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903:弐師 2006/04/06(木) 19:26 ふうん、ここが南陽棟か。 玄関の前に立って、その姿を見上げる。 白亜の城、といったところか。 「お待ちしていました、公孫越さんですね?」 そうしていると一人の女性がこちらに歩いてきた。 ショートカットの艶やかな黒髪を持つその人、董卓と戦ったときに見た覚えがある。 ああ、そうだ、確か紀霊先輩だ。 高校柔道の「クイーン」と呼ばれる人だったっけ。 「あ、はい。どうも、よろしくお願いします。」 「ええ、では、こちらに。」 彼女に棟の中を案内される。外見のシンプルな美しさと異なり、至る所に金ピカのシャンデリアだとか、無駄に派手なカーテンが有ったりと、ここの棟長の性格がよく分かる内装だった。 そんな悪趣味な物の中を通り抜け、精神的苦痛を受けながらも棟長室にたどり着いた。 「じゃあ、私はここで・・・」 「はい、ありがとうございました。」 この悪趣味な空間の中で、私のそばにいた唯一のまともな感性の持ち主と別れると、一気に気が重くなる。 だけど、そんなことも言っていられない。 まず深呼吸して、私は棟長室のドアをノックした。 「失礼します。」 うわ・・・ 棟長室の中は、さらにお金のかかった・・・輪を掛けて酷いセンスのインテリアで構築されていた。 ねえ、先輩。 流石に床ぐらいは普通にしましょうよ。 何で其処まで金にこだわるんですか。金の床なんてテレビでしか見たことないですよ? 嗚呼、自分の顔が床に映る・・・ 「あら、公孫越さん、御機嫌よう。ほ〜ほっほ。」 だが、このセンスの伝染源は、更に・・・凄かった。 えっと、すいません、手の甲を口に当てて高笑いするのはどうかと思いますが。ベタすぎです。 このご時世にこんな人本当にいるんだ・・・ 「はい。ご無沙汰しております。」 「ええ、ところで伯珪さんから、何の御用かしら?」 「はい、私どもの誠意と言うことで、白馬義従の娘達と共に、私が及ばずながらご助力に参りました。」 「あら、それはそれは、ありがたいことですわ。」 そう言って、また高笑いする。 「これであの女の最後も近づきましたわ・・・」 しかし、その笑いはすぐ途切れ、呪いの言葉へと変わった。 「あの女」とは袁紹先輩のことだろう、まったく、悲しい人だ。 聞くところによると、昔は仲が良かったのだそうだ。家を継ぐときになって家が割れて、それ以来不仲らしい。 常に自分が一番でないと気が済まないのだろう、まあ、まだそのために努力してるだけ他の連中よりは何倍もましなんだろうけど。 「失礼しましたわ、それなら、早速で申し訳有りませんが私の部下の孫堅さんが今あの女の将と戦っておりまして、加勢していただけないかしら。」 聞けば、孫堅さんが袁術先輩の口利きで豫州総代になったのが気にくわなかったらしく、同じ反董卓連合の仲間の筈の彼女に攻撃を仕掛けているそうだ。 「はい。では失礼いたします。」 そう言って、私は南陽を去った。 まったく、あんな所にいたら悪趣味が伝染する。 外に出て、白馬義従の娘達と合流したところで思いっきり深呼吸する。 周りの娘達は不思議そうな顔をしていたが、誰だってあんな所から出てきたら深呼吸したくなるだろう。 ひとしきり、「外」の空気を堪能した後、皆に指示を出す。 「じゃあ、皆さん、孫堅さんの所に行きましょうか。」 私は、袁術先輩なんかとは違う。 私は、お姉ちゃんのためなら ――――――――どんな事も厭わない。
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