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【1月18日】旭記念日創作発表スレッド【お祭りワッショイ】
175:北畠蒼陽 2006/01/20(金) 18:30 [nworo@hotmail.com] >弐師様 冷霊様に引き続き初陣お見事! というか初陣? ……初陣? かなり見習わなきゃいけないな、と(笑
176:海月 亮 2006/01/20(金) 19:09 ―――――( ̄□ ̄;) ええい、今年のニューフェイスは化け物かっ!?(;;゚Д゚)w 冷霊様といい弐師様といい、貴公らは何故此処まで素晴らしい萌えをk(ry >教授様 うわーい久しぶりの簡×法キタ━━(゚∀゚)━( ゚∀)━( ゚)━( )━( )━(゚ )━(∀゚ )━(゚∀゚)━━!!!!! 私めの知る限りでは、こういう「入れ替わり」ネタってないんですよね。意外なことに。 そして意外に誰と誰の組み合わせでも良さそうに見えて、やはり「このふたりじゃないとダメ」と思わせてくれるのは、教授様の描かれる簡雍と法正がやはりそれだけ魅力的であるという証左といえましょう(´ー`) …てかそんな堅っ苦しい言葉は要らんですな、GJ! >弐師様 今年はホンマ、今までになかった人物で萌える年になりそうですな…(;´Д`)ハァハァ 関靖たん可愛いよ関靖たん…(;´Д`)ハァハァ 正史の公孫サン伝ではあまりぱっとしない書かれ方されてたのが残念ではありますが…しかし裏返せばそれを逆手にとって萌えにつなげることもできようワケでありますな。 うおーし、私は二発目は審配と逢紀でいっちゃる! 今こそ隠れ袁氏フリークスの底力発動のときだ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!! w
177:北畠蒼陽 2006/01/20(金) 21:06 [nworo@hotmail.com] 「だめよ。認められないわ」 「なんでだよッ!」 2人の少女が睨みあう。 「わかるでしょう? 私たちには圧倒的に無双の経験がない……あんな歴戦のバケモノたちに太刀打ちできるなんてカケラも思えないわ」 「私があいつらに勝てるか、といったら確かにそうでしょうね! でもあんたは『あの』曹操閣下に認められて棟長になったほどの人間なんだ!」 物静かに……しかし強い意思を秘めて言葉を投げかける少女に、犬歯をむき出しにして噛み付くように吼える大柄な少女。 劉度と刑道栄は対峙していた。 この世における正のバランス 誰もが予想し得なかった赤壁での曹操の大敗……そして撤退。 それにより荊州校区の南部に曹操が指名した棟長たちは孤立していた。 長沙棟長、韓玄。 武陵棟長、金旋。 桂陽棟長、趙範。 そしてこの零陵の棟長である劉度。 すでに長沙、武陵、桂陽は荊州校区南部に地盤を固めようとする劉備によって攻略され、この零陵だけが孤立している状態であった。 「刑道栄……あなたは私を買いかぶりすぎてる。私は卓上の仕事でいっぱいいっぱい……この校舎が襲われるなんて今すぐにでも逃げ出したいくらい」 「でも逃げてない!」 刑道栄の一喝に劉度は顔をしかめて目をそらした。 「今日はここまでにしましょう」 「劉度!」 なにも結論を出さずに会議を終わらせようとする劉度を刑道栄は止める。 「劉備は明日明後日にここにくるわけじゃない。今はいったん冷静にならないと結論は出ないわ……あなたも、私も」 そう呟くようにいって部屋を出る劉度。 刑道栄はその後姿に投げかける言葉を見失い……机に拳を落とした。 刑道栄は劉度の昔からの親友だった。 劉度は文に、刑道栄は武に。 それぞれの専門とする分野は違っていたがお互いを高めあういい関係だと思っていた。 親友が曹操に抜擢され、この零陵の棟長になるとわかったときはどれほど嬉しかったことか。 でも…… 刑道栄はそんなやるせない思いをぶつぶつと不機嫌に呟きながら寮の自室のドアを開けた。 「おかえり」 「……ただいま」 寮の部屋で刑道栄を出迎えたのは同室の親友……劉度だった。 部屋に気まずい沈黙が落ちる。 あれだけ棟長室で言い争ったのだ。どう声をかけていいかもわからない。 やがて……口を開いたのは劉度だった。 「刑道栄、私、劉備と戦うことにするわ」 親友の沈うつな口調に、それとはまったく別の刑道栄が待ち望んでいた言葉。 刑道栄はそのギャップに眉をひそめながら親友を見る。 「でもあなたには劉賢をつれてこの校舎から逃げてもらう」 「お断りだ」 劉度の妹、劉賢の護衛。 護衛といえば聞こえはいいがただの厄介払いではないか。 刑道栄は親友に疎まれていることにぐったりする。 「なぁ、劉度。私はなにかお前に嫌われることをやってしまったのか? 私はずっとお前と一緒にいたいと思っていたのに……」 「嫌いなんて思うわけないじゃない、このばかぁッ!」 刑道栄の言葉は劉度の涙声にさえぎられた。 「でも、そうでもしなきゃあんたは前線に出たがるじゃない! あの歴戦のバケモノにあんたが勝てるわけないじゃない! だから……だからトばされてほしくないのに……!」 劉度の思いが刑道栄の心にしみこむ。 劉度は刑道栄の前でしゃがみこんで泣いていた。 「確かに私じゃあの歴戦のバケモノ連中に勝てないかもね」 体を震わせて泣き続ける劉度の頭を刑道栄はそっとなでる。 もうなんのわだかまりもない。 「でも、弱虫には弱虫の戦い方だってあるんだ……劉備がイヤになるくらい引っ掻き回してやろう」 そっと劉度の髪をなで続ける刑道栄。 「大丈夫だ。絶対に負けない」 刑道栄は決意をこめて宣言した。親友のために。
178:北畠蒼陽 2006/01/20(金) 21:09 [nworo@hotmail.com] 違うよ、海月 亮様! 今のうちにニューフェイスの方々に媚びとかなきゃ!(ナニ? というわけで北畠です、ごきげんよう。 いつぞや冷霊様が劉度すきとか言っておられたのを思い出して書いてみました。 う〜ん、私にとっては初めての演義ベースかな? まだまだですね、精進が足りませぬ。 後日談は……結構悲惨だから書かなくていいよねぇ?
179:7th 2006/01/21(土) 15:42 ※※※このお話は、拙作『簡雍改造計画』の後日談っぽいものとなっております。 未読の方には、しょーとれんじすと〜り〜スレッド413-415を先に読まれることを推奨いたします。※※※ 未曾有の大捕物『簡雍改造計画』より、はや数週間が経とうとしていた。 あの後、法正が簡雍に三日間口をきいてもらえなかった、張飛と魏延が簡雍にやたらとつっかかっていた、劉備がこそこそとなにやら怪しい動きをしていた、関羽がブロマイドの焼き増しを頼んでいた等、もう一騒ぎあったのだが、今ではそれも沈静化し、帰宅部は以前と変わりない日々を取り戻しつつあった。 しかし変わった所が無かった訳ではない。特に顕著なのが、簡雍に対する皆の認識である。 端的に云うと、ファンが急激に増えた。 『簡雍改造計画』終了直後など、テンションMAXになった群集に、危うくお持ち帰りされてしまうところだった程だ。 その後も、あわよくば着せ替えをさせようとして虎視眈々と狙われたり、コスプレ同好会からしつこく勧誘されたり等色々あったのだが、現在は表面上沈静化し、小康状態を保っている。 そう云った訳で、最近の簡雍は実に用心深い。元々勘は鋭い方だったのに加え、いつ何時襲われるか分からない緊張感が彼女にはある。今日も彼女は、スパイ並の用心をしつつ、学園生活を送るのだった。 夏の暑さは、残暑に変わりつつあった。 そんな中でも、今日も今日とて新聞部は編集作業。それに写真を提供している簡雍もまた、作業に追われていた。 部室の中には劉備をはじめ、関羽、張飛、法正、そして簡雍。それぞれが黙々と(若干一名、騒がしいのが居るが)己の作業に没頭している。 ……十数分後、漸く作業が一段落したのか、簡雍が大きく伸びをしつつ、溜息を吐いた。それに遅れること数秒、法正もまた首の辺りをさすりつつ、椅子の背もたれに力いっぱい体を預けた。 「うっし、終わったよ玄徳」 「おう、ご苦労さん」 仕上がった原稿を劉備のところまで持ってきて差し出す簡雍。それを受け取ると、劉備は一枚一枚、問題が無いか目を通す。ぱらぱらぱらと原稿がめくられ、最後の一枚。 「……うん、特に問題は無いようやな。お疲れお疲れ」 「それは良かった。けど玄徳、アタシの頭の上に有る、あの金ダライが何なのか説明してもらえるかな?」 「何や、気付いとったか」 「気付かいでか。それと法正、その手に持ってるスタンガンはそこに置け。危ないから」 いつの間にか簡雍の背後に忍び寄っていた法正が、チッと舌打ち一つしてスタンガンを床に放った。 「…全く、最近大人しいと思ってた矢先にこれか。しかも手段が段々過激になっているような気がするんだけど」 「憲和が大人しく着せ替えさせてくれへんからやろ。初回であんだけ見事に逃げられとるしなぁ。並みの手段で何とか出来ん事を自分で証明しとる」 苦笑する劉備。それを見て簡雍は、やれやれと頭を振った。 「何でこうみんな、着せ替えが好きかね。アタシはお人形さんか?」 「だってみんなオンナノコやもんなぁ。憲和も昔やったやろ? お人形さん遊び」 「生憎とアタシは物心ついた時からコレばっかでね、そーゆーのはあんまり興味なかったの」 そう言って愛用のカメラを示す簡雍。彼女らしいといえば彼女らしい。 「まぁそう云うのは珍しいからな。普通の女の子は着せ替えが好きなモンよ。…ちゅー訳でゴスロリ着てくれんか?」 「何その不吉な単語! 全力で断らせてもらうわっ!」 言うや否や、脱兎の勢いで逃げ出そうとする簡雍。しかし、 「関さん! 出番やで!!」 「心得た!」 劉備の声を受け、簡雍の前に立ちはだかるは『武神』関羽。『戦姫』呂布が去った今、ここ蒼天学園における最大個人戦力の持ち主である。 「雲長、アンタもかっ!」 法正の脇をすり抜け、張飛の飛び蹴りを寸での所でかわした簡雍は、此処に来て最強の壁にぶち当たった。 何しろ隙が見当たらない。純粋にタイマンでの強さは張飛に一歩譲る関羽だが、張飛が気分により闘い方にムラがあるのに対し、関羽にはそれが無い。獅子は兎を狩るにも全力を尽くすのだ。 戦力で云うなら兎と獅子以上に比べ物にならない。なにしろ張飛を迎え撃ったあの時程度の装備が有るならまだしも、今武器と呼べるものは右手に構えたカメラのみ。とてもではないが、敵うものではない。 だが此処を突破できねば未来は無い。意を決して、簡雍は関羽の懐裡に飛び込んだ。狙うは関羽の左、利き手の逆方向。 「む……!」 大きめに迂回して逃走を図るだろう、と予測していた関羽が、肉薄してくる簡雍に一瞬虚を突かれた。 対峙した数秒の中で最大の隙。この機を逃さず、簡雍は姿勢を低く、最大速度を以て関羽の左側をすり抜け……その、左手を掴まれた。 強引に腕を引っ張られ、引き戻される簡雍。捕った! と誰もが確信したその瞬間、関羽の眼全に突きつけられた簡雍の右腕。その手の中には、スタンバイ状態になったカメラが。 必殺簡雍フラッシュ。全ての布石は、この一手のためだけに。 光が、奔る。 「今の一撃は見事だった、簡雍」 関羽は、不動だった。 カメラが眼前にある、と認識し、簡雍がシャッターを切るまでの刹那に、関羽は固く目を閉じていたのだ。 「…反則だろ、その反射速度は。人間業じゃ無いって」 関羽は答えない。代わりに返って来たのは、首筋に振り下ろされる鋭い手刀。 あっさりと、いっそ清々しいほど綺麗に、簡雍の意識は闇に落ちた。 「簡雍の捕縛に成功しました」 「言われんでも目の前で起こっとる出来事やって」 劉備のデスクの前に立った法正が律儀に報告する。どうやら今回の主犯もこの二人らしい。 「流石は関羽さん。あの簡雍をこうも簡単に取り押さえるとは」 「関さんは鬼札(ジョーカー)やからな。こう云う時でもないと使わんわ」 「ほぅ、今回は何か面白い趣向でも?」 「とびっきりのやつがな。…ところで法正、上、見てみぃ」 言われるままに頭上を見上げる法正。そこには、例の金ダライトラップが。まさか。 落下する金ダライ。遠のく意識。暗転する認識の片隅に、法正は劉備の意地の悪い笑みを見た……。 張飛が法正を取り押さえ、関羽が簡雍を肩に担ぎ上げるのを見届け、劉備はおもむろにマイクを取り出した。益州棟全てのスピーカーに直通するそれを構え、彼女はおもむろに、そして朗々と宣言した。 『只今より、第二回簡雍改造計画、及び法正改造計画を開始する!!!』 その声は、秋の気配を見せつつある青空に、高らかに響いた。 〜〜簡雍+法正改造計画〜〜 ゴスロリ。 正式に言うならゴシックアンドロリータ。主に黒を基調とした、レースやフリルで多く装飾された服の総称である。 少女趣味かつクラシカルな印象を持つそれらは、一部の人達から熱狂的な支持を受けている。 先ず受けた印象は人形か。それも、アンティークのビスクドール。 漆黒の生地に、純白のレースで施された装飾。首元には十字架をあしらった、銀のチョーカー。止めとばかりに頭の上にはヘッドドレス。 コケティッシュかつ小悪魔的な魅力を見せるのは簡雍。前回で証明されたことだが、素は結構良いので、基本的に何を着せてもそれなりに似合う。 一方、法正は対照的な純白のドレス。所謂白ゴスと呼ばれるスタイルである。簡雍のものよりゆったり目に仕立て上げられたそれは、フリルで出来たシフォンケーキを思わせる。 ゴシック分よりロリータ分を強調した、清楚な形。全体の印象として、法正にはこちらのほうが似合っているのかも知れない。 「うん、ええ感じや。二人とも似合っとるで」 にやにやとした笑いを顔に貼り付けている劉備。当然このファッションは、彼女のプロデュースによるものだ。 「…屈辱だ」 「うぅ、恥ずかしい…」 される側になってはじめて解るこの羞恥。法正、ちょっとだけ反省。 カメラのフラッシュを浴びて居心地悪そうに縮こまる二人。それを見咎めて、劉備が言う。 「二人とも、もっとにこやかにせぇ。今回は写真集にするんやからな」 「ちょっと待て」 「何ですかそれは」 不穏当な単語にすかさず反応する二人。 「学園祭で売って部費の足しにするんや。まぁ頑張って二人とも部に貢献して頂戴な」 悪びれもせずに答える劉備。この二人といえど、今回ばかりは彼女の掌の上か。 ひとしきり撮影も終わり、そそくさと下がっていく撮影陣を、憔悴した顔でぼんやりと見送る簡雍と法正。 まぁこれでこの羞恥プレイも終わると思えば、そんなに悪くは無い。解放される喜びで、表情も緩むというもの。 しかし、二人のその安心をぶち壊しにする発言が、劉備の口から飛び出した。 「よーし、テイク2準備! 今度は巫女服いくでー!!」 まさに爆弾発言。緩んだ表情が一気に凍りつく。 固まった二人を前に、劉備は悪魔的に微笑む。 「折角の写真集がゴスロリだけやと寂しいからな。もう何パターンか収録しとかんと、買ってくれる人に申し訳ないやろ。ちう訳でてきぱきと次いくで、着せ替え班よろしくなー」 劉備が指を鳴らすと同時、圧倒的人海に呑まれ、仮設更衣室へと連れ去られる簡雍と法正。途中、「覚えてろー!」とか「跡で報復ー!」とか聞こえてきたが、無視。所詮は負け犬の遠吠えである。 二人の受難は、まだ続くのであった。
180:7th 2006/01/21(土) 15:50 ただ、二人で着せ替えをしたかった。 ごめんなさい。続きます。 一応コレだけでもある程度読めますが、所詮はジオング。未完成品です。脚は飾りではありません。要ります。 只、折角続きを書くので、皆様から着せ替えさせてみたい服を募集します。 私ごときの駄文でよろしければ、可能な限り(私の文章で表現可能な限り)実現させたいと思いますので、リクエスト頂ければ幸いです。
181:海月 亮 2006/01/21(土) 18:31 >>荊南のひととか うわーいひそかに「荊南ボンクラーズ」とか考えてたのにー( ̄□ ̄;) しかしこれはこれで萌えだから良し!GJであります! そういえば刑道栄が演義にしかいない人だって最近知った私は_| ̄|○ >>改造計画op.2 7th様(o≧∇≦)oGJ! 普段狙う側が狙われる側に回っても強い、という簡雍も、「武神」関羽の前においては形無しですな^^ そして仕掛けた側と思っていた法正もハメられてたという罠っぷり。お見事でつ。 服装… 私のページとか見てる人なら、私がナニを言い出すかはお解りやも知れませんが…あえてw (*゜∀゜)o彡°スク水!スク水!!!
182:北畠蒼陽 2006/01/21(土) 21:47 [nworo@hotmail.com] >7th様 う、うぶぶぅ…… ナースで! 超ナース! ピンクナース! ……はふん(照
183:海月 亮 2006/01/22(日) 00:06 最初の頃は、どうにも気に食わない小娘だと思った。 ちょっと小利口なところを"あの方"に認められたからって、そのあとも身の程を弁えずに"あの方"の周りをうろちょろする目障りな犬っころ…そうとまで思ったこともあった。 きっとあの一件がなければ、あたしはあの娘を、一生受け入れることなどできなかったであろう。 -フローズン・ハートは笑顔に融けて- あたしの主人…本初(袁紹)お嬢様が冀州学区に腰を落ち着けた頃のことだった。 幼い頃から本初お嬢様の側近くに仕え、いろいろ目をかけていただいたという恩義の分を差し引いても…お嬢様は聡明で寛大さ持ち併せ、何よりも魅力的な方だった。 名族・袁氏の血筋云々ではなく、生まれ持った気品、気高さのようなものがあった。 そして何より、お優しい方だと思う。 妹のように可愛がられていたあの曹操などは、言うに事欠いて「優柔不断で鷹揚なだけのお嬢様」などと陰口を叩いているらしいが…そんなことすら、ただ微笑んで気に留めずにもいた。 何時も「あの娘はただ、私にかまって欲しくて、わざと憎まれ口を叩いているのよ」と、言って。 そういうお嬢様だからこそ、私はこうして、側近くに仕えることができることを誇りにすら思っていた。 だからこそ…怖かったのだ。 あたし以上に優れた娘が、今あたしのいる場所を、いつか奪い去ってしまうのではないかと。 今思えばその娘は、かつてのあたしにとってそういう存在だったのかもしれない…。 「…元図さん?」 どのくらい時間がたっていたのだろう。 彼女…逢紀は、はっとして目の前の少女のほうへ視線を戻した。 「あ…す、すみません、あたし…」 袁氏生徒会の本拠地・冀州学区はギョウ棟の執務室内で、逢紀はその主・袁紹とただふたりきりで、向かい合ってソファに腰掛けている。 数日前、易京の地において宿敵・公孫サンの勢力を打ち払い、そのことにより華北四校区の覇者となった袁紹。逢紀は中学三年生ながら、その功績と才覚を認められ、華北四校区における会計事務の総括を任されるまでになった。 ある、少女と共に。 「あなたでも、周りを忘れてしまうくらい考え込んでしまうこともあるのね」 「う…」 咎めるでもなく、にっこりと微笑む袁紹の言葉に、申し訳ないやら恥ずかしいやらで俯いてしまう。 この日、彼女がこうして呼ばれたのには、ある重大な理由があった。 彼女と共に華北四校区の会計を総括するもう一人の少女についての、あるウワサ。 いわく、その少女が華北四校区の会計総括を任されたのをいいことに、その予算をこっそり横領し、なおかつ一般生徒に対して横柄に振る舞っているというものだ…。 「…私はどうしても、あの娘がそんなことをするような娘には見えないわ。けれど、こうして話題に上ってしまうということは、何らかの原因があると思うの…」 そう話す袁紹の表情は、とても悲しそうに見えた。 それはそうだろう。その話題に上った少女は、袁紹が直々にその才能を認め、取り立てたほどの逸材だったのだから。 事実、彼女はその鈍臭そうな見た目に反して、非常に頭の回転が速く、しかも武の面でも"ソードマスター"顔良が認めたほどの才能を秘めている。 そして、彼女はお嬢様の為に全力で尽くすことを…お嬢様の側に居れる事を、何よりも望んでいることを、逢紀は知っていた。 「あの娘には確かに素晴らしい能力があるし、何よりも一生懸命な娘だと思ってた。でも、こんな事態になっては、このまま彼女に大役を任せるのは厳しいような、そんな気がするの…」 俯く袁紹。 逢紀は、その言葉を噛み締めながら、何時か自分がその少女に対して行ってしまったある事件のことを思い出していた。 半月ほど前、逢紀とその少女が華北四校区の会計総括を任されて、間もなくのころの話だ…。
184:海月 亮 2006/01/22(日) 00:07 「何か、御用ですか?」 人気のない、ギョウ棟体育館の裏手。 数人の少女に取り囲まれながらも、その少女は気丈にも、その首魁と思しきロングヘアの少女…逢紀をを見据え返している。 双方の背丈の差もあるが…明らかに逢紀は、その少女に対して見下すような格好である。 「…あなた…はっきり言って目障りなの」 その冷たい言葉にも、目の前の少女は怯む様子をまったく見せていない。 むしろその言葉に、更に強い視線できっと見据え返してくるほどだった。 「何故ですか!? はっきり言いますが、私はあなたに恨まれる様なことをした覚えはありませんよっ!」 その態度に、逢紀は自分の神経を逆撫でされたような不快感…いや、憎悪すら覚えた。 「新参者の分際で、お嬢様にべたべたとまとわり付くその態度が、目障りだって言ってんのよッ!」 感情に任せるまま、彼女は振り上げた平手を思いっきり少女めがけて振り下ろす。 しかし、その"制裁の一撃"は、何処かあどけなさを残したその少女の顔に届くことはなかった。 「…ッ!?」 振り下ろした左手は少女が振り上げた右手に弾き返されてしまい、それどころか逢紀の身体もその衝撃の余波で後ずさりする格好になった。 取り囲んでいた少女達も、その様子に驚愕の色を隠せない。 「…そうやってあなた達は、今までもやってきたんですか…?」 少女の眼差しに、凄まじいまでの怒りの色がほどばしる。 「あなた達がこんなつまらないことをすれば、かえって本初様を悲しませることになるってこと、どうして解らないんですかっ!」 「何ですって…」 「私達が本初様のことが大好きなように、本初様だって私たちのことを大好きでいて下さってるんです! それがこんな醜い争いをして、傷つけあっているのを知ったら…きっとものすごく悲しまれます!」 少女の凛とした態度、声…いや、それ以上に、まるで解った様に主のことまで語るその少女の言葉に、逢紀どころか周囲の少女も顔を憤怒で紅潮させていた。 「っ…言わせておけばッ!」 憤怒が頂点に達した逢紀が少女の顔に向けて拳を振り上げる。 少女が跳ね除けようとするよりも早く、少女の両隣にいた少女が、素早くその両手を掴み、その動きを封じた。 一瞬の出来事に驚愕した少女は、その痛みを覚悟するように目を閉じた。 だが、その拳が少女の顔を捉えることはなかった。 「やめておけ」 振り上げた拳を後ろから掴まれ、逢紀は憤怒を露に後ろを振り返る。 「っの、邪魔を…っ!?」 その人物の姿を見た瞬間、彼女の顔から一気に血の気が引いた。 同学年の少女達よりも背の高い逢紀よりも、更に長身の、亜麻色の髪をポニーテールにした少女。 そして、その後ろにいたライトブラウンの髪をショートカットにした少女が、 「やれやれ…女の園の嫉妬による私刑とは…まったくもって美しくないですねぇ…」 大仰な仕草で、そう吐き捨てた。 「顔良先輩…儁乂さん」 再び目を開けた少女が、呆然とつぶやいた。 顔良は逢紀の手を掴んだまま、やれやれと言わんばかりに頭を振った。 「まったく…本初様からお前達の様子がおかしいから見て来いと仰せつかったから、嫌な予感はしていたんだがな…」 そして、少女の手を掴んでいる少女達に一瞥くれると、反射的にその両手を開放した。 「元図、正南の言うとおりだ。お前らがお互いにつまらん言いがかりをつけ合っていること、どれ程本初様を悲しませているか、少しは考えろ。本初様の側に仕えて長いお前であれば、そのくらいのこと解らぬわけではあるまい?」 「くっ…」 開放され、所在のなくなった拳を振り下ろし、その場から立ち去る逢紀。 急激に冷めていくその心の中には、何故か敗北感だけが残った。 思えば、この時からだっただろう。 あたしの中で彼女…審配に対するイメージが、それまでとはまったく違うベクトルに傾き始めたのは。 彼女はあの時、「私達」と言った。 つまり彼女は、本初お嬢様だけではなく、あたし達のことまで考えていたということに。 あたしは"新入り"のあの娘がお嬢様と親しくしていたことに、不快感と敵意をむき出しにしていたというのに。 彼女は、それ以降もあたしと馴れ合うようなことはなかった。 だがそれでも、彼女は与えられた責務を全うし、あたしが帳簿記入の上でやらかしたミスも、あたしのいないうちにこっそり直してくれたり、他にもさりげなく、あたしがやりやすいように取り計らってくれたことを、あたしは知ることとなった。 彼女は、本初お嬢様そのものは当然として…お嬢様を取り巻くすべてを、好きでいてくれるということに気づいたとき…あたしはその時から、彼女のことをもっと良く知りたいと思うようになっていた…。
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【1月18日】旭記念日創作発表スレッド【お祭りワッショイ】 http://gukko.net/i0ch/test/read.cgi/gaksan2/1074230785/l50