下
【1月18日】旭記念日創作発表スレッド【お祭りワッショイ】
153:雑号将軍 2006/01/17(火) 22:41 続き・・・・・・パート3 すると突然、公園の茂みから無数のBB弾が彼らめがけて降り注いできたのである。 さらに、別の茂みからは、金髪の少女が二人の男を蹴り飛ばした。 「大丈夫かい?」 金髪で小柄な少女は瞬く間に、三人の男を殴り飛ばし、ファイティングポーズをとった。 それと、同時に別方向からも悲鳴があがった。 「邪魔すんなやあ!どかんかい!」 反対側から、ガラの悪い関西弁が響き渡る。 「しーちゃん!こっち、こっち!」 「建ちゃん。飛び込むのはやいんだから。どなたかわかりませんが、丁原と、わたし、盧植が援護します!」 盧植と名乗った少女(しーちゃん)は触りたくなるような、ふわふわしたライムグリーンの髪をバレッダで二つに留めている。さきほどのガラの悪い関西弁からはまったく考えようもない美少女であった。 「援護、感謝する!公偉!私たちも続くぞ!」 「まかせといてよ!」 朱儁はそう言うと、飛びかかってきた男に合わせるように自分も飛び上がると、レッグラリアートを顔面に見舞ってやった。 その横では上段から斬りかかってきた男の刀を皇甫嵩が身体を半回転させて、攻撃をかわすと、そのまま大外刈りの要領で相手の足を刈り、体勢を崩し倒れかかった所を、刀で後頭部を強打してやった。 男は脳震盪を起こして気絶してしまった。 さらに丁原は模造刀をものともせずに、懐に飛び込むと五発の正拳突きを瞬時に放ち、男を完全に仕留めた。 「お前らは、ホンマいらんことばっかしよって!早う、帰らんかい!」 盧植は再びガラの悪い関西弁でそう言うと、向かってきた男の足を思い切り踏みつけると、ハリセンを容赦なく男のあごに叩き込んだ。 男は飛び上がって衝撃を和らげることもできずに、失神してしまった。 盧植のハリセンは堅い厚紙で作り、骨組みには竹を使用しているため、威力は想像を絶する物であることは言うまでもない。 つまり、彼女のツッコミはそれだけでも立派な凶器なのである。 「二十二人の男が、たった四人の女にヤられたのか!?五分も経たずにか!ば、バケモノかぁ・・・・・・」 丘力居は横にいた蹋頓と共に、驚きの声を上げた。今回連れてきた彼らは決して弱くはないのだ。彼らを倒す、彼女ら四人の強さが異常なのだ。 「さあ、お二人さん!覚悟してもらうよ!」 朱儁の声と共に四人が一歩ずつ、二人を取り囲むようにして近づいてくる。 今の二人には彼女ら四人の姿がとてつもなく大きく見えたことだろう。 「くっそーなめやがって!」 蹋頓がやけくそになって、摸造刀を上段に振りかぶり、朱儁に斬りかかってきたのだ。 それに対して、朱儁はぴくりとも動かなかった。 蹋頓が勝利を確信したとき、朱儁は蹋頓の太刀を真剣白刃取りで受け止めていたのである。 朱儁は刀をある程度引き寄せると、右手を振り上げ、そして振り下ろした。 残ったのは、模造刀の柄の部分だけだった。 さらに朱儁は、大きく飛び上がり、蹋頓の顔面に蹴りを入れよろめいた所と同時に、腹蹴りをかました。 蹋頓は数メートル吹き飛ばされ、そこで大の字にのびていた。 「あとはお前だけだな・・・・・・私が地獄へと案内してやろう」 皇甫嵩はそう言うと、奪った模造刀を再び右手で自然に振り上げた形に左手を添えるようにして、上段に構えた。 そのとき、急に丘力居が脅えだした。 「そ、その薩摩示現流特有の『蜻蛉』の構え・・・・・・思い出したぞ。お、お前はかつて、南羌中学校の奴らを一人で、しかも一刀の太刀のもとに切り伏せた・・・・・・あの伝説の剣豪・皇甫嵩か!」 彼の脅えようは尋常ではなく、歯をガタガタと震わせ、もはや立っているのがやっとのようだ。 「正解だ。悪いが二ヶ月程度は蓑虫になっていて貰おうか!」 「う、うわああああああああああああああああ!」 絶望と恐怖に精神を支配された丘力居は何ともわからず、ただ闇雲に太刀を振りかざして突っ込んできた。 皇甫嵩は、完全にその刺突を見切って左身体を反らすと、その体勢から丘力居の手首を容赦なく打ち据えて、刀を落とさせた。 皇甫嵩は再び「蜻蛉」に構えると、がら空きになっている背後に回り込み、そして、右肩目掛けて刀を振り下ろした。 丘力居は激痛にこらえきれなくなり、グシャリと鈍い音を立てて地面に転がり込んだ。間違いなく骨にひびは入っていることだろう。 「ふう・・・・・・終わったな」 皇甫嵩は持っていた模造刀を放り投げると、朱儁たちのいる方に駆け寄っていった。 張角を助けるため、そして今後、こんなことを起こらないようにするためとはいえ、過剰な暴力をふるってしまったことに、本当に、本当に、多少ではあったが、皇甫嵩は心が痛んだ。 (しかし、こんな奴らの侵入を許すとは・・・・・・蒼天学園はどうなってしまったのだ) 皇甫嵩が心の中でいろいろと考えを巡らせていると、横から回り込むようにして、張角が抱きついてきた。 「本当にありがとうございました。私、怖かった・・・本当に怖かったんです」 皇甫嵩はあまりのできごとにあたふたしていたが、取りあえず、さらした張角の黒髪をゆっくりと撫でてあげた。 「もう、大丈夫・・・よく頑張ったな・・・・・・しかし、礼を言う相手は私だけではないだろう」 皇甫嵩は張角に優しくそう言うと、張角はハッとして皇甫嵩から離れた。 「みなさん、本当にありがとうございました」 張角はそう言って、深々と頭を下げた。 そうすると、向かい側に立っていた少女は笑って答えた。 「気にしないでくれよ。あたいはケンカ相手を探してただけなんだからさ。祭りだけじゃあなんか、もの足んなくてさあ」 「もう、建ちゃんったら。それに、蒼天学園はみんなで護るモノですから」 すると、朱儁がふと思い出したように言った。 「まだ、自己紹介もしてなかったよね。あたしは朱儁。公偉って、みんなからは呼ばれてる」 「そ、そうだったな。私は皇甫嵩。皆からは義真とよばれている」 「わたしは盧植。みんなは子幹って呼んでるわ。蒼天学園の一年生です」 このとき盧植の頬は赤く染まっているように見えた。 「シンちゃん(義真)に、こーちゃん(公偉)か・・・・・・あたいは、丁原。建陽って呼んでくれよ」 「わたしは・・・張角です」 五人はそう言うと、がっちりと握手を交わした。
154:雑号将軍 2006/01/17(火) 22:46 最後です・・・・・・ 「ねえ、みんな。前夜祭は・・・・・・もう終わっちゃったから、気分直しにカラオケにでも行かない?」 朱儁の提案、盧植と丁原が飛びついてきた。 「ああ、いいんじゃないか。私は聞いている方が好きだがな」 皇甫嵩は朱儁から目をそらすようにしてそう言った。 そんな皇甫嵩を見た朱儁は悪戯っぽい笑みを浮かべ、言った。 「また〜そんなこと言って〜義真はオン・・・ふぎゃあ!」 最後の一文字を言いかけたとき、皇甫嵩が朱儁の「ツノ」を目一杯に引っ張った。 「な、なんでもない。張角、君も来るだろう?」 「よ、よろしいのですか?」 皇甫嵩は「ツノ」から手を離すと、黙り込んでいた張角に尋ねると、張角は驚いたように顔を上げていた。 皇甫嵩たち四人は、張角の問いかけに頷いてみせた。 「・・・・・・わたしの眼を見て何も思われないのですか?」 張角は恐る恐る尋ねた。このことから、張角が眼のことにコンプレックスを抱いていることは間違いなかった。 「ふっ、人を外見で判断するのは小人のすることだ。大事なのは・・・・・・いや、言わなくとも、張角、君にならわかるだろう」 「もっと自分に自信を持ってよ!蒼天学園には手が膝ぐらいまである人だっていたんだから、目の色が違ったり、空を飛べたりなんか――」 「空なんか飛べるかい!」 朱儁のボケに廬植のハリセンが見事に答えた。 「いたいよう〜子幹〜」 「ご、ごめんなさいっ!つい、いつもの癖で」 盧植はあわててぺこりと頭を下げた。彼女が大阪弁を話す理由は二つある。一つは出身地が大阪であること。もう一つは彼女が小等部から在籍している幽州校区にはなぜか、関西出身の生徒がほとんどであったため、彼女が標準語を使って話す機会があまりなかったためである。 そんなやりとりをしていると、突然、張角が声を出して、笑った。 「皆さんの言う通りかもしれませんね。私、頑張ってみます!・・・・・・それじゃあ、私もご一緒させて貰ってもよろしいですか?」 「もちろん」 四人は声を揃えてそう言った。 「ねえ、義真〜張角さんとラブラブだね〜」 カラオケボックスに向かっている最中、不意に朱儁が声を掛けてきた。 盧植の顔が一瞬曇った・・・・・・気がした。 「なっ!何を言うか!そんなことは断じてないっ!」 皇甫嵩は顔を真っ赤にして否定する。 「・・・・・・わたし皇甫嵩さんとなら・・・・・・」 それを横目で楽しんでいた張角は真面目な顔つきで答えた。 「張角・・・・・・公偉が邪推するではないか・・・・・・それに、本気だったとしても、悪いが、私にはその気はないぞ」 皇甫嵩は頭を抱えながらそう言った。 はあ・・・・・・高校ってこんなに忙しいものだったのでしょうか?変ですよ…週三で英語の小テストをするとか!いつ小説かけって言うのか!?というわけでしばらくご無沙汰致しておりました雑号将軍にございます。なんとか前夜祭に間に合わせようと必死で完成させてみました。 ただ、当初は入学式設定で昼だったというどうでもいい話。 本祭作品は早くても金曜日になりそうです。
155:海月 亮 2006/01/19(木) 00:41 同期の桜は散らない- きっかけは一本の電話だった。 「…もしもし」 『あ、やっぱり居た。私。子瑜だよ』 その夜、年内最後の食事を終え、年明け間もなくの推薦入試に向けて少し勉強でもしようかと、自室に戻ろうと階段に足をかけたときだった。 父が医者、母が看護婦という仕事柄、珍しくこの年は家族団欒のかなっていた虞家の居間から、電話だと呼びつけられた。 彼女…虞翻にとって、こんな大晦日の夜にわざわざ電話をくれるような友人に、心当たりは少ない。無論その電話を寄越した主…諸葛瑾にしても、そういうことをしそうなイメージは湧いてこなかった。 ましてや、この年は互いに受験を控えた身。互いに模試の志望校合格率がほぼ七割前後という安全圏内に居はしたが…。 『ね、今日明日は暇…というか、どこかに出かける予定はないよね?』 「…ん…まぁ、確かにそんな出かけなきゃいけない理由も、特にないけど…」 確かに予定はなかったが、虞翻には"出かけたい"場所の心当たりはある。 『だったら、これから常山神社の二年参りに行かない?』 「え…二年参り?」 思わずどきっとして、一瞬言葉に詰まる虞翻。 これまでその口の悪さが災いして、あまり長湖部内でも親しいものが居なかったため"近寄りがたい一匹狼"になっていた彼女であるが、そのとっつきにくさに反して生来のお祭好き人間である彼女である。実は年末年始にまたがる一週間、学園都市最大の神社である常山神社の歳末年始の祭を見に行きたくて仕方のないところではあった。 しかし、流石の彼女も夜一人で出歩く気に慣れなかった。妹たちは妹たちで集まって祭を見に行くつもりで居たが、流石にそれに混ざっていくのも気が引けて、年明けて日が昇ってから行くつもりで居たのだ。 『部長は相変わらず南国の海、陸家も顧家も朱家も年始の集まりで、他に付き合ってくれそうな人もいなくてさ』 「でも、わざわざ二年参りでなくてもいいじゃない…明日でも別に」 『何言ってんのよ〜、せっかく高校生活最後の年末年始なんだから、たまには趣向を変えて、ね?』 やはり何か変だ、と虞翻は思った。 確かに行けるなら二年参りにも行ってみたいし、旅の道連れが向こうからやってきたわけだから願ったり叶ったりである。 だが問題は、その相手。 (確かに子瑜なら、信用できる相手だけど…) 一応、疎遠だったと思っていた幹部会の"仲間"達でも、今は自分を受け入れてくれるということも彼女は解っている。 しかし、幾ら気のおける仲間でも、油断のできない者と言うのはわずかながら存在する。基本的に"悪戯っ子"の集合体みたいな長湖部員のこと、今までそっけない態度をとってきた自分が急に尻尾を振って寄っていけば、どんな罠を仕掛けているものだか解ったものではない。 現に彼女は、一週間前のクリスマスパーティではえらい目に遭わされていた。 確かに楽しかったけど、終始自分は晒し者同然の扱いを受けていたのだ。隠し芸で得意の占いを実演したりするまではいいが、その後はほぼ自分のオンステージ状態。似ても居ないモノマネはやらされるわ、ゲームセンターにあるようなゲーム筐体を持ち出されて即興のダンスを踊らされたり…終いには孫権とその従姉妹達に赤ワイン漬けにされ、次の日は二日酔いでマトモに起きる事すらできない有様だった。 しかもその謀主が陸遜と歩隲だと知らされて以来、虞翻は陸遜に対してさえ何処か警戒心を捨てきれずに居る。相手の性格上、悪気があったわけではないことが解っているだけに、なおさらのことだ。 その点、諸葛瑾なら問題ない。喩えるなら、御人好しが服着て歩いているような…他人をハメるという観念から最も遠い思考パターンの持ち主だ。 (でも…どうして急に?) だから、突発的に何か行動に出るような…正確に言えば、自分の衝動に他人を巻き込むようなタイプではない彼女が、今日になって唐突にそんな行動に出たのが彼女には引っかかっていた。 『…お〜い…起きてる仲翔さん?』 電話から諸葛瑾の声が聞こえてきて、虞翻ははっとして自分の思考を打ち切った。 「あ…ごめん。解った、ご一緒させてもらおうかな」 『あなたならそう言ってくれると信じてたわ。こういうお祭、本当は大好きだからでしょ?』 「…誰から聞いたのよ」 『舐めてもらっちゃ困るわ。私の友達にはあなたの友達だって多いんだからね。子敬(魯粛)とか公紀(陸績)とか』 流石の虞翻も苦笑するしかなかった。 「そういえばそうだったわね…じゃ、待ち合わせは?」 『そうね…確か会稽から琅邪経由の常山行きがあるわよね? それの11頃のバスというのはどう?』 どうやらバスに乗り合わせていくということらしい。虞翻は手元にあったバスの時刻表…数日前に発行された、年始ダイアの記載されているものを確認する。 「会稽営業所発の年始特別便で、そっちに35分に着いて常山着が12時15分前っていうのがあるわ…それでどう?」 『おっけー、じゃあそれで』 「うん」 電話を切ってふと時計を確認する。待ち合わせに指定した時間までまだ二時間弱余裕がある。 「姉さんに電話なんて珍しいわね…誰から?」 妹たちと年末のお笑い特番を見ていたすぐ下の妹…といっても歳は四ツも離れているが…の虞レが、興味津々と言った風で寄ってきた。もうお互いに入浴は済ませ、それぞれがパジャマ姿だ。 コノヤロウ、一匹狼の私に電話をくれるような友達が居るのがそんなに不思議か…と喉まで出掛かったが、此処でムキになってしまったらどうあしらわれるか解ったものじゃない。 「子瑜から。受験生同士年を跨ぐデートのお誘いよ」 と、普段はまったく言わないような強烈な冗談をしれっと返して見せたら、居間のほうからいきなり、がたがたがたっと凄まじい音がした。何事かと思って覗いてみると、末妹の虞譚を以外の三人が、まるで鳩が豆鉄砲を喰らった様な顔をして、床にのけぞったり椅子からひっくり返っていたりと楽しい格好で呆けている。既に皆入浴を済ませたのか、そろってパジャマ姿である。 「……何やってんのよあんた達」 「…お、お、お姉ちゃんにそんな趣味があったなんて…」 いちばん手前に居たセミロング…三番目の妹・虞忠が何か恐ろしいものでも見たかのように呟く。 「はぁ?」 「頑張ってお姉ちゃん、あたしたちは応援してるからっ」 「世間が理解してくれなくても、あたしたちはずっと仲翔お姉ちゃんの味方だからね〜」 椅子から仲良くコケていた虞聳・虞キの双子姉妹が何時の間にか、虞翻のそれぞれの手をとって、何か哀れむような表情で見つめている。 此処まで来て、虞翻もようやく自分の冗談が冗談に思われてないことを理解したようだった。 「いや…あんた達、アレは冗談…」 「隠さなくていい、隠さなくていいからっ」 「あたしたち口は堅いほうだからっっ」 もしかしたらからかわれているのかも知れないが、最早怒るよりも苦笑するしかない虞翻。虞レも呆れ顔だ。 そして起こっている状況がよくわからない虞譚は、しきりに小首をかしげていた。
156:海月 亮 2006/01/19(木) 00:41 その後たっぷり一時間かけて妹たちの誤解を解き、外出の許可を貰って自分の部屋に戻ってきた頃には、バスの時間まで30分くらいとなっていた。 初めは普段どおりの服を着て行こうかと思っていたが、ふと着物架けの方を見やる。 そこには一着の振袖があった。薄い緋の地に、赤、黄、白と色とりどりの花模様をあしらった着物と、濃い海老茶の帯。初詣用の晴着として、去年まで来ていたそれを妹に譲り、新調した物だ。 「…折角だから、今日着ちゃおうかな?」 毎年というか、夏だって着物を着ることがある彼女にとって、着物の着付けくらいはひとりで問題なくできる。時間的にも支障はないし、こういう機会でないとなかなか着ない服でもある。 「よーしっ」 彼女は着ていた猫の手柄のパジャマを躊躇なく脱ぎ捨て、着付けにかかった。 「…なんかそこまでめかし込んでいくとなると、またあの子達騒ぎ出すわよ? やっぱり〜とかいって」 着付けの途中で乱入してきた虞レ。こちらはクリーム色無地のタートルネックセーターにジーンズ、その上からダークブラウンのダッフルコートにクリーム色のマフラーという文句つけようもない冬の普段着だ。 「う…でも、こういう機会でないと、なかなか振袖も着づらいし、せっかく新調したから」 「確かに、結構奮発したようだしね。飾っておいて虫に食わせるには勿体無いか」 そういいあって微笑む姉妹。 軽口を交わしながらも、彼女は見事な手つきで最後の仕上げを済ませ、姿見の前でポーズを取った。 「うん、我ながら上出来」 「いつもながら見事ね…あたしも見習わなきゃね」 感心したような、その一方でうらやむような眼差しの妹に、 「明日は解らないけど、祭の最終日には姉妹水入らずで行こう? その時でよければ、教えてあげるわよ」 その頭に軽く手を置く虞翻。 そんな歳じゃないとは思いながら、無碍にその好意と、実は大好きな姉の手を払いのけられず、 「…うん」 少し紅潮した頬を隠すように俯く妹の姿に、彼女からも笑みがこぼれた。 何のハプニングにも出会わず、時間通りにバスに揺られること10分。人出のピークが和らいだのか幾分か席に余裕のあるバスが琅邪に到着すると、見覚えのある少女が居た。 気づいて手を振ると、向こうもこちらに気付いて手を振り返す。 "ロバ耳"と称される癖毛はそのままに、結い上げた髪をべっ甲作りの簪で留め、濃い赤の地に桜や菊の文様をあしらった振袖を、柑子色の帯で締めた晴着姿で居るのは、紛れもなく諸葛子瑜その人である。 バスが止まると、数人の客と共に彼女も乗り込んできた。 「やぁ」 「こんばんわ。ごめんね、急に呼び出しちゃって」 「…丁度行きたかったところに、あなたが呼んでくれただけよ」 そして隣の席に彼女も座る。 虞翻はまじまじとその顔を見つめる。 未だに、彼女は諸葛瑾が突然こんな行動に出た理由を図りかねていた。見た目には普段どおりのようだが…というか、もともと素地がいいだけあって、やっぱりちゃんと着飾ると、彼女は美人なのかもしれない…などと、何時の間にかそんなことを考えてしまう虞翻。 「どうしたの? 私の顔、何か付いてた?」 「あ…い、いやそうじゃないけど」 不思議そうな諸葛瑾に、つい数時間前の妹たちとのやり取りを思い出して、赤面して慌てる虞翻。 変なの、と微笑む諸葛瑾。やっぱり、そうした反応を見ても普段の彼女とは別に変わったところはないようだ。こういうときは、やはり当人にきちんと聞いてみるべきではないのか…? しかし、虞翻は口を開こうとして思いとどまった。 諸葛子瑜という少女は、その温和な性格と、一門の人間はおろかそもそも姉妹同士で別々の勢力に身を置いている。彼女と四番目の妹の諸葛恪は長湖部に、二番目の妹諸葛亮と、三番目の妹諸葛均、それぞれ五番目と六番目にあたる諸葛喬、諸葛譫が帰宅部連合に居るという塩梅だ。 まして今年、帰宅部連合…というか諸葛亮の進退あたりにかなり不安なものがあると、何気に懇意にしている交州学区総代・呂岱に聞かされていた虞翻は、諸葛瑾も表には出さないものの大分心労を溜め込んでいるのだろうと思っていた。 彼女がこういう行動をとったのも、その気晴らしのためなのだろうが…そうは思った虞翻だが、ならば何故自分を誘ったのか、それが気になっていた。 彼女なら、わざわざ虞翻を誘わずとも、他に誘うべき人間は居るはずだろう。確かに孫権やら陸遜やらという連中は不在で、恐らくは敢沢、歩隲などは相変わらずバイトに勤しんでいるはず。それでも厳Sや潘濬、吾粲とかが居るはずではないか、と。 (…もしかしたら、後の子達は現地集合かもしれないか…) そんなことを考えているうちに、バスは見物客の車でごった返している終点・常山神社の敷地内へと入っていった。 「ねぇ…」 バスから降り、門前の階段を何事もなく昇り、鳥居をくぐろうという時点で、虞翻はたまりかねて言った。 「他のみんなは? 誰か待ち合わせとかしてないの?」 「え?」 振り向いた諸葛瑾は、「なんで?」といわんばかりの表情をしている。 「なぁに? 私とふたりきりなのは嫌?」 「ううん…そんなんじゃないよ…でも」 その不躾な物言いにも、穏やかに微笑んで咎めようともしない諸葛瑾に、虞翻は一瞬、次の言葉を吐き出すのを躊躇ってしまった。 だが、このままこのような気持ちの澱みを抱えながら、彼女の行動に付き合うのも心苦しいように思えた。 「…あなただけを呼び出したのが、そんなに気になった?」 その一言に、無言で頷き、そのまま俯いてしまう。 きっと彼女のことだから、特に理由はなくとも自分を誘ってくれただろう。それなのに自分は変な勘ぐりをして、なおかつそれを態度に表してしまった。もしかして、愛想をつかされたかもしれない。 肩に手を置かれて、ふと見上げると、そこには苦笑した諸葛瑾の顔があった。 「相変わらずね…でも確かに、今日の私の行動はちょっと唐突に過ぎたかもね」 寂しそうに笑う諸葛瑾。 「何でなのか解らないけど…なんだか急に、あなたに会いたくなった。それが本音なの」 「私…?」 自分を必要としてくれていたことは、嬉しいと思った。 しかし、あまりに唐突なその一言に、虞翻はただ戸惑うばかりだった。
157:海月 亮 2006/01/19(木) 00:42 境内に所狭しと並ぶ屋台。そして行きかう人並みの中、ふたりはしばらく言葉もなく、本殿の参拝の列に混ざっていた。 「うちの妹の話…あなたはもう知ってるわよね?」 先に沈黙を破ったのは、諸葛瑾だった。 虞翻は無言で頷く。 諸葛亮の件については呂岱からの又聞きだが、大体の事情は解る。 そしてもうひとつ、彼女の妹たちといえば… 「このまま卒業したら…いったい恪や融がどうなるのか、やっぱり心配で仕方ないの」 虞翻には返す言葉が見当たらなかった。 諸葛恪と諸葛融。虞翻も虞レからその人となりを伝え聞き、また実際に逢った事もあるので知っている。 「こんなことを聞くのもどうかと思うけど…あなたはあの子達のこと、どう思う?」 確かに諸葛恪は頭の回転も速いし、言葉も巧みだ。しかし虞翻は…それが諸葛瑾の妹であることを考慮したとしても…どうしても良く評価できない点が見受けられる。 自信家で鼻に付く態度と、あまりにも些事に無頓着な大雑把さ。この二点により、恐らく諸葛恪は一身を完うできない…己が才知に身を誤るのではないか、と。我侭で騒がしいだけの諸葛融に至っては論外と言わざるを得ない。 しかし、自分が交州へ移ったあの日…自分の為に泣いてくれたこの少女の心を抉るようなその評価を、彼女はどうしても言い出せなかった。 「…他人のモノは良く見える、と言うけど…私はあなたが心底羨ましいわ」 「え…」 「あなたは私よりずっと優れた才能もある…そしてあなたの意思をついでくれるだろう子達にも恵まれている…知ってる?あなたって割と下級生に人気があるのよ。あなたの妹…世洪ちゃんだけじゃなく、幹部候補生となった子達の中には、あなたにその才能を見出された娘が、それだけいっぱいいたってことなのね」 寂しそうな表情のまま、諸葛瑾は軽く頭を降った。 「結局、私は何も長湖部に…楽しい思い出をいっぱいくれた場所に、何も残さずに去っていくような気がして…」 「そんな…そんなことないっ!」 自分でもびっくりするくらい、大きな声で叫んでしまったらしい。周囲の目がこちらに向いたことに驚き、虞翻は真っ赤になって慌てて口を押さえてしまった。 その様子が可笑しかったのか、諸葛瑾も少し笑った。彼女も釣られて、少し笑った。 少し時間を置いて、周囲の注目から開放されるのを見てから、虞翻は気持ちを落ち着かせ、 「それは違うよ…個人の意思だけを受け継いできただけなら、きっと長湖部はとっくの昔に無くなっていた…長湖部は、その活動に関わったみんなが担い手になって、次の世代にその人たち全員の思いを受け継いで、今の長湖部があるんだと思ってる」 一言ずつ、大切な宝物を扱うように、彼女はその想いを言葉にしていた。 「私たちの想いは、これからの長湖部を担っていく娘達みんなが受け継いでくれる…私は、そう思いたい…」 「…仲翔」 「だから…何も残せないなんて、そんな寂しいこと言わないでよ」 「うん…ありがとう」 その笑顔に吹っ切れたものを見出せたので、虞翻も精一杯の笑顔で応えた。 そうこうしているうちに、ふたりの参拝の番が回ってきた。 揃って袖の中から財布を取り出し、示し合わせたように五円玉を取り出し、賽銭箱へ投げ入れるふたり。 二回手を打ち、手をあわせて、彼女は願っていた。 (私達の思いを受け継いでくれる娘たちが、充実した学園生活を送れますように…) (…私を受け入れてくれた仲間と、何時までも仲良く居られますように) と。 本殿から離れ、見上げた空から粉雪が舞い降りてきた。 「…やっぱり降ってきたわね」 「予報では、今週いっぱいは雪なんか降らないって言ってたけど…?」 怪訝そうに諸葛瑾が言った。 「ちょっと占ってみたの。私も半信半疑だったけど」 ああ、と諸葛瑾が相の手を打つ。虞翻が占いの名手であると言うことは、部内でもそれなりに知られていた。 「あー! やっぱり来てたんですか先輩方」 本殿のほうからふたり走ってくるのが見える。髪形を普段とは違って、うなじの辺りで一本に括って、赤い袴の巫女装束に身を包んだそのふたりは敢沢・歩隲の長湖部苦学生コンビだった。 「何よあなた達、こんなところでバイトしてたの?」 「えーそうですよ。なにしろ看板娘は受験のため不在ってことで、今年は此処の枠が広かったんですよ」 虞翻の問いに、その上着の裾を引っ張って、その姿を主張するように応える歩隲。 「でも珍しいですね。仲翔さんと子瑜さんって組み合わせ」 「やっぱりそう思う?」 何気ない敢沢の一言に、悪戯っぽい笑顔の諸葛瑾。 不意に肩を抱き寄せられ、虞翻は思わず諸葛瑾の顔を見やる。 「でも、いいじゃない? 私たちは"同期の桜"なんですから」 満面の笑顔の諸葛瑾。 敢沢や歩隲のみでなく、虞翻までも呆気にとられてしまったが…。 「確かに、今の長湖部幹部では古株になっちゃったわね、お互いに」 「そうね」 お互いにそういって笑いあった。 舞い降りる雪が、会場に並ぶ松明の灯に照らされ、まるで冬の夜空に舞う桜のように、ふたりには思えた。 「…なんか悪いものでも喰ったのかな?」 「まぁいいじゃねぇか。なんにせよ、仲良きことは美しき…だろ?」 歩隲の物言いに苦笑する敢沢。 「え〜っと、ひたってるトコなんですけど…先輩方、良かったら本殿のほう来ません? 一応暖かいものとかありますよ」 敢沢の呼びかけにわれに返った虞翻。 「え? …大丈夫なの?」 「ええ。先輩達の話したら、神主さんが連れてきたらどうだって」 「だから抜け出てこれたんですけどね」 その言葉に、虞翻と諸葛瑾は顔を見合わせる。 「…行ってみる?」 「そうね、折角だからお邪魔しましょうか」 頷き、後輩ふたりに伴われ…やがて、その姿は本殿の中に消えていった。
158:海月 亮 2006/01/19(木) 00:53 一番槍は逃したか(;;゚Д゚)…まあいい、行くぞ! …ってなワケで海月です。 言いだしっぺが開催日に間に合わなくてごめんなさい_| ̄|○ そして祭開催の音頭もとらないで、空気読めないひとでごめんなさい…_| ̄| ...○ というわけで平成十八年度、旭日祭を執り行います(゚∀゚) そして雑号将軍様、一番槍乙です^^ そしてのっけから萌えさせてもらったぜコンチクショウw 皇甫嵩、朱儁、廬植、丁原の四人衆に、張角との出会い編ですな。 つかのっけから鮮烈なデビューを飾ったもんですな。 いやぁ本当皇甫嵩カコイイ…(;´Д`) そして密かに登場しているお米党のヒトとか…(;´Д`) 毎度のコトながら、このあたりのツボをしっかり押していただけて、読むほうは大満足ですわい(´ー`)GJ! それでは、あっしももうひとつ何かを…去年は二発目まで逝けなかったから今年こそは…(;;゚Д゚)ノシ
159:海月 亮 2006/01/19(木) 00:58 あ…いきなり自分ので誤植発見しちまった… 一箇所だけ「を」が余計に入っているところがあります。 抜かして読めばちゃんと意味通じますのであしからず…_| ̄|○
160:北畠蒼陽 2006/01/19(木) 20:57 [nworo@hotmail.com] 「くくっ……」 少女は1人、笑っていた。 少女の胸から階級章はすでに失われ、それでも少女は恨みの視線にさらされていた。 その狂おしいほど透き通った空 「お前らぁ、なにか言いたいことでもあるんか……?」 董卓。 学園史に魔王として長く君臨するその少女は、昔のようにゴスロリファッションに身を包むこともなく、またそれにふさわしい言葉遣いもかなぐり捨て、狂犬のように周囲を恫喝した。 周囲の人間ははっと目を伏せ、そくささと歩みを速める。董卓はふん、と鼻を鳴らした。 かつて董卓ほど天の時、地の利、人の和に加え最悪なほど『運』に恵まれた少女はいなかった。 いつからその歯車は狂ったのだろう、董卓が呂布にトばされたのは誰が書いたシナリオだったのだろう。 魔王は栄華を極め、そして一瞬で凋落した。 董卓は惨めな思いを怒気にかえ、憤怒の表情で校舎内を歩き回る。 そして、その足がやがて、止まる。 豫州校区。 なぜこんなところまで歩いてきてしまったのだろう…… 自問自答し、そしてすぐに答えが見つかったことに董卓は驚いた。 董卓には姉がいる。 決して出来がいいとはいえない姉だが、本当に優しいひとだった。 自分に対し、コネを作ってくれるというたったそれだけのためにこの豫州校区まできて一生懸命働いていた。 自分が栄華を極めることができたのは姉の努力、という面もあったことは間違いない。 そう…… 姉の思いを…… 私は裏切ってしまった…… いっそう惨めな気分になり、董卓はきびすを返そうとする。 だがその声が董卓の足を止めさせた。 「あぁ、本当に文若ちゃんが言ったとおり仲穎ちゃんがここにくるなんて、ね」 聞き覚えのある声。 一番聞きたかった声。 一番今の惨めな自分を見て欲しくなかった声。 董卓は恐る恐る振り返る。 やせっぽちで、でも董家の血筋なのだろう背だけはやたらと高い……姉、董君雅。 「あ、お、お姉ちゃ……」 口をぱくぱくさせてここにいないはずの姉を凝視する董卓。 「友達、がね。仲穎ちゃんだったらきっとここにくるだろう、って教えてくれてね」 にっこりと笑う姉。 董卓はその笑顔に涙腺が決壊するのを感じた。 「うあああああああああああ! ごめんなさいお姉ちゃん! 私は董家を汚しちゃった! もう! もう私は……!」 泣き崩れる董卓に董君雅はゆっくりと歩み、そして上からふわりと抱きしめた。 「よくがんばったね、仲穎ちゃん……あなたはうちの誇りよ。世界中があなたの敵になってもお姉ちゃんだけはあなたの味方でいてあげる」 姉の優しさが董卓に染み渡る。 董卓の中から憑き物が抜け落ちるような感覚があった。 魔王は魔王ではなくなった。
161:北畠蒼陽 2006/01/19(木) 21:05 [nworo@hotmail.com] わざわざ! わざわざこの記念日に萌えではないモノを投稿して悦にいってる北畠です! いや、董卓萌え? うん、微妙に萌え。 というわけで何気にワタクシも初旭記念日デス。 いつもの2人、というかいつもの蒼天会を離れたものを書いてみたわけですがもうね? ごめんなさいね? >雑号将軍様 多分近いうちに私もその世代の話を書くと思います。でもその4人は脇役だよ! 人が書かないキャラクターを使うのダ! というか人と同じキャラつかってたら勝てないからね! >海月 亮様 諸葛瑾タン萌え。 正統派の萌え話書けない体質なので羨ましい限りなのですよ。 長湖部は前に1回だけ書いた記憶があるなぁ…… でもアレは萌えない。断じて萌えない。
162:冷霊 2006/01/19(木) 22:54 ■雪降る戦場にて・1 ラク城棟裏庭。 ここで今まさに、戦いの火蓋が切って落とされようとしていた。 話は1時間前に遡る。 東州の部室に劉璋から一つの荷物が届いた。 中身は蜜柑、しかも温州産の上物である。 たくさんもらったのでどうやらお裾分けということだったのだが……問題が一つ生じた。 六人で分ければ一人数個しか食べられない。 そこで楊懐が提案したのが雪合戦である。 東州では問題が発生したとき、何らかの形で決闘により解決する。 今回の場合は雪が降っていることもあり、雪合戦となったようである。 今回の場合、勝者は蜜柑を独り占め、他の者はお零れを期待するのみ。 一見つまらない勝負のように思えるが、炬燵に蜜柑が付くかどうかは大きな問題である。 それは即ちケーキにイチゴが乗っているか否か……いや、苺大福の苺の有無を問うことにも匹敵するだろう。 失敬。 さてさて、話は戻る。 「で、バンダナを奪われたり、雪を当てられたりしたらアウトだっけ?」 高沛が腕に的であるバンダナを巻く。 何でも発信機を埋め込んでおり、雪の衝突を感知してくれるらしい。 しかも水分を含むと赤く染まる為、当たったかどうかは見た目でもわかるそうだ。 「そうだ。当たった後は権利も無くなるから大人しくすること。いいか?」 「やられる前にやれってことか……」 不敵な笑みを浮かべる冷苞。 「残念だったな、冷苞。最後まで参加出来そうになくてよ」 トウ賢がクスリと笑う。 「そりゃ、どういう意味だよ?」 「別にー。そのまんまの意味だけどー?」 両者の間で早くも火花が散る。 「それよりこのバンダナ、いくらかけたの?」 扶禁はじろりと楊懐を見遣る。 だが、楊懐はさらりとその視線を流し、携帯を手に取る。 どうやら誰かに連絡するつもりらしい。 「もしもし、杜微?」 「あ、楊懐?この前の請求書のことだけど……」 「杜微ー、いつものチェックよろしくねー」 「は?ちょっと待って。まだ書る……」 プツ。 途中で高沛が問答無用で切った気がするのは気のせいだろうか。 杜微も良い迷惑であろう。 今頃、頭を抱えるなり、胃薬を飲むなりしているのだろうか。 「そろそろベルが鳴るわね。じゃ、あたしは一足先にっと。」 扶禁が裏庭の方へと歩いて行く。 「あ、扶禁ちゃん待って〜」 向存が慌てて扶禁を追いかける。 「向存、ちゃんとルール理解してんの?」 「さあ?」 高沛と楊懐は二人を見送る。 「せんぱーい、覚悟しといて下さいよー?」 トウ賢がバンダナを額に結び、ニヤリと笑う。 「トウ賢、てめぇこそ覚悟しとけよ?」 冷苞はバンダナを二の腕に巻き終え、トウ賢を睨み付ける。 「へいへい、お前が来んのを楽しみにしといてやるよー」 トウ賢は手をひらひらと振りながら校舎の方へと歩いて行く。 「では、私もそろそろ準備をするか。」 楊懐は何故か校舎の中へと入っていく。 何やら用意するつもりらしい。 「楊懐ー、楽しみにしてるからねー」 高沛は何をするつもりか大体の予想が付いているらしい。 「じゃ先輩、オレも失礼します。」 冷苞も軽く頭を下げ、走っていく。 「行ってらっしゃーい」 後姿に手を振る。 高沛はひょいと雪を掴み、ぎゅっぎゅっと固めていく。 「さーて、一丁やるとしますか!」 高沛が駆け出す。 それと同時に開始のベルが鳴った。
上
前
次
1-
新
書
写
板
AA
設
索
【1月18日】旭記念日創作発表スレッド【お祭りワッショイ】 http://gukko.net/i0ch/test/read.cgi/gaksan2/1074230785/l50