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956:北畠蒼陽 2006/09/20(水) 05:07 「なんだ。誰かと思えばお前らか……」 くだらなさそうに臧覇が吐き捨てる。 3人はロープで縛られ、臧覇の前につれて来られていた。 臧覇は顔の前に指を組んで、あまりにも面白くなさそうに3人を見つめる。 「一応聞いてやる。なんの用だ?」 言外に『下らないことを言ったらぶっとばす』という言葉を滲ませつつ臧覇が問いかける。 黙りこくっているわけにもいかない。 「こ、降伏を薦めにきました。曹操さんは寛大な処置を約束してらっしゃいます」 宋憲が口を開く。 「あははははははははははははははははは!」 臧覇が言葉を聴いた瞬間、笑い始める。そしてたっぷり10秒笑い…… 「お前ら好きにしろ」 周りのガラの悪い連中に声をかけ、椅子から立ち上がる。 「わ、わー! ちょ、ちょっとまってください! 言葉が足りなかった! すごく足りなかったです! まーじーでー!」 一斉に立ち上がったガラの悪い連中を引き止めるように魏続が声を上げる。 「なんなんだ、お前ら。裏切り者のクセにのこのこやってきてんじゃねー。私に会っただけでもありがたいと思ってここで埋まってろ」 3人が一瞬目を交し合い、仕方なさそうに侯成が口を開く。 「確かに私たちは裏切り者って呼ばれても仕方ないです。というか実際そうですから……でももう一度同じ機会があったとしても、私は呂布を許さないです」 胡散臭そうに片眉を上げる臧覇。 「……でも信じてほしいのは……私は……私たちはみんな呂布軍団が最強だと信じて戦ってた、ってことです。たとえ曹操さんが相手だろうと負けるなんて1%たりとも考えもしなかった」 あの人は結局器じゃなかったんですけどね、と首を振る。 「だから裏切りました。あの人は最強の座から自ら降りてしまったのだから……でもあの人を最強と思った気持ちは死んでない。それは私たちや、文遠や……そして臧覇さんの中にも生き続けているはずです」 「だから最強の遺伝子を……私たちが半ばで奪ってしまったあの人の、かつてまぎれもなく最強だった気持ちだけを残していきたい……この泰山にいたらそれを残すこともできないんです」 3人はかわるがわる臧覇に言葉を投げかける。 それは明らかに足りない言葉ではあったが、それでも臧覇の気持ちを動かすのに十分な力を持っていた。 「……曹操は最強を語るに足るか?」 「十分です」 臧覇の問いに魏続が即答する。 最強を夢見る遺伝子は生き延びていく。 彼女たちがいなくなっても、次の世代に伝わっていくだろう。 それは獣の遺伝子。 猛獣の系譜は伝説の中だけでなく語り継がれていく。
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