていた。その自信は悪くない。 生意気そうな笑みを浮かべる王昶が口を開く。 「はーい、質問でーす」 バカにしたようにひらひらと手を挙げる。 「センパイってホントに私らを使いこなせるくらいスゴ腕なんスかー?」 けけけ、と笑う。
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