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972:北畠蒼陽 2006/10/19(木) 21:25 「貴様……何様のつもりだ!」 「貴女の上官様のつもりよ。異論があるのなら会議室から出ておいきなさい」 会議室は2人の少女のにらみ合いによって緊迫の空気を帯びていた。 しかし部下であるほうの少女が足音を荒くして部屋から出て行くことによってその空気も若干和らいだものになる。 しかし…… 「……よかったんですか?」 にらまれていた上官の傍らにいた少女、王基が呟くように尋ねる。 「まぁね……あれで十分」 それに答える声は獰猛な笑みを帯びていた。 「あなたや、文舒は近い将来、私に感謝することになるわよ……もっとも私は私の血筋が謀略の血筋だってことを思い知らされてへこむことになるんだけどね」 謀略の家系の、現段階でその頂点に立つ少女、王凌は自信に満ちた笑みを浮かべた。 謀の華 その月、長湖部におけるアンタッチャブル、陸遜が引退することになる。 同月、南津の橋の欄干の銅像が落雷により焼け落ちた。ちなみにこの銅像は『全裸の男が帽子だけかぶってサックスを吹きながら歩いている』というシロモノだったのでみんな銅像が焼け落ちたことを内心喜んだ。 その翌週にはおりからの大雨による床上浸水で長沙棟に通う学生たちが被害を受けた。 そんな不穏な空気の中、長湖部の1人の少女が唇をなめた。 「……じゃ、もっかい手はずを確認するわね?」 車座の中心の少女が周囲を見回す。 朱貞、虞欽、朱志…… なかなかのメンツが集まったもんだ、と自画自賛。 「私たちが狙うのは部長……いや、孫権が校内に入り、おつきの連中がまだ校門付近にいる、ってくらいの絶妙なタイミング」 うん、と中心の少女の言葉に3人が頷く。 「朱貞、あんたはそのタイミングで幹部連中を全員拘束。その間に私が孫権を……」 ぐしゃ、という音を立てて少女の手の中にあったジンジャーエールのアルミ缶が潰れた。 「……そのあとは校内に立てこもって時間を稼ぎながら生徒会の救援を待つ……成功すれば委員長クラスのポストも夢じゃないわよ?」 少女……九江棟長にして征西主将、馬茂は笑みを浮かべた。 決行の日、校門が見える茂みの中に馬茂は隠れていた。 生徒会に自分がいた当時の王凌のセリフが頭の中にリフレインされる。 私を小ばかにしたあの女狐は委員長として生徒会中枢におり、その妹……王昶とかいったか……も荊州校区に勢力を伸ばしているものの、今回、これを成功させればあいつらを見下すことが出来る。 どっちにしろ名主将、陸遜のいない長湖部などすぐに壊滅してしまうのだから、私の役に立ちながら潰れるといい……
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