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973:北畠蒼陽 2006/10/19(木) 21:26 そんなことを考えていたから馬茂は後ろの気配にまったく気づかなかった。 「……いい気になるな、小者」 後頭部に竹刀で一撃をくらわせて昏倒させた馬茂の制服から蒼天章をはずし、嫌気がさしたように呟く全ソウ。 不意に足音に気づき顔を上げる。 「子山、終わった?」 「終わった終わった……まったくイヤになる」 肩をすくめながら現れた歩隲に全ソウは苦笑を浮かべた。 直前に情報が得られなければ本当に危ないところだった。もしかしたら…… いやなイメージを振り払うように全ソウは顔を振る。 「まったくね。おちおち引退も出来やしない」 「伯言がいなくなったタイミングでこれじゃ、わが身の不徳を嘆くことすら出来ないわ……っと、あんたの前じゃこれは禁句だっけね」 のうのうと言い放つ歩隲を一瞬険を帯びた目でにらみつけてから、にらみつけたところで無駄と悟ったか全ソウは『別に』と呟く。 ほい、と歩隲は全ソウに手を出し、その手に全ソウは馬茂から奪った蒼天章を乗せる。 「私はそんな高望みしてたっけかな〜、っと!」 歩隲が言葉とともに頭上に馬茂の蒼天章を放り投げた。全ソウは目でその軌跡を追うこともなくため息をつく。 「はえ〜ってタイミング」 「……小者は小者だったわね」 後日報せを受けた荊州校区で王昶と王基も頭を抱えた。 「なんで決行タイミングをこっちに知らせんかなぁ。そしたらこっちだってそのタイミングでフォローできるっつのに」 「……私たちが王凌様の息がかかってるから知らせたくなかったんでしょ」 王基の言葉に王昶は余計に頭を抱える。 「だったら公休でもいいじゃんよー!」 「……それを思いつかないのが小者の小者たる所以」 身も蓋もないことを呟きながら王基は肩をすくめる。 「……ま、確かに王凌様が1年以上前に言ってたとおり役には立ってくれたわ。つまり小者ですら孫権を狙える位置にいる、っていう事実を知らせてくれた、って意味でね」 「一石一鳥じゃ不満よ」 不貞腐れたように王昶が頬杖をつく。 「……ま、そこらへんはあなたのお姉さまの読みの甘さね」 「うわぁー! お姉さま、ツメが甘いよ! そんなんじゃダメだよ! でもマジラブ!」 王基の言葉に王昶は再び悶絶する。 悶絶といっていいのかどうかは微妙だが。 苦笑しながら王基は王昶を見、そして窓をあけ、その向こう、湖の彼方に視線を向けた。 「……熱いわね」 10月の冷たい風を浴びながら王基は呟いた。
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