【1月18日】旭記念日創作発表スレッド【お祭りワッショイ】
194:雑号将軍2006/01/25(水) 20:09
   ▲跳躍▲

それでも賊は追ってくる。さらに悪いことに増えているではないか。もちろん、その先頭にいるのは右の頬を倍以上に膨らませたあの女だ。
『まったく、嫉妬深い女だこと』
 私はそう侮辱しながらもこの先の作戦に一抹の不安がよぎっていた。
壁を乗り越え、棟長の待つ本陣へと帰る。それがベストだ。
だが、不幸なことに副棟長の服装は制服ではなく弓道着であり、足にはご丁寧にも足袋をはかせてある。
これでは壁が乗り越えられない。それ以前にこのまま走ってたら、袴に足を取られて転んでしまうかもしれない。
張嶷が危惧した矢先であった。
「あっ!」
数歩後ろで副棟長を素っ頓狂な声をあげた。
そして、私が振り返ったときには無数の女生徒と、尻餅をついた副棟長が対峙していた。
「おーほほほ!あなたたちもこれで終わりのようね。今です!その制服を剥いでさしあげなさい!」
 下卑な笑みを浮かべた親玉の合図と同時に7、8人の女生徒が副棟長に群がろうとした。
 私は正直、もうおしまいだと半ば諦めていた。ならば、せめて、護りたいと思った者のために戦って果てよう。
 そう決意した。
 しかし、私が副棟長の前に飛び出そうとした時にはもう遅かった。
「ふ、副棟長―!」
 私は叫んでいた。
もう副棟長の姿は見えなくなっていた。
今まで燃えたぎっていた焔が一気に灰になってしまった気分だ。
 もう護る物は何もない。
 私は絶望の淵にいた。もう好きにすればいい。自棄に陥っていたのだろうか。とにかく、何も考えられなかった。
 しかし、ある一言が私の現実へと引き戻した。
「勇者よ!まだ諦めるのは早いぞ!貴女が護ったものはここにいる。さあ、存分に戦うが良い!」
 私は声の主を確かめるため、辺りを見渡した。すると、屋根の上には白衣姿に扇子という出で立ちのかなり怪しげな女が立っていた。
 そして、目をこらしてみてみればそこには副棟長が寝そべっているではないか。
 私はどうやってあそこに移動させたかをつっこむことを忘れ、副棟長の無事に感激していた。
 そして同時に副棟長をあんな目に遭わせた賊共に対する憎悪の炎が再び燃え上がってきた。
「どなたか知りませんが、感謝します。これからちょっと暴れてきますので副棟長をつれていって頂けませんか?」
「ふふ、わかりました。それでは、ご武運を・・・」
 そう言うと科学者らしき女は副棟長を抱えて闇の中へと消え去った。
「ま、待ちなさいよ!」
「待つのはお前だ。よくもまあ、副棟長をあんなめに合わせてくれたな!たっぷりと礼をさせてもらうよ!」
 私はもう我慢の限界だった。それだけ言うと奴に詰め寄り、体当たりを行おうとしたが、二人の女生徒がそれを阻んだ。
「どけ!潰すぞ!」
 私が威嚇するが二人はぴくりともしない。だから私は見せしめのために、二人を飛ばすことにした。
 まず、がら空きになっていたスネにローキックを入れ、体勢を崩し、そのまま後頭部を手刀でしたたかにうった。
 同時に背後から斬りかかってきた竹刀女には木刀を土手っ腹に叩き込んである。
 そして、倒れた二人の肩から、階級章を剥がしとった。さらに私は目の前で突っ立っている下衆共に怒号を浴びせた。
 持てる限りの怒りを込めて・・・・・・。
「この二人のようになりたくなかったら・・・消えな!」
 私の一喝にびびったらしく、賊の多くは辺りへと散らばっていた。
 こうなってしまえば賊というのはもろいものだ。反対派といってもほとんどのメンバーは傭兵だろう。
 だからこそ、勝てないと思った相手ははなから相手にはしない。その証拠に、群れを成していた賊が今では頭領を護る弓道着の女生徒二人だけだ。
「さあ!決めさせてもらうぞ!」
 私は地面を力強くける。正面では二人の女生徒が慌てて矢をつがえるが・・・・・・もう遅い。
「はあ!たぁっ!」
 私は右側の女生徒の真横に並んで刺突。私の太刀は彼女の脇腹を見事に射抜いていた。
 私はそのまま、左にいる女生徒目掛けて走り出した。そのときやっと照準があったのか女生徒から鏃がゴムボール使用の矢が放たれた。
 しかし、もはや私を止めることなどできはしなかった。
 私は木刀で向かってきた矢をたたき割り、そのまま跳躍する。
 そして相手の弓をたたき割り、勢いそのままに肩口へと木刀で打ち抜いた。
 私が地面に降り立ったとき、その女生徒は激痛に涙を流しながらグシャリと崩れ落ちていた。
 それを見送った私はキッと正面を見据えた。風が私の前髪をなびかせる。
「後は、あんただけよ・・・・・・。潰す!あんただけは絶対に潰す!」
 私は身体から殺気をほとばしらせながら、一歩ずつ奴の方へと近づいていく。
 一歩、また一歩と奴との距離が近まってゆく。
「いっ!いやああああああああああああああああああああ!」
 ついに奴との距離が1メートルとなったとき、奴は恐怖のあまり絶叫した。
「ふっ、無様なものね。でも気絶するのはまだ早い・・・私の大事な人にしたことへの代償を払ってからだ!」
 奴の膝がガタガタと震えだしている。今にも失神してしまいそうなほどに・・・・・・。
 そうはさせない。
 心の中のボルテージが一気に高まる。そんな感じがした。
 知らずのうちに私は走り出していた。
 そして・・・・・・一閃。
 私は奴の右肩を打ち抜いた。さらに横に流れてきたのを一蹴。相手の脇腹目掛けて回し蹴りを見舞ってやった。
 奴は三回転ほどして止まった。もちろん、奴の意識はもうなかった。そして階級章も・・・・・・。
 そう、私は頭領を飛ばしたのだ。

「ふう・・・・・・終わったわね」
 私の身体を凄まじい疲労感が襲った。それは心地の良い疲労感でもあった。いや、達成感と言い換えた方が良かったのかもしれない。
『護りたい人を護れた・・・だから満足』そんな感情が私の心を満たしていた。
空を見上げる。
そこにはあまたの星々が光り輝いていた。
 そんなとき――
「さすがは勇者!お見事な戦ぶり」
「うわっ!」
 突如として空が人の顔に移り変わったのだ。私は突然のことに驚いてしまい、しりもちをついてしまった。
 思考が一瞬フリーズしていたが、すぐに彼女がついさっき副棟長を助けてくれた白衣の女生徒であることに気がついた。
「・・・あっ。えっと、さっきはどうも」
 私は今だ落ち着かずそのままの姿勢でただお礼を言った。
「なんのなんの。同志を助けるのは当然のこと」
 いつから私が同志になったのだろうか?そもそも私は彼女の名前すら知らない。なんともつっこみたいとこだらけだ。
「申し遅れました。私、諸葛亮と申します。孔明でかまいません」
 聞いてないのに・・・・・・。私は妙な脱力感に襲われていた。
この人は私の天敵に違いない。そんな意味深な確信が芽生えつつあった。
 まさか、この人が私の上司になろうとは思いも寄らなかった。
「それで、勇者よ。お名前は?」
「私・・・私の名は張嶷」

…遅くなりました…。最終日になってしまうとは…。面目次第もございませぬ。
今回の旭日祭りはそれがしの新しい出発点となるような気がしたので張嶷の初舞台みたいなものにしてみました。
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