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【1月18日】旭記念日創作発表スレッド【お祭りワッショイ】
116:★惟新 2005/01/18(火) 02:03 遅くなりましたが! お祭り開催中宣言をします! ホントは17日からなんですけど…ごめんなさいごめんなさいごめ(ry 今回はとりあえず一週間くらい見積もって長い目でひとつ。 要は創作推進週間ですので、記念日ネタに限らず、SSにも限らず、 何か作ろう会なノリで参りとうございます。詳細は>>2辺りで。 なお、同時並行して「あの人は今」大会も実施中です。 現在生存確認済みは私を含めて三名でございます。 もし何かしらのご祝辞等賜れますれば幸いに存じます〜! >>110 りくこちゃんとようこちゃん(*´Д`)ハァハァ… 敵味方を超越した友情にはものすごく憧れるものが! ああ、眺めているだけで幸せになる… 玉川様のお話もためになりました! なるほど、ただの「名将」とは一味違った羊[示古]観が! そのように考えていくと、二人の友情も何やら味わい深く…
117:海月 亮 2005/01/18(火) 22:16 未だ正史読解中の弱卒の身ながらッ…願わくば、某も祭の末席に参加させていただきたく…<(_ _)> なんだかんだ言ってみたところでやっぱり、血が抑えられなくなったみたいです…_| ̄|○ 無礼を承知でネタSS製作に入ってみたりしたんですよ。それを投下したくて辛抱たまらんのです。 ついでに言えば長湖宴会ネタ。しかも、この上なく不真面目な内容になる予定です…(え 仕事はあるんですけど…ミョーに筆が進むので、日付が20日に変わる頃には完成…するといいなぁ。 》110 陸抗と羊(示古)…学三設定では幼馴染みなんですよね、確か。 それが敵味方に…なんと、萌えを掻き立てるシチュだろう…(´ー`)~* 私めも先日玉川様のご教示を仰いだ身ですが…ぐむ…ためになる…。 》112 何気に初めてレス返しさせて頂いとります。なんと言うか、きっかけがつかめなくて_| ̄|○ 完成の楽しみな逸品、堪能させて頂きました(≧∇≦) 春には吉報をお聞かせ願えること、心より願っております。
118:★惟新 2005/01/18(火) 23:10 ヽ(´∀`)ノ なにせお祭りですので! 多少はっちゃけられても全然オッケー、むしろはっちゃけろーな勢いで! 心よりお待ちしております(;´Д`)ハァハァ
119:★ぐっこ@管理人 2005/01/19(水) 01:10 うほ――ッ! 遅参申し訳ない( ゚Д゚)! ただいま帰社であります! >>110 りくことようこたんっ!幼稚舎あたりからずっと一緒っぽい彼女たち ですが、敵味方として対峙する悲しい運命…。羊角かわいいなあ〜 玉川様の仰る通り、こと軍事に関しては、りくこちゃんの方が当時桁外れ というべきであって、ほとんど彼女自身の存在が戦略レベル。 ガチでは勝てないと踏んだようこちゃんは、仲良し政策で荊州校区の切り崩しを… といった流れ。決してコブシで語る親友同士に留まらない関係だったのですね〜 >>111 ゴルァ(;゚Д゚)! だから禁止とあれほど!その時間で一つでも多くの単語を覚えなされ! しかし許す!でも不合格だったら許しません! あははー、やはりノベルゲームはnscriptか吉里吉里ですよねー。あずまんがnextゲーム化 計画が懐かしい… >>116 宣言乙( ゚Д゚)! くそう、ホントは格好良く第一陣投入したかったけど、まだもうすこし! 私は正当派の旭日記念日ネタで! うふふふ、そして海月様も本気の構えだッ! 存分に萌え狂われよ!
120:★玉川雄一 2005/01/19(水) 02:22 うぃー、でけた。 http://gaksan1.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/upboard/updir/gosan01.jpg 例の四人組。向かって右から陸遜、顧邵、吾粲、朱拠。 高等部に進級して、正式に長湖部に入部した直後のシーンと思いねェ。 っつか断言できる。このメンツでギャル絵描いたの俺が史上初。 それじゃ、みんな続け!
121:海月 亮 2005/01/19(水) 19:59 何時も通り仕事逝こうとしたならば…今日お休みだったの忘れてました。 でもって昼まで二度寝して、SSの仕上げで一日潰してみました(゚∀゚) では新参の身で僭越ながら…この場合、二番手なのか?それとも三番手? ええぃ、とにかくこれより死地に入るであります!(゚∀゚)>
122:海月 亮 2005/01/19(水) 20:02 -長湖、新春の攻防戦 そのいち- 揚州学区・呉郡学生寮、その陸遜の部屋。その扉が乱暴に開け放たれると、必死の形相をした二人の少女が転がり込んだ。そしてまた、乱暴に扉が閉じた。 一人は、緑なす黒髪をショートボブに切り揃えた少女−長湖部実働部隊の総括責任者・陸遜。 もう一人は、その頭の両サイドに、何かの耳のように跳ねたクセ毛があるロングヘアの少女。今年卒業を控え、推薦での進学も決定したものの、来年も特別顧問として残留が確定している諸葛瑾だ。 二人は暗がりの中でお互いの顔を見合わせると、強張った顔のままで呟いた。その衣服は、大分乱れており、彼女達がどんな目に遭ったかをよく物語っている。 「こ、ここまで来れば一安心ですね、子瑜先輩…」 「え、ええ…ようやく、逃げ切ったわね」 ここのところ平穏そのものだった長湖部。 正月の松の内も大分過ぎた1月18日に存在する学園休校日。この日に行われた体験入部イベントもそこそこの成功を見せた。でもって次の日も特別休校ということで、その夜に新年会を兼ねた打ち上げを行うことになったのだ。 昨年は帰宅部連合との悶着でそれどころではなく、さらに孫権が公孫淵の裏切り行為に相当なストレスを溜めている事を考慮し、少々羽目を外すくらいは…というのが、発案者・陸遜の弁だった。しかし特別に招いた、卒業を控えた魯粛や甘寧らのリタイア組参加希望者のリクエストに応え、酒の類を持ち込むことを容認したのが間違いの始まりだった。 案の定、先ず孫権が暴走した。公孫淵の一件から来た鬱憤に加え、いつも宴席を支配していたシャンパンが、よりアルコール度数の高いチューハイや日本酒に替わっていたことで、テンションの上がりようが半端でなくなっていた。 いつもなら止める筈の張昭が不在で、ストッパーの谷利が一緒になって呑んでいたのも災いした。甘寧の暴走を止められる呂蒙が、センター試験の為に学園を離れていたのも不運だった。 しかも悪いことに、一滴もアルコールを口にしたことがない凌統が、特待生として大学進学が決まったことに気をよくして大杯を干し…正確には、甘寧と魯粛が面白がって凌統の口に一升瓶を突っ込んだのだが…とにかくこれで酒乱の本性を顕した凌統が大暴れを始めたのが狂乱に拍車をかけたのだ。 陸遜を筆頭として大人しくやっていた連中が、孫権を筆頭とした酒乱共の襲撃を受け、程なくして会場は阿鼻叫喚のサバトと化した。その狼藉っぷりに恐怖した何人かが会場を次々に飛び出していくと、夜の帳の落ちた建業棟周辺で、酔いどれ天使と哀れな小羊達による鬼ごっこが展開されたのだ。 普段大人しい孫登や孫和すら、酔った勢いで陸遜にへばりついてくる有様だった。操を奪われそうになった(w)すんでのところで二人は何とか脱出し、会場からそう遠くない呉郡寮へ逃げ延びた、と言うわけだ。 「とにかく…」 「…ええ」 「「助かったぁ…」」 二人は同時に、その場にへたり込んでしまった。 所変わって、会場のすぐ傍の物陰に、二人の少女が隠れている。 一人は艶やかな黒髪を三つ編みに結った、気の強そうな少女。縁無しの眼鏡が、妙にはまっている。 もう一人は、亜麻色髪をセミロングにした小柄の少女。白のリボンをヘアバンドのように結っており、それが暗がりでは妙に目立って見える。 「…どうしよう〜…はぐれちゃったよぅ…」 「しっ! 情けない声出さないの。つーか敬文、そのリボン目立つから、外しときなさい」 「うぐぅ…うん…」 敬文こと、長湖部次期部長後見補佐を務める薛綜は、震える手で結ったリボンを外し、ポケットに仕舞いこんだ。もう一人、眼鏡の少女は長湖部風紀委員長の厳S、字を曼才。 こういう宴会事だからこそ、会場に居なければならない彼女達が、何故会場から遁走し隠れているのか…理由は陸遜達と何ら変わることはなかった。 「仲翔さんが居なかったらどうなってたか解らないわね…まぁ、あのヒトもどうなったことやら」 しみじみと呟く厳S。 この年度頭の宴会で、虞翻は孫権の逆鱗に触れて交州学区に左遷されていたのだが、今日は卒業間際という事で特別に交州から呼び戻されていた。そう言う引け目もあってか、この日の虞翻は陸遜や厳S達に混じっていた。直截な物言いも影を潜め、これまで彼女を快く思っていなかった者達とも、この日はかなり打ち解けていた。 孫権その他が暴走を始め、混乱を極めた時に逃げる連中の殿軍を買って出たのも虞翻だった。かつて、課外活動で孫策を窮地から救った杖術の腕を活かし、群がる酔いどれ天使達を捌く虞翻の姿を思い返し、薛綜の目に涙が溢れる。 「うぅ…仲翔さぁん…」 「泣かないの敬文! 仲翔さんの犠牲を無駄にしないため、絶対に呉郡寮まで逃げましょう、ね?」 「…ぐすっ…今日一緒に居ても…」 「あたしもこんな日に正直、一人は御免よ。合図したらここを出て全力で走るわよ…いい?」 「うん…」 そうして、そーっと暗がりから顔を出し、辺りを確認した厳S。 「よし…いちにのさんで飛び出すわよ…いち、にの…」 息を飲む二人。 「さんッ!」 合図と共に飛び出した…のは、二人だけではなかった。 「残念―――ッ!」 「!!」 視認出来ない両サイドの死角、そこから三つの影が実にいいタイミングで飛び出し、二人に折り重なるように飛びついたのだ。 「ふっふっふー! この朱桓様から逃れようなんざ百年早ぇんじゃい!」 「さっすが〜、あたい、あんたのこと見直したよ休穆ぅ〜」 「姿隠して声隠さず〜甘いぜぇお二人さんよぅ」 飛び出してきたのは朱桓と朱然、そして全Nだった。いつか対蒼天会の学園無双で、戦略上の行き違いがあって大喧嘩した朱桓と全Nだったが、何時の間にか仲直りしていたらしい。 「ちっくしょー! やっとここまで逃げてきたってのに〜!」 「うぐぅぅ〜!」 悔しそうにうめく厳Sと、その下で苦しそうにもがく薛綜の上で、 「…んで、分け前どうするぅ?」 「あたいはどっちでもいいよ〜? 休穆は?」 「う〜ん…じゃあうち等は敬文もらいっ! いいよな義封?」 「おーけーおーけー。じゃあ子黄は曼才持ってってね♪」 「有難き幸せ〜」 分け前相談をする三人であった。 (続く)
123:海月 亮 2005/01/19(水) 20:04 寮の外からがやがやと声が聞こえていた。 追っ手がかかったことを知った陸遜は部屋の電気をつけず、ベランダの窓にバリケードまで築いた上で懐中電灯とヘッドスタンドを持ち出していた。 扉は鍵をかけた上つっかえ棒もしてあるという厳戒態勢だ。 「これでひとまずは安心だな…」 「ええ。でも、懐中電灯の光も結構目立ちますからねぇ…」 「でも、本当にいいの? お邪魔させてもらって」 「はい。むしろ朝までいてください…今日ばっかりは、一人は嫌です…」 自分が貸したシャツの袖を引っ張って、泣きそうな顔で見つめてくる陸遜。 しかたないなぁ、と呟きながらも、諸葛瑾もそれに関しては同意見だった。 そのとき、ドアをノックする音がした。二人はぎょっとして顔を見合わせると…ドアの隙間からうめくような声。 「は、伯言…いたら助けてぇ〜!」 「御願いぃ〜」 慌ててドアを開けると、二人の少女がなだれ込んだ。赤みがかったショートカットの少女は吾粲、飴色の髪をポニーテールに結っているのは朱拠だ。 「孔休、子範!……よく無事だったわね」 「し、死ぬかと思ったわよ」 そう言ってへたり込んだ吾粲、上下のジャージを着ていた筈なのに、ズボンを失っている。 朱拠に至っては、スカートも靴も履いておらず、厚手のストッキングもボロボロだ。 恥も外聞も捨て、まさに命からがら逃げてきた、という感じである。ドアのバリケードを直しながら、陸遜はしみじみと言った。 「…どうしたの、とは訊かないわよ…解ってるから」 「しゃ、洒落にならんぞアレは…何で女の子同士の宴席で操を狙われにゃならないんだか…」 「あ〜ん…怖かったよぅ〜」 いつのも気丈さは何処へやら、泣きついてきた朱拠を宥めつつ、陸遜は当然の疑問を投げかける。 「しかし、よく逃げ切れたわね」 「仲翔さんが血路を開いてくれたからぎりぎり逃げて来れたんだけど…敬文とか曼才とか、どうなったのかな…徳潤さんも相当呑んでたみたいだし…」 実は虞翻もそうなのだが、(カン)沢は一旦アルコールが入ると豹変するクチだ。捕まれば無事では済まないだろう。 「その仲翔さんも、結局部長と谷利にとっ捕まったみたいだしなぁ…そういや子山は?」 「うぅ…多分いち早く逃げたと思う…何時の間にか元歎と一緒にいなくなってたじゃん」 「見てないのね…公績先輩が興覇先輩に羽交い絞めにされてたくらいの頃に、二人して裏口からこっそり出て行くの」 陸遜は、こそこそと逃げる歩隲と顧雍の姿を目の端で捉えていた。その時には自分も孫登達の襲撃を受けていたのでそれどころではなかったわけだが。 「嘘ッ、そんな早く逃げてたのぉ? ずるいよぅ!」 朱拠が非難の声をあげる。だが、いち早く逃げた二人の気持ちも解らなくはない。この場合は要領の悪かった自分達を責めるべきだろう。 「で、悪いんだが…」 「ぐすっ…会稽寮まで戻れそうにないから…朝までいい?」 「大歓迎よ。情けない話だけど、私も怖くて…」 二人の顔が、ようやく安堵の表情に変わった。 一方その頃。 「くそぉぉ、捕まってたまるモンですかぁ!」 柔かそうな黒髪をショートカットにした、ややキツめの顔に黒縁眼鏡をかけた少女が部屋の小窓から脱出しようと釣り下がっている。その形相は、必死そのもの。 少女の名は潘濬、字を承明。かつては荊州学区で関羽の信任を得、後方の守備を任されていたのだが、張湖部の荊州攻略の際、力及ばず軍門に屈した少女だ。彼女は帰宅部連合に対する信義を貫こうとし、部屋に閉じこもっていたが、孫権自らが彼女を諭し、以来幹部として厚遇されていた。 同じ直言の士であっても、張昭のようにやり込めてくるタイプではなく、親友がそうするように真摯な姿勢で諭してくれるスタンスが気に入られ、孫権の信任は非常に厚い。だが、あくまでそれは孫権が素面であった時の話に過ぎない。 酔った孫権にしてみれば、潘濬とてお気に入りの玩具のひとつでしかないのだ。 「う〜、逃がさないのらぁ〜承明ぃ〜」 「わぁぁ! そんなところに手をかけないで下さい部長〜!」 「お〜、いいよいいよぅ、もっとやれ〜♪」 「おねぇちゃんがんばれ〜」 「もう少し〜」 潘濬は、そのスカートの根元を孫権に捕まれ悲鳴をあげた。それを見て、座の中央で(カン)沢と孫登・孫和姉妹が無責任に声援を送る。援軍の期待できない状況に、潘濬は泣きたくなった。 逃げた連中を追っかけて、甘寧や凌統、徐盛に周泰といった猛者たちは方々へ散らばり、数人しか残っていないのですっかり静かになった宴会場は、それでもまだプチハチャメチャ状態を継続していた。 部屋の隅のほうでは、座った目をした朱桓と朱然が、制服の半袖にブルマというマニアックな格好をさせられ、泣きべそをかいている薛綜に酌をさせ、時折抱きついては慰み者にしている。 孫権が最初に座っていた辺りでは、散々弄ばれた後なのだろう、下着姿で突っ伏している厳Sと、弄んだ張本人の全Nが、酔いつぶれて倒れている。その近くには、普段孫権の後ろにくっついている谷利が、手酌で何かぶつぶつ言いながら痛飲している。 部屋の中央には、頭から酒を浴びせられ、衣服を乱され酔いつぶされた虞翻の姿がある。 どれも一瞬後の自分をみているような気がして、潘濬の顔が蒼白になった。 彼女は最初の大脱走(w)の際、機転を利かせて外に飛び出すと見せかけ、階上のトイレに隠れていたのだ。しかし、騒ぎがひと段落した頃を見計らいトイレから出たところで、徘徊していた孫権とばったり出くわしたのが運の尽き。陸遜という玩具を失ってヒマを持て余していた孫登・孫和姉妹を交えた壮絶な鬼ごっこの末、彼女は宴会場に戻ってくる羽目になった。 「むぅぅ〜しぶといなぁ〜…えいっ!」 「え?」 次の瞬間、孫権は潘濬のスカートの根元を掴んだまま、勢いをつけてぶら下がた。 スカートに限らず、この学園の制服は課外活動に伴う戦闘行為のために相当丈夫な生地を使っているはずだが、偶然ホックの辺りに手をかけていたからたまらない。勢いでホックが外れ、スカートがずり下ろされ… 「―――――――っ!」 その惨劇に、潘濬は声にならない悲鳴をあげた。その顔が、恥ずかしさのあまり瞬間沸騰する。 間の悪いことに、彼女は下着の上にはスカート以外に何も身に付けていなかった。普段堅物振りを発揮して、お洒落にも気を使わないと思われた彼女らしく、シンプルなストライプの下着が姿をあらわす。 「むぅ…白地に青の縞パンか…やるな承明」 なにが「やるな」なのか知らないが、しみじみと呟く(カン)沢。その目の前で露になった下着を隠そうと手を放してしまった潘濬と、未だにそのスカートから手を放そうとしない孫権は一緒に崩れ落ちた。 頭から落っこちた潘濬は、痛む頭をさすって起きあがろうとするが…何故かその上にはマウント・ポジションをキープした孫権がいた。 口元はこれ以上ないくらい妖しく歪み、手の動きが否応なく恐怖をかきたてる。潘濬は涙目で、必死になって逃げようとするが、竦んだ身体に上手く力が入らない。 「あ…あ…」 「つ〜かまえたぁ…たぁっぷりかあいがったげるから覚悟しろ承明ぃ〜」 そして建業棟に、潘濬の悲鳴が木霊した。 (続く)
124:海月 亮 2005/01/19(水) 20:05 「開けろおらぁ! 居るのはわぁってんらお〜!」 「逃亡者はお持ち帰りらぁ〜出て来いやぁ〜!」 鉄製の扉を執拗に蹴り続ける激しい音と、酔った魯粛と甘寧の声がする。蹴っているのは恐らく甘寧であろう。慌てた陸遜達は、下駄箱やテーブルでバリケードを固めて抵抗した。 「な、何、なんで? 何で居るのがバレたのよっ!?」 「そんなの知らないよっ!」 小声でやり取りする朱拠と吾粲。 「まさか…」 築かれたバリケードの上から、可愛らしいカエル柄の散りばめられたパジャマに着替えた陸遜が小窓から外の様子を伺った。そこには、制服のスカートとジャージのズボンをそれぞれの手に握り締めながら、物凄い形相で蹴りを入れてくる甘寧の姿が見えた。 「やっぱり…二人の匂いを嗅ぎつけたんだ…」 「んな馬鹿な! 犬じゃあるまいしそんなこと」 当然の物言いをする吾粲。しかし、陸遜は真顔で、 「承淵から聞いたことがあるの。興覇先輩って、匂いだけでどんな料理を作っているのかは愚か、材料まで完璧に言い当てるって…私も最初は信じられなかったけど…そんな嗅覚なら、人の匂いを嗅ぎ分けるくらい出来るかも」 「うそ…でしょ?」 その言葉に顔面蒼白になる朱拠。陸遜が授業で使っている竹刀を持ち出してきた諸葛瑾も姿をみせる。 「開けたら一巻の終わりよ…私、窓のほう見てくる。ここ三階だから多分大丈夫かもしれないけど…」 「いえ、酔ってるあの人たちに、常識なんて通用しません! 私も行きます! 孔休、子範、此処は任せた!」 「承知!」 必死の形相で、かつ強い語調の小声で、陸遜が指示を飛ばす。 二人がベランダのほうへ行くと、なにやら声がする。ギョッとして駆け寄れば、その声の主が潘璋と凌統であることに気がついた。鍵をかけているベランダの戸がガタガタと乱雑な音を立てる。 「公績ぃ、石かなんか持ってない〜? こりゃ割るっきゃないっしょ〜?」 「そだね〜てかアンタの部屋から何かもってくりゃいいじゃん?じゃん?」 「や〜よ、ヒトのならともかく、あたしのモノでガラスなんて割りたくないも〜ん」 そんな物騒な会話に、二人は息を飲んで顔を見合わせる。 「…忘れてた…確かこの隣りって、文珪の部屋だった…ベランダ伝いで来れたかも」 「というかあの二人まで来てるなんて予想外だったわ…まさかあたし達狙いだったなんて」 二人は入ってくる様子はない。何か言っては二人でげたげたと笑っているが、それは中に立てこもる少女達の背筋を凍らせるには十分すぎる内容だった。 しばらく考え込んでいたが、陸遜が意を決したように立ち上がった。 「…こうなったら先制攻撃あるのみ!」 「え、ちょっと伯言!?」 諸葛瑾から竹刀を奪い取り、陸遜はベランダの鍵を開けて外に踊り出る。 「お♪ 伯言みっけ…」 「先輩、御免なさいっ…たぁっ!」 それに気を取られた潘璋と凌統の一瞬の隙をつき、ベランダの手摺を使って宙に舞った彼女は正確に二人の脳天を打ち据えた。パジャマの上着の裾を鮮やかに翻して着地すると、凌統と潘璋は折り重なるようにして倒れた。 この年度に入って、部下として宛がわれた丁奉に感化され、陸遜も剣術道場に通うようになったのだが、その成果がきっちり現れたらしい。一瞬の出来事にぽかんとする諸葛瑾が、感心したように呟く。 「……お見事」 「感心してないで下さい…とにかく、のびてるうちに動きを封じましょう」 「え…ええ、そうね」 運び込むと、タオルを持ち出してきて、なれた手つきで手かせ足かせにしていく。その上で毛布をかけてやると、気を失っていた二人は何時の間にか寝息をたて始めた。その様子をみると、陸遜と諸葛瑾もほっと一息ついた。 その決着がつく頃には、玄関のほうも静かになっていた。朱拠が恐る恐る小窓を除くと、どうも酔い潰れたらしく、外の二人は抱き合うようにして大いびきをかいていた。 酔っ払いという名の狂嵐が去って、その翌日のこと。 「昨日はすいませんでした先輩…この通りです」 「いや、それはむしろあたしたちの台詞だ…本当にごめん伯言」 「ごめんなさいぃ〜平にご容赦をぉぉ〜」 陸遜の部屋では、一晩寝て正気を取り戻した凌統と潘璋、そしてその二人をのばした陸遜がお互いに土下座している珍光景が展開されている。 そこには明け方、それぞれ衣服を取り返し、それに着替えた朱拠と吾粲、そして明け方自分の部屋に戻って私服に着替えてきた諸葛瑾の姿もある。皆、陸遜が用意した朝食代わりのインスタントスープを啜っている。 甘寧と魯粛はというと、潘璋の部屋に放り込まれ、未だ高いびきをかいていた。 一通り平謝りしあうと、沈んだ表情で頭を抱える陸遜。 「今回の件…学園管理部にどうやって説明しよう…」 「ってか…バレたらむしろヤバいのあたしら卒業生とリタイア組だから…握りつぶしてもらえると助かるかな」 「…それは善処しますよ」 潘璋のひとことに陸遜も苦笑する。 「てか、あたしらがこの有様だったんじゃ…部長はどうなったろうな」 「他の子達も心配だし…早めに見に行ったほうがいいかも」 「そうだな。興覇と子敬はどうする?」 「あのまま寝せとけばいいよ。子敬はともかく、子明抜きで興覇を無理やり起こせる自信、ある?」 潘璋の言葉にお互いの顔を見合わせ、頷いた一同、衣装を調えると会場へと駆け出していった。
125:海月 亮 2005/01/19(水) 20:07 その頃、会場のど真ん中で目を覚ました孫権は大きく伸びをした。 「ふぁ…あれ、ボクどうしてこんなトコで? …ええええ!? 何これぇ!?」 見渡せば、周りは目も当てられぬ惨状の光景が広がっている。 そこいらじゅうに転がった一升瓶とチューハイの缶、そして散乱した紙コップ。 少し離れたところで、大の字で寝ている(カン)沢と、その腕を枕代わりに、抱き寄って寝ている孫登と孫和。 その隣りに、ずぶ濡れになって死んだように寝ている、服を乱されたままの虞翻。 己の傍らには、あられもない姿の厳Sと潘濬が、憔悴しきった顔で寝ている。 主賓席には、未だ目を覚まさずぶっ倒れたままの全N。誰がやったのか、これもあられもない姿だ。 窓際に、日差しを浴びながら突っ伏して寝ている谷利。手には、一升瓶が握られている。 部屋の隅では、泣き疲れて眠っている薛綜を抱き寄せながら、幸せそうな顔で眠っている朱桓と朱然。 整然と並べられていたテーブルも、あるいは倒され、あるいは酔った誰かがやったのか、積み上げられたり無意味に並べられたりしている。 何人かが居ないのは、恐らく途中で逃げたか、あるいは会場の外で大暴れしたことは、窓の外、路上で大の字になっている周泰と、花壇に頭から突っ込んでいる徐盛を見れば予想がつくことだった。最初から一緒に飲んでいた筈の賀斉、呂岱、周魴、太史享らの姿がないのも、会場外に飛び出していったからだろう。 あまりの惨状に呆然とする孫権。よくみれば、自分も上着を肌蹴させていると言う、みっともない格好をしていた。慌ててそれを直すと、スカートの下には何も身に付けていないことに気がついた。慌てて辺りを見渡すが、その下に身につけていたと思しきものは、何処にも落ちていなかった。 「…何が…いったい何が…」 「うぃーっす、起きてるぶちょ…うっ!」 呆然と立ちつくした孫権の姿を見た吾粲、その光景に思わず絶句した。 そう、その孫権の頭には…その姿に、駆け込んできた陸遜達も噴出しそうになる。 「な、なに? みんなどうしたの?」 「ぶ…部長、頭、あなたの頭の上…っ」 「へ…?」 必死に笑いをこらえる陸遜が指差し、孫権が恐る恐る頭に触れると…そこには、彼女が探していた例のものが被せられている。その正体に気付いた瞬間、顔面蒼白になり、次の瞬間… 「やあぁぁぁ―――――! みんな見ちゃ駄目ぇぇーッ!」 恥ずかしさのあまり顔を真っ赤に染め上げ、孫権が部屋から飛び出していった。 一拍置いて、少女達の笑い声が会場跡に弾けた。 このあと孫権はしばらく、気まず過ぎて居合わせた陸遜達とはしばらく口も利けず、潘濬達も、それぞれの畏怖の対象となった人物たちをそれとなく避け、近づかなかったらしい。 そして真冬の路上で高いびきをかいていた周泰たちも、大方の予想通り風邪を引いて寝込んだとのことだった。酒をかぶってびしょ濡れのままだった虞翻も、その例に漏れることはなかった。 当然ながら、孫権の頭に彼女の下着を被せた犯人も不明である。 この事件は学園史に載る事こそなかったが(当たり前か)、それでも当時の長湖部員の間では長く語り草になったという。当事者・孫権にとってはかなりのトラウマになったようだが、それでもこうした酒盛りが止む事はなかったらしい。 (終わり)
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