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学園三国志演義はじめますた
3:★ぐっこ@管理人2003/06/22(日) 12:41
ところで、早速エピソード投入。
これはintroとチュートリアルの間に挟む予定だったストーリーですが、
学園中枢を描くのをできるだけ先に延ばしたかったため、カット。
(※別の形で似たようなシーンは考えてますが…)
少女は、拳を握りしめた。
苦々しげな表情だ。舌打ちして眼下の光景から目をそらした。
「何から何まで悪い。――反応が悪い。動きが悪い。センスが悪い。戦術が悪い。
耐久が悪い。何より上級者への従順さがカケラも無い。猿の群を率いた方がマシだわ」
少女は吐き捨てるように言った。
彼女の居るクラウド・タワーの遙か眼下では、連合生徒会の新規戦闘要員らが合同で
演習を行っていた。
名目は体育祭の棒倒しの練習だが、20名の指揮官役と700名の兵隊役を定め、4時間に
も渡って洛陽西郊自然公園で繰り広げられた陣地争奪戦は、軍事演習以外の何者でもない。
遙か頭上で猿以下と断言された戦闘員のタマゴ達は――それでも朝から汗と泥濘にまみれ、
灌木に皮膚を裂かれ、少なからぬ格闘で怪我を負いながら、必死で頑張っていた。
「この調子で奴らに勝てるものか。あの気狂いじみたセクト(党)の連中に。彼女らは今この
瞬間にも、下の連中よりはるかに練度の高い兵隊を育てているというのに」
「――そう言うなよ。あの中の大半は中等部の連中だ。初めてのサバイバルにしてはよくやっている」
「あなたが仕込んだにしてはぶざま過ぎる。私に合わせるべきだ」
少女は早々に興味が失せたようで、もはや眼下へ一瞥もくれず窓際からはなれた。親友へ
冷たく言い放つと、ラウンジ中央のソファーに腰掛け、形のよい足を組む。
「焦っているは分かるけどさ、あんた最近、らしくないよな」
ちょっとおくれて彼女の親友がグラスに朱色の液体を注いで持ってくる。
グラスを手渡し、少女の座るソファーの背もたれへ横様に腰掛けると、彼女の親友は、クセのない
少女の長い髪を指先に絡め、いつものように弄りだした。
「どだい、中等部の連中を速成しようという発想自体が間違っている。中等部三年生に限って
連合生徒会入りを認めるのは、使い捨ての兵員を増やすためではないだろうに」
スッと少女の細い腕が伸びて、親友の頭からツノの様に垂直に伸びているクセ毛をつかんで後ろへ
引っ張った。
「そんな事わかってるわよ、バカ」
前を向いたまま吐き捨て、短いため息を吐く。
少女は、現在のところ、この学園都市を代表する英雄であった。
ちょっと前までは、彼女は多少名を知られた、やりての執行部員というだけの存在だった
はずなのに。
それが、地下組織を広げる学園マフィアの連中や、連合生徒会から分離独立を図る過激組織、
それに敷地侵犯甚だしい男子校連中を、取り締まり、蹴散らし、叩き潰しているあいだに、
いつの間にか彼女は自分でさえ驚く巨大な存在になり果てていた。
声望、と言う点では、彼女は蒼天会長をも上回るのではないか。
「とにかく時間がない。あの革命オタク達が本当に年末に蜂起するとなれば――」
「確証はない情報だろ?」
「でも常識化している。ここまで公然と革命を予告する連中も珍しい」
昨今、魔法のような速度で急激に勢力を拡大しつつある学生運動「黄巾党
(Sect of the Earth)」の、はばかりない学園闘争の主張により、生徒総数5万余を数える
学園都市は、かつてない緊張感に包まれていた。
学園の生徒たちは、みな救世主を仰ぐように、少女の174センチの長身を仰ぎ見、彼女が
何らかの手段で事態を打開してくれるのを待ち望んでいる。
まったく、当人の好むと好まざるとに関わらず、英雄は人に頼られるものだ!
否、人々の輿望が、ただ職務に忠実な人を英雄に仕立て上げてしまうのか。
「生徒会長選挙も近い。どうせまた何進のバカが当選するのは決まってるけど、せめてこの非常時、
中枢の周囲くらいはまともな人事で固めて欲しいものだわ」
「清流会派の連中と連絡はついてるのか?」
「袁姉妹のパイプでね。座敷わらしどもが五月蠅いから、おおっぴらには会えないんだけど。
何顒は何度か司隷校区に潜入してるみたいだ」
「知ってる」
クククと喉を鳴らしながら、朱儁がうなずいた。
「先週その何顒を、お尋ね者として追っかけ回してたのがあんただ」
「見え透いた芝居でもね、勤務時間中は給料分働くべきよ」
少女は真面目くさった顔で言った。
同意のしるしにうなずきながら、ふと少女の親友は周囲を見渡した。
「こう言うときにひとこと嫌みを言う役の女がいないな」
「あれは嫌みじゃない。ツッコミだ」
二人の共通の知人は、かつての後輩が転校してきたという報せを受け、幽州学園まで出向いている。
…………
………
というカンジですた。
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