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★しょーとれんじすと〜り〜東晋ハイスクール★
4:玉川雄一2002/02/08(金) 17:45
司馬睿や王導には、自ずと祖逖とは微妙に異なる思惑があった。
王導とて、ある時は北方校区の回復を叫んで皆の気を奮い立たせた事もあった。
しかし、多分にそれはパフォーマンスの域にとどまるものであり、
実際問題としては足元を固めるのに精一杯なのである。
そして、ややもすればこの地を新たな地盤として定着する方向にシフトしつつあった。
言い換えれば、本気で「中原回復」を図る意志を捨てた、とも言えるのである…
「姐さん! どうでしたか?」
棟長室を出た祖逖は、とある女生徒の人溜まりの中に足を踏み入れた。
とたんに、彼女の周りにワラワラと少女達が群がってくる。
祖逖は口々に首尾を問いかける声を制すると、辺りを見回し声を張り上げた。
「予想通りね… 大して期待はできないわ! 物は出すけど人は出さない。
…まあ、“物”だってたかが知れてるでしょうけど」
その言葉に、あちこちから落胆の声が上がりかける。祖逖は機先を制するように声を継いだ。
「だけど! 私達が力を合わせれば、きっと道は開けるわ。目に物見せてやるわよ!」
祖逖にはある意味、人を惹きつける力が備わっていた。
もちろんそれは実力に裏打ちされたものであったが、
彼女の言葉が皆の勇気を奮い立たせる事もまたしばしばだったのである。
かくして、祖逖以下数百人の「義勇軍」はなけなしの装備を調えると、建業棟を進発していった。
それを見送る者達の胸中は様々である。
北方校区から流れてきた者にとって、その姿には少なからず心を熱くさせるものがあった。
だが、本来この校区で学園生活を送ってきた者にとっては、
面倒ごとに巻き込まれるのは願い下げ、という思いが少なからずわだかまっていたのである。
この齟齬が、後にどのような結末をもたらすか。祖逖はまだ、それに気付いてはいない…
一団は長湖に乗り出した。数十隻の舟艇に分乗し、長湖北岸を目指す。
彼女たちは以前から祖逖に親しんできただけあって、数は少なくとも士気は高い。
軽快なピッチでオールは水をかき、流れるように船は進む。
やがて、湖の半ばまで達したところで祖逖は一旦行き足を停めた。
自らの座乗する艇を船団の真ん中に進めると、その手に持ったオールを高く差し上げる。
そこで一団を見回すと、熱のこもった視線が刺すように感じられた。
祖逖は満足そうに頷くと、北を指して言い放つ。
「私は、必ず中原校区を取り返す! それがかなわなければ、二度とこの長湖を渡って戻りはしない!」
一瞬、空気が静まった。その次の瞬間、割れんばかりの喊声がわき起こる!
「おーーーっ!!」
こうして、祖逖の北伐行は幕を開けた。
■とりあえず劇終■
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