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【1月18日】旭記念日創作発表スレッド【お祭りワッショイ】
145:海月 亮 2006/01/07(土) 18:34 |Д`)ダレモイナイ…アゲルナライマノウチ… というわけで僭越ながら、私めがageておきます(゚∀゚) というか今年もこちらでええんでしょうか? ついでに言えば、やっぱり17日(火)を前夜祭と位置づけ、18日(水)〜25日が祭りということでいいんですかね? 一応ネタはあるので、前夜には何か持ってくる予定でつ。
146:雑号将軍 2006/01/07(土) 23:10 おお、海月様。あけましておめでとうございます。ご無沙汰しており言葉もありません。 旭祭ですな!むむむ、初参加ですが、頑張りますよ!
147:海月 亮 2006/01/08(日) 10:52 >初参加 一瞬「あれ?そうだっけ?」とか思って小首を傾げてしまった私。 そしてなんとなく勢いで初来訪者スレとか見直してようやく思い込みだと気づきましたさ_| ̄|○ そしてその意気や善し(´ー`)b そしてわれらで、更なる神作品光臨の先駆者となりましょうぞ!(゚∀゚)
148:★教授 2006/01/09(月) 20:20 海月様、age乙! 長期出張でPC触る機会無かったので死亡説すら流れてました私ですが…え、まだいたの的存在? はい、そうです or2 …こほん。ともあれ旭記念日3周年目も参加しますー。いつもの二人メインだろって? はい、そうです o... r2 では、記念日に会いましょうー(沈黙)
149:海月 亮 2006/01/11(水) 00:39 [sage] >教授様 うお、ご無沙汰でした! これで今年もめいっぱい萌えさせていただけるということですな(゚∀゚) ((*゜∀゜)o彡°簡×法! 簡×法! そうしたらこの海月めがやることもただひとつ…はい、ワンパターンながら、多分虞姉妹っつーか長姉と誰か…_| ̄|○
150:雑号将軍 2006/01/17(火) 22:31 旭日記念作品 ▲出逢いと楽しみは危険な香り▲ 今日は一月一七日火曜日。この日、蒼天学園の行事の中でも屈指の賑わいを見せる、旭日記念祭を前日に控え、まもなく前夜祭が始まろうとしていた。 前夜祭と言っても、実際は午後三時から始まるので、強いて言うなら「前昼祭」と呼ぶのが妥当かもしれないがそれほど重要なことではない。 今、重要なのは午後四時だということである。しかし、蒼天学園のどの校区を見渡しても生徒の姿はない。 いや、体育館がぞろぞろと生徒がはき出しているではないか。どの生徒もけだるそうに猫背になっていたり、あくびをしている。 無理もない。なぜなら、三時から一時間の間、学園長の演説を聴かされていたのだから。 ここは司隷特別校区。蒼天学園の首都とも言える校区でさきほどまでこの第一体育館で学園長が演説をしていたのだ。 まあ、聞いていた側の生徒にしてみれば迷惑この上ないものなのだが・・・・・・。 「ホント、何が起こったらあんなに話が長くなるよ!義真もそう思うでしょ?あーあー。あたしの初めての旭日記念祭をどうしてくれるのさ」 赤い髪で小柄な女生徒が、横にいた、自身が「義真」と呼ぶ、長身かつ長髪の女生徒に尋ねた。 どうやら二人とも学園長の餌食にあったらしい。 「同感だな。あんな形ばかりの儀式になんの意味があるのか、私には到底、理解し得ないな」 義真と呼ばれる女生徒は風でなびく長髪を気にしながら皮肉を込めてそう言った。 この女生徒の名は皇甫嵩。親しいものは義真と呼んでいる。多少きつめの顔に、一七〇センチを超える長身。そして、光加減によっては青色に光る長髪が彼女の凛々しさを強調している。 そして、彼女のハスキーな男口調が大きな影響を与え、一部の腐女子の間ではかなりの人気を誇っている。 もちろん皇甫嵩にとってはいい迷惑なのだが。 皇甫嵩は横に並んで歩く少女の不機嫌そうな顔を見て話を続けた。 「どうだ、公偉。これからショッピングモールにでもいかんか?」 旭日記念祭は蒼天学園も含めた華夏学園都市をあげての祭りのためショッピングモールも例外ではなく、様々な催しものが開かれている。 その何気ない誘いかけに「公偉」と呼ばれた少女は目を輝かせるのと同時に、なぜか前髪のひとふさが天を向いて逆立った。 「本当〜!やったあ!義真とデート〜デート」 少女は「デート」という単語をあからさまに強調しながら、皇甫嵩の周りをくるくると回っている。 この少女の名前は朱儁。親しいものは公偉と呼ぶ。いつも前髪のひとふさが天を向いて逆立っている。 また皇甫嵩と朱儁は小等部からの親友で、寮のルームメイトなのである。 「やっぱり、行かん!」 「デート」という単語に狼狽した皇甫嵩は照れ隠しのつもりで言い放った。 「うわ・・・・・・もしかして義真、照れてるの?」 朱儁の言葉に皇甫嵩はますます赤面する。そして一言、 「帰るぞ!」 そう言って、スタスタと早足で駆けていってしまった。 「ちょ、ちょっと待ってよ〜義真〜!」 朱儁はあわてて、皇甫嵩の後ろを追いかけていった。 「見て見て、義真!これもいいよねぇ」 「そ、そうなのか?」 結局、皇甫嵩はショッピングモールに来てしまっていた。そして今は朱儁の洋服選びに付き合わされているのである。 皇甫嵩は右手に買い物袋をぶら下げ苦笑していた。 しかし、皇甫嵩は決して、洋服選びが嫌いにわけではない。事実、皇甫嵩はすでに、紺のジャケットの購入を決めているのである。 しかし、朱儁は二種類のワンピースを見比べていた。こんな状況が、もう三〇分も続いているのだから皇甫嵩が苦笑しているのも、もっともであった。 「うん、決めた!こっちにする」 結局、朱儁はオレンジと白のワンピースを選ぶと会計の方へと向かっていった。皇甫嵩がその後ろから疲れ気味について行く。 二人は会計を済ませると、店員の明るい声を背中に受けて二人は店を後にした。 二人は店を出てしばらく歩いていると、一件のコスチュームショップが目に入った。 朱儁は、自然と上目遣いで皇甫嵩を見やる。これには「皇甫嵩へのお願い」が込められている。皇甫嵩はこの手の視線には、めっぽう弱いのである。 「・・・はあ。今日はお前に付き合ってやるよ」 皇甫嵩はそう言うと、二人並んで、コスチュームショップに入っていった。 入ってみると中は思った以上に広く、かなりの種類の装飾品が所狭しと並べられていた。 「いったいどこからこんなものを・・・・・・」 皇甫嵩が呆れるのも無理はない。 リボンやネクタイといった、一般的なもの以外にドクロのブレスレットなどのオカルトグッズも並べられていた。 それだけならまだしも、なかにはアニメの登場人物が着ている衣装までもが販売されているのであるから驚きである。 それらを凝視している女性客がいたのを皇甫嵩は見逃さなかった。 皇甫嵩がそうやって辺りを見回していると、朱儁が戻ってきた。 「これ、どうかな?」 「どうって、なにがだ?」 皇甫嵩が首をかしげて、そう言った。 すると朱儁は両手を開いて二本のリボンを見せた。一本は燃えさかるような深紅。そしてもう一本は澄み切った海のような紺碧色をしていた。 「おそろいにしようよ〜?あたしが赤で、義真が青にしてさあ」 「なるほど、確かにそういうのも面白いかもしれないな。よし、私は青を選ばせて貰うことにしよう」 皇甫嵩は珍しく、なんの躊躇いもなく朱儁から紺碧のリボンを受け取ると二人揃って会計をすませた。 皇甫嵩はさっそく後ろの髪を束ね、リボンで結び、ポニーテールにした。 その輝くばかりの凛々しい皇甫嵩の姿に朱儁はうっとりしていた。 髪の長い皇甫嵩に対して朱儁は髪が長くないので結ぶことができなかった。そのため朱儁は制服のクロスタイをはずし、そこにリボンを通し、前で蝶結びにした。 このリボンは二人が三年の夏休み二週間前になるまで、外されることはなかった。
151:雑号将軍 2006/01/17(火) 22:35 続き・・・・・・ この後もしばらく、ショッピングモールを歩き回った皇甫嵩と朱儁は近くにあったカフェテラスでティータイムを楽しんでいた。 「なんか、開会式の疲れがどっかに吹っ飛んじゃったわね」 「そうだな。たまにはこういうのもいいものだな」 二人はそう言って、声を上げて笑っている。 太陽は二人の笑顔を象徴するかのように、空高く、そして、さんさんと照らしていた。 二人がしばらく談笑していると、ある女生徒が声を掛けてきた。 どうも不思議な感じの少女だ。 「進呈」 彼女はブレザーのポケットから、封筒を取りだし、二人に差し出した。 「うん・・・・・・?」 皇甫嵩は封筒を受け取った。少女はじっと二人を見つめてくる。 「開けてもいいのか」 皇甫嵩は一応、聞いてみることにした。まあ、渡しておいて開けてるなとは言わないだろうが、これが社会の礼儀なのだろう。 「正解」 皇甫嵩と朱儁は同じように首をかしげた。その姿を見て、少女はに唇に手を当てコロコロと楽しそうに笑っている。 そんな光景がしばらく続いていると、不意に少女が口を開いた。 「あ、時間切れ・・・・・・ああ、これもどうぞ」 「お米券?」 「そうです。蒼天学園ならどこでも・・・・・・本当にもう、時間切れです」 心地よい春風がカフェテラスを吹き抜けたとき、すでにその少女の姿は、なかった。 少女の摩訶不思議な言動に、皇甫嵩と朱儁の頭の中では無数のクエスションマークが駆けめぐっていた。 「な、なんだったんだ。優しさだけはありありと感じ取れたが・・・・・・」 「う、うん。なんだか、母性みたいなのを感じたけど・・・・・・」 そして、しばしの沈黙。 「それで、義真。あの子が置いていった封筒の中に、何が入ってるの?」 朱儁が沈黙を打ち破って、尋ねた。 皇甫嵩は握っていた封筒の封を丁寧に破った。そこからは、示し合わせたように、二枚のチケットが出てきた。 そこには「蒼天学園の新鋭オペラ歌手・張角!旭日記念祭特別野外公演」と書かれていた。 「場所は・・・冀州校区の広宗音楽堂前自然公園、時間は七時開演か・・・・・・どうする、公偉?」 皇甫嵩は取り出したチケットを読み上げると、顔を上げて朱儁に尋ねた。せっかくもらったチケットなので、皇甫嵩としては見に行きたかった。 しかし、「今日は付き合う」と言った手前、とりあえず、聞いてみることにしたのである。 「楽しそうだし、行こうか!」 「そ、そうか・・・・・・公偉がそう言うのなら、私も行くことにしよう」 皇甫嵩は朱儁の同意を得られてうれしかったのだが、悟られないように、あえてこんな言い方をした。 「またまたぁ、そんなこと言っちゃってさあ。義真だって本当は行きたいんでしょっ」 朱儁がそう言って、皇甫嵩を肘でつつく。 「むむむ。そ、そのなんだ・・・・・・ああ!もういい、行くぞ公偉!」 言い訳を考えていた皇甫嵩だったが、結局、なにも思いつかず進退窮まったため、朱儁に背を向けて、足早に歩き出していた。 「もう、義真はシャイなんだからあ〜」 朱儁は皇甫嵩の背中にそう言うと、自分も歩いていった。 二人はもう、数分前に会った少女のことなど忘れてしまっていた。 「ここね。もう人がたくさん・・・義真、空いてる席ある?」 「ああ、なんとかな。それにしてもひどい人気だな・・・・・・」 朱儁は精一杯背伸びしているのだが、残念ながら彼女の身長では前が見えなかった。そのため一七〇センチを超える長身の皇甫嵩が空席を確認していたと言うわけである。 二人は広宗音楽堂前自然公園に来ていた。 この自然公園は広宗音楽堂の八〇〇メートル先にあり、たくさんの自然が広がっているのどかな公園である。と、言えば聞こえがいいが、その実は何か施設を建てるほどの予算が、慢性的に不足しているためなのである。 しばらく歩き回った皇甫嵩と朱儁はやっとのことで、席を見つけて座ることができた。 ちょうど、二人が座ったのと同時に、割れんばかりの歓声が沸き起こった。 それもそのはず、ステージの奥から、一人の少女が姿を現したのである。 彼女こそが、このコンサートの主役、張角である。 彼女は腰まで伸びた黒髪をなびかせ、それと対極的な白一色のドレスという衣装でステージの階段を上っていく。 さらに、ドレスの襟元からは黄色のスカーフを覗かせていた。 そんな張角の優しさに満ちあふれた女神のような美貌に、皇甫嵩と朱儁の二人は目を奪われていた。 と、不意に朱儁が皇甫嵩に、恐る恐る声をかけた。 「ねえ、義真。あの人の目の色、両目とも違わない?」 「ああ、あれはオッドアイだ。それも金と銀のな・・・・・・」 朱儁の質問に答えた皇甫嵩は思った。 (と、いうことは、彼女の片耳は聞こえない可能性が高い・・・・・・はたして、そんな状態で歌えるのか?)と。 しかし、そんな皇甫嵩の不安は全くの杞憂となった。 ステージの中央で歌う張角の歌声は音質、音程、声のつやなど、どこをとっても非の打ち所がなかったのである。 そしてその歌声は、彼女の身体から出るオーラを代弁していた。 例えて言うのであれば「母親の子守歌」といったところであろう。彼女の歌には、なにものをも包み込むような優しさがあった。 皇甫嵩と朱儁は日頃の疲れも忘れて、張角の歌声に魅せられていた。 ・・・・・・そして、歌が終わった。
152:雑号将軍 2006/01/17(火) 22:37 続き・・・・・・パート2 「よかったねぇ〜義真」 朱儁は祈るようなポーズをとりながら、張角の姿にうっとりしている。 彼女の眼は潤んでさえいた。 それほどまでに張角の歌は人の心を震わせる力があるのだ。 「ああ、見事としか言いようがない。どうやら彼女は数々の奇跡が重なり合って、生まれてきたようだな」 さすがの皇甫嵩もいつもより幾ばくか、頬をほころばせていた。 そして、二人が、張角の二曲目に聞き入ろうとした。 そのとき――― そのときである。 最前列に座っていた数人の観客が一斉にステージに上ってきたのである。 「な、なんですか?あなたがたは?」 張角が観客の異様な雰囲気に、後ずさりする。しかし、観客はすでに張角を取り囲んでおり、逃げられない。 「今日は学園きっての祭りと聞いて、かわいい女の子がいると思ったら、両目が色違いの萌えっ娘に逢えるたあ、俺はついてるなあ〜」 そう言った途端、張角を囲んでいた観客は来ていた服装とカツラを取り払った。 なんと張角を取り囲んだ者たちは男であったのだ。 それを見た周囲の動揺は凄まじいものだった。会場の観客は我先へと、逃げ出していく。 それもそのはず、この「華夏学園都市」は男子禁制であるため「男子=怪物」の公式が立っているのである。 この学園の生徒が男子生徒に出会うことは、人が山の中で熊に遭遇したのと同じような状況なのであると言えば理解して頂けるであろう。 もっとも、中には逃げない者もいるのだが・・・・・・。 「大変だよ!早く助けないと!義真!『義を見てせざるは勇なきなり』って学園長も言ってたよ!」 そう言って、朱儁が皇甫嵩の左腕を掴もうと手を伸ばしたが、その手は彼女をとらえることはなかった。 それもそのはず、皇甫嵩はすでにステージを駆け上がっている所だったのだ。朱儁は微笑を浮かべると、皇甫嵩の後を追った。 「なあ〜これから俺と付き合ってくれよ」 さっきの男が張角に詰め寄る。 張角はそれから逃れるように後ろへ下がるが、別の男がその行動を阻んだ。 「お、お断りします!」 張角は健気にもそう言ったが、この言葉が彼らの興奮を煽った。 「そんなこと言うなよ!いいとこに連れてってやるからさあ!」 男は強引に張角の腕を掴んで、自分の方へ引き寄せた。 張角は必死に抵抗するが、残念ながら、腕力の差がありすぎた。 「は、離してください!こんなことが許されると思っているのですか?」 と、そんなとき、どこからか、声が響いてきた。 「やめておけ。そのような下衆共に道理を説いても無駄なだけだ」 男たちが、あわてて辺りを見回すと腕を組んでいた長髪の女が一人、スピーカーにもたれかかるようにして立っていた。 皇甫嵩である。 「なんだあ、お前も相手して欲しいのか?」 「せっかくのお誘いを断るのは心苦しいのだが、私はこれからそこにいる彼女とデートでな。悪いがお前らは、養豚所にいる雌豚の相手でも、していてくれんか?」 彼女の言葉には、あきらかな皮肉と侮蔑が込められていた。 「んっだとう!俺を烏丸高校(蒼天学園の北側にある男子校の一つで、過去から何度も蒼天学園に嫌がらせを繰り返している)の蹋頓と知ってそんな口をきいているのか!」 馬鹿にされた男は、あからさまに敵意をむき出しにしている。 その殺気は尋常ではなかった。幾度も死線をくぐり抜けてきた眼だった。 並の女子高生だったら、すぐさま詫びを入れていただろうが、幸か不幸か、皇甫嵩は並の女子高生ではない。 「養豚だと!はっはっはっは!やはりお前には養豚所の雌豚がお似合いだ。なんなら、私が紹介してやろうか?」 皇甫嵩はウソ丸出しに驚くと、これまで以上の皮肉を込めて言った。 「な!俺は蹋頓だ!お前ら!このアマをやっちまえ!」 ついにキレてしまった蹋頓は近くにいた数人の男たちと共に、皇甫嵩を取り囲んだ。そして、バットケースに手を入れると、あろうことか、バットではなく摸造刀を取り出したのである。 それを皇甫嵩に向けて突きつけた。しかし、皇甫嵩はぴくりとも動かない。 「最近のガキは面白い玩具を持っているらしい・・・・・・なっ!」 皇甫嵩はそう憎まれ口を叩いたその刹那、真横から斬りかかってきた男のみぞおちに豪快なストレートをきめ、気絶させると、その手から模造刀を奪い取った。 さらに、彼女は不敵な笑みを浮かべると、こう言い放った。 「『剣とは敵を破る物にして、自己を護る物に非ず』この言葉を知っているか?まあ、しわの少ない貴様らの脳みそでは、知っていたとしても本来の意味など理解し得んだろうが・・・・・・」 ここでも、皇甫嵩は彼らをさんざんに侮辱する。 男たちは、顔を真っ赤にして、斬りかかってきた。 皇甫嵩はまったく動じず、右手で自然に振り上げた形に左手を添えるようにして、上段に構えた。 次の瞬間、正面にいた男めがけて、刀を振り下ろした。男は刀を胸の前に突き出すようにして受けを取ったが、それがいけなかった。 二本の太刀が激突した瞬間、男の太刀が男の胸に跳ね返ってきたのである。 男は地面へとたたき落とされ、胸の痛みにもがき苦しんでいた。 蹋頓はこの型を見て、さっき皇甫嵩が言った言葉を思い出した。 「お、お前ら一斉にかかりやがれ!」 蹋頓は驚きを隠しきれずにいたが、周りにいた男共に指示を出す。 「ほう・・・・・・しかし、養豚所の豚にやられるほど私は甘くはないぞ!」 皇甫嵩はニヒルな笑みを浮かべて言い放つと、左右から斬りかかってきた男たちの胴を薙ぎ払った。 さらに正面から拝み打ちを放ってきた男の太刀に自分の太刀を合わせると、そのまますくい上げるように刀をはじき飛ばし、容赦なく、男の右肩から袈裟切りにしてみせた。 残った、蹋頓たちは後ずさりしている。 もう、彼らは生きた心地がしなかったことだろう。 そのとき、別の方でもうめき声が聞こえてきた。 「義真〜!張角さんは助け出したよ〜!」 朱儁だった。彼女は両手を大きく振って、皇甫嵩の方を見ている。 皇甫嵩の作戦通りである。皇甫嵩が主力を引き付けている間に、朱儁が張角を助ける。見事であると言えよう。 完全に、いいところなしの蹋頓は歯ぎしりして、朱儁と合流を果たした皇甫嵩たちと対峙した。 そのとき、数十人の男とたちがステージに上ってきたのである。 「なんだあ、蹋頓。女二人にやられやがって!」 「丘力居の従兄(あにき)!面目ありません」 どうやら、この男が親玉らしい。丘力居は手慣れた手つきで男たちに命令をし、皇甫嵩たちを包囲した。 このとき、皇甫嵩には誤算があった。張角を逃がせなかったことである。 (どうするの、義真!二人だけだったらどうにかなるけど、張角さんがいたんじゃあ) (うろたえるな、公偉。何か策があるはずだ) 二人はそう言うと、張角を守るように挟み込んだ。 「もう、やめてください!私が行けばすむだけですから!」 柔らかくも、切実な張角の声が、二人の耳に響いた。 「行く必要なんか無いよ!」 「公偉の言う通りだ。君にはもっと、格好のいい人がお似合いだ。あんな豚の相手をする必要はない」 皇甫嵩は彼らにも聞こえるような声で、張角に言った。もちろん「豚」を強調することも忘れてはいない。 「どうやら、置かれてる立場が理解できていないようだな」 皇甫嵩の言葉に顔を引きつらせた丘力居は、ひび割れ寸前の声で言った。 「置かれた状況・・・・・・そうだな、エサを求めてのさばり回る顔の悪い野良犬といったところだろうか・・・・・・」 「そうね。付け足すなら、弱虫のってところかな」 皇甫嵩の揶揄に朱儁が完璧なタイミングで答える。こんな状況でも口が減らないのがこの二人である。 二人の言葉に、ついに彼らが完全にキレてしまった。 「もう、詫びぃいれたって、ゆるさんからな!おい!お前ら、腕の一本ぐらい、へし折っちまってもかまわねぇ!二度と喋れないようにしちまえ!」 丘力居はそう命令すると、男たちは模造刀を振りかざして、一斉に飛びかかってきた。
153:雑号将軍 2006/01/17(火) 22:41 続き・・・・・・パート3 すると突然、公園の茂みから無数のBB弾が彼らめがけて降り注いできたのである。 さらに、別の茂みからは、金髪の少女が二人の男を蹴り飛ばした。 「大丈夫かい?」 金髪で小柄な少女は瞬く間に、三人の男を殴り飛ばし、ファイティングポーズをとった。 それと、同時に別方向からも悲鳴があがった。 「邪魔すんなやあ!どかんかい!」 反対側から、ガラの悪い関西弁が響き渡る。 「しーちゃん!こっち、こっち!」 「建ちゃん。飛び込むのはやいんだから。どなたかわかりませんが、丁原と、わたし、盧植が援護します!」 盧植と名乗った少女(しーちゃん)は触りたくなるような、ふわふわしたライムグリーンの髪をバレッダで二つに留めている。さきほどのガラの悪い関西弁からはまったく考えようもない美少女であった。 「援護、感謝する!公偉!私たちも続くぞ!」 「まかせといてよ!」 朱儁はそう言うと、飛びかかってきた男に合わせるように自分も飛び上がると、レッグラリアートを顔面に見舞ってやった。 その横では上段から斬りかかってきた男の刀を皇甫嵩が身体を半回転させて、攻撃をかわすと、そのまま大外刈りの要領で相手の足を刈り、体勢を崩し倒れかかった所を、刀で後頭部を強打してやった。 男は脳震盪を起こして気絶してしまった。 さらに丁原は模造刀をものともせずに、懐に飛び込むと五発の正拳突きを瞬時に放ち、男を完全に仕留めた。 「お前らは、ホンマいらんことばっかしよって!早う、帰らんかい!」 盧植は再びガラの悪い関西弁でそう言うと、向かってきた男の足を思い切り踏みつけると、ハリセンを容赦なく男のあごに叩き込んだ。 男は飛び上がって衝撃を和らげることもできずに、失神してしまった。 盧植のハリセンは堅い厚紙で作り、骨組みには竹を使用しているため、威力は想像を絶する物であることは言うまでもない。 つまり、彼女のツッコミはそれだけでも立派な凶器なのである。 「二十二人の男が、たった四人の女にヤられたのか!?五分も経たずにか!ば、バケモノかぁ・・・・・・」 丘力居は横にいた蹋頓と共に、驚きの声を上げた。今回連れてきた彼らは決して弱くはないのだ。彼らを倒す、彼女ら四人の強さが異常なのだ。 「さあ、お二人さん!覚悟してもらうよ!」 朱儁の声と共に四人が一歩ずつ、二人を取り囲むようにして近づいてくる。 今の二人には彼女ら四人の姿がとてつもなく大きく見えたことだろう。 「くっそーなめやがって!」 蹋頓がやけくそになって、摸造刀を上段に振りかぶり、朱儁に斬りかかってきたのだ。 それに対して、朱儁はぴくりとも動かなかった。 蹋頓が勝利を確信したとき、朱儁は蹋頓の太刀を真剣白刃取りで受け止めていたのである。 朱儁は刀をある程度引き寄せると、右手を振り上げ、そして振り下ろした。 残ったのは、模造刀の柄の部分だけだった。 さらに朱儁は、大きく飛び上がり、蹋頓の顔面に蹴りを入れよろめいた所と同時に、腹蹴りをかました。 蹋頓は数メートル吹き飛ばされ、そこで大の字にのびていた。 「あとはお前だけだな・・・・・・私が地獄へと案内してやろう」 皇甫嵩はそう言うと、奪った模造刀を再び右手で自然に振り上げた形に左手を添えるようにして、上段に構えた。 そのとき、急に丘力居が脅えだした。 「そ、その薩摩示現流特有の『蜻蛉』の構え・・・・・・思い出したぞ。お、お前はかつて、南羌中学校の奴らを一人で、しかも一刀の太刀のもとに切り伏せた・・・・・・あの伝説の剣豪・皇甫嵩か!」 彼の脅えようは尋常ではなく、歯をガタガタと震わせ、もはや立っているのがやっとのようだ。 「正解だ。悪いが二ヶ月程度は蓑虫になっていて貰おうか!」 「う、うわああああああああああああああああ!」 絶望と恐怖に精神を支配された丘力居は何ともわからず、ただ闇雲に太刀を振りかざして突っ込んできた。 皇甫嵩は、完全にその刺突を見切って左身体を反らすと、その体勢から丘力居の手首を容赦なく打ち据えて、刀を落とさせた。 皇甫嵩は再び「蜻蛉」に構えると、がら空きになっている背後に回り込み、そして、右肩目掛けて刀を振り下ろした。 丘力居は激痛にこらえきれなくなり、グシャリと鈍い音を立てて地面に転がり込んだ。間違いなく骨にひびは入っていることだろう。 「ふう・・・・・・終わったな」 皇甫嵩は持っていた模造刀を放り投げると、朱儁たちのいる方に駆け寄っていった。 張角を助けるため、そして今後、こんなことを起こらないようにするためとはいえ、過剰な暴力をふるってしまったことに、本当に、本当に、多少ではあったが、皇甫嵩は心が痛んだ。 (しかし、こんな奴らの侵入を許すとは・・・・・・蒼天学園はどうなってしまったのだ) 皇甫嵩が心の中でいろいろと考えを巡らせていると、横から回り込むようにして、張角が抱きついてきた。 「本当にありがとうございました。私、怖かった・・・本当に怖かったんです」 皇甫嵩はあまりのできごとにあたふたしていたが、取りあえず、さらした張角の黒髪をゆっくりと撫でてあげた。 「もう、大丈夫・・・よく頑張ったな・・・・・・しかし、礼を言う相手は私だけではないだろう」 皇甫嵩は張角に優しくそう言うと、張角はハッとして皇甫嵩から離れた。 「みなさん、本当にありがとうございました」 張角はそう言って、深々と頭を下げた。 そうすると、向かい側に立っていた少女は笑って答えた。 「気にしないでくれよ。あたいはケンカ相手を探してただけなんだからさ。祭りだけじゃあなんか、もの足んなくてさあ」 「もう、建ちゃんったら。それに、蒼天学園はみんなで護るモノですから」 すると、朱儁がふと思い出したように言った。 「まだ、自己紹介もしてなかったよね。あたしは朱儁。公偉って、みんなからは呼ばれてる」 「そ、そうだったな。私は皇甫嵩。皆からは義真とよばれている」 「わたしは盧植。みんなは子幹って呼んでるわ。蒼天学園の一年生です」 このとき盧植の頬は赤く染まっているように見えた。 「シンちゃん(義真)に、こーちゃん(公偉)か・・・・・・あたいは、丁原。建陽って呼んでくれよ」 「わたしは・・・張角です」 五人はそう言うと、がっちりと握手を交わした。
154:雑号将軍 2006/01/17(火) 22:46 最後です・・・・・・ 「ねえ、みんな。前夜祭は・・・・・・もう終わっちゃったから、気分直しにカラオケにでも行かない?」 朱儁の提案、盧植と丁原が飛びついてきた。 「ああ、いいんじゃないか。私は聞いている方が好きだがな」 皇甫嵩は朱儁から目をそらすようにしてそう言った。 そんな皇甫嵩を見た朱儁は悪戯っぽい笑みを浮かべ、言った。 「また〜そんなこと言って〜義真はオン・・・ふぎゃあ!」 最後の一文字を言いかけたとき、皇甫嵩が朱儁の「ツノ」を目一杯に引っ張った。 「な、なんでもない。張角、君も来るだろう?」 「よ、よろしいのですか?」 皇甫嵩は「ツノ」から手を離すと、黙り込んでいた張角に尋ねると、張角は驚いたように顔を上げていた。 皇甫嵩たち四人は、張角の問いかけに頷いてみせた。 「・・・・・・わたしの眼を見て何も思われないのですか?」 張角は恐る恐る尋ねた。このことから、張角が眼のことにコンプレックスを抱いていることは間違いなかった。 「ふっ、人を外見で判断するのは小人のすることだ。大事なのは・・・・・・いや、言わなくとも、張角、君にならわかるだろう」 「もっと自分に自信を持ってよ!蒼天学園には手が膝ぐらいまである人だっていたんだから、目の色が違ったり、空を飛べたりなんか――」 「空なんか飛べるかい!」 朱儁のボケに廬植のハリセンが見事に答えた。 「いたいよう〜子幹〜」 「ご、ごめんなさいっ!つい、いつもの癖で」 盧植はあわててぺこりと頭を下げた。彼女が大阪弁を話す理由は二つある。一つは出身地が大阪であること。もう一つは彼女が小等部から在籍している幽州校区にはなぜか、関西出身の生徒がほとんどであったため、彼女が標準語を使って話す機会があまりなかったためである。 そんなやりとりをしていると、突然、張角が声を出して、笑った。 「皆さんの言う通りかもしれませんね。私、頑張ってみます!・・・・・・それじゃあ、私もご一緒させて貰ってもよろしいですか?」 「もちろん」 四人は声を揃えてそう言った。 「ねえ、義真〜張角さんとラブラブだね〜」 カラオケボックスに向かっている最中、不意に朱儁が声を掛けてきた。 盧植の顔が一瞬曇った・・・・・・気がした。 「なっ!何を言うか!そんなことは断じてないっ!」 皇甫嵩は顔を真っ赤にして否定する。 「・・・・・・わたし皇甫嵩さんとなら・・・・・・」 それを横目で楽しんでいた張角は真面目な顔つきで答えた。 「張角・・・・・・公偉が邪推するではないか・・・・・・それに、本気だったとしても、悪いが、私にはその気はないぞ」 皇甫嵩は頭を抱えながらそう言った。 はあ・・・・・・高校ってこんなに忙しいものだったのでしょうか?変ですよ…週三で英語の小テストをするとか!いつ小説かけって言うのか!?というわけでしばらくご無沙汰致しておりました雑号将軍にございます。なんとか前夜祭に間に合わせようと必死で完成させてみました。 ただ、当初は入学式設定で昼だったというどうでもいい話。 本祭作品は早くても金曜日になりそうです。
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