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【1月18日】旭記念日創作発表スレッド【お祭りワッショイ】
17:★玉川雄一 2004/01/17(土) 22:50 吾粲の眼(1) −学園暦30年(29年度)、1月18日。 長湖を見下ろす堤防の上を、一人の少女が走る。 一歩一歩足取りを確認するかのようにしばらく行ってはまた折り返し、 時折ステップに変化を加えながら黙々とトレーニングに励んでいた。 ボーイッシュなまでに短くカットされた髪は軽快さをより一層引き立てており、 誰が見ても“スポーツ少女”という表現が思い浮かぶことだろう。 また、くりくりとよく動く大きな瞳は、見る者を惹きつけるに違いない。 彼女の名は吾粲、字を孔休。長湖のほとりに位置する呉棟で学ぶ蒼天学園中等部生であり、 高等部への進級を数ヶ月後に控える身である。 「…………………………」 どうも、先程から視線を感じる。無視を決め込むつもりだったが、仕方なく声をかけた。 「私に、何か用?」 すると、堤防の縁に立っていた少女が決まり悪そうな、それ以上に人なつこそうな笑顔を見せて寄ってきた。 「あら、ごめんなさい。気に障った?」 「いや別に。でも、私が走るの見てて何か面白いことでもあるのかな、って思ったから」 吾粲が見たところ、高等部の生徒ではなさそうだ。たぶん、自分と同じ中等部の三年生… 肩の辺りまで伸びた濃紺の髪は先端の辺りで軽くウェーブがかかっており、 やや華奢に見える体つきも相まってか自身が運動をしているようには見えなかった。 「そうねえ… 偉そうなことを言わせてもらうと、あなたはスジが良さそうだな、って感じたわ」 「スジがいい?」 「ええ。失礼だけど、あなた何か運動をやっている?」 初対面ながら、よく話しかけてくる少女である。吾粲とは異なるタイプではあったが、 不思議と嫌な印象は受けなかった。だから、自然と会話を続けることができたのだろう。 「まあ、多少はね… 別に、上手ってわけじゃないよ」 「そうかしら… でも、今日みたいなお休みの日までこうしてトレーニングしてたんでしょう? 努力するタイプなのね。これからまだまだ伸びるはずよ」 そういって微笑まれると、自分の事ながらその気になってくるから不思議なものだ。 この娘は話が上手だと吾粲は感じ取った。おそらく、普段から人に囲まれているのだろう。 自分には真似できない性格ではあるが、このように嫌味なく身に付いた人もいるということか。 そう考えると、我知らず相手を値踏みするような目つきになっていたのかもしれない。 少女はふと気付いたように姿勢を正すと手を差し出した。 「勝手に喋ってしまってごめんなさい。私、顧邵、字を孝則っていうの。中等部三年生よ。よろしく」 「ああ、こっちこそ… 私は吾粲、字を孔休。同じく三年生」 吾粲はそう答えると、顧邵と名乗った少女の手を握った。やはり、年相応の細い指をしている。 運動で太くなるのを気に病むクラスメイトの姿はよく見られたが、 彼女のそれはそんな悩みとは無縁だった。やはり、体育会系ではないのだろう。 「それで、吾粲さん。今日はずっと一人でこうしているつもりだったの?」 自己紹介を交わして気を取り直したのか、顧邵はさらに質問を重ねてきた。 「孔休でいいよ。 …ああ、別に予定もなかったし、すこし汗でも流そうかって」 「それじゃ、私も孝則でいいわ。で、そうって事は… あら、“体験入部”には参加しないの?」 顧邵の顔が驚きに包まれる。とすると、彼女は参加するつもりだったのだろうか。 この体格でよくも… とはさすがに知り合ったばかりの相手に言うわけにはいかず、心の内にしまっておいた。 続く
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