★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★
888:弐師2006/03/05(日) 11:20AAS
今日もまた、屋上でうたた寝をする。
つまらない授業をほっぽりだして、私はここに来ていた。
授業が解らないのではない、解るから、つまらないのだ。
あんな風に、他の人たちにも解るように、ゆっくり、丁寧に進んでいく授業など、つまらない。
もちろん教師達は正しい、わかりやすいように教えるのは、彼らの仕事であり、それが当然の事なのだ。
それに馴染めない、私が異端なのだ。
まあ、だから、というわけでもないのだけれど、いつしかここで、授業をさぼって一人で寝るのが習慣となっていた。
一人で、
そう、独りで。
「あれ、其処にいる人、どなたですかぁ?此処は立入禁止だよ?」
うとうとしているところに、急に声を掛けられ、そちらへと顔を向ける。
其処にいたのは、栗色の髪の少女。
そうだ、この人は確か・・・
「棟長さんの妹さんか、こんな場所に何の用?」
そう、彼女は確か公孫越と言って、この北平棟の棟長である公孫サン先輩の妹だった。
「えっとね、「授業をさぼってばっかりだけどテストの点は良い」って言う人類の敵見たいな娘が私の同級生に居るって聞いたからね、探してたんだ。よろしくね
厳  綱  さ  ん  ?」
にっこりと、挑発するかのように微笑む彼女。
ご丁寧に、私の名前の部分にアクセントをつけてくれた。
なにが「どなたですかぁ?」だ、まったく。
最初から私目当てか。
棟長の妹って言うから、ただの真面目な娘かと思ってたが、なかなか、食えない娘じゃないか。
面白い。
「ふふ、人類の敵とは言ってくれるじゃない。」
「だって、そうでしょう?私みたいなお馬鹿さんには貴女の存在はもはや犯罪だよ?」
また嘘?
この娘は、一年生どころか、上級生にも負けないほどの知謀を持っている。
ただ、それを表に出さずにこにこしてるだけ。
ほんとに面白い娘。
「で?結局何の用?人類の敵をやっつけにきたのかしら?」
「まさかぁ、そんなことしないよ。ただね、会いたかったの、厳さん、あなたにね。」
それから毎日、彼女は屋上に来た。
くだらない言葉遊び、だけど、どこか私のことを探っている。
そして、ある日彼女は遂に私に自らの目的を打ち明けた。
「ねえ、私のお姉ちゃん・・・公孫伯珪に仕えない?」
何だ、結局それ?
実を言うと、同じ事を劉虞先輩のところから言われていたのだ。
劉虞先輩は、優しく、慈愛の心にあふれた、女神のような――――――――
――――――――そんな、とてもつまらない人。
だからといってそんな彼女と真逆な公孫サン先輩に協力する気もない。
正直、興醒めだ。
「興味ないわね、他の、もっと真――――――――

他の、もっと真面目な人にでも言ってみたら?
そう言いかけたところに、彼女の声が割り込んできた。
始めて会った時みたいな、誘うような声で――――――――

「退屈なんでしょ?」

タ イ ク ツ ナ ン デ シ ョ ?

「別に?何でそう思うのかしら?」
動揺を悟られないように、慎重に声を絞り出す。
とことん、面白い娘だ、的確に心を攻めてくる。
「嘘・・・ふふ、厳さん、嘘は良くないよ?」
「誰が嘘なんてっ・・・!」
思わず声を荒げてしまう
「ほらぁ・・・そんなに怒らないの。可愛い顔が台無しだよ?ふふふ・・・」
ちっ・・・危うくこの娘に乗せられるところだったわ。
「解るよ、だって、私も退屈だったからね・・・
くだらない授業、くだらない友達、くだらない毎日。そうでしょう?
何もかもつまらない、世の中馬鹿ばっかり、何か物足りない・・・
・・・貴女は飢えている、渇いている。」
自分の満たされない心を見透かされ、思考回路が破裂寸前になる。
「だから、どうだと言うの。」
そう言って私は、彼女から顔を背ける、私にできる抵抗は、最早それだけだった。
しかし、彼女はそんな私の顎をつかみ、自分の方に向け、私にとどめを刺すように、耳元で囁いた。



「私なら、貴女の心を満たしてあげられる・・・」


よく小説などで、悪魔の誘惑と言う物がある、まさしくこんな感じなのだろう。
この錆び付いた心に、熱い血が通っていく。
もう、止められない。
「わかったわ、だけど、貴女のお姉さんの為じゃない。私の渇きを満たすため。
それでいいかしら。」
「ふふ・・・御自由にどうぞ。よろしく、厳さん。」

面白い事になった。
これが、私の望んでいたことなのだろうか?
いや、そんなこと、どうでも良い。
今、私は楽しんでいる、こんなにも愉快な思いは初めて。

それだけで十分だろう――――――――
1-AA