【1月18日】旭記念日創作発表スレッド【お祭りワッショイ】
54:★惟新2004/01/20(火) 21:08AAS
☆★ 丁原 ★☆


「ん…ふぅ……っ!」
 思いっきり伸びをする。
 そのまま体を回し、軽く体操。
「さ、目が覚ますぞっと!」
 パンパン! 顔をたたく。
 そこで、丁原はやっと周囲の光景を見る。
「あれ?」
 想像していたのとはまったく違う世界。
 薄暗い空は相変わらずだが、見渡せば、山、山、山。
 あっちこっちから鶏の鳴き声が響いてくる。
「何ここ? タイムスリップ? …んなわけないか」
 丁原はまだ血の巡らない頭を、必死に回転させる。
 早朝まだ暗いうち。晋陽方面行きのバスに乗って、アナウンスが聞こえて、降りて…
「あれ?」
 アナウンスが聞こえてから、記憶が飛んでいるような。
「う〜ん、う〜ん」
 悩んでいると、どこからか息遣いが聞こえてくる。
 目をやると、目深にフードをかぶった大柄な人物が、軽く走っていた。早朝ジョギングらしい。
「お、ちょうどいいや。おーい!」
 駆け寄りながら、手を振ってみせる。
 …が、まったくの無視。
「んが。…何もシカトすることないじゃんか!」
 ムキになって並走。小柄な丁原と並ぶと、相手がいかに大きいかがわかる。
 しかし、その巨人は相変わらずお構いなし。
「むむむ…」
 5秒。大噴火。
「ムッカー!」
 丁原は巨人の腰を掴み、必死に止めようとする。
 …が。
「ひえええええ〜っ!」
 全く止まらず、逆に引きずられてしまった。
「ま、負けてたまるかーっ!」
 何とか体勢を立て直し、今度は巨人の前に出る。
「ぐぬぬぬぬぬ〜っ!」
 巨人のお腹に両手を当て、全力で止めようとする。
 すると。急に、体が軽くなった。
「ふに?」
 巨人と同じ目線。
 目が合って、互いにパチクリする。
 そこでやっと、丁原は自分が持ち上げられていることに気付いた。
「うわああん! 放せ!」
 ジタバタもがく。その手が、偶然相手のフードを浮かせた。
「あ…」
 覗く、鋭い双眸。屈強そうな顎。そして、ドレッドヘアー。
「わお、クール!!」
 見るなり、丁原は親指をグッとつき出した。
 巨人は首をかしげた。
「くー…る?」
「カッコイイってこと!」
 やっと降ろされて、丁原はぴょんぴょん飛び跳ねた。
 次第に、巨人の瞳が驚きの色を帯びる。
「カッコ、イイ…の?」
「可愛い、の方が良かった?」
「なっ…」
 ありありと、頬が紅潮する。
 なんか、面白い。丁原は、そう思った。

「ここは五原。私は、呂布。蒼天学園中等部、3年」
「そっか、あんたも蒼天学園なんだ」
 丁原が下から覗き込む。
「ね、こんなところでさ、いつも何して暮らしてんの?」
「え……熊さんと戦ったり……」
「クマ!?」
 それじゃ金太郎である。
「クマって…あの、月の輪熊とか、グリズリーとか?」
「いや…熊さんは…近所のおじさん…」
 盛大にコケる。
「ああビックリした。それで? 何でこんなところに住んでるのさ?」
「生まれた、山だから」
 そう言って、呂布は遠くの山々に視線を投げかける。
「ふぅん」
 丁原は片眉を跳ね上げ。
「ね、たまにはさ、街に行こうよ?」
「街…?」
「一緒についてきなよ。なんか、あんた面白いしさ」
「いや、でも…」
「今日は何も無いんだろ? それとも、何かある?」
「いや、特に…」
「じゃあ決まり! 急ぐから、今から行くよ!」
 丁原が引っ張る。
 最初のときとは打って変わって、呂布が引きずられる。
「え、あ、でも…今朝のメニューは…鯨の竜田揚げ…」
「アハ! あんたいつの時代の人だよー?」
 バシバシ叩かれ。呂布の抗弁は、空しく終わったのであった。

 のち、丁原が[千千]州校区総代に任じられたとき、二人はまた再会を果たすが、
それはまた別のお話である。
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