【1月18日】旭記念日創作発表スレッド【お祭りワッショイ】
160:北畠蒼陽2006/01/19(木) 20:57 [nworo@hotmail.com]
「くくっ……」
少女は1人、笑っていた。
少女の胸から階級章はすでに失われ、それでも少女は恨みの視線にさらされていた。


その狂おしいほど透き通った空


「お前らぁ、なにか言いたいことでもあるんか……?」
董卓。
学園史に魔王として長く君臨するその少女は、昔のようにゴスロリファッションに身を包むこともなく、またそれにふさわしい言葉遣いもかなぐり捨て、狂犬のように周囲を恫喝した。
周囲の人間ははっと目を伏せ、そくささと歩みを速める。董卓はふん、と鼻を鳴らした。

かつて董卓ほど天の時、地の利、人の和に加え最悪なほど『運』に恵まれた少女はいなかった。
いつからその歯車は狂ったのだろう、董卓が呂布にトばされたのは誰が書いたシナリオだったのだろう。
魔王は栄華を極め、そして一瞬で凋落した。

董卓は惨めな思いを怒気にかえ、憤怒の表情で校舎内を歩き回る。
そして、その足がやがて、止まる。
豫州校区。
なぜこんなところまで歩いてきてしまったのだろう……
自問自答し、そしてすぐに答えが見つかったことに董卓は驚いた。
董卓には姉がいる。
決して出来がいいとはいえない姉だが、本当に優しいひとだった。
自分に対し、コネを作ってくれるというたったそれだけのためにこの豫州校区まできて一生懸命働いていた。
自分が栄華を極めることができたのは姉の努力、という面もあったことは間違いない。
そう……
姉の思いを……
私は裏切ってしまった……
いっそう惨めな気分になり、董卓はきびすを返そうとする。

だがその声が董卓の足を止めさせた。

「あぁ、本当に文若ちゃんが言ったとおり仲穎ちゃんがここにくるなんて、ね」

聞き覚えのある声。
一番聞きたかった声。
一番今の惨めな自分を見て欲しくなかった声。
董卓は恐る恐る振り返る。
やせっぽちで、でも董家の血筋なのだろう背だけはやたらと高い……姉、董君雅。

「あ、お、お姉ちゃ……」
口をぱくぱくさせてここにいないはずの姉を凝視する董卓。
「友達、がね。仲穎ちゃんだったらきっとここにくるだろう、って教えてくれてね」
にっこりと笑う姉。
董卓はその笑顔に涙腺が決壊するのを感じた。
「うあああああああああああ! ごめんなさいお姉ちゃん! 私は董家を汚しちゃった! もう! もう私は……!」
泣き崩れる董卓に董君雅はゆっくりと歩み、そして上からふわりと抱きしめた。
「よくがんばったね、仲穎ちゃん……あなたはうちの誇りよ。世界中があなたの敵になってもお姉ちゃんだけはあなたの味方でいてあげる」
姉の優しさが董卓に染み渡る。
董卓の中から憑き物が抜け落ちるような感覚があった。

魔王は魔王ではなくなった。
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