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959:北畠蒼陽 2006/09/23(土) 21:22 「左回廊、弾幕薄いよ! なにやってんの!」 戦場に臧覇の声が響く。 戦場を見回した臧覇は近くに見知った顔を見つける。 「孫観、幸薄いよ! なにやってんの!」 「誰が不幸風味じゃー!?」 怒声をあげる孫観。だが同時に立ち上がった彼女の左足にどこからともなく誰かが投擲したのであろう、飛んできた木刀が直撃し、孫観はうずくまった。 「……やっぱ不幸じゃねぇか」 ぽつりと臧覇が呟く。 同門の人々のあれやこれや 孫観の左足は複雑骨折していた。それはそれは面白いくらい。 濡須口の戦いにおいて歴戦のツワモノである孫観が負傷したという報せはただちに曹操に届けられた。 「なっ!? 仲台ちゃんがぁ!?」 曹操は飛び上がってびっくりした。 報告した陳羣のほうがびっくりした。 まさかこの世に本当に『びっくりして椅子から飛び上がる人間』が存在するなんて…… 10cmくらいは浮いていた。だがとりあえずそれは置いておく。 「ん〜と……仲台ってだぁれ〜?」 「孫観のことっ! ……で、仲台ちゃんは大丈夫なのっ!?」 ぼや〜っとした許チョに名前を教えておいてから曹操は陳羣を振り返る。 「はい、入院中だそうです」 つまり大丈夫じゃないのであった。 病院で看護婦さんに面会を告げ、病室を聞くとやたらいやな顔をされた。 「なんだろうね……?」 「さぁ、わかりません」 陳羣にわかるわけはないが律儀に答える。 「それより……それはなんです?」 曹操が手に持っているのはちょっと大きめの包装紙に包まれた箱。 「ん、モデルガン。喜ぶと思って」 「……喜ぶかもしれませんけど見舞いには向かないですよね」 陳羣はため息をついた。 「わぁー、いいなぁ」 少なくとも許チョには効果バツグンだった。 「……」 「……」 病室に近づくにつれ陳羣と曹操が黙りこくる。 陳羣は眉間に深い皺を刻ませて。 曹操はこれからの予感に目をきらきらさせて。 なにが、というとめちゃめちゃ騒がしかったのである。 「わははははははははは!」 「ぎゃー! 書くなー! そんなとこに書くなー!」 「うはははは! おもしれー!」 「やめれー! お前らぜってぇ死なす! 必死と書いて必ず死な……ぎゃー!」 ……とかそんな感じ。 そしてその騒動の中心となった病室は予想通り孫観の病室だった。 こんな状況で病室という名詞が有効なのだとしたら、という話だが。 仏頂面の陳羣がそれでもノックする。 「やめれー!」 聞こえていないらしい。やめてほしいのはこっちだ。 「失礼しま……」 それでも一声かけてドアを開けた瞬間、なんかすごいもんが飛んできた。 すごいもん、というか病室備え付けのパイプ椅子。 「……ん」 陳羣の眼前でぴたりととまったパイプ椅子を横から受け取ったのは許チョ。陳羣はへなへなと腰を抜かした。
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