【予告】烈女、還らず【夷陵】
1:玉川雄一2002/06/26(水) 23:47
(前略)
 そして、傅ユウは劉備に向き直ってわざとらしく敬礼してみせる。
それはせめてもの景気づけのつもりらしかった。

「−それじゃ総帥、アンタと会えて楽しかったよ」
「道中ご無事で。 …さよなら」

 王甫はまた、さりげない別れを装って手を振る。周囲は黒煙たなびき、喊声はすぐ近くに迫っていた。
劉備はなおも食い下がり、関興と張苞を振り切って身を乗り出した。

「なんやその言い草はッ、これで終いみたいに言うなや! ええか、はいつくばっても戻るんやで! そしたらなあ−」
「総帥、これ以上は危険です!」
「お二人の気持ちを無駄にしては…」

 もはや一刻の猶予もならなかった。なおもグズる劉備を引きずって、関興と張苞が駆け出す。
−見送る王甫と傅ユウの表情を、二人はこれからずっと忘れまいと心に誓った。

(後略)

〜『春の嵐・第二章 回廊の戦い』より抜粋〜
1-AA