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【1月18日】旭記念日創作発表スレッド【お祭りワッショイ】
162:冷霊 2006/01/19(木) 22:54 ■雪降る戦場にて・1 ラク城棟裏庭。 ここで今まさに、戦いの火蓋が切って落とされようとしていた。 話は1時間前に遡る。 東州の部室に劉璋から一つの荷物が届いた。 中身は蜜柑、しかも温州産の上物である。 たくさんもらったのでどうやらお裾分けということだったのだが……問題が一つ生じた。 六人で分ければ一人数個しか食べられない。 そこで楊懐が提案したのが雪合戦である。 東州では問題が発生したとき、何らかの形で決闘により解決する。 今回の場合は雪が降っていることもあり、雪合戦となったようである。 今回の場合、勝者は蜜柑を独り占め、他の者はお零れを期待するのみ。 一見つまらない勝負のように思えるが、炬燵に蜜柑が付くかどうかは大きな問題である。 それは即ちケーキにイチゴが乗っているか否か……いや、苺大福の苺の有無を問うことにも匹敵するだろう。 失敬。 さてさて、話は戻る。 「で、バンダナを奪われたり、雪を当てられたりしたらアウトだっけ?」 高沛が腕に的であるバンダナを巻く。 何でも発信機を埋め込んでおり、雪の衝突を感知してくれるらしい。 しかも水分を含むと赤く染まる為、当たったかどうかは見た目でもわかるそうだ。 「そうだ。当たった後は権利も無くなるから大人しくすること。いいか?」 「やられる前にやれってことか……」 不敵な笑みを浮かべる冷苞。 「残念だったな、冷苞。最後まで参加出来そうになくてよ」 トウ賢がクスリと笑う。 「そりゃ、どういう意味だよ?」 「別にー。そのまんまの意味だけどー?」 両者の間で早くも火花が散る。 「それよりこのバンダナ、いくらかけたの?」 扶禁はじろりと楊懐を見遣る。 だが、楊懐はさらりとその視線を流し、携帯を手に取る。 どうやら誰かに連絡するつもりらしい。 「もしもし、杜微?」 「あ、楊懐?この前の請求書のことだけど……」 「杜微ー、いつものチェックよろしくねー」 「は?ちょっと待って。まだ書る……」 プツ。 途中で高沛が問答無用で切った気がするのは気のせいだろうか。 杜微も良い迷惑であろう。 今頃、頭を抱えるなり、胃薬を飲むなりしているのだろうか。 「そろそろベルが鳴るわね。じゃ、あたしは一足先にっと。」 扶禁が裏庭の方へと歩いて行く。 「あ、扶禁ちゃん待って〜」 向存が慌てて扶禁を追いかける。 「向存、ちゃんとルール理解してんの?」 「さあ?」 高沛と楊懐は二人を見送る。 「せんぱーい、覚悟しといて下さいよー?」 トウ賢がバンダナを額に結び、ニヤリと笑う。 「トウ賢、てめぇこそ覚悟しとけよ?」 冷苞はバンダナを二の腕に巻き終え、トウ賢を睨み付ける。 「へいへい、お前が来んのを楽しみにしといてやるよー」 トウ賢は手をひらひらと振りながら校舎の方へと歩いて行く。 「では、私もそろそろ準備をするか。」 楊懐は何故か校舎の中へと入っていく。 何やら用意するつもりらしい。 「楊懐ー、楽しみにしてるからねー」 高沛は何をするつもりか大体の予想が付いているらしい。 「じゃ先輩、オレも失礼します。」 冷苞も軽く頭を下げ、走っていく。 「行ってらっしゃーい」 後姿に手を振る。 高沛はひょいと雪を掴み、ぎゅっぎゅっと固めていく。 「さーて、一丁やるとしますか!」 高沛が駆け出す。 それと同時に開始のベルが鳴った。
163:冷霊 2006/01/19(木) 22:55 ■雪降る戦場にて・2 「何で付いてきてんのよっ!」 「だって〜、一人じゃ心細いしぃ〜……」 「それじゃゲームになんないでしょ?っつーか離れなさいっ!」 ラク城棟裏庭。茂みに隠れている扶禁と、その後ろにぴったりとくっついている向存がいた。 「あーもうっ!邪魔だって言ってんでしょっ!」 「ねえ、二人で協力しようよ〜?扶禁ちゃんと一緒なら心強いし〜」 「ええいっ!さっさと離れなさいっ!」 扶禁は向存を振り切ろうとするが、上着を掴んでいる向存は扶禁にぐるぐると付いて回っている。 中々出来る芸当ではない。 「それなら……」 扶禁が向存の髪に手を伸ばす。 向存がバンダナを髪留め代わりにつけていたのは覚えている。 それを奪いさえすれば……グッと手を伸ばす。 「見つけたっ!」 高めの声と共に雪玉が飛んでくる。 「危ないっ!」 扶禁が咄嗟に向存を自分の方へ引っ張った。 耳を掠め、雪玉がボスッと地面にぶつかる。 「外しちゃったかー……ちぇ」 高沛が残念そうに言った。 「向存、早く退きなさいっ!邪魔っ!」 「あう〜、ちょっと待ってよ〜」 もたもたと立ち上がる向存。雪玉が飛来し、容赦無く足元を掠める。 扶禁もその下から這い出し、咄嗟に木陰に隠れた。 「扶禁に向存でしょ?いるのはわかってるわよー?」 ふっふっふと怪しげな笑い声が響く。 「は〜……むぐっ!」 (馬鹿ッ!馬鹿正直に返事する馬鹿が何処にいんのよっ!) 扶禁が急いで向存の口を塞ぐ。 が、遅かった。 「そこねっ!」 高沛が校舎を背に左から回り込む。手には二つの雪玉。 「向存ッ、左から来たわよっ!」 「は〜……あうっ」 立ち上がろうとした瞬間、不意に向存がバランスを崩した。 扶禁もろとも、もつれ合う様にして倒れ込む。 「向存?もしかして足……」 「えへへ……ごめんね〜……」 どうやら足首を捻ったらしい。 既に高沛の姿は見えている。 向こうも当然、こちらの位置を把握している。 もはや逃げるのは無理だろう。 正面から戦っても、間違いなく向存がやられる。 道は無い。 そう思った扶禁が取った行動は自分でも意外だった。 「向存覚悟っ!」 高沛が向存の無防備な背中目掛け、雪玉を投げる。 顔は笑っているが、玉を見る限り手心は加えていない。 ギリと奥歯を噛み締める。 次の瞬間、扶禁は向存を自分の方へと思いっ切り引っ張った。 そして、自分の身体を向存のいた位置へと差し入れる。 身体にズンと重い衝撃。呼吸が一瞬止まる感覚。 「扶禁ちゃん、大丈夫?」 向存が顔を覗き込んだ。 「いいから起きなさいっ!」 向存の背中を押し、立ち上がらせる。 立ち上がった向存が扶禁に手を伸ばした。 だが、扶禁は乱雑に手を振り払った。 「あたしに構うんじゃないっ!走れっ!」 ギリッと睨み付ける。 向存は少しだけ躊躇い、そして片足を引き摺り駆け出した。 「向存を逃がす余裕はあるみたいね」 「あの馬鹿のせいで逃げ遅れただけです」 高沛と扶禁が対峙する。 それぞれの手に握られているのはたった一つの雪玉。 「一撃で決めるわよー……おーけい?」 高沛がニッと笑う。 「そう簡単に行くと思わないほうがいいですよ?」 扶禁が口の端を僅かに緩める。 雪はまだ降り続けていた。
164:冷霊 2006/01/19(木) 22:55 ■雪降る戦場にて・3 南側校舎 ガッシャーンッ! 景気良く硝子の破片が降り注ぐ。 「おいおい、よーく狙えっつーの」 トウ賢がひょいと壊れた窓から顔を出した。 「野郎っ……ちょこまかとっ!」 冷苞が次々と雪玉を叩き込む。 強く押し固められ、猛スピードで飛んでくる雪玉は立派な凶器である。 頭にでも直撃すれば下手すれば病院送りであろう。 トウ賢は目立つように額にバンダナを巻いている。 それは挑発から来るものか、それとも覚悟の上か。 だが、雪玉はトウ賢に当たることなく、校舎の中へと消えていく。 何かが割れる音や砕ける音がするが今は聞こえないことにしておく。 「ホラホラ、そんなんじゃ当たんねーぞ?」 「ちっ……クソッ!」 状況は硬直状態であった。 冷苞の方が優勢に見えるものの、トウ賢はあまり力を入れて攻めて来ていない。 何か策があるのかもしれない。 「どっちにしろ、今の調子だとこっちがバテちまう……」 木陰で雪玉を作りつつ呟く。 「何かあるはずだ……何か……」 冷苞が辺りを見回す。 壊れた窓、崩れたかまくら、誰かの作った雪だるま。 どれもピンと来ない。 ふと視線を上へとやる。 「……やるだけやってみっか……」 冷苞がそろりそろりと移動し始める。 「……妙だな」 トウ賢が窓からそろりと冷苞の様子を伺う。 先程まで積極的に攻撃していたのに、あたりに姿はない。 「もうちょっと頑張ってもらわねーと困るんだよなー……」 軽く頭を掻く。 予定ではあと十分くらいは頑張ってもらわないと困る。 高沛は扶禁や向存を狙うからいいとして、問題なのは楊懐である。 どんな方法で攻めてくるか予想がし難い。 「冷苞ー、もしかして先輩たちにやられたかー?」 外へ声をかける。だが、返事はない。 「……向こうも待ちか?こうなるとメンドクセーんだよなー……」 呟きながらも耳を凝らす。 僅かな音も聞き逃すことの無い様、意識を集中させる。 カツン。 靴音である。 それは廊下の奥から聞こえてきた。 (裏をかかれた?) 頭にそんな疑問が浮かぶ。 だが、そんな疑問を気にする必要はなかった。 むに、何かを踏んだ感触。 「ん?」 思わず足元を見る。 そこにはロープが張ってあった。 ロープは頭上へと続いており、そこには木がある。 ミシリと枝が悲鳴を上げる。 枝は積もった雪の重量に耐え切れず、折れた。 「うわわっ!」 トウ賢は咄嗟に飛び退く。 そのとき、一つの雪玉がトウ賢へ飛んできた。 (まだ間に合う!) ギリギリの所で拳で叩き落した。 「な……二つ目!?」 だが、飛んできたのは一球だけではない。同じ軌道で二球、投げていたのだ。 避けようと身体を後ろに反らす。だが、完全には避けられない。 鈍い衝撃の後、じんわりと額のバンダナが赤く染まっていく。 「へっ、オレの勝ちみてぇだな?」 「くーっ、こんな単純な手にやられるなんてよー……」 トウ賢が悔しそうに叩き落した雪玉を握り潰す。 「じゃ、これでオレの28勝目っと。一歩リードだぜ? ニヤリと笑う冷苞。 「フン、いつものように追いついてやっから安心すんなよ?」 トウ賢が雪を払い立ち上がる。 「こうなったら先輩たちにも勝てよ。じゃねーと許さねーからな?」 「任せろって。お前には出来ねぇコト、見せてやんよ」 冷苞がニッと笑う。 そのときだった。 ひゅ〜……ぽす。 「……」 「……」 僅かな衝撃。 冷苞が二の腕に巻いていたバンダナが赤く染まっていく。 「……は?」 「アウト……?」 二人にも何が何やらわからなかった。 ただ確かなのは、これで冷苞もアウトだということである。 「誰か近くにいんのか?」 「大体の予想は付くけどなー……」 納得いかない様子でアウトとなった二人は部室へと戻って行く。 戻って行く二人の後ろで、雪だるまだけがニコニコと笑っていた。
165:冷霊 2006/01/19(木) 22:56 ■雪降る戦場にて・4 「あれ?扶禁先輩もアウトですかー?」 部室に入ってくるなり、トウ賢が扶禁の姿を見つけた。 扶禁は炬燵に入り、劉循と一緒にレーダーの様子を眺めている。 「冷苞とトウ賢揃ってアウト?もしかして相討ちだったの?」 「いや、オレが勝つには勝ったんですけど……ってか、循も来たのか?」 「うん、お姉ちゃんが来れないから代わりに見てきてって」 「タマさん、相変わらずこういうことだけは見逃さねーよなー」 トウ賢が煎餅を手に取り、パリッと一齧りする。 「ってコトは張任さんも来てんの?」 「ううん、張任お姉様はバイトがあるから無理だって……」 しゅんと俯いてしまう劉循。 「だったら後で手伝いに行かねぇか?どうせ暇なんだしさ」 「え、ホント?」 ぱぁっと表情が明るくする劉循。姉に劣らず、非常にわかり易い性格である。 「お、冷苞にしちゃあいいこと言うじゃねーか」 トウ賢が茶化すようにクスリと笑う。 「『冷苞にしては』は余計だ。で、誰が残ってる?」 冷苞がレーダーを覗き込む。 「楊懐さんに高沛さん、それに向存の三人ね」 「へぇ、向存さんが?何か意外だな」 冷苞が煎餅を取り、齧った。 「あれ?そういや杜微先輩はどーしたんです?」 周囲を見回したトウ賢がふと尋ねる。 確か杜微は審判もといチェック役として頼んでいたはずだが…… 「ああ、杜微さんならあたしが来るなり、後宜しくって帰ったわよ」 「あれ?杜微さんって体調、あんまり芳しくねぇんじゃ……?」 冷苞が首を傾げる。 「書類整理くらいならってことで手伝ってるみたいよ。後、ついでにこれも宜しくだって」 どさっと炬燵の上に置かれる紙の束。 もう既に見慣れたものである。 「あー……もしかして始末書ですか?」 トウ賢がさり気無く目をそらす。 扶禁が是の意を込めて頷く。 「冷苞にトウ賢……また壊したの?」 劉循が溜息混じりに首を傾げる。 「あー……オレ、劉循との約束が……」 そろりそろりと冷苞が出口へと向かう。 だが、その後ろからぎゅっと扶禁が捕まえる。 「逃がさないからね?あたしも手伝ったげるから、今日中に片付けるわよ?」 冷苞の左腕を掴み、炬燵へずるずると引き摺っていく。 「良ければ私も手伝うから早く行こう、ね?」 いつの間にか劉循が右腕を掴んでいる。 もはや逃げることは出来ない。 トウ賢も既に脱出は諦めているようだ。 「い、嫌だーっ!!」 冷苞の叫びが校舎に木霊した。
166:冷霊 2006/01/19(木) 22:58 ■雪降る戦場にて・5 ぎゅ、ぎゅ、ぎゅ。 校舎の南側へと足音が近付いてくる。 「うっわー。こりゃまた盛大に壊したねぇ……」 やってきたのは高沛。 「多分トウ賢と冷苞の仕業ね。ってことは、まだ近くにいるのかな?」 周囲を警戒しつつ、じりじりと進んでいく。 誰かが見ている気がする。 だが、はっきりとはわからない。 「んー、校舎の中にもいないみたいだね」 ひょいと覗き込み、廊下を見渡す。 見た所、中へと続く足跡はない。 そのとき、背後に何かの気配を感じた。 「はっ!」 振り向き様、その気配を一蹴する。 高沛に迫っていた雪玉はあっさりと砕けた。 「やっぱ誰かいるなー……隠れてるってことはトウ賢の方が勝ったかなー……?」 雪玉の飛んできた方を確認する。 そこには大きな木。 そして、木の下に放置されている雪だるま。 高沛はふと、その雪だるまに目が留まった。 「……楊懐?」 ピク。 雪だるまが動いたような気がする。 そう言えば刺さっている腕代わりの木の枝には何処かで見たバンダナも…… 足元の雪を掴み、おもむろに雪玉を作る。 「せーの……」 ピッチャー高沛、振りかぶりまして第一球……そんなナレーションの入りそうな雰囲気。 その刹那、雪だるまから足が生えた。 「でやぁっ!」 高沛の腕が振り下ろされる。 その手から雪玉が放たれた。 「はぁっ!」 雪だるまが避けようと横っ飛びに逃げる。 だが、玉は僅かに弧を描き、雪だるまもとい楊懐を捕らえる。 雪玉は容易に雪だるまの腕を砕き、木に激突した。 ……しぃぃん……どさっ! 「うわっ!」 「うっ……」 木に積もっていた雪が一斉に落ちてくる。 綺麗に雪の中に埋もれる高沛とと楊懐(雪だるま)。 「やはり高沛には見抜かれたか……」 少しばかり悔しそうな顔を見せる楊懐。 「へへへ、まだまだ演技力が足りないよ?」 高沛は見抜けたことが嬉しいのか、非常に御機嫌だ。 「おめでとう、高沛。君の勝利だ」 楊懐が雪だるまの右腕を差し出す。 「楊懐こそ御苦労様。三人もアウトにするなんて流石ね」 高沛もがっちりと握手し返す。 「三人?」 楊懐が首を傾げた。 「あれ?三人倒したんじゃないの?」 高沛が首を傾げたそのとき。 ぼすっ。 ……手首に巻いていたバンダナに雪玉が命中した。 「やった〜!ちゃんと当たりました〜!」 声は屋上からであった。 ぴょんぴょんと跳ね、そして足の痛みでこける向存。 そう、範囲はあくまでラク城棟周辺、当然ながら棟内も良いのだ。 「これは一本取られましたね」 「あはははは……忘れてたや」 苦笑いを浮かべる楊懐。 そして、笑うしかない高沛。 まだ、雪は降り止む様子はなかった。 後日談 件の蜜柑は杜微や劉循を加え、八人で分けることとなった。 が、蜜柑を食べ終わるなり冷苞とトウ賢は劉循をつれて逃走。 高沛と楊懐の追跡を振り切り、成都方面へと逃走。 結局、始末書は扶禁が徹夜で仕上げる羽目になったらしい。 合掌。 了
167:冷霊 2006/01/19(木) 23:13 冷霊です。 いきなり萌えより程遠いものを投下してしまった気が……(汗) しかも、長文となってしまいました。 もう少し短くまとめるよう、努力せねばです(汗) ちなみに学年に関して少し補足しておきますと、 高沛&楊懐&杜微:劉璋と同学年 扶禁&向存:劉璋の一つ下 冷苞&トウ賢:劉璋の二つ下。劉循と同学年? のつもりで書いてみました。 >雑号将軍様 皇甫嵩、カッコいいですー。 そしてツノを掴まれてる朱儁に萌えw お米党の方の密かな登場にもクスリと笑わせて頂きました。 >海月様 開催宣言、乙です。 何だか虞翻と諸葛瑾の別の一面を楽しませて頂きました。 しかし、妹達は冗談とわかっていたのか、それとも本気で受け取ったのかが気になります。 個人的には後者を(以下略 >北畠様 董卓に萌えてしまいました。 董卓も姉の前ではやはり魔王である前に妹なんですよね……としみじみ思ってみたり。
168:海月 亮 2006/01/19(木) 23:42 >北畠様 …先生…狼を指して「羊」と呼んでも、誰も信じやしません…。 そしてアレが「萌えじゃない」といわれて、信じられるはずもあろうハズが… ええぃ、まさか此処に来て、よもや董卓に萌えることになろうたぁ思わなかったっつの!(;´Д`)ハァハァ この間の董君雅の話は此処に繋がってくるんですな。GJであります! >冷霊様 おお、早速東州軍団登場でありますな!(゚∀゚) 確かにあの連中が雪合戦やったら、まぁただで済むはずもないでしょうなw …つか扶禁タソ哀れ(ノД`) そして楊懐がいたことを何時の間にか忘れ、文脈から雪だるまには劉璋が入っていたと思ってしまった私は負け組でしょうか…?_| ̄|○ あと、混乱する妹達。 海月の中では、虞姉妹の中で冗談を理解できるのは虞レだけだと思ってます^^A あと、結局みんな、お姉ちゃん大好きなんですよ。と言うわけで本気説に一票(何?
169:北畠蒼陽 2006/01/19(木) 23:45 [nworo@hotmail.com] >冷霊様 学三にSS初投稿おつ! 実にいい作品だと思います! というかこんなシチュエーション好き! 王昶世代もこんなふうに書いていきたいなぁ……
170:★教授 2006/01/20(金) 00:18 ◆◆ A CONVERSION! 〜転換〜 ◆◆ ■■ TROUBLE ■■ 「で…どうすんのよ、この状況」 「知らないよ。こんな漫画みたいなシチュエーション、私にどうしろって言うのさ」 成都棟内、階段踊り場付近でへたり込む女子生徒二名。 一人は赤いボサボサ髪の眠たそうな少女、もう一人は薄紫の艶やかな髪をした目線厳しい少女。言わずもがな、簡雍と法正だ。 二人は埃まみれの上に手足に擦り傷や痣を作っている。よくよく見てみると法正はそれほど傷を負ってはいなかった。それを痛がるような素振りを見せてはいないが、端から見るとやはり二人とも痛そうな状態だ。場所と状況を見れば二人が階段から仲良く池田屋ヨロシク転げ落ちたものだと推測する事に容易だろう。 「正直…困ったわ。憲和、何とかしなさいよ」 大きい溜息を一つ、簡雍がじろっと法正を一瞥して言う。 「冗談。何とか出来るような狡い知恵を孝直が搾り出して欲しいもんね。そーゆーの得意でしょ」 肩を竦めて法正が言葉を返した。 「狡いはともかく、私の範疇なら幾らでも考えるわよ」 「ま、こんなワケ分かんない状況は…医者にもどうにもならないんじゃない」 法正は立ち上がるとスカートの埃を大雑把に払う。それに続いて簡雍も立ち上がって着衣の乱れを整える。 「とにかく、ここは離れて会議室行こうよ。あそこなら一人くらいは分かると思うんだ」 法正は服を少し着崩して簡雍に提案する。着崩している法正を見て、簡雍が慌ててその着衣を戻そうとする。 「私のイメージダウンになるような事しないでよっ」 「あー…はいはい」 法正は思い出したように声を出して着衣を整える。安心したような表情の簡雍…二人とも様子がかなりおかしい。 「ともかく、それでいいと思うわ。問題はこの状態を信用してもらえるかってトコだけど」 「信用してもらわなきゃなんないよ。このままってワケにはいかないんだし」 二人は喧々諤々と廊下を歩いていった。 ■■ PANIC ■■ 「はー…で、そっちが孝直で…こっちが憲和って事なわけやな」 劉備が簡雍と法正を交互に珍しそうな目で見る。 「流石の憲和ちゃんも困ってるんだ。何とかなんないかな」 「いや、アンタは孝直やろ」 「だーかーらー…私が憲和なんだって」 「あ、そやったな」 劉備と法正が漫才じみたやり取りを横で見ている簡雍。疲れたような困っているような複雑そうな顔をしている、が堪り兼ねた様で口を挟んだ。 「総代…私、真剣に困ってるんですけど」 悲痛な思いが混ざった声に、さしもの劉備も咳払いを一つして漫才を止める。 「すまんすまん。でもな…この時間でここにおんのはウチと孔明くらいやで。孔明のトコには行ったんかいな?」 「一番行きたくないトコですが?」 「愚問やったな」 劉備、簡雍、法正の3人ともが一人の狂科学者の顔を思い浮かべる。何を置いても研究と萌えだけは手放さない、地球が滅びても一人生き延びそうな少女の顔を。 「まあ居場所は分かるから…最後の手段として」 法正はどかっとソファーに座ると、手近にあった本を開いた。 「ああ、エリア51な…」 劉備はノートパソコンを開いて信用できる口の堅そうなキレ者をピックアップしながらつぶやく。簡雍は劉備の横でサポートしながら頷いた。 エリア51。 それは諸葛亮孔明が自分の研究を誰にも邪魔されたくない為に、築き上げた専用研究室の事である。 その怪しい研究室は成都棟の旧校舎の中に設けられており、ただでさえ古い校舎というだけで不気味なのに危険な音を流して更に不気味さを演出していた。その為、一般生徒は怯えて近づかないのだ。当然、苦情も劉備の元に何十何百と寄せられてきた。こうなっては総代として動かざるを得ない劉備も張飛や馬超、趙雲といった歴戦の兵を率いて孔明に注意をしに行った。音には物怖じすらしないタイガーファイブに襲い掛かる侵入者排除システム。しかし、アスレチック感覚でそれを返り討ちにされていく。そして先導しているのが劉備では孔明も流石に最終防衛システムのスイッチを押すわけにもいかずお手上げ状態。結局、白旗を挙げた孔明と劉備のタイマン談義によって音は鳴らさない、侵入した一般生徒に危害を加えないという条件で研究室存続を許されたのである。 しかし、危険な音や侵入者排除システムは解除されたものの、今までの事もありやはり誰も近づこうとはしなかった。 そして一般人の近づけない絶対領域、成都の秘密研究施設と呼ばれ…現在の呼び名であるエリア51として呼ばれるようになったのだ── 劉備はあかんと一言言うと、ノートパソコンを閉じる。 「みんなそこはかとなく口が軽そうや。こういう事情なら尚更やなぁ」 「やっぱ、あそこ行くしかないのか? つーか、あそこしかない」 法正は髪をくるくると指先で弄びながら早くも最終手段を口にした。簡雍もまた同意したように強く頷く。 「今日中に何とかしないと。個人情報が危険に晒されてるもの」 早速とばかりに部屋を出ようとする簡雍。しかし、後ろからキツイ一言が襲い掛かった。 「ホント…貧しい胸だこと」 振り返った簡雍にぺたぺたと自分の胸を触りながら哀れみに近い溜息を吐く法正の姿が映る。 「う、うるさーい! 何さ、でかくたっていい事ない…な…の?」 逆上して同じ事をする簡雍。しかし、そこには未だかつて体験した事のない夢幻世界が広がっていた。気にして初めて分かった事…なるほど、自慢したい気持ちは分かる。むしろ、このままでもいいかも…なんて気持ちになってしまった。 「これはこれで…」 悦に浸り気味の簡雍から本音がポロリと出た。 「よくねー!」 それにツッコミを入れる法正。 そしてそれを新鮮そうな眼差しで見つめる劉備がいた── ■■ MAD and GENIUS ■■ 「ほう。経緯は理解できましたが…何とも萌え要素とお約束を混同…あ、冷めた目で見られるのは辛いのでやめてほしい」 白羽扇を手に本音感想を述べる諸葛亮に劉備、簡雍、法正の冷たい目線が浴びせられた。 「で、どないなんや? 何とかなるんか?」 「ははは。私に出来ない事は何一つないのです! この素敵現象を終わらせてしまうのはいささか残念ではありますが……これこれ、輪ゴムを撃たない」 簡雍が太い輪ゴムを何発か撃ち込んで諸葛亮を黙らせた。彼女には素敵要素満載なのかもしれないが、簡雍にしてみればこの上なく嫌らしい。 諸葛亮はこほんと咳払いをすると、こちらへどうぞと部屋の奥に案内をし始めた。三人は互いに見合ったが、詮索すると却って長引くと判断して後に続く。その途中、どこかで見た事がある猫型ロボットや自動歩行する城の模型が目に留まったが、敢えて無視する。そして、目的の場所に到着。 「こんな事もあろうかと、秘密裏に製作しておったのです」 「うっわー…お約束もいいとこだねぇ」 目の前に広がるその光景。椅子が二つと頭にかぶせるのだろう、色んな突起物とパイプが伸びているヘルメット。そして、その後ろにはこれまた何処かで見た事のある機械が鎮座していた。更にその横には『秘密結社○ョッカー』と書かれた手術台があったが、諸葛亮を除く三人が協議した結果、見なかった事になった。 「つまりは…私達二人があのヘルメットをかぶって椅子に座ればいいという事なのね」 「論理的な説明をしたかったのですが、平たく言えばそういう事ですな。後は、こちらで操作しますので」 ささ、ご両人と簡雍&法正を椅子に座らせる諸葛亮。渋い顔で椅子に座ると法正と簡雍はヘルメットをかぶった。ここに来て劉備が『ウチ、必要ないんとちゃうんかいな』と思った。 「では、お二方。覚悟完了でよろしいか?」 諸葛亮はリモコンを手に簡雍と法正に向き直る。 「覚悟完了ー…って! ち、ちょっと! それテレビのリモコンじゃん!」 「のーぷろぶれむ」 「棒読み!? ち、ちょっと覚悟不完了!」 「腹を括ってその時を待ちなさい、お二方」 逃げようとする二人を見て、諸葛亮がリモコンのスイッチを押す。と、椅子からベルトが飛び出し二人を拘束した。 「うわー! やめてー!」 「離してよ! うわっ! 何か生暖かい!」 法正と簡雍、絶体絶命。それを眺めてニヤリと諸葛亮。 「では、エキセントリックな世界へご招待!」 「「するなーっ! っぎゃー!!!!」」 馬耳東風の勢いで嫌がる二人を尻目に諸葛亮がリモコンのドクロマークスイッチを押した── ■■ an EPILOGUE ■■ 簡雍と法正は並んで夜道を歩いている。二人とも疲れきった表情で何を話すでもなく帰路を進んでいた。 今から約2時間前、諸葛亮の機械で幸いにも元通りに戻る事が出来た。その時に彼女の言った言葉『ヒトによる臨床実験初成功』に心底青褪める思いもした。 「まー…無事に戻れたからいいか…」 普段見せないような疲れ顔で呟く簡雍。 「贅沢も我侭も言わないわ…自分の体が一番よ」 自分の肩を叩きながら法正も同意した。 しかし、胸をちらりと見てやっぱり勿体無かったかな…と溜息を吐いた。 それを見ていたのはお月様だけでした。 ■■ RECOLLECTION ■■ 「待てーっ! そのカメラこっちに渡しなさーい!」 「やなこった! 折角のスクープ、台無しにしてたまるもんかー!」 毎日が日課。いつもの鬼ごっこを繰り広げる簡雍と法正。勿論、簡雍が法正のせくしぃショットを盗撮したのが原因なのだが。 廊下を走り、教室に逃げ込み引っ掻き回し…他人の迷惑を顧みず展開される鬼ごっこも終盤に差し掛かった時だった。 「あ! しま…」 階段を駆け下りようとした時、簡雍の足が縺れた。簡雍の体が吸い込まれるように階下に消えていく、が── 「憲和!」 法正の手が素早く伸び、簡雍の手を掴んだ。しかし、詰めが甘かった。勢いの付いた簡雍の体を支えるのに非力な法正の力が足りようはずもない。おまけに両手で掴んだ為、手摺に掴まる事も出来なかった。 「く…」 目を閉じ、来るべき衝撃に慄く法正。そして最初の衝撃…存外に痛みを感じなかった。その代わり、自分が抱きかかえられている事に気付いた。 「憲和!?」 更に二度三度と衝撃が続く。痛みをそれほど感じない法正は必死で自分の盾になってる簡雍を振り解こうとするが…現状ではどうする事も出来なかった。そして最後の衝撃が── 「いたっ!」「あいたっ!」 火花が散った。もがく法正と頭へのダメージを防ごうとした簡雍の無我夢中の動作がごっつんこだったのだ──
171:弐師 2006/01/20(金) 17:39 風が、心地良い。 やはり、私には北の地が会っている、と思う 易京棟の屋上で空を見るのが、私の日課だった。 「伯珪さま〜!」 誰かと思い、振り返ると、そこには見知った顔があった 「士起か。」 関靖 士起、いつも私のそばをうろちょろしている少女だ。 いつものように、他愛ない会話をして、それで終わり。 ・・・の筈だった。 「伯珪さまって、髪は伸ばさないんですか?」 会話の中の何気ない一言、だけど、私の胸の一番ふれられたくない場所に深く突き刺さる。 私は、思わず士起の胸倉につかみかかっていた。 「え・・・伯珪さま・・?」 だけど、彼女のおびえた瞳に耐えられなくて ――――――――私は、そこから、逃げ出した 「はあ・・・」 一人残された屋上で、ため息をつく。 結局、あのあと追いかけることもできず、ずっと屋上にいた。 どうしよう、伯珪さまを怒らせてしまった。 しかも、いつもの怒り方ではない、あんな悲しそうな、寂しそうな目をした伯珪さまは初めてみた。 「どうしたの?士起ちゃん」 「わっ!」 そこに立っていたのは、公孫範さまだった、伯珪さまの従妹で、勃海棟の棟長だったが、界橋の戦い以来、本体に合流していた。 「わっ!てなによ、失礼ね」 「す、済みません!」 そう言いながらも、範さまは笑っていた、彼女は、優しく、面倒見のいい方だった。 「で、どうしたの?ため息なんてついちゃってさ。」 「それが・・・」 あたしは、範さまにあのことを話した、髪の話をしたこと、いきなり伯珪さまが怒ったこと。 「ああ、なるほどね・・・そういえば、あの頃居なかったもんね。」 あたしの話を聞いた範さまの顔も曇る、あたし、そんなまずいことを言ってしまったのだろうか。 「うーん、ちょっと長い話になるんだけどさ、いい?」 「お願いします!」 迷いはなかった、伯珪さまのことなら、何でも知りたかった。 「伯珪姉にはさ、妹が居たの。」
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