【1月18日】旭記念日創作発表スレッド【お祭りワッショイ】
162:冷霊2006/01/19(木) 22:54
■雪降る戦場にて・1

ラク城棟裏庭。
ここで今まさに、戦いの火蓋が切って落とされようとしていた。

話は1時間前に遡る。
東州の部室に劉璋から一つの荷物が届いた。
中身は蜜柑、しかも温州産の上物である。
たくさんもらったのでどうやらお裾分けということだったのだが……問題が一つ生じた。
六人で分ければ一人数個しか食べられない。
そこで楊懐が提案したのが雪合戦である。
東州では問題が発生したとき、何らかの形で決闘により解決する。
今回の場合は雪が降っていることもあり、雪合戦となったようである。
今回の場合、勝者は蜜柑を独り占め、他の者はお零れを期待するのみ。
一見つまらない勝負のように思えるが、炬燵に蜜柑が付くかどうかは大きな問題である。
それは即ちケーキにイチゴが乗っているか否か……いや、苺大福の苺の有無を問うことにも匹敵するだろう。

失敬。
さてさて、話は戻る。

「で、バンダナを奪われたり、雪を当てられたりしたらアウトだっけ?」
高沛が腕に的であるバンダナを巻く。
何でも発信機を埋め込んでおり、雪の衝突を感知してくれるらしい。
しかも水分を含むと赤く染まる為、当たったかどうかは見た目でもわかるそうだ。
「そうだ。当たった後は権利も無くなるから大人しくすること。いいか?」
「やられる前にやれってことか……」
不敵な笑みを浮かべる冷苞。
「残念だったな、冷苞。最後まで参加出来そうになくてよ」
トウ賢がクスリと笑う。
「そりゃ、どういう意味だよ?」
「別にー。そのまんまの意味だけどー?」
両者の間で早くも火花が散る。
「それよりこのバンダナ、いくらかけたの?」
扶禁はじろりと楊懐を見遣る。
だが、楊懐はさらりとその視線を流し、携帯を手に取る。
どうやら誰かに連絡するつもりらしい。
「もしもし、杜微?」
「あ、楊懐?この前の請求書のことだけど……」
「杜微ー、いつものチェックよろしくねー」
「は?ちょっと待って。まだ書る……」
プツ。
途中で高沛が問答無用で切った気がするのは気のせいだろうか。
杜微も良い迷惑であろう。
今頃、頭を抱えるなり、胃薬を飲むなりしているのだろうか。
「そろそろベルが鳴るわね。じゃ、あたしは一足先にっと。」
扶禁が裏庭の方へと歩いて行く。
「あ、扶禁ちゃん待って〜」
向存が慌てて扶禁を追いかける。
「向存、ちゃんとルール理解してんの?」
「さあ?」
高沛と楊懐は二人を見送る。
「せんぱーい、覚悟しといて下さいよー?」
トウ賢がバンダナを額に結び、ニヤリと笑う。
「トウ賢、てめぇこそ覚悟しとけよ?」
冷苞はバンダナを二の腕に巻き終え、トウ賢を睨み付ける。
「へいへい、お前が来んのを楽しみにしといてやるよー」
トウ賢は手をひらひらと振りながら校舎の方へと歩いて行く。
「では、私もそろそろ準備をするか。」
楊懐は何故か校舎の中へと入っていく。
何やら用意するつもりらしい。
「楊懐ー、楽しみにしてるからねー」
高沛は何をするつもりか大体の予想が付いているらしい。
「じゃ先輩、オレも失礼します。」
冷苞も軽く頭を下げ、走っていく。
「行ってらっしゃーい」
後姿に手を振る。
高沛はひょいと雪を掴み、ぎゅっぎゅっと固めていく。
「さーて、一丁やるとしますか!」
高沛が駆け出す。
それと同時に開始のベルが鳴った。
1-AA